とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第32話 真相

 

「ヨルコさん!!?」

 

ガシャアアアァァァン!

 

「ッ!!!クソッ!!!!」

 

ダンッ!! [Immortal Object]

 

 

ずっと目の前にいたヨルコを守ることが出来なかったという不甲斐なさから上条当麻は覗き込んだ窓の淵に右拳を叩きつける。しかし、そんな感情的な上条当麻とは裏腹にSAOのシステムは機械的にその設備が『破壊不能オブジェクト』であることを示す

 

 

「アンタ!そこ退きなさい!シュミットさんのこと頼むわよ!!」

 

「おわっ!?どうした美琴!?」

 

「見えてなかったの!?そこの家の屋根の上にローブを被ったいかにも犯人ですって奴がいたでしょ!?」

 

「なっ!?」

 

「とりあえず後よろしく!」

 

バッ!!スタタタタタタタッ!!!

 

 

その場で落胆する上条を気にも止めず、犯人らしき人影に気づいた御坂美琴は窓から外に向かって飛び出す。そしてローブを被った怪しい人物を追い家の屋根から屋根に飛び移りそのローブの人物に追いつく

 

 

「止まりなさい!!」

 

「ッ!!!」

 

カチャ

 

(転移結晶!?このままどこかの街に飛ぶつもり!?だけどその街の名前さえ聞けば…!)

 

ゴーン!ゴーン!ゴーン!!

 

(!?こんな時に鐘の音!?これじゃローブの奴の転移する場所が聞こえない!!)

 

「・・・・・」

 

 

ローブの人間が取り出した転移結晶に向かって転移する場所を指示する。しかしその声は鐘の音に掻き消され美琴の耳には届かない

 

 

(ならせめて唇の動き!…って分かるわけないじゃない!)

 

シュン!

 

転移結晶が作用しローブの人間はその場から消え去る

 

 

「ッ!!逃げられた……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ガチャ

 

「美琴ッ!どうだった!?」

 

「ダメ、逃げられたわ…」

 

「・・・そうか…」

 

「・・・あのローブは…グリセルダの物だ…あれはグリセルダの幽霊だ…俺たち全員に復讐に来たんだっ…!は、ははっ、そりゃそうか…幽霊だったら圏内で人を殺すぐらいワケないもんな…あははっ…はははは…」

 

 

シュミットはすっかりあのフードの人間がグリセルダの幽霊だと思いこんでしまい、頭を抱えてその身体は恐怖によって細かく震えている

 

 

「・・・アンタ、後で少し話があるわ」

 

「え?あ、ああ…」

 

「シュミットさん、一先ずは聖竜連合の本部に戻って下さい。あそこの方が人が多いですし、何より手練れも多いです。ここよりは安全かと」

 

「あ、ああ…」

 

 

美琴が上条に何か耳打ちすると、その後震えるシュミットを聖竜連合に戻るように指示した

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「圏内PKの手口とその犯人と真相が分かっただって!?」

 

「あーもーうっさいわね、そうだって言ってんでしょ」

 

 

シュミットさんを聖竜連合の本部へ送った後、2人はもう一度57層に戻り、レストランで飲み物のみを注文し、話し始めた。だが、話を始めるなり御坂美琴の口から飛び出たのは、今回の事件のやり口とその真相が全て分かったという驚愕のものだった

 

 

「い、一体誰が!?どうやって!?」

 

「そうね…いちいち口で説明するより見せた方が早いわ。ちょっと見てなさい」

 

 

そう言うと美琴は自分のメニューを開き、ウインドウを操作して自分が装備している鎧の装備を普通の道具屋などで買えるような貧相なものに変え、自分の腰の鞘に収めているレイピアを引き抜いた

 

 

「?」

 

「ほっ!!」

 

ドスッ!!

 

「!?!?お、おい美琴お前!何やってんだ!?HP0になって死ぬぞ!?」

 

「うっさいわね、見とけって言ったでしょ?…そろそろかしら…」

 

バアアアァァァン!!

 

 

美琴の身体が上条当麻の前でいくつものポリゴンの欠片となって消えた

 

 

「!? 美琴ぉぉぉぉぉ!!!!」

 

ガチャ

 

「呼んだ?」

 

「へ?」

 

 

上条が叫んだすぐ後、まるで何事もなかったかのように美琴がレストランのドアを開けて店内に入ってきた。何がなんだか状況の掴めない上条は思わず素っ頓狂な声をあげた

 

 

「どう?今ので全部分かったでしょ?」

 

「・・・?いや全く」

 

「なっ…!はぁぁぁぁ〜〜こんなんだったら最初から実演なんかせずに口で説明した方が早かったわ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「誰も死んでない!?」

 

「そうよ、一連の事件であの武器が削ってたのはプレイヤーのHPじゃない、防具の耐久値だったの」

 

「防具の耐久値……そうか!なるほど!じゃあ防具の耐久値が0になって壊れるタイミングを見計らって!」

 

「そう、本人が結晶で転移してたの。圏内でHPは減らないのに防具の耐久値は減って、まるでプレイヤーが死んだかのように見せかけたのよ」

 

「・・・お前それいつから気付いてたんだよ」

 

「最初っから」

 

「最初から!?なんで言ってくれなかったんだよ!?」

 

「確証がなかったのよ。でも引っかかる所は何個かあったわ。カインズさんの時は、アンタが槍を抜けって言ったのに最初、抜くことを躊躇したわ。そしてヨルコさん、彼女はシュミットさんと話している時、私たちに背中を一切見せていなかった。あれは多分、予め自分の背中に武器を刺しておいて、タイミングを見計らってまるで窓の外から狙われて刺されたように見せかけたのよ」

 

「な、なるほど…」

 

「そして、その後のローブの人を追いかけて、向こうが転移した時、全ての点が繋がった。ああ、こういうタネだったのか。ってね」

 

「す、すげぇなお前…」

 

「これでも学園都市が誇る第3位の頭脳ですから」

 

「それ久々に聞いたな…」

 

「おそらくあのローブの人はカインズさんよ。彼はずっとヨルコさんとこの圏内PKを予め計画していた」

 

「そして、ヨルコさんとカインズさんの目的は最初っからシュミットさんを脅してこの事件は自分を含めた3人へのグリセルダさんの復讐劇だと思いこませる為だった…ってことか?」

 

「そ。多分2人は、最初からある程度シュミットさんの事を疑ってたんだと思うわ。そのシュミットさんはまんまと騙されてこの事件をグリセルダさんの幽霊がやったことだと信じ込んだみたいだけどね。今ごろ、グリセルダさんのお墓にでも行って自分の罪を自白しながら、『自分は殺さないでくれ』って土下座してんじゃないかしら?そして、その場所には彼を待ち伏せしているカインズさんとヨルコさんも…」

 

「なるほどな…2人は最初っからシュミットさんの口から事件の真相を聞きたいだけだったのか…」

 

「そゆこと。ま、結局のところ私たちはまんまとヨルコさん達の芝居に付き合わされちゃった訳だけど、私は悪い気はしないわ。どう?分かった?」

 

「ああ、分かった。…でも、でもよぉ美琴?」

 

「? でも何よ?まだ何か分かんないことでもあんの?」

 

「結局、最終的に指輪は誰が持ってんだ?」

 

「はぁ?そんなの、この後シュミットさんが語るであろう犯人が奪ったに決まってんでしょ?」

 

「でも、グリセルダさんはグリムロックさんと結婚してアイテムストレージ共有してたんだぞ?確か共有してるアイテムって確か持ち主が死んでももう片方の相手のストレージに消えずにそのまま残るんじゃないのか?」

 

「!?た、たしかに…まさか…ってことは!?」

 

「これからシュミットさんが語るであろう自分に指示を出していた事件の真犯人は…グリムロックさん!」

 

「ちょっと!あの3人はまだその事知らないわよ!」

 

「でもグリムロックさんは今の3人の事情を知ってる!」

 

「だとしたら…グリムロックさんは真実を後々に知ってしまう3人を口封じの為に…!!」

 

「まずいわ!シュミットさんとカインズさんとヨルコさんが危ない!」

 

 


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