とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第17話 新メンバー

『今回はやりすぎましたね』

 

「・・・ちっ、またオマエか」

 

『まぁ、ああなったあなたを止められる人はこの都市には数えるほどしかいませんからね。例えば身内とか。その身内も、今回はなぜか止めに入れなかったようですが・・・』

 

「ンなこと知るか、ああなったら大半の意識は他には行かねェ、目に見えてたのはあのムカつくメルヘン野郎だけだ」

 

 

学園都市最強のレベル5である一方通行は今、救急車の中で傷の手当てを受けていた。しかし、本物の救急車ではない。この車は病院には行かない。そういう所とは違う場所に運ばれるのだ。傷の手当ては全て医療機器が行うため、電話を誰かに盗み聞きされることもないので、一方通行は傷の手当てを受けながら携帯電話で統括理事直轄の暗部に精通する上司と電話をしていた。

 

 

『・・・分かっていますよね?』

 

「チッ」

 

 

しかし、なぜ彼がここまでの傷を負いその手当てを受けているかと言えば、先ほどまで学園都市最強の彼に続く順位をもつ垣根帝督との戦闘が原因である。垣根は一方通行の反射を自身の能力である「未元物質」を駆使し無効化してきたのだ。そうなれば一方通行には彼の攻撃を防ぐ手立てはない。幾つもの傷を負い苦戦を強いられた。しかし最後には切り札である「黒い翼」を使い、戦いの中でその力を覚醒させ更にパワーアップした垣根の実力をも遥かに凌駕し、垣根を文字通り叩き潰した。しかし、その代償として学園都市の一区画をほぼ破壊し尽くした

 

 

「分かった」

 

 

電話の相手の言い分を舌打ちしながら聞き入れる一方通行

 

 

『こちらとしても考えはしたのですが、結果としてあなたは目先の事に囚われすぎて本来の目的であるデータの奪取を達成し得なかった。しかし、垣根帝督の居場所に関する情報を教えて任務を与えたのは私ですし、もう少し与えられた情報を上手く活用してほしいものです』

 

「あァ?何言ってンだ?USBの奪取になら成功してンだろうが、結標があの時に能力で…」

 

『私が任務を命じたのはあなただけです。その話の限りでは任務を達成し得たのは『グループ』という事になりますが?』

 

「ちっ、屁理屈じゃねェか…」

 

相手の言い分に舌打ちして頭を抱える一方通行

 

「でェ?そのペナルティは?」

 

『単なる借金ではもうあなたに実感は湧かないでしょうし、処分するには惜しい人材でもあります。ですので、今回はこちらが手配する少々の長旅に出てもらいます』

 

「長旅だァ?ケッ、オマエらはいつから旅行会社まで経営するようになったンだオイ」

 

『到着地にもう既に旅券とパスポートは送ってありますので、あなたは直に新しい世界へ旅立つことになります』

 

「あァ?そりゃ一体どういう意味で…」

 

『では、良き旅を…』

 

プツッ…ツー…ツー

 

「チッ…おい!オイ!…クソが、切りやがった…」

 

 

電話の相手は何の前触れもなく突然電話を切る。一方通行はその電話の相手の態度にイラつきながらも、電話が終了していることを画面で確認すると携帯電話を閉じた

 

 

(新しい世界だァ…?連中また何か企ンでやがるな…どうにも面倒くせェペナルティをもらっちまったなァ…)

 

 

一方通行がそんなことを考えていると不意に車が止まる。どうやら目的地とやらに着いたようだ。傷を手当てしていた医療機器も役目を終え、アームや器具を折りたたんで収納されていった

 

 

「着いたみてェだな…さて、行くか…」

 

 

一方通行は救急車のベッドから起き上がり杖をつきながら車を降りる。外に出るとそこは学園都市の裏路地にあるとあるビルの前だった。しかし、暗部などが好んで使うような廃ビルではない。むしろ、裏路地にあるのが場違いなほどに見えるくらいに丁寧に整備されているビルだった

 

 

「ヤケに設備の良い場所だな…本当にここで合ってンのか?」

 

 

そう言いながらビルの前に立つ一方通行。ビルの自動ドアが開き、これまた綺麗なオフィスが見えた。一方通行はゆっくりとビルに入った。

 

 

「・・・誰もいねェのか?」

 

ピーン!

 

 

あまりにも静かすぎる為かそんな思考が一方通行の頭の中をよぎる。しかし、そんな思考を遮るかのように、右手のエレベーターが到着した合図である電子音を鳴らす。するとそのエレベーターからよく知るようであまり知らない人間が三人出てきた

 

 

「よう。お疲れさん」

 

「・・・何でオマエらまでここにいンだよ」

 

「私たちも詳しい訳は知らされてないわ、これでまた仕事の話なら正直もう帰りたいわ」

 

「自分も気になって土御門さんに聞いては見たのですが、『仕事の話でもあるが仕事だと断言はできない』なんて事を言っていて…ここに集められた真相は土御門さんしか認知していない状況です」

 

 

エレベーターから出てきたのは暗部組織『グループ』のメンバー、土御門元春と結標淡希、海原光貴の3人だった

 

 

「そういう事ならさっさと要件を話せ土御門。こちとらこの後に旅客機をチャーターされてンだ」

 

「まぁまぁ、みんな一旦落ち着け。とりあえず任務ご苦労だった。まぁ一方通行に関してはスマンなかったな。結果的に手柄のほとんどを横取りすることになって」

 

「自覚があンならなおのこと悪いがな。特にテメエの場合は」

 

「まぁ、おかげでいくつもの暗部組織が血眼になって探していた茅場晶彦は逃したが、本筋の目的であったデータの入手には成功した。だが問題がまだ1つ残っている」

 

「・・・問題ですか?」

 

「ああ、データを手に入れたはいいが、ウチの組織にはこういったデータの解析、実行…まぁ平たく言えばデータや電子機器系統を扱えるプロフェッショナルがいない。このままじゃこのデータは俺たちが持っていたとしても猫に小判、豚に真珠だ」

 

「まぁ確かに言われてみればその通りね。私たちは所詮その後の事を考えずに仕事としてそのデータを回収しただけだし」

 

「そこで、今回はその為のバイト…もとい協力者を雇った」

 

「協力者ですか?」

 

「ああ…入ってきてくれ!」

 

ガチャ…

 

 

土御門が声をかけるとビルの一室から1人の中学生ぐらいの少女が出てきた

 

 

「あァ?…テメエ確か…」

 

「あら、バイトってあなたの事だったのね」

 

「既に顔見知りが何人かいるみたいだが、改めて紹介しよう。非正規構成員ではあるが、俺たちの新しい仲間になった『初春飾利』だ」

 


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