とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第23話 情報

 

「どはぁ〜〜〜…」

 

「お疲れのようだな上やん。聞いたゾ?昨日のボス戦でまた無茶したらしいナ?」

 

「あ〜〜?なんだ、アルゴか。そりゃ無茶だってするさ、なんたってもう100層までの折り返し地点はとっくに過ぎて第55層のボスだからな。多少の無理してなんぼってとこだろ」

 

 

SAOが始まっておよそ1年と半年が経過した。最初の頃は多発していたプレイヤーの死亡もやがて並行線を辿るようになり、アインクラッドの攻略は第56層まで進んだ。そして今この男、上条当麻はつい昨日のボス戦の疲れを取るために昼寝でも始めようかと街から少し外れた人気のなく静かな草原に寝転がったところを、情報屋を営んでいるアルゴに話しかけられていた

 

 

「なぜそうまでしてソロを貫くんダ?攻略組にまざるならどこぞのギルドかパーティーにでも入れば楽なの二。『もう少し自分の命を大切にしろ!』ってみこっちゃんカンカンに怒ってたゾ?」

 

 

上条は第1層のボス戦の後に起こった一件以来、誰ともパーティーを組まなくなり、攻略からも離れ、自分なりにレベルを上げたり、気ままな生活を送っていた。しかし、初めてのクォーターポイントである25層のボス戦時に多数の死者が出たのをきっかけに、また攻略やボス戦に顔を出すようになった。それ以降は彼の周りから頭一つ抜けた攻撃力を誇る右手とその能力のおかげもあってか、攻略も幾分か楽になった

 

 

「いいんだよ、俺はソロで。そもそも今の俺の闘り方でコンビネーション組める奴らなんかいねーだろうが」

 

「みこっちゃんならどうかナ?」

 

「・・・いやそもそも美琴は…」

 

「まぁ、無理だろうナ。あれからソロを貫いてる上やんとは違って、みこっちゃんは今や『閃光のミコト』の二つ名を冠する超一流プレイヤーで、攻略組最強ギルド『血盟騎士団』の副団長ダ。今さら上やんなんかとパーティーなんて組まないだろうナ?」

 

「分かっててなんで聞いてくんだよ嫌味かよ…」

 

「そうだゾ」

 

「分かってて言ってんならなおのこと悪いわ!…まぁだから実質ソロでやるしかねーんだよ。でもソロだからと言って、それに甘えて攻略で手抜いてる訳じゃねーんだから別にいいだろ。それに、なんだかんだ俺はまだこの世界で数えるほどしかいない『ユニークスキル』の持ち主で、攻略組の重要な戦力なんだからな」

 

(・・・ま、俺も未だにこの世界での「コイツ」の真相は分からないことだらけだけどな…)

 

「・・・それも十分なぐらい他の攻略組への嫌味だと思うゾ?」

 

「大丈夫だ、分かってて言ってる」

 

「なおのこと悪い」

 

 

そう、あのボス戦以来、上条は自分のスキルにある幻想殺しの存在と詳細を情報屋であるアルゴを通じ、全てのプレイヤーに向けて公開した。それ以来、上条は攻撃手段に自身のメインに片手剣ではなく右手を用いるようになった。おかげで今背負っている片手剣はあくまでも「念の為」のほぼお飾り状態になっており、第1層攻略以来、強化もしてなければ新調もしていない。この装備で55層にソロで挑むのはもはやあり得ないとさえ言える

 

 

「で?何か用でもあんのかよ?世間話しなら帰ってくれ。さっきも言ったけどボス戦で疲れてんだよ…まぁ重要な情報が入ったってんなら話は別だが」

 

「あるゾ」

 

「・・・不幸だ」

 

「まぁ、人によっては必ずしも良い情報とは言えないがナ」

 

「? どういう情報だよ?」

 

「スキルの情報だゾ」

 

「あー?スキル?興味ねーよ、帰ってくれ」

 

「いーや、絶対に上やんなら興味を持つゾ」

 

「・・・まさかユニークスキルとか言うんじゃないだろうな?」

 

「ご明察ダ」

 

「・・・マジか」

 

 

このSAOにはソードスキルを始めとした何種類ものスキルが存在する。戦闘系のスキルである盾スキルや索敵スキル。他にも料理スキルや鍛治スキル、挙句の果てには釣りスキルなんて代物もある。だが、それらは誰もが身につけようと思えば身につけることが出来るスキル。これらのスキルの枠組みには当てはまらない、この世界でそのスキルを最初に身につけた「その最初の1人だけ」が扱うことが出来る特別でありこの世界で唯一無二のスキル。それが「ユニークスキル」だ。この世界で彼のスキルとなった「幻想殺し」も大まかにはこのユニークスキルに分類されている

 

 

「上やんの『幻想殺し』、血盟騎士団団長ヒースクリフの『神聖剣』。これまで公にされてたのはこの2つだけだったガ、新しいユニークスキルが1つ見つかったゾ」

 

「新しいユニークスキルね…で?それどういうスキルなんだよ?」

 

「分からなイ」

 

「分かんねーのかよ!帰れ!」

 

「重要なのはむしろ、その新しいユニークスキルの持ち主さ」

 

「誰だよ?勿体振らずに早く話してくれ」

 

「『ラフィンコフィン』、聞いたことくらいはあるだロ?」

 

「 ラフィンコフィン!?あのレッドプレイヤーだらけの殺人ギルドか!?」

 

「そう、その殺人ギルドのラフィンコフィンだゾ」

 

「・・・その名前が出てくるってことは…おい、まさか…」

 

「そう、新しいユニークスキルの持ち主はラフィンコフィンの『リーダー』だと言われている」

 

「・・・ちょっとその話詳しく聞かせろ」

 

「1000コル」

 

「いつの間に値上げしたんだ!?マジで殴るぞ!?」

 

「『その情報をぶち殺す!』っテ?」

 

「幻想だ!!俺の決め台詞バカにしてんのか!?」

 

「決め台詞にしてる自覚はあったのカ…ま、おふざけはこれくらいにして話しを始めようカ…500コル払った後デ」

 

「ほらよ!さっさと話せ!」

 

「まいド」

 


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