とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第16話 死闘

 

「グオオオオオォォォッッッ!!」

 

「む、無理だ…最初っからこんな…こんなヤツに勝てるはずなんかなかったんだ!」

 

「い、嫌だぁっ!俺は死にたくねぇっ!!俺は死にたくねぇんだ!だ、誰かアイツを倒してくれ!!」

 

「わ、私にはまだ5歳の可愛い娘がいるんだ!!こんなところで死ぬわけにはいかないんだ!誰か…誰か頼むぅぅっ!!」

 

「ちょっ!ちょっとみんな落ち着きなさいよ!まだ勝負は終わってないのよ!?勝手に諦めて絶望してんじゃないよ!!」

 

 

ディアベルというここの全員のリーダーの「死」が皆に与える影響は想像以上に強かった。だがそれはディアベルでなくても同じだったのかもしれない。目の前で見る自分以外の誰か「死」はより明確な恐怖を与える。次に死ぬのは誰か…次は自分の番かもしれないという目には見えぬ恐怖がより一層人々を困惑させるのだ。だが、そんな死の恐怖に怯える人の中で、この少年だけは違っていた。そう、誰よりも近くでディアベルの死を見ていた上条当麻だけは…

 

 

「・・・・・」

 

(『頼む、このゲームを…必ずクリアしてくれ…!』)

 

「・・・ちゃんと受け取ったぜ、ディアベル…お前の想いを…願いを…お前の…『命』をっ!!任せろ…こんなふざけたゲームはいつか必ず終わりにしてやる!!」

 

 

そう言って上条は立ち上がる。怯えることなく、絶望せず、その胸に「必ずこのゲームを終わらせる」という確かな意志を持って

 

 

「アンタならそう言うと思ってたわよ」

 

「美琴…」

 

「アンタ1人で倒せんの?私の力があった方が良いんじゃない?さっきの取り巻きで大半のヤツに止めさしたの私の方でしょ?」

 

「・・・ああ、助かる」

 

「おいおい、俺にも手柄を残してといくれよ?」

 

立ち上がった上条の隣に美琴とエギルが左右に並んで立つ

 

「エギル…ありがとな!それじゃあ行くぞ2人とも!!」

 

「アンタこそ!しくじって私達の足引っ張るんじゃないわよっ!!」

 

「おうっ!!」

 

「グオオオオオォォォッッッ!!」

 

「どりゃああああっ!」

 

ギリギリギリギリッ!!

 

ボスが振り下ろす刀と上条の剣がぶつかり合い、つばぜり合いになる

 

「重ッ…すぎる…!」

 

「『リニアー』!!」

 

 

美琴が上条とボスの間に割って入り、ソードスキルの力を得たレイピアの突き技でボスの刀を弾き飛ばした

 

 

「グオオッ!?」

 

「美琴ッ!?」

 

「ボスの攻撃は思ったよりも強い!2人じゃなきゃ受け切れない!2人ずつでローテーションして戦うわよ!」

 

「お、おう分かった!」

 

「グオオオオオッッッ!!」

 

「次右来るぞ!パリング!」

 

「はあああっっ!!」

 

「エギル!スイッチ!!」

 

「任せろ!!オラァァァッッッ!!」

 

 

エギルのソードスキルがボスに炸裂しHPゲージを減らす

 

 

「よしっ!いいぞっ!!」

 

「ギギィィィィ!!」

 

「!?まずいっ!もう取り巻きが湧いてる!!」

 

 

気づけばボスの相手をしていた3人の周りには、先ほど倒していたボスの取り巻きモンスターが3体もポップしていた、万事休すかと思ったその時

 

 

「そいつらは任せろおおおぉぉっ!」

 

「うおおおおおおぉぉっ!!」

 

「ギギィィィィ!!」

 

「み、みんな!?」

 

 

先ほどまで怯えきっていたプレイヤー達が3人を援護するように取り巻きモンスターの前に割り込み元々組んでいたパーティーで戦闘を始める

 

 

「センチネルは俺たちに任せろ!お前たちはアイツを頼む!」

 

「分かった!助かる!」

 

「アンタ!今の内に回復しときなさい!2人ずつでローテーションするから今はエギルさんと私で…!」

 

「グオオオオオォォォッッ!!」

 

「!?マズイッ!ミコト!余所見するな!攻撃来るぞ!!」

 

「えっ!?しまっt…!?きゃあああああああああああ!!!」

 

ズバアアアァァァン!!

 

「美琴ー!!大丈夫かー!?」

 

「あっ!…ぐっ…」

 

 

ボスの一撃が美琴を完璧に捉えた。美琴に赤い切り傷が入りHPゲージがみるみる減るが、0になるすんでの所で止まる

 

 

「ッ!大丈夫だエギル!まだ美琴のHPは残ってる!!」

 

「!!よしっ!オラァ!バケモノ!今度は俺が相手だ!これ以上ミコトに傷はつけさせねぇぞ!!」

 

「グオオオオオォォ!!」

 

「どわっ!?クソッ!!」

 

「エギル!!」

 

「エギルさん!」

 

 

ボスの刀とエギルの斧がぶつかり合うが、エギルの力が負けてしまい押し返されてしまう

 

 

(くそぉっ!どうする!?今のボスのHPを見る限り、俺の右手のパワーなら異能うんぬんじゃなく普通に1発ぶん殴れば止めをさせる!でもそれだとどうしてもリーチと隙がねぇと…!)

 

「グオオオオオォォォッッ!!」

 

上条がボスに目をやると、ボスの刀は今にもエギルに斬りかかろうとしていた

 

「クソッ!!迷ってる暇なんかねぇ!!」

 

 

そう自分を鼓舞すると上条は自分が持っていた剣を背中の鞘にしまい、ボスに向かって一直線に走り出す

 

 

「エギル!1回でいい!なんとかボスの攻撃をパリングしてくれ!」

 

「!?わ、分かった!おっしゃ任せとけ!!」

 

「あ、アンタ一体何する気!?」

 

「そこで見てりゃあ分かるよ!」

 

「喰らいやがれ!パリングなんかに使うのは勿体ねえが、これが今の俺の最高の、ソードスキルだあああぁぁぁっ!!」

 

ガキイィィィィン!!

 

 

エギルはソードスキルを使い緑色に光り輝いた斧をアッパーカットのように振り上げ、斬りかかってくるボスの刀を思い切り弾き上げ、ボスも思わずその巨体の体勢を崩した

 

 

「オオオオォォッッ!?」

 

「いいぞエギル!スイッチ!」

 

「おうっ!…ッ!?お、おい上やん!お前素手なんかで何を!?」

 

「どりゃあああぁぁっ!!」

 

 

エギルの疑問には答えずに上条はエギルと場所を入れ替わりボスの目の前に出ると、右足で踏み切り、一回り以上は大きいであろうボスの顔の目の前までジャンプした

 

 

「・・・今もどっかで見てんだろ、だったらその目を開いてよく見とけよ茅場晶彦…お前はこんな世界を作ってさぞご満悦かもしれねぇがな…こんなゲームまで使ってなお…人の命を弄ぼうってんなら…」

 

「そんなふざけた幻想は!この右手でぶち殺す!!」

 

ドガァァァッッッ!!!!!

 

「グオアアアアァァァッッッ!?」

 

ガシャアアアァァァン!!!!!

 

 

[Congraturations!]

 

 

上条の右拳がボスの顔面に炸裂した瞬間、ボスのHPを全て残さず削り切り、まるで断末魔のような叫びを上げ、ボスモンスターはまばゆい光を放ち、 光の結晶となって爆散する。そして上条達の目の前に、彼らの勝利を讃えるテキストが現れた

 


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