仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
変身の瞬間は見ていた。自分と同じようにパネルをキックで選択し後ろを向いていたのだ。その間、シャベルのような道具を持ったゲーマ…恐らくトレジャーゲーマと呼ばれるものだろうか。とにかくそのゲーマが黒貴利矢の周りに浮いていて…。
「どこ行きやがった…?」
いくらデータの体とはいえプロトガシャットを長く使い続けるのはどうも不安だ。さっさと蹴りをつけたいところだが…。
自分は辺りを見回した。前、左、右、上、後ろ……。
いねえ。
ってことはまさか!
「ここだ!」
気が付いた時には遅かった。黒貴利矢が変身したレーザーターボ トレジャーバイクゲーマー レベル0は右手に装着されたシャベルを使って”下”から地中を掘って自分に攻撃を仕掛けてきた。
「グッ!」
攻撃によって宙に浮いた自分は言葉にならない声をあげつつ何とか受け身を取って着地した。
「フ…もう戦いは始まってるぜ。ノれない戦いなら諦めることを勧めるぞ。」
黒貴利矢のやつ…いちいち自分に似た物言いで煽って来やがる。それにしてもトレジャーバイクゲーマーの相貌は予想以上にシンプルだ。
プロトドラゴナイトハンターZに対抗してくるガシャットといえば自分が知っている物でデンジャラスゾンビぐらいしか思いつかない。
それレベルのやばい奴が来るかと思いきやアーマー部分は黄土色で右手の方に大きなシャベル型のグローブをつけている。自分が知っているゲーマでいえばロボットゲーマ…に近いものだろうか。
「そのガシャット…そこまでレベル高くねえだろ。」
「んー攻撃がそこまで効いてなかったか。その通り。アンタがいうように爆捜トレジャーのガシャットのレベルは4だ。だがゲームの面白い所はレベルだけじゃないんだな。」
「へ…強がりやが…」
え?
気が付けば自分は後ろの方向に飛ばされていた。右手のトレジャーシャベルでパンチされたのだ。しかし先ほどまで喋っていた奴にそんな動きはなかった。しいていうなら左手でキメワザスロットホルダーのスイッチを操作した…?
どういうことだ?
「お前…何をした!」
「ククク…言うなれば爆捜トレジャーの世界においてこの”爆捜トレジャーガシャット”はマスターガシャット!このガシャットを持っていればこの世界における自分は神なのだ!」
神ねえ…。
ようは爆捜トレジャーのガシャットを持っているとレーザーターボの座標地点やゲームエリア内の物の配置などを自由に変えられるということのようだ。
ちなみに後で知った話だが、仮面ライダークロニクルのプロトタイプであると言われている爆捜トレジャーだが、実は仮面ライダークロニクルはあらゆるゲームの一部分を集めて作られたゲームであった。
つまり爆捜トレジャーは仮面ライダークロニクルのプロトタイプの”1つ”というわけだ。仮面ライダークロニクルにおいてはマスターガシャットによって自由にバグスターの命をコントロール出来る機能などに使われたという。
話は戻るが、現実世界などで起動させてもレベル4の力として機能するに過ぎない爆捜トレジャーガシャット。しかしそのゲーム内で使えば驚異的な力を誇る。
「こいつァやっぱ無理ゲーだな…。」
思わず呟いてしまった…。諦めるわけにはいかない、自分は甦って永夢たちと共にバグスターウイルスの秘密を追うのだ。
「まだマイナスのエネルギーは放たないか…!」
「?」
マイナスのエネルギー?何だかわからんがとりあえず自分はレーザーターボが持つあの爆捜トレジャーのガシャットを手に入れればいいのだ。そうすればゲームクリア、自分は現実世界に戻ることが出来る。
自分はドラゴナイトガンの銃口をレーザーターボに向ける。が次の瞬間、自分の後ろへ瞬間移動してトレジャーシャベルによるパンチを喰らわせてくる。
なら次は…。
「オラオラ、どうした!自分のスピードについてこれないか?」
もはやそれはスピードじゃないだろと言いたいがここはグッと堪えて時を待つ。たった今考えたこの作戦なら奴を止めることが出来るかもしれない。まずは”試して”みなければ。
再びドラゴナイトガンをレーザーターボのいる方向へ向ける。予想通りレーザーターボはキメワザスロットホルダーのスイッチに手をかける…とその瞬間、自分はすぐに後ろを向いた。
振り向いた目の前に蹴りを入れようとするレーザーターボが現れる。
「何!?」
「ここだ!」
自分はドラゴナイトブレードによる斬撃でレーザーターボを吹き飛ばす。
「く…またすぐに…!」
レーザーターボはまた瞬間移動するつもりみたいだな。でも残念。その方向にはエナジーアイテムがあんだ。んでそのエナジーアイテムは…。
-混乱-
「なん…だと!」
レーザーターボは吹き飛んだ先にあったエナジーアイテムは混乱。これで瞬間移動はもうさせねぇ。
-キメワザ!ドラゴナイト クリティカル ストライク!-
プロトドラゴナイトハンターZのガシャットをキメワザスロットホルダーに装填。準備は完了した。
ドラゴンヘッドからの火炎放射でレーザーターボのライダーゲージはわずかとなった。攻撃の衝撃で爆捜トレジャーのガシャットが放出され、自分はそれをキャッチする。
-ガッシューン!-
「くそ…エナジーアイテムで自分の動きを止める…だと!?」
「自分の作戦にまんまとノせられてくれちゃって。さぁ爆捜トレジャーのガシャットは自分が手に入れたぜ。これでゲームクリアだ。」
…のはずがゲームクリアの音声が鳴らない。どういうことだ?もしかして黒貴利矢を倒さずに手に入れたからなのだろうか。それならばここでコイツを倒すまでだ。ドラゴナイトブレードを向けながら強制的に変身が解除された黒貴利矢に近づいていく。
「アンタを倒さないとゲームクリアにはならねえみたいだな。」
「…ククク…クハハハ!!」
「何がおかしい?」
「ククク…アンタもわかってんだろ。このゲームは無理ゲーなんだ。」
「無理ゲーなのはラスボスであるアンタがこの爆捜トレジャーのガシャットで好きなようにゲームを操作してたからだろ。でももうこのガシャットは自分のもの。このゲームは無理ゲーじゃなくなったんだよ。」
「ならば自分を倒してみな。その時点でアンタは生き返る手段を失う。」
どういうことだ?生き返る手段を失う?爆捜トレジャーガシャットというお宝を手に入れて黒貴利矢を倒すことでゲームクリア、自分は現実世界に生き返るのではないのか?
「どういうことだ。」
-ガッチャーン!ガッシューン!-
自分も黒貴利矢同様一度変身を解除する。相手に戦闘の意欲はなさそうだ。
「ククク…九条貴利矢という人間としてのデータは
なんてこった…。もしコイツの話が本当だとするなら自分が生き返るためには黒貴利矢を倒すことは絶対にしてはいけない。しかしゲームクリアするためには黒貴利矢を倒さなくてはならない。
なるほど、これが真の意味での無理ゲーだったというわけか。しかしコイツの話…本当に真実なのか?
「自分のことだ。嘘だと思ってんだろ。いいぜ、倒してみろよ。その時点でお前は永久に爆走バイクのプロトガシャットの中でお眠りだからな。」
アイツの目…わっかんねえ!!本当なのか!?嘘なのか!?自分ってこんなに嘘が上手かったんだな…。
本当に信用してほしい時にはこれから念を押しておくことにしよう…。ってそんなことを考えている場合なんかじゃねえ。どうする…どうすればいい…!
…!そうだ!自分は爆捜トレジャーのガシャットを起動させた。
-爆捜トレジャー!-
「…!なるほど、いい線をいっている。」
そう、このガシャットを使うことでゲームのクリア条件を”書き換える”。ゲームデータがガシャットから放出され手で操作して書き換えようとする。しかし肝心のクリア条件が書かれたプログラムは全く動かない。
「くそ…!」
「当然だろ。クリア条件そのものが変わってしまえばゲーム自体が成り立たなくなる。残念だったな。」
ゲームを根本から変えてしまうような書き換えは出来ないということか…。どうすればいい…考えろ…!
自分が今までこのゲームの中で起きたことを全て思い起こさせる。モータス…永夢…黒貴利矢…飛彩…タドルレガシー…大我…プロトガシャット…ゲームクリア…爆捜トレジャー…。
…………そうだ。そうだ、あの時、確かに自分はクリア音声を聞いていた!
「ククク…。」
「!?」
今度は自分が笑ってやる。わかったぜ、このゲームの本当のゲームクリアの意味がな。
「何がおかしい!」
「さぁな。んじゃあもう一勝負と行きますか。」
「いいのか、自分はもうライダーゲージが戻ってきているぞ。」
-爆走バイク!シャカリキスポーツ!-
「ノってやるって言ってんだろ。お前にも現実世界の自分になるチャンスをやるよ。」
-爆走バイク!ドラゴナイトハンターZ!-
黒貴利矢はプロトシャカリキスポーツガシャットも同時に起動していた。プロトガシャット対決と行こうじゃねえか。
「爆速!」
「5速!」
「「変身!」」
-ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!アガッチャ!シャカリキ!メチャコギ!ホット!ホット!シャカ!シャカ!コギ!コギ!シャカリキスポーツ!-
-ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!アガッチャ!ド・ド・ド・ド・ド!黒龍剣!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!Z!-
レーザーターボ プロトスポーツバイクゲーマー レベル0とレーザー プロトハンターバイクゲーマー レベル5の対決だ。爆捜トレジャーのガシャットも試してみたかったが残念ながらこのゲーマは
「これがラストランになりそうだな。」
「あぁ、どちらが現実世界に復活するのか、勝負だ!」
レーザーターボはトリックフライホイールを手に取り投擲攻撃を自分に繰り出してきた。シャカリキスポーツが使いやすいガシャットであるが所以はこのタイヤ型の武器を手に出来る点であるといえるな。
だが自分はドラゴナイトブレードで攻撃を掻き切りドラゴナイトガンで打ちつつ接近戦へと持ち込もうとする。
「く…!」
先ほどのダメージがまだ残っているせいかレーザーターボの動きは鈍い。チャンスだ!ドラゴナイトブレードによる斬撃でレーザーターボが怯んだ瞬間、タドルレガシーをレーザーターボのキメワザスロットホルダーに装填しホルダースイッチを押す。
-キメワザ!-
「何!?」
レーザーターボは驚きつつもトリックフライホイールを自分にぶつけてきた。かなり効いたせいか自分は強制的に変身解除に追い込まれる。
-ガッシューン!-
だがこれでいい。
「どういうつも…グッ…!!!」
レーザーターボから火花が散り始める。そしてレベルが0から徐々に上昇していく。
「これは…どういう…!」
-ガッシューン!-
レーザーターボも強制的に変身が解除されすべてのガシャットが放出された。ダメージ自体は少ない自分はすぐさま爆走バイク、プロトシャカリキスポーツ、タドルレガシーのガシャットを拾う。
「このタドルレガシーは特別な効果があってな。体内のバグスターウイルスを培養してレベルをどんどん上げる効果を持ってる。今の自分たちはデータというほぼバグスターと変わらない存在だ。それを強制的に増やしたってわけだ。」
無理やり増やせばその分だけ負荷がかかる。自分も前使った時それで変身解除まで追い込まれたからな。だがこれでいい。
「アンタのデータは今このタドルレガシーの中で培養されている。コイツをアンタと同じサイズにまででかくして…。」
タドルレガシーのガシャットからバグスターウイルスのような微粒子が放出されていく。現実世界ならばガシャコンバグヴァイザーなどがなければ成し得ないことだがゲームの世界であるここならばOKだ。はい、微粒子たちがさらにもう1人の貴利矢を構築。
これでデータが足りなくなる心配はご無用だ。
「な…ならば自分を倒せよ!それでゲームクリア、満足だろ!」
「ハーイ、それは嘘。さすがは自分自身だな。嘘がどこかにあるのはわかってた。アンタがついていた嘘はゲームのクリア条件。本当のお宝は爆捜トレジャーなんかじゃねえ。このプロトガシャットなんだろ?」
-ゲームクリア!-
やっぱりな。プロトシャカリキスポーツを示すとゲームクリア音声が鳴り響いた。おーおー、悔しそうな顔をするねえ、黒貴利矢くん。
「そう。本当のクリア条件は爆捜トレジャーのガシャットを手にすることなんかじゃねえ。この爆捜トレジャーのゲーム内にあるプロトガシャットを集めることだったんだ。」
スナイプと戦っていた時、プロトドラゴナイトハンターZを手に入れた際にゲームクリアの音声が鳴っていた。あの時はバグか何かかと思ったがそうではない。これこそが真のクリア条件だったのだ。
「くそ!」
自分が複製した黒貴利矢を吸収した自分ならばもう黒貴利矢は不要な存在。ギリギリチャンバラのガシャットを持っている自分はガシャコンスパローを召喚し黒貴利矢の首元に当てる。
「終わりだ。」
一瞬だった。斬った瞬間、黒貴利矢はバグスターのようにオレンジ色の粒子となって消滅していく。そこに残ったのは黒いジャケットだけだ。
「だがアンタも自分だ。その偽りの仮面は必ずどこかで使わせてもらうよ。」
そう言って自分のジャケットをその場で脱ぎ捨て、代わりに黒いジャケットを羽織った。黒貴利矢も自分自身、それは紛れもなく本心だ。
さて残りのプロトガシャットも捜しに行かないとな。そう思ってた瞬間、自分の足元を銃撃する何者かが現れた。危機一髪で避けて辺りを見回す自分。
「誰だ!」
…!いた…、自分を撃ってきたのはゲンム アクションゲーマーレベル2。まさか檀黎斗もこのゲームの中でプログラムされているのか。
「いいぜ、まだまだノってやるよ!」
自分は再び爆走バイクのガシャットを起動させた。