とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第33話 十字の丘

 

ここは第19層の主街区から少し外れた場所にある「十字の丘」。辺りには常に暗雲と霧がかかっており、どこか不気味な雰囲気に満ちている。その暗雲の中で、シュミットはグリセルダの墓に頭を下げ、必死に許しを請いていたところ、ローブを身につけたヨルコとカインズの2人がシュミットの前に現れ、事件の真相を問いただしていた

 

 

「ち、違うんだ!俺は、俺はただ!指輪の売却が決まった日、いつの間にかベルトポーチにメモと未接続の回廊結晶が入っていて、そこに指示が書いてあって!」

 

「それに従って行動しただけなんだ!メモには、グリセルダが泊まった部屋に忍び込めるよう回廊結晶に位置セーブをしておいて、それをギルド共有ストレージに入れろとだけ!だから誰の指示かなんてのは書かれてなかったんだ!俺がしたのは本当にそれだけなんだ!殺しの手伝いなんてするつもりはなかったんだ!頼む!信じてくれ!」

 

「・・・全部録音させてもらったわよ、シュミット」

 

「・・・へ?」

 

 

ローブの2人組が被ったフードを取るとその顔が明らかになる。フードを取ったその2人は、死んだはずのヨルコとシュミットだった

 

 

「・・・ろく…おん?そうか…そうだったのか…お前達、そこまでグリセルダのことを…」

 

「アンタだって、グリセルダのことを憎んでた訳じゃないんだろ?」

 

 

ヨルコの声を聞いた途端、まるで全身の力が抜けたかのように安心するシュミットにカインズが問いかける

 

 

「も、もちろんだ!信じてくれ…!そりゃ、メモの差出人からもらった金で買えたレア武器のおかげで、聖竜連合の入団基準をクリア出来たのは確かだが…」

 

ザシュッ!!!

 

「ッ!?」

 

「「!?」」

 

「・・・麻痺…毒?」

 

 

いきなり暗闇の中から飛んできたナイフがシュミットの肩に刺さり、その肩に付属していた麻痺毒の効果で痺れたシュミットは地面に這いつくばる。それを見て驚くヨルコとカインズの2人を取り囲む怪しいローブを身につけた者が2人。その2人は剣をヨルコとカインズに向け、その剣は暗に「動くな」という意味を示していた。そして、十字の丘の奥からさらにもう1人、ローブを被った人間が1人現れた

 

 

「お〜いおい、こりゃ大した獲物だな〜?聖竜連合の幹部様じゃねぇか」

 

「ッ!?こいつら…殺人ギルド…『ラフィンコフィン』!」

 

「さ〜て、どうやって殺してやろうかにゃ〜?」

 

「アレ!アレやりましょうよリーダー!『殺し合って残ったヤツだけ助けてやるぜゲーム』!」

 

 

最後に登場したローブの人物は他の仲間から「リーダー」と呼ばれ慕われていた

 

 

「え〜?この前アンタそれやって最後結局殺したんじゃな〜い?」

 

 

リーダーと呼ばれる人物は、その口調とローブを被った上からでも分かるような細い線の身体の女性だった

 

 

「もおー!やる前にそれ言っちゃったらゲームにならないっすよリーダー!」

 

「ヒヒッ!」

 

「「「!!!」」」

 

 

ラフィンコフィンの3人の狂気に恐怖し縮こまってしまうヨルコ達

 

 

「ま、『とりあえず殺すか』」

 

ギランッ!!

 

 

リーダーと呼ばれる女の手に出刃庖丁のような大きめのダガーが握られており、怪しげにフィールドの月の光を反射して光っていた

 

 

「あれ?リーダー、今日はスキルで殺さないんすか?」

 

「ん〜、そうね〜?今日はなんかスキルでプチっと殺すんじゃなくて自分の手で殺したい感じ?」

 

「か〜っ!いいっすねぇ!遊びとかじゃなく殺し方も自由自在!そこに痺れる憧れるぅ〜!」

 

「ま、とりあえず殺しとくわよ。後々面倒なことになるし、まずは麻痺毒入れたコイツからかにゃ〜ん?」

 

「ひいいいいぃぃぃ!?待て!待ってくれぇぇ!死にたくない…死にたくないぃぃぃ!!」

 

「あはははははは!!アンタ最ッ高!じゃ、死んで?」

 

ブオォンッ!!!

 

 

リーダーの持つダガーがシュミット目がけて振り下ろされる。しかし、その瞬間、ラフコフのリーダーとシュミットの間に盾が割って入った

 

 

ガキイィィィン!!

 

「・・・あぁん?」

 

「間一髪で間に合ったみたいだな。でも流石にアンタの剣は簡単に折れちゃくれないか」

 

ズザザザザッ!

 

「テメエ…私の『友切包丁』を弾くとは…一体何モンだ?」

 

「『ただの平凡な高校生』さ」

 

 

シュミットとリーダーの間に割って入ったのは上条当麻だった。リーダーの振り下ろしたダガーを盾で防ぐと、リーダーは後ろに下がり上条と距離を取った

 

 

「ヨルコさん!カインズさん!大丈夫ですか!?」

 

「え!?み、ミコトさん!?」

 

「ど、どうしてここが!?」

 

「説明は後です!ここは危険です!シュミットさんを連れて早くどこかに転移して下さい!」

 

「は、はい!行くぞシュミット!」

 

「あ、ああ…」

 

 

麻痺毒に侵され動けないシュミットにカインズが触れ、その反対の手をヨルコが握る

 

 

「て、転移!マーテン!」

 

シュン!!

 

「あーーーーーー!?獲物がー!?リーダー、どうしますぅ〜?」

 

「・・・クククククッ…」

 

「り、リーダー?」

 

 

ローブの女は対象であった3人を逃したが、何ら問題はないかのように不敵に笑う。まるで何か新しい獲物を見つけて嬉々とした興奮が抑えきれないような、そんな感情がフードで隠れていても滲み出ていた

 

 

「あっはははははははは!!こいつぁいいや!あっはははははは!!よもやこんなとこで再会出来るとはなぁ!」

 

「り、リーダー…?」

 

「な、何よ…アイツ、いきなり笑い出してどうしたっての…?」

 

「殺人ギルド、ラフィンコフィンのリーダー『poh』。まさかこんなとこで出会うハメになるとはな…」

 

「ありゃりゃ〜?どうやらそっちのツンツン頭の方は私のこと知ってるみたいね〜?どうせならそっちの血盟騎士団のお嬢様に紹介してくれないかにゃ〜ん?」

 

「な、何よアンタ…この殺人鬼と面識あったわけ?」

 

「いや、俺もアルゴから情報を聞いたことがあるだけだ。アバター名とそのユニークスキルの名称だけな。名前は『PoH』。そして扱うユニークスキルの名は…」

 

「『原子崩し』」

 

「!? めっ、『原子崩し』!?ってことはつまりアイツは!?」

 

「ああああ!!そういうことだよ!久しぶりだなぁ!『超電磁砲』!?」

 

そう叫ぶとリーダーの女は自らローブを全て剥ぎ取り、その姿の全容が明らかになる

 

「改めて自己紹介だ。能力名『原子崩し』学園都市序列第4位のレベル5…『麦野沈利』だよおおおぉぉぉ!!」

 


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