「なんか…割と少なくないか?攻略会議に出る人」
「どうかしらね…昨日アンタも言ってたように多いか少ないかなんてのはその人の感覚次第よ。でも例え何人で戦うことになろうと、私達はやるしかないのよ」
「・・・それもそうか」
昨日アルゴから聞いた情報を頼りに上条当麻と御坂美琴は「トールバーナ」まで足を運んでいた。SAOが開始されてから1ヶ月が経ち、その間に実に約2000人のプレイヤーが死亡した。だが、まだ誰も第1層を突破できていない。このゲームを1度プレイしていたたはずのβテスターでさえ、昨日まではボス部屋を発見出来ずにいた。しかし、ボス部屋の発見をもってようやく今日「第1層ボス攻略会議」が行われようとしていた
「じゃ、この辺に座っとく?」
「そうだな。よっこらせ…っと」
半円形の遺跡のような建物に来た2人は周りから少し距離を置いて座席に腰かけた
「はーーーい!!それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーーす!!」
2人が座ったすぐ後、1番前で手を叩き大きな声を出し、ここ一帯の注目を集める人物が1人いた。背は高く、青いロングヘアーの髪をしていて、盾と剣を背負っている
「今日は!俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!」
「じゃあまずは簡単な自己紹介から。俺の名はディアベル!職業は気持ち的に、ナイトやってます!」
「ははははっ!ジョブシステムなんてねーだろー!」
そんな軽い冗談を挟みながら攻略会議を始めたディアベルだったが、その笑顔は徐々に薄れていき、真剣な面持ちになり話し始めた
「…昨日、俺たちのパーティーがあの塔の最上階で、ボスの部屋を発見した!」
「「「!!!!!」」」
ディアベルの一言に周囲のプレイヤーもその顔色を変える
「俺たちはボスを倒し、この第2層に到達して、このデスゲームをいつか必ずクリア出来るってことを始まりの街で待っているみんなに伝えなくちゃあならない!それが!今この場所にいる俺たちの義務なんだ!そうだろ!?みんな!!」
「・・・・・」
パチパチパチパチ!!
ディアベルの演説の言葉に、上条当麻は無言で頷く。周りからはディアベルに対する拍手が起こる
「OK!それじゃあ早速だけど、攻略会議を始めさせてもらおうと思う!まずは6人の『パーティー』を組んでみてくれ!」
「パ、パーティー?」
「ほら、静かにしとく。よく聞こえないでしょ」
「フロアボスは単なるパーティーじゃ対抗出来ない。パーティーを束ねた『レイド』を作るんだ!」
「ど、どうする美琴?ここにいるみんな攻略会議と称した『メイドパーティー』を始めるみたいだぞ?」
「あ、アンタねぇ…はぁぁ…違うわよ。ここで言う『パーティー』ってのは、いわゆるグループみたいなものを指す言葉なのよ。で、メイドじゃなくて『レイド』よ。レイドって言うのはそのパーティーを集めた、例えるならパーティーという車両をいくつも連結させた列車みたいなものよ」
「な、なるほど…分かりやすい…」
「てかそもそも、アンタはもう私と出会ってすぐにパーティー申請してとっくにパーティー組んでんでしょうが」
「え、そうなのか?知らなかった…」
「アンタね…ちゃんとウィンドウ見てから操作しなさいよ…その内変な条件飲まされて大損しても知らないわよ?」
「か、返す言葉もございません…」
「まぁいいわ、6人でパーティー組めって言われてるけど、私たちは2人で十分。むしろ他がいると気を使って逆に動きづらいわ」
「え?いいのか?確かに俺らなら今までずっと2人でやってきたからコンビネーションは抜群だけど、やっぱり人数は多い方が有利じゃないか?」
「いいのよ。私たち2人を含めればここにいる全員の人数は44人。私たちを差し引いたら42人。そしたら丁度他の全員が6で割り切れるでしょ。だったら別に2人のパーティーが出てきても誰も文句は言われないでしょ?」
「じ、じゃあそれでいいか…」
「よぉーし!そろそろ組み終わったかなー?」
ディアベルが全体の雰囲気を見計らい、パーティーが組めたかどうかを周囲に確認する
「じゃあ!これから…」
「ちょっと待ってんかー!?」
「えっ?な、何だぁ?」
急に背後からなにやら関西弁の叫び声が聞こえた。その声の発せられた方向へ上条を含めた全員が振り向いた
「ほっ、ふっ、よっ、てっ、せやっ、でぇい!よっと!ふぅ…」
会議場の階段を一段一段声を出しながら飛び降り、茶髪のトゲトゲ頭の男がディアベルの少し斜め前に降り立った
「ワイはキバオウってモンや、ボスと戦う前に、一つ言わせてもらいたいことがある。こん中に!今まで死んでいった2000人に詫び入れなアカンやつがおるはずや!!」
キバオウと名乗る男の言葉に攻略会議に参加する面々の顔が曇り、会場はざわつき始める
(な、なんだ…?死んでいった2000人に謝らなきゃいけない人って…一体誰が?どんな理由で…)
「キバオウさん、君の言う『ヤツら』とはつまり、元βテスター達の人のこと…かな?」
キバオウの言葉に対し、ディアベルが発言し、その疑問の解を問う
「そや!決まってるやないか!β上がりのヤツらは、このゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよったやないか!ヤツらは美味い狩場やら、ボロいクエストを1人占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もず〜っと知らんぷりや」
「こん中にもおるはずやで!β上がりのヤツらが!」
「そいつらに土下座さして!溜め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」
キバオウの演説が終わると、攻略会議の面々はどこかバツが悪そうな顔色を浮かべるも、何も言いだすことは出来ずにいた。しかし、そんな中…
「ふざけんなよ……」
重苦しい声でそんな言葉を呟いた黒髪のツンツン頭の男がいた