とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

13 / 75
第11話 説教

 

「ッ!?あぁん!?誰や!?今『ふざけんな』って文句言ったヤツ!」

 

 

上条はどういう訳かキバオウの意見が気に食わず、思わず小声で喧嘩腰の言葉を口にしてしまっていた

 

 

「ちょ、ちょっとアンタどうすんのよ!あのキバオウって人に聞こえちゃってるじゃない!」

 

「おぉい!出てこいやぁ!今文句言うたヤツ!どうせβ上がりのクソ野郎に決まってんやで!」

 

「言われなくたってこっちから出て行ってやるよ!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「美琴、お前はここでちょっと待ってろ」

 

 

そう言うと上条は一段一段ゆっくりと階段を降り、キバオウの正面に立った

 

 

「おいコラ!そこのツンツン頭!この期に及んでこないなとこに女連れで来とるとはええ度胸やないか!」

 

「今アイツは関係ねぇだろ!それに俺は女連れじゃなくてむしろアイツに連れて来られてんだ!そこんとこ勘違いしてんじゃねぇ!!」

 

(あ、アイツ…!後で覚えときなさいよ…!!)

 

「今はそんなことどうでもええんや!ワイが言いたいんは!ワイの意見のどこに文句があるかって聞いとるんや!どうせおのれもβテスターなんやろ!さっきのワイの意見に反発するってことは絶対そうに決まっとる!」

 

「ふざっけんなよ!意見だけで人を判断してんじゃねぇ!俺はβテスターなんかじゃねぇしバリバリのオンラインゲーム初心者なんだよ!」

 

「な、なんやと!?」

 

「さっきから黙って聞いてりゃβテスターがどうの、βテスターから詫びを入れられなきゃ納得出来ねぇし、パーティーとして命を預かれないって…お前はそんなんで恥ずかしくないのかよ!!」

 

「そ、そんなんやとぉ!?」

 

(あーあ、始まった…アイツの説教が…)

 

「なんでそうやって歪み合うんだよ!先に始めたとか、後から始めたとか、熟練者とか初心者とか関係ないだろ!みんな同じ仲間じゃねぇか!ここにいるみんなは!いつかこの世界から生きて帰るって志の下にここに集まってんだよ!」

 

「な、なんや!だったらワイらとβ上がりのヤツらとの差は仕方ないっちゅーんか!アイツらはそもそも自分自身がよけりゃそれでいいって思っとってなぁ…!」

 

「生きることに必死になっちゃダメなのかよ!死にたくないのは誰だって同じだろ!今までに死んでいった2000人だってそれは同じじゃないのかよ!死にたくないから、この世界から生きて帰りたいから、自分の力でなんとかしたいって思ったから始まりの街から出てモンスターと戦ったんだろ!だったらその意思にはβテスターも何もないはずだ!!」

 

「そ、それは…」

 

「その思いがあったからこそ!今ここにこれだけの人が集まってるんだ!それを考えるなら、今ここで1番自分勝手なのは他の誰でもない!お前だろキバオウ!お前がさっきから言ってることは、人が生きたいと願って苦労して集めたものを横から奪い取ってまで自分の安全を確保したいって言ってるのと同じなんだよ!そんなのは間違ってんだよ!ここにいるみんなに対して一番失礼なのはお前なんだよ!」

 

「…………」

 

「お前はそれでいいのか!?今ここで仮にβテスターからアイテムやら金をもらえたとして、それが原因でこの先その人が死にそうになったらお前はなんの罪悪感もなくその人を見殺しに出来るのか!?俺にはそんなこと絶対に出来ない!だったら俺はそんな物もらってもちっとも嬉しくなんか…!」

 

「おい、もうその辺にしといてやれ」

 

「ない!!それに……えっ…?」

 

 

キバオウに向かって熱烈な説教を続ける上条の肩に手を置き彼に静止を促したのは、背中に斧を背負った屈強な体格をしている外人顔の黒人であった

 

 

「落ち着いて目の前のトゲトゲ頭を見てみろ。もうお前に返す言葉もなくなってるぞ」

 

「・・・・・」

 

「あっ、そうなのか…すまん、いつもならこうなった時、絶対最後にぶん殴るからイマイチ止めどころが分からなくてな…」

 

「そ、それもそれでどうかと思うがな…まぁ周りを見てみろよ、少なくともお前の言葉を聞いてたヤツは全員お前の意見に賛成のようだぜ?」

 

「・・・へンッ!」

 

 

その場の雰囲気を察するとキバオウはいたたまれなくなったのか、鼻息を荒く吹いて上条から顔を逸らすとヘソを曲げた子どものように最前列の席に座り込んだ

 

 

「さっ、お前も戻れ。やっとこの攻略会議の本題が始まるぞ」

 

「そうだな、サンキュー。えっと…」

 

「エギルでいい。お前には興味が湧いた。会議が終わったらまた話そう」

 

「そうか、ありがとなエギル。また後で会おうぜ!」

 

 

そう言うと上条とエギルは自席に戻り腰を降ろした

 

 

「よし!じゃあ再開していいかな?」

 

 

ディアベルが問いかけると会場の皆が頷くなどして各々が了解のリアクションを示す

 

 

「街の道具屋で配布されていた最新版のガイドブックによると、第1層のボスの名前は『イルファング・ザ・コボルド・ロード』というモンスターだ。それと、『ルイン・コボルド・センチネル』という取り巻きモンスターがいることも事前に判明している」

 

「ボスの武器は斧とバックラー、4段あるHPゲージの最後の1段のゲージが赤くなると、曲刀カテゴリの『タルワール』という武器に持ち替え、攻撃のパターンが変わる。ということだ!」

 

「攻略会議は以上だ!最後に、アイテム分配についてだが、金は全員で自動的に均等に割る。経験値は、モンスターを倒したパーティーの物。アイテムはゲットした人の物とする。異存はないかな?」

 

 

ディアベルの言葉に異を唱える者はおらず、みんなの目からは肯定の意が見て取れる

 

 

「よし!ではそれぞれの準備もあるだろうから、出発は今から1時間半後の10時30分とする!では、解散!」

 

 

その言葉を最後に攻略会議は終わり、プレイヤーは各々の準備を整える為にその場を後にした

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。