異世界オルガ   作:T oga

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元動画のアバン(スマホ太郎が風呂に行こうとして、榊遊矢に会うところ)がどうしても小説で補完・再現出来ませんでした。すいません。



異世界オルガ8

ミスミドから帰ってきて数日が経った。

 

自分の部屋からリビングに出てきて、ふと庭を見るとまた何かを作ってる冬夜がいた。いつの間にか来ていた公爵もそれを見ている。

 

「よぉ、公爵。あんた仕事はいいのか」

「おお、オルガ殿か。お邪魔してるよ。ミスミドの件の礼に来たのだ」

「そうか。で、冬夜は何作ってるんだ」

「自転車だよ」

「……じてんしゃ?」

 

どうやら冬夜はなにか乗り物を作ってるらしい。

 

 

三十分くらい経った後、その乗り物は完成した。

乗り手がペダルを回すことで、車輪の方も回転して進むことが出来る乗り物のようだ。

 

その自転車に興味を示した公爵は冬夜から乗り方を教わっている。

 

 

その時、俺は全く別の事を考えていた。

それは俺自身についての事だ。

 

俺はこの異世界に来てから、死ぬ確率が非常に多い。

普通なら怪我程度で済むような場合でも、意識が朦朧(もうろう)としてきて、死にそうになり、復活の呪文を唱えている。

 

最初に疑問を感じたのはスライム城でたらいが落ちてきた時だ。たらいが頭に当たった程度で死んでしまうなどあり得ない。

その後も、冬夜の【パラライズ】やブリュンヒルドのゴム弾を食らった時も、普通なら麻痺や怪我で済むはずなのに、俺は死にそうになった。

 

……この自転車は、実験にちょうどいいかも知れないな……。

 

俺は公爵が練習している自転車にぶつかりにいった。

 

「お、おぉっ!おぉ、おぉぉおおぉ!あぁ~!」

「う"う"っ!」

 

シャカリキクリティカルストライク!

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

やはり、俺は死んだ。

 

 

「叔父様!?」

「なにそれ?」

「……乗り物……?」

「なんと、奇妙な……」

 

リビングから出てきた四人は自転車の練習をする公爵を最初は奇妙な目で見たが、その後、すぐに自分たちも乗ってみたいと言い出した。

 

 

「真っ直ぐ前向いて」

「は、はい……きゃっ!」

「おっと、セーフ!」

 

……冬夜がリンゼに甘いな……。

 

エルゼは公爵同様、一人で何度も転びながら、練習している。八重は部品が足りず、もう一台の自転車が作れなかったため順番待ち。

 

ユミナは……。

 

「ど~ですか~冬夜さ~ん!もう庭を回ることも出来ますよ~!」

 

もう乗れてんじゃねぇか……。

 

「ユミナは呑み込みが早いな」

「えへへ……」

「……冬夜さん!私も、こんなに!」

 

冬夜に褒められているユミナに嫉妬したからか、リンゼが急に自転車に乗れるようになった。

それに対抗するようにエルゼもリンゼと並走する。

 

「お姉ちゃん!?」

「い、意外と簡単に乗れるわね~これ!」

「……私だって!」

 

あいつら、前を見てるようで見てないな。

……完全に冬夜に褒められたいっていう欲望に任せて、乗ってやがる。

一応、よみがえるための呪文を唱えながら、注意喚起してみるか……。

(この時の俺にはなぜか、避けるという選択肢が頭になかった)

 

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!】」

 

エルゼとリンゼが乗る自転車の進む先に居た俺とぶつかって、二人は転倒し、俺は……。

 

「きゃっ!」

「うわっ!」

「う"う"っ!」

 

シャカリキクリティカルストライク!

 

やはり、希望の花が咲いた。

 

「【……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

実験結果……俺は死を引き寄せる運命にあるらしい。

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

「すいません、ミカさん。買い物に付き合ってもらっちゃって」

「別にいいよ。冬夜は俺の足を治してくれたし」

 

僕とミカさんは、足りなくなった自転車の部品を買いに町へ出ていた。

 

「……それに、オルガもなんか考え事してたから……こういう時は、俺はオルガの近くにいない方がいいんだ。俺がいるとオルガは止まれない」

「そうなんですね……」

 

確かに、今日のオルガは変だった。

自転車の練習をしてるところに、急にぶつかりにいって、一人で死んでた。

オルガが死ぬのはいつものことだけど、今日はいつも以上に様子がおかしかった。

 

そんなことを考えながら歩いていたら、ドン、と人にぶつかってしまった。ボーイッシュな子供の女の子だ。

 

「っと、ゴメンよ。前を見てなかった」

「ボケっとしてんなよ、兄ちゃん。気をつけな」

 

女の子がこういう言葉使いなのは、どうなんだろう。

そう思いながら、女の子の後ろ姿を見ていると、ミカさんが僕の袖を引っ張った。

 

「どうしました。ミカさん」

「あいつ、スリ」

「えっ!?」

 

僕がポケットの中に、手を入れてみると、そこにあるはずの財布とスマホがない。

スリの女の子は、僕らが気づいたのを見て、慌てて逃げ出した。

 

「あっ!?待て!」

 

 

スリの少女が逃げた路地裏を進んでいくと、ガラの悪い男の声が聞こえてきた。

 

「また俺たちの縄張りで仕事しやがったな、このクソガキ! テメエのおかげで警邏(けいら)が厳しくなっちまったじゃねえか!」

「好き勝手にやられるとこっちが迷惑なんだよ。覚悟は出来てるだろうな」

 

どうやら、二人のガラの悪い男がスリの少女を寄ってたかって痛めつけてるようだ。

一人がナイフを取り出し、少女の腕を押さえる。それを見て少女の顔が恐怖に染まった。

 

「やめて!勝手にスリしたのは謝るから!」

 

少女は涙を流し懇願(こんがん)するが、二人の男はせせら笑うだけで、押さえる手をどかそうとはしない。

 

「もう遅ぇんだよ」

「いや……いやあぁぁ!!」

「そこまで!」

 

チンピラ二人は声をかけた僕の方を睨んでくる。

少女は涙を流しながら、目を見開いていた。

 

「なんだ、てめぇ!」

「邪魔すんじゃねぇよ!」

「子供を寄ってたかって痛めつけてたら、止めるに決まってるだろ!会話から察するにあんたたちもスリのようだね」

「だったらどうだってんだ!」

「いや、別に。撃つのに躊躇(ためら)いが無くなるな~って思っただけ」

 

僕はそう言って、腰から『ブリュンヒルド』を抜こうとしたが、その前にミカさんが発砲した。

 

パンパン!パンパン!

 

「こいつは死んでいいやつだから」

 

 

ちなみに、助けたスリの少女レネはうちでメイドとして雇うことにした。

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

「ここがミスミドか!賑やかじゃのう!」

 

冬夜が自転車を作ってから、数日後。

公爵の娘スゥシィがミスミドに行きたいと駄々をこねたため、冬夜の【ゲート】を使って、スゥシィをミスミドへと連れてきた。

 

大勢で行動すると目立つため、ついてきたのは俺とミカに冬夜、スゥシィとユミナ、そしてミスミドの案内役としてオリガの妹アルマの六人だ。

 

「珍しいものが売っておるのう!父上と母上になにかお土産を買っていくのじゃ!……そうじゃ!あの仮面などよいじゃろう!行くぞ冬夜!」

「はいはい」

 

スゥシィが冬夜の手を引いて、走っていく。

ああいうのを見てると、鉄華団の年少組を思い出すな……。いやでも、十才っつーと、クッキーやクラッカの一つ年下か……。そういや、あいつら元気かな……。

 

 

「冬夜さん!あそこにいるの、オリガさんとリオンさんじゃないですか?」

「えっ!?お姉ちゃん!」

 

ユミナがそう言って指差した先には、ミスミド大使のオリガとマクギリス似のベルファスト騎士リオンがいた。

 

「ホントだ」

「デート、ですかね?」

「たぶんね」

「追いかけないと!」

 

アルマはそう言って二人の後を追う。

 

「えっ!?尾行するの?」

「妹として、姉の恋路は知っておくべきです!」

「面白そうじゃ!わらわも!」

 

スゥシィも面白がってアルマの後を追う。

 

「ちょっとスゥ!」

「ったく、仕方ねぇな」

 

俺たちもアルマとスゥシィの後を追った。

 

 

デート中の二人を見失わないように足を早めたアルマが、曲がり角で体格の大きいフードの男性とぶつかってしまった。

 

「おっと、すまんな。怪我はないか?」

「あ、はい。すいません。急いでいたもので……」

 

アルマの手を引いて、立ち上がらせるフードの男を見て、俺と冬夜は驚いた。

 

「獣王陛下!?」

「獣王じゃねぇか!」

「なっ!?冬夜殿にオルガ殿!?それにユミナ王女まで!ベルファストに帰ったのではなかったのか?」

 

 

どうやら獣王は、城下へ気晴らしに来たらしい。

 

「それで、お前さんたちは何をしとるんだ?」

「あれだよ」

 

獣王の質問に対し、俺はデート中の二人を指差して、返答する。

 

「あれは……オリガとベルファストの騎士か……なるほど。そういうことか」

「そういうことです」

 

 

広場のベンチに座ったリオンがオリガの肩に手を回そうとして、引っ込めるという挙動不審な行為を繰り返してる。

 

「すいません、リオンさん。……ちょっとお花を摘みに」

「は、はい」

 

オリガがベンチを離れる。リオンは自身の不甲斐なさにへこたれている様子だった。

 

「情けねぇなぁ、儂が若い頃はもっと男がグイグイと……」

 

獣王が自分語りを始めたとき、何やら騒ぎが起こった。

 

騒ぎのした方を見ると、ガラの悪い男たちが屋台を壊し、店主に暴行を加えていた。

 

「やめろっ!」

「なんだ、てめぇは」

「その人を離せ!一人に対し、寄ってたかって恥ずかしくはないのか!」

 

その騒ぎを見たリオンはチンピラたちを止めに入る。

ユミナ、スゥシィ、アルマもそんなリオンの姿を見て、「お~カッコいい」と騒いでいる。

俺たちがつけてんのがバレるぞ。もっと静かに見守ってろよ。

 

しかし、チンピラ十数人に対し、リオンは一人。

数で勝ってるチンピラが素直に従うわけがねぇ。

 

「この野郎!やっちまえ!」

 

ナイフを構えたチンピラがリオンに襲いかかろうとした。……その時、リオンがこう呟いた……。

 

「バエルを持つ私の言葉に背くとは……」

「は?」

 

リオンはモンタークの仮面を被って、召喚魔法で『ガンダム・バエル』を呼び出し、バエルの力でチンピラをねじ伏せる。冬夜と獣王もスゥシィがお土産用に買った仮面を借りて、参戦した。

 

「見せてやろう!純粋な力のみが成立させる。真実の世界を!」

 

 

そして、チンピラは一人残らず、地面に伏した。

 

「ちょっとやり過ぎましたかね?」

「いや、構わんだろ」

「バエルを手に入れた私は、そのような些末事(さまつごと)で断罪される身ではない」

 

リオン・ブリッツはついに正体を現した。

 

「マクギリスじゃねぇか……」

「リオン・ブリッツです」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

 

 


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