仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
ふぅー、やっと着いたぜぇ…。
って人間だった時なら自分は言っていただろうな。今の自分はバグスター、ネットワーク世界からの出口が特定できれば理論上は世界中のどこにでも行ける。もちろんネットワークがつながっていない場所は無理だけどな。
美しい瀬戸内海が見える田舎町に降り立った自分はタブレットを取り出し永夢からのメールを確認した。永夢からはレジェンドライダークロニクルの仮想ガシャットを自在に操ることが出来る人間の特徴を示した内容の連絡が来ている。簡単に言えば仮想ガシャットを使える人間は3種類いるようだ。
1つ目は自分たちのような適合者だ。花家先生が長野で戦ったジャンという男はテロリストで仮想ガシャットを暴走せずに扱っていたらしい。調べてみりゃブレイブ選抜試験の時にいた男だったようだ。暴走した理由は簡単に言えば逆恨みってやつだ。テロ組織のトップに適合手術まで受けさせられたにもかかわらずブレイブになれなかったことから見限られたらしい。そんなことで暴れられてもな。
2つ目は仮面ライダーの力を持っている、あるいは持っていた者だ。そのガシャットのゲーム病に抗体があるからだろうな。Dr.パックマンの時にいた熱血刑事さんもドライブに問題なく変身出来たらしい。
3つ目に関しては人間とは言えないが…とにかく人ではない者だ。パラドはファンガイアと呼ばれる魔族が仮想ガシャットを自由に扱っていたと報告したようだ。
そのいずれかわからないがこの地にも理性を保ったままレジェンドプレイヤーになっているものがいる。たちが悪いことにその力を使って犯罪を好き放題しているとのことだった。香川県警から自分が呼ばれたのはそれが理由らしい。今やゲームエリアは拡大されて日本を飛び出しているCRのメンバーもいる。バグスターである自分もすぐに海外へ行けるようにここでの戦いは早く片付けなきゃな。
というわけで警察にきた…が担当の刑事さんは今別件で外に出ているとのことだった。担当の刑事も謎の旅人と名乗る男からレジェンドプレイヤーの情報を得ていたらしくて他の警察官には詳しいことがわからないとのことだ。参ったな~、こんな時にすぐ犯人が現れてくれりゃ自分がとっ捕まえて…
「田中さん!さっき通報があってレジェンドプレイヤーが出たって!」
よし来た!警官同士の会話を盗み聞きはよくないのはわかってるけどノったもん勝ちだぜ。
外に出てゲーマドライバーを装着。爆走バイクガシャットを起動させる。
-爆走バイク!ガシャット!キメワザ!-
キメワザスロットホルダーに装填したことでアイライトスコープがないレーザーが出現。すぐに警官が言っていた場所までしゅつどぉ~う。
現場にいたのは仮面ライダーファイズを模したファイズプレイヤー。確か人間の進化形であるオルフェノクと戦うゲームのモシモシファイズガシャットを使って変身することが出来るレジェンドプレイヤーだったな。
ファイズプレイヤーは銀行に閉じこもってフォンブラスターを構えている。そんな力を持っててやることは銀行強盗かよ…。
「余計なことしてみろ!すぐ殺しますよ!」
あーあ、興奮しちゃってるし。銀行の中には小さい子が泣きわめいているのが見える。
「おい!泣くのやめなさい!ぶっ殺しますよ!」
「す…すみません…まだ小さいので…。」
「あなたが親ですか…!だったら2人仲良く死にますか?」
おいおいマジか。コイツ簡単に親子を撃ち殺そうとしている。しかも母親の方は妊娠中のようだ。お腹の子供まで殺すつもりなのか。どうやらチンタラしている暇はなさそうだ。
「あー待った待った待った…マタニティ。なんちゃって!」
優しそうな表情を浮かべる男性がつまらないギャグで一瞬場の空気が冷める。
「あまりイライラさせないでもらえますかね…!殺しますよ。」
「よせ。」
優しそうな男性の横で手を挙げさせられていた仏頂面の男性が今度はファイズプレイヤーに話しかける。
「…!あなたは…。」
「よせって言ってんだ。お前の要求は金と逃走手段の確保だろ。金はここから盗んでいけばいい。」
「…逃げるって?」
「…俺のバイクを使え。左のポケットに鍵が入ってる。」
仏頂面で真ん中分けの髪型の男性が手を挙げながらファイズプレイヤーに近づく。こんな状況に動じないことに驚いているのかファイズプレイヤーは少々たじろいでいるがペースを乱されまいとフォンブラスターの銃口を男につける。
「まさかあなたに助けてもらうとはね。」
「…。」
「おい!支店長!金は!?」
「じゅ…準備出来ました…!」
金が入ったアタッシュケースを手に取りフォンブラスターを店内に向けたまま外に出るファイズプレイヤー。男から受け取った鍵でバイクに跨りあっという間に去っていった。被害者が出なかったのは良かったが犯人が逃げちまった。すぐに追いかけるぜ。…と思ったらすぐにサイレンが付いたクラウンが到着した。乗っているのはスーツを着たいかにも真面目そうな男。
「津上さん!大丈夫ですか!?」
「あー氷川さん、お久しぶりです。お久しぶり…お浸しブリ大根。なんちゃって。」
津上と呼ばれた優しそうな男性は紙袋に入っていたパックを開けてブリ大根を取り出した。…ん?氷川?俺を呼んだ刑事もそんな名前だったような…。
「まさか…それ言うために作ってこられたんですか?」
「ハハハ。あ、そーだ、犯人逃げちゃいました!追いかけましょう!」
そう言って氷川の車の助手席に乗り込む津上。車はすぐにファイズプレイヤーが去っていった方向へ向かっていく。俺もファイズプレイヤーを倒すために追いかけるとするか。
「待て。アイツを追いかけるつもりか?」
アクセルを回そうとした自分の前に仏頂面の男が飛び出てきて行く手を阻む。
「危ねぇな!」
「今の車、警察か?」
「…たぶん?」
「ならバイク貸せ。後で返す。」
そう言うと乗っている自分を押しのけてレーザーを取ろうとする男。ここまで無礼な奴がいるとはな。驚いた自分はキメワザスロットホルダーから爆走バイクガシャットを抜き、レーザーを消す。
「消えた…。」
「いきなり人のバイク盗ろうとすんな!」
「俺のバイクは犯人に渡しちまってんだよ。足がねえんだ、足が。」
ずいぶん横暴な奴だ。でも自分もコイツといつまでも揉めていては犯人を逃がしてしまう。
「もうわーったよ!これでいいだろ。」
-爆走バイク!ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!-
どうだ!自分のレーザー バイクゲーマー レベル2のこの姿に驚いたろ。
「…お前に乗ればいいってことだな。」
「…うん。」
自分に乗った男は巧という名前らしい。苗字は教える義理はないということだ。巧の運転技術はなかなかのもので数分走らせたところで氷川の車が見えてきた。俺の元に連絡してきた刑事は口調からとても真面目そうな男という印象があったから、氷川の印象とかなり一致する。
車の前には巧のバイク オートバジンに乗った犯人がアクセル全開で逃げようとしているのが見えた。巧はなぜこの犯人を追おうとしているんだ?オートバジンは渡してしまってもいいから逃走手段として提供したわけではないのか?
そんなことを考えている間に巧は文字通り巧みな運転技術で車の前に出た。よし、こっから一気にオートバジンを追い抜いて急停止すれば犯人の行く手を阻めるぞ。
しかし巧は自分を車の前で急停止させ、氷川の車を急停止させた。
「ちょっと!今犯人を追っているところなんです!そこをどいて下さい!」
「悪いがここを通すわけにはいかねえな。」
「私は警察です。指示に従ってください。」
「警察がなんだ。今言ったろ。通すわけにはいかねえ。」
おいおいふざけんなよ…!自分はレジェンドプレイヤーを救うために追ってるんだぞ!まさかあの犯人の逃亡を助けるために、氷川たちを邪魔するためにここまで自分を使ったのか!?
「何言ってんだ!自分は犯人追うぞ!」
俺は自走で犯人が去っていった方向へ走っていく。巧は手に持っていたバックからベルトとアイテムを取り出す。あれはファイズプレイヤーが腰につけていたファイズギア…!同じように巧はファイズギアを腰に装着しポケットからファイズフォンを出して変身コードを入力した。
-Standing By-
「変身!」
-Complete-
折りたたんだファイズフォンをファイズドライバーに装填し倒すことでフォトンストリームが巧の体を包み込み、彼は仮面ライダーファイズへと変身する。ファイズフォンをフォンブラスターに変形させて106のコードを入力する。
-Burst Mode-
連射攻撃が俺を襲い転倒。くっそ…ここまでするかよ!転んだ衝撃によってアクチュエーションレバーを元に戻しレベルダウン。バイクゲーマー レベル1へと戻る。
「く…この人もレジェンドプレイヤーなのか?」
「氷川さん、ここは俺に任せて行ってください!」
津上が助手席から降りてきた。先ほどのお調子者のような感じではない…どこか緊張感を醸し出してくる。構えをすることで腰にオルタリングが出現。まさか彼も仮面ライダー…!
「変身!」
津上は光が纏わりついて金色の戦士 仮面ライダーアギト グランドフォームに変身した。津上は巧に掴み掛り、氷川が車で先へ進めるようにしようとする。巧は津上の拘束を振りほどこうと抵抗。
「氷川さんは警察官として役目を全うしようとしているんです!邪魔しないでもらえますか!?」
「何度も言わせんな。通すわけにはいかねえ!」
「なんでですか!もしかして共犯とか…!」
「んなわけあるか!」
いや今の状況はどう見ても共犯である巧が仲間の犯人を逃がそうとしている光景にしか見えない。2人が交戦しているから今自分が犯人のもとへ行けばいいのだがフォンブラスターの攻撃が痛むからなかなか機敏な動きが出来ない。
「…飛ぶか!」
-ガッシューン!爆走バイク!ジェットコンバット!ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走バイク!ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!アガッチャ!ぶっ飛び!ジェット!ドゥ・ザ・スカイ!フライ!ハイ!スカイ!ジェットコンバット!-
これでレーザーターボ プロトコンバットバイクゲーマー レベル0に変身完了。プロトガシャットを偶然持ってきていてよかったぜ。普段は持ち出し禁止のものだが今回は学会で使うために持ち出していたのだ。津上と巧の戦いを見下ろしながら犯人が向かった方向へ飛んでいく自分。巧はそんな自分を見上げている。
「今だ!」
アギトのオルタリングにドラゴンズネイルが加わり津上の体は豪炎に包まれた。バーンングフォームへのフォームチェンジだ。強化されたその肉体で繰り出されるパンチは巧を道の端まで吹き飛ばす。
「ぐ…!」
「あなたをどうこうするつもりはありません!変身を解いてください。」
「…悪いが俺は人に命令されると逆らいたくなるタイプなんだよ…!」
-Complete-
巧はファイズフォンにアクセルメモリーを装填。フルメタルラングが展開しアクセルフォームへとこちらもフォームチェンジ。腕に着いたファイズアクセルのスタータースイッチを押す。
-Start Up-
津上はすぐに巧にもう1発パンチを叩き込もうとする…がそんな動作をしている間に既にファイズはその場を去っている。一方の津上も対策は既にしている。アーマーが剥がれ落ち最終フォーム シャイニングフォームへと変わった。アギトは常に進化する仮面ライダー。巧以上に長く戦い続けている彼はアクセルフォームのスピードに追いつくことはなくともその後ろを駆けていく。
自分の速度なら数分あれば追いつく…と見込んでいたが飛んでから数十秒のところでオートバジンを止める犯人の姿があった。どういうつもりだ?着陸する俺を見ながら失笑する犯人の男。
「観念したのか?」
「いや…もうここで倒さなきゃなってよ…!」
-モシモシファイズ!-
モシモシファイズガシャット…!それを体に挿す犯人の体は巧同様フォトンストリームに包まれた。
-モシモシファイズ!モシモシファイズ!-
ファイズプレイヤーに変身か、ようはやり合おうってわけだ。ミッションメモリーをファイズフォンからオートバジンのハンドルに差し替える。
-Ready-
ファイズプレイヤーはハンドルを引き抜くことでファイズエッジを手に取った。近接戦か、それならコイツだ。
-ガッチョーン!ガッシューン!爆走バイク!ギリギリチャンバラ!ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走 独走 激走 暴走 爆走バイク!アガッチャ!ギリ・ギリ・ギリ・ギリ!チャンバラ!-
レーザーターボ用から再びレーザー用の爆走バイクガシャットに変えレーザー チャンバラバイクゲーマー レベル3にレベルアップ。
-ガシャコンスパロー!ス・パーン!-
手にしたガシャコンスパローを鎌モードにしてファイズエッジとぶつかり合い火花が散る。ファイズエッジを片手で受け止めているからさらにもう片方で斬撃!先ほどのファイズとは違ってファイズプレイヤーはファイズシステムを上手く使いきれていないように思える。
「グア!」
「ここで終わりだ。」
-ガッシューン!ガシャット!キメワザ!ギリギリ クリティカル フィニッシュ!-
ガシャコンスパローのガシャットスロットにギリギリチャンバラガシャットを装填。キメワザが発動!至近距離からのギリギリクリティカルフィニッシュがファイズプレイヤーの腹部目掛けて炸裂。ファイズギアは外れ、犯人は道路横の木に叩きつけられた。モシモシファイズガシャットは俺の足元に転がっている。とりあえずこれで彼が変身することはない。
ん?男の顔に何か模様が浮かび上がっている。…模様ではない!怪人の顔だ!犯人の男の体は灰色の怪人 オルフェノクへと変化した。コイツが死んだ人間が蘇生したという人類の進化形 オルフェノクか。監察医としては興味がないこともないが、怪人である以上放置するわけにはいかない。ダメージが残っているせいかオルフェノクの手からは灰が少しずつ落ちて呼吸も荒れている。手に持っていた鞭も落としてしまった。
-Time out-
-ゲームクリア-
ジェット機が着陸する時のような音を立てながらフルメタルラングは閉じかかっている巧が自分の元まで追いついてきた。その後から津上が到着する。
-ゲームクリア-
「あれ、氷川さん追い抜いちゃったか。っとそれは置いといて…!もうここまでですよ!共犯者さん!」
「俺は共犯じゃねえ。コイツがオルフェノクだから逃がそうとしただけだ。」
「ハァ?怪人を野放しにしようってか?」
「…俺たちはもう命が長くない。そうだろ?」
オルフェノクに向かっていう巧が俺”たち”…?ということは…。
「アンタもまさか。」
「俺もオルフェノクだ。自分の命はもうそう長くないと思いながらここまで生きちまった。人生の最期ってどうしていいのかわからねえんだよ。コイツもそうだ。人間が誰も傷つかない犯罪なら…最後ぐらい許してもいいんじゃねえかってな。」
最期に…自らの本能のままに従ってやりたいことをさせてやろうとしたということか、巧は。いつも死んだ人を相手にしていたかつての自分には理解できない考え方だったかもしれない。だが今は一度命を落とし甦った…いわばオルフェノクとほぼ同じ存在となった自分ならばわかる。
死ぬ前に何かしておきたい。自分にとってそれは永夢にリプログラミングを託すことだった。このオルフェノクにとっては大金を得ることだったのだろう。
「それは違いますよ。」
そう言って変身を解く津上。その顔は先ほどの満面の笑みではないものの優しさを感じる表情が浮かんでいる。
「本当にそれがあなたのしたいことなんですか?お金が手に入って死ねればいいんですか?」
「…私は…。」
「違うでしょ。お金が手に入ったからって幸せじゃない。あなたは本当は何がしたいんですか?」
「…。」
「………琢磨、最期くらい偽るのはもうやめとくか。俺たちは…自分に嘘をつき過ぎた。」
犯人は琢磨という名前らしい。ムカデを模したオルフェノクの姿から人間の姿へ戻る琢磨。その目からは大粒の涙がこぼれる。
「う…本当は…人間たちの中で生きていたかった…これからも…生きていきたかった!」
「そうなんですね。今からだって遅くないじゃないですか!これからもそうやって生きていきましょうよ!」
津上は明るく琢磨に話しかける。しかしファイズフォンをベルトから取り変身を解除した巧は津上の胸倉を掴む。
「そんな時間は…コイツには残されちゃいない。」
「え…?そんな…。」
「フフ…もういいんですよ。なんかこういう…大きいな悪事を久しぶりにしてみたかっただけだったんです。でも…なんか何年も人間として生きて来たらこういう事、向かなくなってきちゃってたみたいですよ。…乾巧、あなたはまだ命が持ちそうですね。」
「…。」
「私の分まで…生きてください。」
「…命の長さは俺が決めるわけじゃない。」
「…。」
「でも命が尽きるまで…俺はみんなの夢を守るつもりだ。それが俺の…俺が本当に望むことだからな。」
巧の言葉を聞いた琢磨は微笑を浮かべる。体から青い炎が上がり体は灰となって風に吹かれた。
命を失ったことがない普通の人間には死を覚悟することは難しい。だが一度命を失い復活した自分や巧ならそれを覚悟し強さに変えられるはずだ。人間の進化形という意味では同じアギトこと津上は過去の記憶を失ってもなお笑顔絶やすことなく戦っている。どうせ同じ人間の進化形なら俺は津上のような男になりたいと思う。さぁーてとまだまだ患者が待ってる。今日もノリノリでいくぜ!