仮面ライダーエグゼイド レジェンダリー・エンディング 作:エクシ
私は昨晩に起きた出来事を翌日すぐさま社長に報告した。社長は少し悩んだ表情を見せたがすぐに満面の笑みを浮かべる。
「それはご苦労をかけましタ。でも心配しないデ!新型バグスターウイルスの開発に専念してくだサイ。」
「…かしこまりました。」
「Oh、それと新型バグスターウイルスの開発を手伝いたいという人がいマス。6Fの研究室でMr.影成を待ってますヨ。」
出来るなら新型バグスターウイルスの開発は自分1人でやりたかった。彼女を助けるための天国を作るための作業がスムーズにいくために私の意思が通りやすいからだ。しかしマキナビジョンの金を使って開発している以上そうも言っていられない。私は研究室の扉にノックして静かに開けた。
「失礼します。」
扉を開けた先には見たことのない機器を夢中でいじる銀髪の外国人だった。…この男は確か…!
「お前…何をしている!」
「ん?あ、昨日はどうも。」
男は日本語をしゃべっている。ジョニー・マキシマと違ってカタコトではない流暢な喋り方だ。
「何者なんだ、アンタは。」
「俺はドクター・フェイス。財団Xに身を置いていたが訳あって財団を抜けることになってな、マキナビジョンでお世話になることになったってわけ。よろしく。」
そんな話聞いていないぞ。いくら好きにやっていいと言われているものの、他の奴にも好きにされたらそれは私の”好きにしていい”にはならない。
「聞いたよ、新型バグスターウイルスの開発に手こずっているんだって?そりゃ君は天才的なプログラマーからもしれないけど、医療知識は皆無だからね。バグスターウイルスは”ウイルス”なんだ。俺のような医者の力も必要だとは思わない?」
「医者…あんた医者なのか?」
「美容外科医だけど。」
美容外科医じゃどうしようもない。こんな男を信用し大事な計画を狂わせるわけにはいかない。
「表向きはね。裏ではどんなことも請け負う闇医者をやってる。人体実験も何度かやった。」
…そういうことか。財団X、昨日の夜から少し調べては見たが”表側”の情報しかネットにはない。裏側のことは一切わからないのは人体実験などをやっていることもあるのだろう。
「…新型バグスターウイルスのことについてはどこまで社長から?」
「ウイルスに感染したものを仮想現実の世界に送り込んでゲームをさせるものだと聞いてる。」
…おおむねあっている。しかし私の目的は彼女を中心に多くの人間を仮想現実の世界に送り込んでそこで生活させることにある。そして彼女は体を失ったとしても仮想現実の中で生き続けることが出来る。まさに天国を作る計画。
送り込んだ人々に仮想空間内でゲームをさせるのか、または別の目的があるのか、社長の目的はわからないがそんなことはどうでもよい。私の計画の為には新型バグスターウイルスの開発が必須なのである。そんな重要なことをこの男と二人三脚でしなくてはいけないのだろうか。
「とにかくこの機器を片付けてくれないか?作業が始められない。」
「そういうわけにはいかないねえ。コイツは意識をゲーム世界に送るための実験中なんだ。」
何…?それは私が今から行おうとしていた研究だ。まだ理論の段階であったが、この男はもう既にそれを現実のものとしたというのだろうか。いやそんなうまくいくものではない。
機器の横に置かれたケースの中にはマウスが1匹入っているが意識はないようだ。それに繋がれた機器の画面にはマウスがウロウロとしている。…まさか?
「今このマウスの意識はこの機械の中に入っている。動物による実験はオールクリアだ。」
「馬鹿な…こんな短期間でそんなことまで…!」
「俺に不可能はねえんだなあ。」
ドクター・フェイスはニヤリと笑ってみせた。どうやら前言撤回しなくてはならないようだ。私の計画はこの男の協力なくして実現することはなさそうだ。
ドクター・フェイスがマキナビジョンにきてから数か月が経った。新型バグスターウイルスも作られ、あとはそれを実用化するための作業に入る。それも全てドクター・フェイスの力と私の開発技術があってこそのことだ。
とはいってもそこまでスイスイと上手くいくものではなかった。あれから開発作業は紆余曲折を経ていたのだ。現在は意識を確実に指定した電脳空間に送り届けることを可能にするシステムを構築している。例え人間の体から意識を抜き取ることが出来ても電脳空間のどこに意識が行ってしまったのかわからなければ駄目だ。
もはやそれは医学的なものではなく私の畑 プログラム技術がものをいう領域ということもありドクター・フェイスはそこまで口を出さないようになっていた。それでも私が詰まっている時に声をかけ外に連れ出すことがしばしばある。
「まだうまくいかないか?」
「あぁ、意識にGPS機能のようなものを搭載してみたがやはり難しい。マウスは未だに意識が戻っていないからな。まさか機器なしでここまで難しいとはな。」
「そりゃあ機械と人間は違うからな。まぁそう焦るな。」
ドクター・フェイスはよく「焦るな」と私に言う。だがその「焦るな」という言葉を聞くたびに病気で苦しむ彼女の姿が目に浮かんでしまうのだ。そしてその光景は私をさらに焦らせる。
会社に戻ろうと残りのコーヒーを口にいれて立ち上がった。同じくドクター・フェイスも椅子をしまっている。
「こんなところにいましたか、ドクター・フェイス。」
聞き覚えのある声がした。声の方向を見るとそこに立っているのは霧島。以前私を襲ってきた男だ。
「あーらら、久しぶりじゃない。元相棒。俺のこと諦めたのかと思ってたぜ。」
「我々財団Xは裏切り者を許さない。あなたもよく知っているでしょう。」
丁寧な口調に反し腹の奥では憤りを感じているようだ。ハリケーンサバイバルガシャットを取り出し起動させる。
-ハリケーンサバイバル!-
そのガシャットを自らの体に挿しディザストに変わる霧島。我々も黙ってやられるわけにはいかない。休憩中にも関わらず2人ともゲーマドライバーを持ってきていて正解だった。
-ハリケーンニンジャ!-
-タドルホラー!-
「ランク100!」
「「変身!」」
--ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!--
-マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!-
-滴る生き血!甦る魂!タドルホラー!-
私は風魔 ニンジャゲーマーに、ドクター・フェイスはフェイス ホラーゲーマー レベル100に変身した。ドクター・フェイス曰く数年前にハリケーンサバイバルガシャットとチゾメノミソギガシャットで変身した際はモノクロの忍者プレイヤーに落ち武者の鎧のようなミソギゲーマを身に纏った姿になったと言っていた。
しかし今のホラーゲーマーは忍者プレイヤー自身にチゾメノミソギの不気味な雰囲気とタドルクエストのテイストが混ざったかのような、洋風のホラーゲームをイメージさせる姿となっている。顔の単眼も血走った瞳のようで不気味だ。
現在は衛生省の元で管理されている檀黎斗が変身したゲンムもプロトマイティアクションXガシャットで変身したアクションゲーマーの意匠をどこか引き継いだかのような造形のゾンビゲーマーに変身をした。フェイスも同じように雰囲気は似ているものの、もはや別のライダーになっている。
-ガシャコンサイズ!-
-ジャ・キーン!-
タドルホラーガシャットを使用する者に与えられる呪われし片手鎌 ガシャコンサイズを召喚したフェイスはそれを手にしディザストに襲い掛かる。私もガシャコンバグヴァイザーをチェーンソーモードで装備しディザストの元へ駆けていく。
そのディザストは両手をそれぞれ私たちの方へ向け竜巻を繰り出し妨害を図る。しかしそんな攻撃を見極められない私たちではない。避けるとまず武器の攻撃範囲が広いフェイスがガシャコンサイズでディザストに襲い掛かる。
それをジャンプして避けたディザストに私がガシャコンバグヴァイザーで斬りかかった。Hit!の文字が出てダメージを与えることに成功する。
「ぐ…!」
ハリケーンサバイバルは多人数のプレイヤーが参加するゲームである。その多人数を蹴散らすディザストはかなりの強さを誇るが、フェイスのレベルはMAXを超えた100。私もレベル表記はないものの複数のゲームデータをインストールしたハリケーンニンジャガシャットを使って変身した仮面ライダーだ。ほぼ同じぐらいの力を誇るといっても過言ではない。もはやディザストは私たち2人の敵ではないと言えるだろう。
「さすがですね。でもいいんですか?ドクター・フェイス。私ならばあなたのことをどうにでも出来るということをお忘れでは?」
「…。」
いつもならば言い返すところを何も言わないフェイス。フラフラと立ち上がるディザストがフェイスの前に瞬間移動すると何も抵抗することなくフェイスは攻撃を受け続ける。どんどんライダーゲージが減ってきている…!援護のために私も参戦するがフェイスを盾にされ中々攻撃が出来ない。ディザストは私の右手を蹴り上げガシャコンバグヴァイザーが外れてしまった。
-ガッシューン…-
「反撃しろ!死ぬぞ!」
「…いんやこれでいい。」
「そうそれでいいのです、ドクター・フェイス。」
「あぁ、これでお前を一発でぶっ倒せる…!」
「!?」
-ザ・パーン!-
ガシャコンサイズのAボタンを押すことで片手鎌から大鎌モードに変形し、柄と刃の部分がそれぞれ大きくなる。フェイスはガシャコンサイズを両手で強く握りしめ思いっきりディザストに振りかざした。その攻撃が当たると凄まじい爆風と共にディザストは飛んでいき建物にのめり込む。
「なんだ…この攻撃力は…!」
「ククク…このホラーゲーマーは減ったライダーゲージの分だけ全ステータスを上げる特殊能力がある。よって俺の攻撃力、防御力、すばやさなどなど…全てが強くなっているのだ。」
「お前…私のさっきの言葉の意味が分かって…!」
「残念だが無意味だ!」
-ガッシューン!ガシャット!キメワザ!-
タドルホラーガシャットを抜きガシャコンサイズに備えついているガシャットスロットに装填する。
-タドル クリティカル フィニッシュ!-
ガシャコンサイズを上から下に振りかざし斬撃をディザストに向けて放った。ディザストは手をフェイスに向けて伸ばしていたがどうやらやろうとしていたことが思うようにいかなかったようだ。困惑しながらタドルクリティカルフィニッシュを受けて爆発した。
-ゲームクリア!-
クリア音と共に霧島の体から排出されたハリケーンサバイバルガシャットが破壊されつつ地面に落ちる。霧島はボロボロになりながらも何とか生き延びているようだ。
「これで終わりだな。」
「どうして…私の言う通りにならない…!?ドクター・フェイス…君はまさか完全な抗体を身につけたというのか!?」
「ククク、ご名答。これでお前は俺を支配することは出来ねえ。」
支配…?いったいどういうことだ?
「フ…フフフ…フハハ!なるほど…まさか
「患者の情報は横流し出来ねえんだ。」
「…また来ますよ。」
そういうと私の腕から外れたガシャコンバグヴァイザーを拾い上げ霧島はその場から消えていく。社長から預かったものを奪われてしまったのはいささかまずい気がする。
「なーに、また取り返せばいい。」
「あぁ。」
「…何?」
「CBAってなんだ?それに支配がどうとか…どういう意味だ?」
「…霧島はまた来る。俺たちも次アイツが来た時のために新しいガシャットを用意しておく必要があるな。」
この数か月で確かにドクター・フェイスは私に協力し研究は進んでいった。しかしこの数か月共にいてドクター・フェイスへの信頼は一向に増すことはない。それほどまでにこの男には分からないことが多すぎる。財団X…霧島…タドルホラー…完全な抗体…CBA…謎は深まるばかりだ。