とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第1話 運命のくじ引き

「ふ、不幸だ……」

 

 

上条当麻は今まさに自身の不幸を噛み締めていた。上条当麻はその不幸を自覚した上で、悪魔でもティッシュを貰いに来るという名目でこの抽選会場へと足を運んだのだ。だが…

 

 

「外れにはティッシュはおろか何も無しって…そんなの福引きって言わねぇだろぉぉぉーーーーー!!!」

 

 

そう、今回の福引きの外れにはティッシュどころか、なんの景品も付かなかった。まさに鬼畜の所業と言うべきか、上条当麻自らがこの不幸な福引きを生み出したとも言えるかもしれない

 

 

「さぁ〜て、後は上やんだけぜよ?」

 

「ハズレかな?ハズレかな?それともハズレ?」

 

「選択肢にハズレ以外ないじゃねーか…はぁ〜…ま、そんなことはこの上条さん自身が一番分かってんですけどね…」

 

「悪いにゃ〜俺たちだけいい思いしちゃって〜♪」

 

「僕たちは帰りにこの1000円分の商品券を使って何か夕飯の材料でも買って帰りましょか土御門くん♪」

 

「てめぇら後でほんと覚えとけよ!」

 

「ほらほら、上やんお得意のその右手でずずずい〜!っとガラガラを回すぜよ!」

 

「誰がわざわざ右手で回すか!こんな時のために上条さんには左手が生えてるんでございますのことよ!?」

 

「いやそれは流石にちゃうやろ…」

 

「見てろ!この黄金の左手で必ずや六等のう○い棒を当ててやるからな!」

 

「結局下の方しか狙わないのねアンタ…」

 

「おおっと?おや〜?どこの誰かと思ったらいつかの夏休みの最終日の常盤台のお嬢ちゃんやないか〜」

 

「どうも、どうせだからあいつの不幸っぷりを拝みに来たわ」

 

「なぁ、お嬢ちゃんは上やん何等出すと思う?ハズレかな?外れかな?それともスカ?」

 

「ま、その全部でしょうね」

 

「お前ら…御坂まで…あーもうそんなに言うなら見とけよクソ!御坂こそ!俺がもし一等当たったらその手から下げてるゲーム今夜一緒に手伝ってもらうからな!!」

 

「なっ///!?」

 

「おやおや〜?これは土御門くぅ〜ん?」

 

「ま、超電磁砲はとっくに上やん病にかかってるから何とも言い難いけどにゃ〜」

 

「行くぜっ!ふんっ!!」

 

 

上条はその手で乱雑に抽選機の取っ手を掴むと時計回りに回し始めた

 

 

「そぃや!!」

 

「あ、上やん右手・・・」

 

「「「あ…」」」

 

 

土御門が言及するその時すでに遅し。人間とっさの時には利き手が勝手に出てくるように、上条もまた無意識のうちに、取っ手を右手で掴んで抽選機を回し始めていた

 

 

「だぁぁ〜!!えぇい!ままよっ!」

 

 

そのままの勢いに乗せ、上条の右手は抽選機を乱雑に回し、3回、4回とガラガラと不規則な音を立てて回る

 

 

(神様!お願い!今までロクに信じて来なかったけど!どうか!どうかアイツに!一等を当てさせてあげて!これっきりでもいいから!)

 

 

なぜか御坂美琴も彼の運気を神に祈る中、抽選機からついに、福引きの結果を知らせる1つの玉が現れた

 

 

「…………お?」

 

「い、今、玉1個出はったよな?どやった上やん?やっぱしハズレ?」

 

「ちょ、ちょっとアンタ?何固まってんのよ?何が当たったのよ?」

 

「は、は、はは、ハハハ……」

 

「ハ?ハズレってこと?やっぱりにゃ〜」

 

「もぉ〜上や〜ん、いつからそんな演技派になった〜ん、そないな反応するからてっきりハズレじゃないんかと思ってしまったやーん」

 

(何よ…せっかく一緒に遊べると思ったのに…バカ…)

 

「やっぱり、上やんは上やんって事ぜよ、それに結局回したのはあの右手だしにゃ〜。さて、帰るぜよ〜」

 

「は、『春』が……」

 

「「「…え?」」」

 

「ついにこんな不幸な俺にも!!!ついに!ついに春が来た〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

カランカランカランカラン!!

 

『おめでとうございます!一等賞!新型ゲーム機ナーヴギアと新型ゲームソフトSAOの当選者が出ました〜!』

 

「「「な、何ぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!?」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ほら食えーインデックス!今日はご飯も炊飯器が空になるまで食っていいからな!カレールーも鍋が空になるまで食っていいぞー!」

 

「本当だねとうま!?私は食べることに関しては有言実行するんだよ!?わぁぁ〜い!!いっただきまぁーす!」

 

 

とある高校の学生寮に住む男女2人、純白の修道服に身を包み、その脳の中に10万3000冊の魔道書を記憶した彼女、『禁書目録』と上条当麻は放課後の熱も冷めぬまま、夕暮れの食卓を囲んでいた。本日の上条家のメニューは庶民の味の味方、カレーである。香ばしいスパイスとにんじんとじゃがいも、そして鶏肉がふんだんに使われたカレーライスは普段の夕食とは見違えるほど夕食らしい夕食となっていた

 

 

「はっはっは〜!今日は俺の幸運に感謝して出血大サービスだ!何てったってほぼ絶対に手に入らないと思っていた物が手に入ったんだからなー!」

 

「???何のこと?とうまに幸運が訪れるなんて神様が自ら貧乏くじ引いたとしか思えないんだよ?」

 

「お、お前も中々キッついこと言うな…」

 

「それで?何が手に入ったのとうま?」

 

「いや〜!これがお前にも分からないほど凄いものなわけですよ!インデックス!VRMMOって知ってるか!?」

 

「ぶ?ぶいあーるえむえむおー?何それ?美味しくなさそうなんだよ」

 

「そうだろー?分からないだろ〜?なーんたって普通に買おうと思えばお前と俺の食費半年分はするんだ!それが福引きごときでタダで手に入るなんて!こんなに嬉しいことはないぜ!」

 

「むむむ〜!そうやってとうまはいつもいつも!そこまで穀潰し宣言されると流石の私でも頭に来るんだよ!本当にとうまの分のおかわりがなくなるぐらいカレーとご飯を食い尽くしてやるんだよ!」

 

「ちょ!?おま!?流石に一杯ぐらいは俺にもおかわりさせてくれよ!?」

 

「にゃああ〜〜〜〜」

 

いつもよりも楽しげに食卓を囲む2人と1匹。しかし、彼らはまだ知らない。こうして彼らが食卓を囲む日はもう2度と来ないかもしれないということに

 


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