とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第18話 死闘の果てに

 

[Congraturations!]

 

 

「終わった……のか?」

 

「あ、ああ…勝った…俺たちが…勝ったんだ…!」

 

 

「「「やったぁぁーーー!!!」」」

 

 

自分達の栄光を告げる表示を見るなり、ボス部屋にいる全員が自分達の勝利に湧き上がった

 

 

「はぁ、はぁ…クッソ…マジでビビった…寿命縮むかと思ったぜ…いやHPは縮んでんのか…笑えねぇ…」

 

「アンタ、お疲れ様。まぁ最後の1発に関しては現実世界のアンタのやってる事と大差ないけど」

 

「美琴!?お前大丈夫なのか!?」

 

「あのね、一応ちゃんとしたゲームなんだからHPが勝手に減るわけないでしょ?ちゃんと回復はしてあるわよ」

 

(やっぱり気のせいなんかじゃない…さっきのキバオウを殴った時みたいな感じはなかったけど、コイツにはコイツ自身の現実の能力がこの世界でスキルとして宿ってる…私と同じで…)

 

「そ、そうか…なら良かった…」

 

「・・・ええ」

 

「よくやったな上やん!」

 

「おおエギル!お前もナイスアシストだったぜ!」

 

「いや、俺のアシストなんて霞んで見えちまうほどの見事な一撃だった。Congraturation.まさか素手で止めをさすとはな…この勝利は、アンタのものだ!」

 

「いや、そんなことないさ…この戦いの勝利は、ここにいるみんなで掴んだものだ」

 

パチパチパチパチパチパチ!!

 

「イェーイ!」「いいぞいいぞー!」「すげぇよ!」

 

 

この戦いを終わらせた上条の一言に拍手が送られ、賞賛の言葉が寄せられる。しかし、そんな中…

 

 

「なんでや!上やんはん!!」

 

「・・・えっ?」

 

 

全員から少し離れた場所に、キバオウを始めとしたディアベルのパーティーメンバーの面々の顔が見えた。そして、その中心にいるキバオウから上条に対しての言葉が向けられる

 

 

「なんで…なんでディアベルはんを見殺しにしたんや…」

 

「み、見殺しって…ち、違う!あれはアイツが自分の意思で俺の回復アイテムを受け取るのを拒んで…!」

 

「ちゃうわ!そういうことを言うてるんやない!!」

 

「・・・えっ?」

 

「なんで、なんで最初っからその右手で戦ってくれなかったんや…」

 

「ッ!!!?」

 

「ワイには分かる!あんはんの右ストレートを一回もろたからな!あんはん本当は元から剣で戦うよりも拳で戦った方が強いんやろ!あのボスの残りHPはとてもソードスキル使うても1発で削り切れるような量やなかった!なのにアンタはその拳1発で削りきった!これが紛れもない証拠や!」

 

「だったら…上やんはんが最初っからその拳でボスと全力尽くして戦ってたら…ディアベルはんはこの戦いで死なずにすんだんとちゃうんか!?」

 

「そうだ…」「言われてみれば確かに…」「なんで…」

 

「ちょ、ちょっと…」

 

「・・・・・」

 

 

キバオウの言葉があまりにも的を射ている為、上条は何も言い返すことが出来なくなって黙り込んでしまう。キバオウの意見に周りも反応してその意見に流されてしまう

 

 

「見損なった…見損なったで上やんはん!ワイはアンタを本物の男やと思うてた!今この瞬間まではな!アンタはただの臆病者や!自分が死ぬのが怖いからわざわざ少ない人数でパーティー組んで取り巻きモンスターの方にわざと逃げた臆病者や!!」

 

「!!!!!」

 

「ちょ、ちょっと!それは違うわよ!そもそもこの2人のパーティーで行こうって提案したのは私の方で…!」

 

「・・・いいんだ美琴…キバオウの言う通りだ」

 

「そんな訳ないわよ!アンタには何一つとして悪いところなんて…!」

 

「この右手とその実力を隠してたのは事実だ。言い出す機会なんていくらでもあったのだって事実だ。最初から全力でやれば、ディアベルがあの時…死なずにすんだのかもしれない。最後までお前と2人きりのパーティーだったのだって、俺がお前を説得出来なかったってのもある。お前が俺なんかを庇ってくれる必要もない」

 

「そ、そんなの…」

 

(そんなの私だって同じよ…!私だって誰にも…アンタにでさえも能力を隠してたのよ!なんでそんなに自分だけを責めるのよ!アンタはいつだってそうじゃない!周りの人を助けることばっかり先に考えて、自分のことはいつも二の次じゃない!たまには自分のことだけを考えたっていいじゃない…!)

 

「ああ、認めるよキバオウ。俺は確かに剣で戦うより、素手で戦った方がずっと強い。そういうスキルを持ってることも下らない価値観でこれまでずっと隠してきた」

 

「!!!やっと白状しよったな…!こんのプレイヤーの面汚しが!何が『この戦いの勝利はみんなで掴んだものだ』や!白々しいにもほどってもんがあるわ!」

 

「ッ!このッ!アンタいい加減にしないと…!」

 

「やめろ美琴」

 

「嫌よ!だってコイツが…!」

 

「やめろっつってんだ!!!」

 

「!!!!!」

 

 

上条は美琴に向けて怒鳴った後、右手を振り下ろしメニューを開いた。そしてウインドウを操作し美琴とのパーティーを解散させる。すると美琴の前にもそれを知らせるウィンドウが目の前に表示された

 

 

「・・・!? ぱっ…パーティー解散って…!!アンタ!こ、これから先はどうすんのよ!?」

 

「心配すんな、1人で気ままにやっていくさ」

 

「ひ、1人でって…!ふざけて言ってんの!?このゲームをソロでプレイすることがどれだけ危険か分かってるの!?HPが0になったら死ぬのよ!?例え途中までソロでやれてたとしても、ソロプレイには絶対的な限界がある!それにアンタはソロで良くても、このままじゃ私までソロになっちゃうじゃない!お断りよそんなの!」

 

「・・・すまん美琴。それでも今の俺には、ここにいるみんなと一緒に戦う資格なんかないんだ…」

 

「や、やだ……やだ……」

 

 

上条の悲痛な声を聞き、彼の暗い表情を見ていた美琴の目からは涙が溢れ始める。その涙を見てもなお、上条の意志が変わることはない

 

 

「でも、お前は違う。お前までこの先ソロでやる必要はないさ。新しい人達とパーティーを組めばいい。お前は強い、それにお転婆でワガママだけど、なんだかんだ言って可愛いとこもあるからな。お前を仲間にしたがるパーティーは少なからずはいるはずだ」

 

「行かないで…!行かないで!!」

 

「今まで世話になったな美琴。じゃあな。この先、もしもお互い死んでなかったらまたどっかで会おうぜ」

 

 

そう言い残し上条当麻は御坂美琴に背を向け、第2層へと続く扉の闇に消えていった

 

 


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