とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第21話 一方通行

 

「・・・って訳だ」

 

「なるほど」

 

 

再び時間は戻り、グループの4人が各々の仕事を終え集結し、妙に綺麗に整備されているビルの中で土御門と初春のここまでの経緯を聞いていた

 

 

「改めまして、初春飾利です。どうぞよろしくお願いします。えっと…」

 

「ここまでの経緯ですと…一方通行さんはともかくとして、自分だけがまだ彼女と関わっていませんね。自分の名は海原光貴と言います」

 

「あ、はい。よろしくお願いします、海原さん」

 

「初春飾利さん、でしたね。以前から存じ上げております。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」

 

「?えっ…?あっ、は、はい」

 

「あら、あなたこの子と面識あったの?」

 

「いえ、面識というほどでは。以前から彼女が御坂さんと楽しそうに遊んでいたところを何度もお見かけしていたもので」

 

「・・・あなた生きてて恥ずかしくないのかしら」

 

「あなたに言われたくもないのですが…」

 

「・・・一方通行だ」

 

「あ、アクセラレータ?は、はぁ…よろしくお願いします…」

 

(変わった名前の人だなぁ…すごい白いし…)

 

「さっきも会ったけれど、結標淡希よ。改めてよろしく」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「さて、顔合わせも終わったところで、時間もあまりない。早速本題に移ろう」

 

土御門がそう切り出すと5人の空気ががらりと変わり、息をするのも苦しくなるほどの緊迫した空気になる

 

「初春はここにいる『グループ』の初春を除いた4人の中にいるSAOに送られる誰かの顔を見たいと言った」

 

「はい」

 

 

(・・・チッ、なるほど。アイツが言ってた長旅っつーのはSAOの事だったのか…って事は旅券はあのUSBのデータでパスポートはこの花女っつーことか…面倒くせえことになったな…)

 

 

土御門の言葉から電話の相手が自分に言ってた長旅とはSAOの世界に行くことだと察しをつけた一方通行。面倒くさい事になったと心の中で舌打ちする

 

 

「ではでは、それは一体この中の誰でしょ〜?」

 

「・・・え?」

 

「時間がねェンじゃなかったのかよ…」

 

「まぁまぁ、この先の選択によってはその誰かはしばらくこっちの世界とはおさらばなんだ、少しくらいは余興があってもいいだろ?」

 

「え、えっと…」

 

「さ、誰だと思う?初春」

 

「じゃ、じゃあ…その…海原さん…だと思います」

 

「ファイナルアンサー?」

 

「ふぁ、ふぁいなるあんさー…」

 

「どぅるるるるる!正解は〜〜!!?じゃじゃ〜ん!結標さん!どうぞ!」

 

「せっかくのイケメンを選んだところ申し訳ないけど、正解はそっちの白うさぎよ」

 

「にゃっはっはっは〜!イケメンだって白うさぎだって〜!にゃはははははは!!!」

 

「あははははは…何だかすいません一方通行さん。自分だけが良い思いをしてしまったようで」

 

「・・・死にてェンだなテメエら」

 

「あら?あなたこそ全裸にひん剥かれてから女湯に飛ばされたいのかしら?」

 

「自分としても、御坂さんをこの手で守りたいのは山々なんですが、どうにも今回選ばれたのは一方通行さんみたいなんですよ」

 

「は、はあ…」

 

(なんか、真面目だったり愉快だったり、忙しい人達だなあ…)

 

「まァいい。そこのババア共が言ってるように、どうも俺がSAOに飛ばされる予定らしい」

 

「ババアは余計よ」

 

「一方通行さんが…SAOに…」

 

「あァ。どうなンだァ?テメエが一目見てえって言ったンだろ?実際見てみてどう思ったンですかァ?失望した感じですかァ?」

 

一方通行は敢えて初春を挑発するような口調で語りかける

 

「・・・じゃあ一方通行さん、いくつか質問してもいいですか?」

 

「あァ?」

 

「い・い・で・す・か?」

 

「おやおや、これは見た目に反して中々の精神力の強さをお持ちの女性のようですね」

 

「・・・・・」

 

一方通行の紅い目を真っ直ぐと何かを語りかけるように見つめる初春

 

「・・・チッ、分かったからすンならさっさとしろ」

 

「怖くはないんですか?」

 

「・・・死ぬのがか?」

 

「それも含めてです。一方通行さんはこの現実ではその能力で学園都市最強を名乗っているようですが、これから行くところはゲームです。現実でのあなたの強さは100%は反映されません。それでも怖くないんですか?自分の最大の武器を失った状態で数値で定められた命が0になったら死ぬ場所に行くんですよ?」

 

「はっ、こンなクソッタレな場所に身を置いてる時点で死ぬのなんかいつでも覚悟してる。死ぬことなンざ怖かねェよ。それに俺はそもそも死ぬ気もねェし殺されなンざしねェからな」

 

「そうですか」

 

「もういいだろ、分かったらさっさと…」

 

「まだ終わってません」

 

「まだあンのかよ…さっさとしろ」

 

「あなたは、御坂さんを…御坂さんの事を必ず守ると誓ってくれますか?」

 

「・・・あァ?」

 

「御坂さんの事を誰よりも大切にして、御坂さんの周りの人達にもその責任を取れますか?」

 

「・・・・・」

 

 

一方通行は一旦初春から視線を逸らし土御門に「おい、どういうことだ話が違うぞ」と言った具合の視線を送る。それに対して土御門は両手の手の平を合わせて「スマン、何とかうまいこと話を合わせてくれ!後でちゃんと説明するから!頼む!」と平謝りする感じのジェスチャーで伝える

 

 

「一方通行さん、今は私から目を逸らさないで下さい」

 

初春が真っ直ぐな目で自分に視線を戻すように一方通行に訴える

 

「チッ…ああ…誓ってやるよ、クソッタレ」

 

「本当ですか?」

 

「・・・・・」

 

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『そんなもののためにあの子を殺したのかーーっ!!!!!』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『これが「死」ですか…と…ミサ…カ…は……』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『あなたー!ってミサカはミサカは帰ってきたあなたの胸の中に飛び込んでみる!』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『病院にいる他の妹達個体から聞いたんだけどね、実はお姉様は既にSAOの世界に取り込まれてるらしいの…ってミサカはミサカは自分に出来ることがないか考えながらお姉様を助けたいって心の底から願ってみたり…』

 

 

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一方通行は初春の言葉にかつて自分をこれ以上なく恨んだ御坂美琴本人と、自分がその生涯で初めて命にまで手をかけた御坂美琴の軍用クローンであるミサカ00001号、そして彼女達に似た小さなクローン個体、妹達の上位個体である「打ち止め」を自分の記憶の中で重ね合わせていた。そして一方通行は初春に向き合って言った

 

 

「・・・ああ、誓うさ。元より超電磁砲は俺と同じ加害者と言っても過言じゃねえが、それでもアイツや嫌になるほど多いアイツの関係者にゃ償っても償いきれねェ罪があンだよ。それに、超電磁砲がいなくなるってだけで悲しンじまうクソガキ共がいンだよ。だったら誓ってやるさ。どこのどンな世界だろうと、アイツら全員が光の世界で一片の曇りなく笑っていられる場所を作り上げてやンのが、俺のせめてもの罪滅ぼしなンだよ」

 

「・・・そうですか」

 

「・・・あァ」

 

 

そう言うと一方通行は土御門に目線で「これでいいか?」と伝え、土御門は「あ、ああ、大丈夫だ」と言った具合にぎこちなく頷く

 

 

「土御門さん」

 

「えっ?お、おうどうしたぜよ?」

 

「私決めました」

 

「そ、それはどっちに?」

 

「私は一方通行さんを信頼します。私は一方通行さんをSAOに送り出したいと思います」

 

「えっ!?あ、ああそうか…り、理由を聞いてもいいか?」

 

「私ずっと御坂さんを助けたいって思ってたんです。でも、それは私だけじゃなかったんだって一方通行さんの言葉を聞いていて思ったんです。そして、その言葉を聞いてすごく嬉しかったんです。だから、私は一方通行さんに御坂さんを救ってほしくなりましたし、一方通行さんに頼りたくなったんです」

 

(・・・何が「人をある程度判断できる目は持っているつもり」だ…人の事を信じて疑わねェだけじゃねェか。稀に見る本物のバカだコイツは…そう…コイツは…)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『歯を食いしばれよ最強…俺の最弱は…ちっとばっか響くぞ』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(コイツは…あの時の俺を止めたアイツと…同じだ…)

 

「そう言う事なら初春、早速準備を始めるがいいか?一方通行も」

 

「はいっ!」

 

「上等だ」

 

「よし、みんなついて来い。白状なやつだが、見送りぐらいはしてやろう」

 

「そうですね、行きますか」

 

「あのね、わざわざあなたについて行かなくても私の能力があれば一発なのよ。先に行ってなさい」

 

結標が言い終わると同時に、4人はマンションの今までいたフロアの1つ上のフロアに飛ばされた

 

「あれ?結標さんは来ないんですか?」

 

「アイツは過去に座標の計算をミスって自分の転移に失敗してな。それ以来それがトラウマになって自分の身体を思うように飛ばせないのさ」

 

「あ、そういえば白井さんの時にそんなことを調べた気が…」

 

「おい、お喋りはそこまでにしてやるならとっとと始めやがれ」

 

「あっ!は、はい!」

 


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