騎士王さんとアーチャーの話   作:ミドリムシ師

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なかなかエミヤさんが出ませんね…申し訳ないです
次回はちゃんと登場するので暫しお待ちを。




嘗ての記憶と今の日常 2

「あれは、シロウの…」

 

 

 

そう、セイバーはあの夢の正体を知っている

 

 

マスターである衛宮士郎の凄惨な過去であり、まさにエミヤシロウが誕生した地獄。

 

 

自分という何者にも変え難い天秤を無くし、誰かを助ける為には己がどうなっても構わない。彼のその歪とも言える生き方を決定付けた事件。

 

 

セイバー自身もその在り方を目の当たりにし、何度もマスターと口論になりぶつかり合った

 

 

 

 

ーーけれど、セイバーはそれを尊いと思った

 

自らの信念に誓いを立て、どんな困難が訪れようと決して折れず、曲がらず立ち向かう剣の様な在り方に胸を打たれた。

 

セイバーだけではない

その優しさに多くの人が救われているのだ

 

 

 

 

「…しかし、何故今になって彼の夢をーー」

 

 

見たのだろうかと考えて妙な悪寒がした

 

いつもとは何かが違う朝。体が熱い。まるで死の淵に立っている様に鼓動が速まっていく。それに先ほどから込み上げてくる吐き気は何処かで感じたことがあるようなーーーー

 

汗を拭い、一体何が起こっているのだろうと思考を巡らせると

 

 

 

 

 

ぐうぅぅぅ

 

と獲物を探す獅子のように力強く、なんとなく虚しい音が部屋に響いた

 

 

「ーーーーーーあ」

 

 

そう、いつもなら衛宮士郎が朝食の支度を始め、良い香りが気持ちの良い目覚めをもたらしてくれるのだがそれが無い

 

それどころか襖を隔てた隣の部屋からマスターの気配を感じている。

 

 

 

ーーーーもしや、昨日の鍛錬が響いているのでしょうか…

 

 

思わぬ型で食欲に助けられた事も含め、顔をひきつらせるセイバーには一つ思い当たる節があった

 

 

 

 

ーーー聖杯戦争が終わった後も、士郎はセイバーに手合わせをお願いしていた

 

 

そして昨夜、日々強くなる士郎との試合が盛り上がり、つい力が入った一撃がマスターをダウンさせてしまった

 

 

その時はなんとか回復していたが、もしかしたらダメージがまだ残っているのかもしれない

 

 

「ーーーーシロウ、起きてますか」

 

襖越しに話しかけてみたが返事は無かった

 

 

 

 

「ーーーーーーーシロウ?」

 

 

 

意を決し、襖を開けると

そこには

 

 

 

 

 

「ーーーーッ!?ーーーシロウッ!!」

 

 

 

 

全身を剣で貫かれ、血の海に沈んだ少年の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー以下オマケーーーーー

 

ここは道場

 

年端もいかぬ若い男女が、竹刀を手に打ち合っている

 

 

…文面だけを見るとまるで少年が少女に稽古をつけている様にも思えるが、そんな甘い青春が繰り広げられているわけではない

 

 

 

少年の振るう竹刀は空気を切り裂き、遠に常人の認識を超える速さと鋭さで振るわれていた。

それをいなす少女の太刀筋は音速を越えんばかりの速さと精密さ、正面から軽々と少年の全力の一刀を受け止める力強さがあった

 

 

 

「よくよく私の動きを研究している様ですが、決して戦い方は一つだけではありません。闘いの中では常に想定外を考え、柔軟に動けなければいけませんよ」

 

清流の様な落ち着いた声が金彩の少女から発せられる

 

その手にある竹刀の先端は少年の喉を捉えていた

 

「参ったな…今のは自信があったんだけど…セイバーにはまだまだ一本取れそうに無いよ」

 

息を切らし、全身から汗を流す少年が残念そうに答える

 

 

「当然です!全く、シロウはサーヴァントを甘く見過ぎなのです!…ですが、日々確実に動きは良くなっています。今はまだ実戦が圧倒的に足りませんが、経験を重ねればいずれ彼に近づけるかもしれません」

 

その言葉に少年の顔付きが変わった

 

「そう、か…そうだな。よし、最後にもう一本お願いできるか、セイバー」

 

 

「はい、もちろん!」

 

ーーー彼とは無論アーチャーのことである

 

 

 

 

 

士郎との稽古のレベルは非常に高いものだ

 

出会った頃とは比べ物にならぬほど戦士として力を付けている士郎を鍛えるのは、教える側のセイバーとしても楽しく、喜ばしいものだった

 

 

 

あの頼りなかった少年が、サーヴァントであるセイバーと、本気では無いとはいえまともに打ち合えているのだ

 

 

…だから、つい竹刀を握る手に力が入ってしまった

 

 

バチコーンッ!!

と綺麗に弧を描き、カウンター気味にマスターの顔面に吸い込まれていったソレは、その衝撃に耐えきれず根元から折れた。

ついでに士郎も膝から折れた。

 

 

 

「ーーーーも、申し訳ございませんシロウ!怪我はありませんか!?」

 

無いわけなかった

 

 

当の本人は額に汗を滲ませ、なんとか笑顔を作り

「…大丈夫だよセイバー、星が…星が見えたんだスター…」

 

意味不明な言葉を残しダウンしてしまった

 

 

…自らの手によって沈めてしまったマスターを介抱するセイバーの困り果てた後ろ姿は哀愁に満ちていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっくっく、未熟者め…」

大人気ない誰かはその様子を隠れ見て、大いに笑っていた




オマケはここに入れたかったのですが文字数の関係で本文中に入れる羽目に…
見づらくて申し訳ないです

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