モビルアーマーを倒した後、バルバトスルプスのコクピットからミカが降りてきた。
ミカは地面へ着地しようとしたが、失敗して転倒する。
……ん?何か、ミカの様子がおかしい……!?
「どうした!ミカ!」
「何か、足が動かなくなった……」
「なっ!?」
生前もバルバトスの性能を限界まで解放した時に同じような事が起きた。
生前は右半身を失ったのだが、今回は下半身が動かなくなったようだ。
だが、そうなる事は予想済みだ!対策案も考えてある!そう、この異世界には魔法がある!
「冬夜!」
「任せて!【リカバリー】!」
冬夜が【リカバリー】をかけると、ゆっくりとミカが立ち上がった。
「おお……!ミカ……!」
「やっぱり、あんたなら出来ると思ったわ!」
「無属性魔法、全部使えますもんね!」
「さすがは冬夜殿でござる!」
エルゼやリンゼ、八重も俺と同じようにミカの回復を喜んだ。
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モビルアーマー撃破から数日後、ついにミスミド王国の王都へと到着した。
馬車から降りて、真っ白な宮殿へと入っていく。
大理石で出来た長い廊下を進んでいくと、奥には大きな扉があった。
「どうぞ、お入り下さい」
ミスミドの兵士がそう言って、大きな扉を開ける。
そして、俺たちは謁見の間へと足を踏み入れた。
謁見の間の奥の少し高くなった玉座にこの国の王────獣王が座っていた。
俺たちは全員、獣王の前に片膝をつき、頭を垂れる。
「オリガ・ストランド、ただいまベルファストより帰還致しました」
「うむ、大義であった。……それで、そなたたちがベルファストの使いのものか。なんでも旅の途中、エルドの村の襲った竜を討ったとか」
「竜じゃなくて、モビルアーマーだ」
俺は獣王の言葉を訂正する。
俺の獣王への態度に対し、冬夜は頭を抱え、エルゼたちは
「獣王陛下になんと言う口の聞き方だ!」
「良い。……そうか、そなたが竜を討った勇者か!ハッハッハッハ!久しぶりに血が
どうやら、この国の王は血気盛んな性格のようだ。
……あと、竜じゃねぇって言っただろうが……。まぁ、それはどうでもいいか。
「……わかった」
俺は獣王による決闘の申し込みを受けることにした。
そして、俺と獣王は王宮の裏手にある闘技場へとやって来た。
俺は審判役から木剣と盾を渡されたため、とりあえず、受け取っておいた。
……まぁ、使うつもりはねぇけどな……。
「勝負はどちらかが真剣ならば致命傷になるであろう打撃を受けるか、あるいは自ら負けを認めるまで。魔法の使用も可。ただし、本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止。双方よろしいか?」
……魔法の使用も可。本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止。……つまり、召喚魔法は使用可能だな!
「ハッハッハ、手加減は無用!」
「あんた、正気か?」
「実戦と思ってあらゆる手を使い、儂に勝ってみせるがいい!」
……なら、お望み通り手加減なしで行くか!
「ミカァ!やってくれるか?」
「いいよー」
「では、始めっ!」
「【ミカァ!】」
俺は審判の合図と同時に『ガンダム・バルバトス』をLv1で召喚する。
急に地面から出てきたバルバトスに獣王は驚き、慌てふためき、そして……待ったをかけた。
「ちょっと待った!なんだ今のは!」
「『ガンダム・バルバトス』……こいつの名前だって」
「いやいやいやいや!もう一回だ!次はその魔法なしで!」
……全く、注文の多い獣王様だな……。
Take2
「あの魔法は禁止だからな!」
獣王が念を押す。……わかってるっつーの。
「始めっ!」
パンパンパン
ミカは審判の合図と同時に、銃を構え、銃弾を獣王に叩き込む。
……おいおい。あれは死んじまったんじゃねぇか……。
「【リカバリー】」
「……なんだ今のは!」
冬夜が【リカバリー】をかけて、獣王が生き返った。
「よかった……。殺さないようにって難しいな……」
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僕たちは、獣王陛下の
その滞在期間中、僕は自分用に新しい武器を作っていた。
スライム城でオルガが、獣王陛下との決闘でミカさんが使った銃を僕も欲しいと思ったからだ。
僕は生前にも、じいちゃんや
わからないところもちょっとあったので、そこはスマホで調べて、銃の部品を一つ一つ【モデリング】で作っていき、組み上げた。
「よし、完成!」
僕は完成した銃の試し撃ちをする。
パン!
「う"う"っ!」
僕が木に向けて放った銃弾は木には当たらず、木の向こうを歩いていたオルガに当たった。
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
また、オルガが死んでる(笑)
まぁ、それはどうでもいいんだけど……なんで外したんだ?
僕は自分が作った銃の銃口を覗いてみて、あるモノが無いことに気付いた。
「あっ、ライフリングがない……」
「何やってんだぁぁっ!!」
ライフリングとは銃口の内側にある螺旋状の溝のことだ。それがないと、銃弾に回転がかからず、真っ直ぐ飛んでいかないのだ。
僕は【モデリング】でライフリングをつけ加えて、再び銃の試し撃ちをした。今度は大丈夫だ。
「何を作ったんですか?冬夜さん」
先ほどの発砲音とオルガの叫びを聞いて、買い物から帰ってきていたユミナとリンゼが様子を見にきた。
ちなみにエルゼと八重は、ベルファスト王国第一騎士団とミスミド兵士隊の合同訓練に参加しているため、ここにはいない。
「これは銃って言ってね。遠距離攻撃の武器なんだ」
「オルガさんや三日月さんも使っていましたね」
「それで、この銃の名前はなんと?」
僕が銃の説明を二人にすると、僕が生前見ていたアニメ『けものフレンズ』のサーバルちゃんのような顔をしたリンゼが僕にそう聞く。
一応『レミントン・ニューモデルアーミー』という銃をモデルに作ってはいるが、連射性が欲しかったためシングルアクションをダブルアクションに変えたり、接近戦も行えるよう、【ブレードモード】、【ガンモード】の詠唱で銃に取り付けたナイフが伸縮するように【プログラム】したから、本来の『レミントン・ニューモデルアーミー』とは別物なんだよな……。
「う~ん。『ブリュンヒルド』とかにしとこうかな」
「は?」
オルガ曰く、僕のネーミングセンスは悪いらしい。
生前のスマホ太郎について知りたい方はイセスマ原作『#447 過去、そして番外編。』をなろうで是非ともご一読ください。