「よっ!…っと」
「はわわ!…ほっ」
上条当麻の使った転移結晶により2人は35層のミーシェへと移動していた
「よし!ここならモンスターはいないし落ち着いて話せるな。俺の名前は上やんだ。君の名前は?」
「へ?は、はい!シリカです!」
「シリカか、よろしく」
「よ、よろしくお願いします…」
「それで、なんだけど。君が持ってるアイテム…『ピナの心』があれば君のテイムモンスターは蘇生出来る」
「!?ほ、本当ですか!?」
「ああ、47層の南に『思い出の丘』っていうフィールドがあってな、そのてっぺんに咲く『プネウマの花』ってのが使い魔蘇生用のアイテムらしい」
「!!!47層…」
(私のレベルじゃ…全然足りない…)
「ま、そういうことだから俺も行くよ、思い出の丘に」
「ええっ!?」
「あれ?嫌だったか?」
「い、いえ!そんな!迷惑ですよ!私まだまだ47層に行くにはレベルが足りないですけど、いつかレベルを上げて1人で…!」
「残念だけどそうもいかないんだ。テイマーが一緒じゃないと蘇生アイテムの花は咲かないし、そのアイテムで使い魔が蘇生出来るのはモンスターが死んでから3日以内まで。それを過ぎるとアイテムを使っても蘇生は出来ない」
「!!そ、そんな…」
「だから俺が一緒に行くよ。あそこの層のモンスターだったら、俺だったら大抵1.2発で終わるしな」
「あ、あの…」
「あれ?やっぱ行きたくなかった?それともそもそも蘇生をお望みでない感じでせうか?」
「い、いや!そういうことではなく!…な、なんで…そこまでしてくれるんですか…?」
「困ってる人を見たが最後、どんな人でも救いたくなっちまうのが俺の性分でな。困ってる人とか悲しんでる人を見てたらどうにもほっとけないんだよ」
(・・・やっぱり何か信用しづらいんだよね…どうしても話が美味しすぎて裏がありそうっていうか…またさっきのロザリアさんみたいに悪い人かもしれないし…)
「・・・や、やっぱr」
「お!シリカちゃん発見!」
「んぁ?」
「あ・・・」
シリカを見つけるなり二人組の男が声をかけてきた
「随分遅かったんだね?心配したよ。ロザリアさんのパーティー抜けたんだって?」
「あ、あの…」
「じゃあさじゃあさ!今度俺たちとパーティー組もうよ!好きなとこ連れてってあげるから!」
「い、いや…その…あの…」
余りにもパーティーを組むことを押してくる2人の勢いに負けシリカがどう返答しようか困っていたところ
「・・・おい、お前ら」
「「あぁん!?」」
「か、上やんさん…」
「お前ら今のシリカの今の状況分かっててソレ言ってんのか?」
「あぁ?シリカちゃんの今の状況って…アレ?シリカちゃん、いつものフェザーリドラはどうしたの?」
「・・・その…ピナは…さっきまで行ってた迷いの森で死んでしまって…」
「そうだったんだ…それは大変だったね…でも大丈夫、すぐに新しい使い魔が見つかるよ!僕達も一緒に探してあげるよ!」
「あ、新しい使い魔って…あなた達…ふざけ…!」
「ふざけんじゃねぇぞテメエら!!」
「!?か、上やんさん…?」
シリカが彼らの言葉に怒りを覚え、反論しようとしたところ、彼女より一足早く上条が激昂しその怒りの感情をあらわにしていた
「あぁ!?さっきから何なんだテメエ!俺たちのアイドルシリカちゃんに何の用があんだよ!?」
「テメエらは知らねえだろうがな…ピナはシリカの心の支えだったんだよ!そりゃ俺にも具体的にいつから二人が一緒だったかなんてとこまでは知らねぇさ…でもな!シリカがどれだけピナの事を大事にしてたかはシリカが『ピナの心』を見た瞬間に分かった!」
「!!!」
「新しい使い魔?俺たちのアイドルのシリカちゃんだ?冗談も大概しろ…シリカにとって!ピナは何よりも大切な友達だったんだ!仲間だったんだよ!死んだら終わりのこの世界で一緒に生きる心の支えだったんだよ!だったらシリカが望んでるのは新しい使い魔なんかじゃないだろ!」
「そ、それは…」
「ピナを生き返らせる方法があるんだ!二人をもう一度会わせて笑顔にしてやれる未来があるんだ!だったらそれを叶えてやるべきなんじゃないのか!?大切な友達を失って悲しんでる女の子がそこにいるんだ…助けてやりたくなるのが普通なんじゃないのかよ!!」
「か、上やんさん…」
(か、カッコいいな…悪い人なんかじゃなかったんだ…)
「・・・そうだな、僕たちが間違ってたんだ。シリカちゃん、無神経なことを言ってゴメンよ」
「俺も…悪かった…」
「い、いえ…悪いと思ってくれてるなら私はもう大丈夫ですから…」
「必ずピナちゃんを生き返らせてあげてくれ…僕も心の底からシリカちゃんとピナちゃんの幸せを願っているから」
「おう、俺もだ。それと、そこのえっと…」
「上やんだ」
「上やんさん、本当にすまなかった。シリカちゃん達の事、よろしく頼みます」
「僕の方からも!よろしくお願いします!元気なシリカちゃん達を見るのが!僕達の心の支えなんです!」
「ああ、任せとけ」
「それじゃあまたね!シリカちゃん!」
「ば、ばいばいシリカちゃん!」
「は…はい、さようなら…」
そう言って二人に背を向けて手を振ってシリカに別れを告げ、男二人組はその場から去っていった
「ふぅ…ごめんなシリカ。急に怒鳴ったりして」
「い、いえ!嬉しかったです!ありがとうございました!ピナもきっと喜んでます!」
「はは、そう言ってくれるとありがたいな。にしても、シリカってみんなのアイドルだったんだな。知らなかったよ、人気者なんだな」
「・・・いえ、そんなんじゃないですよ…マスコット代わりに誘われてるだけですよ…きっと…」
「・・・・・」
「それなのに、竜使いシリカなんて呼ばれていい気になって…」
シリカはピナのことを自分の身勝手で殺してしまったことを責めてまた泣きそうになってしまう
「心配ねぇよ…またピナとはちゃんと会える。そしたら、今度は自分をアイドルとかマスコットとしてじゃなく、シリカをシリカとして対等に見てくれる人と、またパーティーを組めばいい」
「!!グスッ…はい!」
上条の一言に元気づけられ、涙を拭ったシリカ。その目にはもう迷いは残っていなかった
「それで、話が途中だったな。どうする?行くか?行かないか?…ま、もうそもそも聞く必要なんかないか」
「はい!行きます!一緒に行かせて下さい!さっきも言っていたように、ピナは私の大切な仲間なんです!」
「よっしゃ!話は決まったな!でも今日はもう夜遅い。今日はこの層の宿にでも止まって明日改めて47層に転移して思い出の丘を目指そう」
「あ!じゃあ私が今泊まってる宿屋まで案内します!」
「お、そうか助かるよ。じゃあ連れて行ってくれるか?」
「はい!行きましょう!」
「あ〜ら〜?シリカじゃな〜い」
「えっ?ッ…ろ、ロザリアさん…」
宿屋に向けて出発しようとしていた2人を不意に呼び止めたのは、迷いの森でシリカと口論になっていたロザリアだった
「へ〜?森から脱出出来たんた〜?良かったわね?」
「・・・シリカ?どうかしたか?知り合いか?」
「いえ…別に…」
「あら?あのトカゲど〜しちゃったの?もしかして…」
「ピナは死にました…でも!絶対に生き返らせます!」
「へ〜?ってことは思い出の丘に行く気なんだ?でもアンタのレベル攻略できるの?」
「ッ…」
ロザリアが言うのももっともな見解なので何も言い返せなくなってしまうシリカ。しかし、そんな彼女を庇うように前に踊りでた上条がロザリアに言い返した
「出来るさ。47層でも思い出の丘はそんなに高い難易度じゃない。それに、シリカには思い出の丘に行く為の願いと意志がある」
「か、上やんさん…」
「・・・アンタもその子に垂らし込まれたクチ?見たとこ、そんなに強そうじゃないけど…はぁ!?アンタその剣まさか1層のNPCの武具屋のヤツじゃないでしょうね!?難易度低いとは言うけどそんなんで行くとか自殺しに行くのと同じよ!?あっはっはっは!久しぶりに面白い冗談だわ〜!」
「見てりゃ今に分かるさ」
「あ?」
「行こう、シリカ」
「えっ?…は、はい…」
(ほ、本当だ…ロザリアさんに言われてから気づいたけど…上やんさんの装備してる片手剣、ほとんど初期の武器だ…ほ、本当にこれで思い出の丘に行くつもりなのかな…?)
「・・・フッ」
そんな2人の背を見てロザリアが不気味に笑った。その笑みの裏に何が隠れているのか、その真相を知る者はいない