ワン・フォー・ワン《独りは一人のために》   作:亡き不死鳥

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書き始め特有の更新率。


パトロール

ヒーローの仕事は多岐に渡る。

災害救助だったりヴィラン退治だったり。迷子の保護もあれば個性の無断使用者を拘束、注意喚起したりもする。後ろ二つは警察の仕事な気もするがヒーローも行なっていることだ。仕事の範囲内だろう。うわっ、ヒーローの仕事多過ぎっ!?

そしてそれに加えてヴィランの退治がある以上救援を待つだけではヒーローは務まらない。何故ならヒーローは他にも大勢いるので応援要請がきてから駆けつけても大抵先に逮捕されているからだ。

社会貢献度を給料として計られている以上地域のパトロールはヒーローの必須業務といえる。オールマイトなんかほぼ毎日パトロールしているほどだ。その先々で人を助けているといえば聞こえはいいが、救助に伴い報告書作成の義務が発生する。よって俺の仕事がその度に増えるのだ。

しかもその一つ一つが審査の対象になるので手を抜くわけにもいかない。俺の給料にも響くし。

 

 

「毎度思うが俺いらないんじゃね?」

 

「何をいうかね。パトロールはヒーローの基本!基本無くして仕事は務まらないぞ!」

 

「報告書もヒーローの基本だから身につけてほしいんだが」

 

「……。さあ今日も元気にレッツパトロール!」

 

 

誤魔化しやがった。

まあ兎にも角にも一応とはいえ俺もヒーローの資格をとっている以上パトロールは職務範囲内となる。普段は書類仕事ばかりだが、個人としての成果も僅かに上げておかなければ国に活動停止状態扱いされて免許を停止させられてしまうのだ。なので月に何度か不定期にオールマイトと共に様々な場所に赴いている。

輝かしいヒーローといっても所詮は仕事人。世知辛い現実は正直知りたくなかったです。

 

 

「んで、今日はどこらへんに行くんだ?」

 

「そうさなぁ、今日は電車でも使おうか。止まる駅は……適当に16個目あたりで!」

 

「どっち方面にだよ…。えーと田等院駅、出巣星駅、南部駅のどれかだな。どれにする?」

 

「ふむ、なら田等院にしよう!さあ準備したまえ!」

 

「財布くらいしか持つもんないからすぐ行けるぞ」

 

「たまにはコスチューム着たらいいのに。カッコいいんだから」

 

「そのうち気が向いたらな」

 

 

余談だがオールマイトは世間から『平和の象徴』と謳われている。オールマイトの登場以降、個性発現によるヴィラン発生率は年々低下し、存在そのものが抑止力とされている存在だ。

それ故にマスメディアはオールマイトのことを片っ端から取り上げて、様々な情報を世間に流している。そのうちの一つにオールマイトの事務所の所在地があるのだが、そんな抑止力が存在している町にヴィランなど到底出るはずもなく、俺たちのパトロールは他の町への出張がメインとなる。

当然毎日ヴィランが発生するわけでもなく無駄足になることも多いのだが、交通費はオールマイト持ちで飯も経費で落ちる。書類仕事よりはストレス溜まらないし、知らない街というのは新鮮だ。

面倒ではあるが嫌いではない。それがパトロールである。

 

 

「そういや雄英の教師になるって話はどうなったんだ?あっちから声かけてきたんだし後継者候補くらいいたんだろ?」

 

「まあね。だがやっぱり実際会って決めようと思っているよ」

 

「んじゃあ受けるのか」

 

「ああ!それに伴って私の職場が変わるわけだから君にも付いてきてもらうよ、雄英!」

 

「……は?」

 

「あ、もちろんあちらの許可は頂いてある!共に頑張ろう!」

 

「そこじゃねえよ!つーか俺教員免許持ってねえぞ」

 

「もーまんたい!主な仕事は私のサポートや他の先生方のサポートばかりで君個人で教鞭を振るうことはないらしい!」

 

「ただの雑用って言えよ…」

 

 

いやいいけどね?オールマイトの活動が減る以上書類も減るし、雑用だけして生徒丸投げを基本にすれば楽そうだし。

それに雄英で働いていればそれだけで国への報告が通る。つまり今回のような出張パトロールの必要性がなくなるわけだ。あれ、結構いいかもしれない!

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

田等院駅

 

 

 

 

「着いたか。じゃ、後で」

 

「単独行動への躊躇いがないな!?いつも通りだが少しは一緒に行こうよ!」

 

「いや一人でもオーバーキルだし必要ないだろ…」

 

 

オールマイトは元より俺も自分で言うのはあれだが、まあまあ強力な個性を持っている。そんな二人でそこいらのチンピラを締め上げたところでただのイジメになってしまう。イジメ、ダメ、ゼッタイ。

 

 

「それはともかくにしてもサイドキックとの仲を深めるのも重要な仕事っていうか…」

 

『キャアアア!!』

 

「あん?」

 

『強盗だ!誰かあああ!!』

 

「………なんつうか、来て早々ついてねえな。おい、どっちがいく……っていないし」

 

 

早い。悲鳴聞いてからものの数秒で動き出すとは。これがナンバーワンヒーローたる所以だろうか。やっぱり俺には無理だな、速さが足りない。

 

 

「……俺は俺で探索しますかね」

 

 

願わくばヴィランに出くわしませんよう。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

4時間後・・・

 

 

「……つ、辛い。なんで今日はこんなに厄介事が多いんだ…」

 

 

いつも知らない街ばかりなので適当にぶらついてばかりなので、道に迷うのはもう常だ。むしろ迷ってる感覚すらないまである。

そして今日、ヴィランに会わないよう祈ったおかげかヴィランに遭遇することはなかった。のだが、それ以外の面倒ごとが多発した。迷子の迷子の女の子や、落し物したお婆ちゃん。道が分からぬお爺さんから迷い猫がオーバランするケーキ屋さんまで密度の濃い時間を過ごす羽目になった。なおヴィラン退治してないので給料にはなりません、残念!

 

 

「はぁ、もう十分だろ。疲れた、お家帰りたい。そろ戻ろ」

 

 

 

『ボウッッ!!』

 

 

 

……爆発音。目をやれば煙が立ち上り、今もなお断続的に爆音が聞こえてくる。近くもないが遠くもない、目立っているから他のヒーローもすぐ向かうことだろう。

あれは別に目の前で起きた事件でもなければ要請があったわけでもない。そもそも悪い言い方をすれば俺たちはこの地域の仕事を横取りしにきたと言っても間違いではない。ならばここは現地のヒーローに任せるのが正解じゃなかろうか。

 

 

「……はぁ。わかったよ、働けばいいんだろ」

 

 

………なんてな。あんな目立つヴィランを放っておいたらうちの上司になんて言われるか分かったもんじゃない。たとえ解決を俺がしなくてもその場にいなかったらそれだけである意味職務怠慢だ。

俺は仕事は嫌いだが、課せられた仕事はこなす主義だ。ならとっとと終わらそう。それが俺のためだ。

 

 

「ま、行った時には終わってるだろ」

 

 

オールマイトもいるしな。

………フラグだったかもしれない。




原作開始?かな?

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