STEP by STEP UP   作:AAAAAAAAS

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 流行に乗り遅れた感じでNewgame小説書きました。
あらすじのとおりの内容を目指します。

 この姉妹に関してのみ重いのでよろしくお願いします。


「というわけで、今日から採用することになった九能ヒビキくんだ」

 葉月しずくにとってはその日はサプライズの日だった。

それは仕事帰りのことだ。

 

 いつもようになのかは知らないが、

彼女は行きつけのメイド喫茶に向かう途中、ある人物に声をかけられた。

凛としたよく通る声だ。

 

 しずくの経験上、美女、美少女の声だと確信しメガネの縁をきらりと輝かせた。

彼女は確信にと灯らせ口元を三日月に彩る。

その声の方へと振り向く。

 

 そこには予想通りの美女、いや美少女がいた。

 

「あの、いきなり声をかけてすいませン。

 イーグルジャンプのディレクターさんの葉月しずくさん、ですよネ?」

 

「うむ、よく調べているね。

 私がそのイーグルジャンプの美女敏腕ディレクター、

 葉月しずくだよ?可愛いお嬢さん?」

 

 雫は指先を顎に当ててドヤ顔を決めた。

声をかけた少女は若干、困惑した。

 

(声をかけていうのもなんだけド、

 少し警戒したほうがいいんじゃないかナ?)

 

 少女はこのしずくの器量を測りかね、わずかに困惑した。

しかし、ここに来た目的のため口を開いた。

 

「あの、実は私ハ…」

「あぁ。ちょっと待ってくれたまえ。

 美少女である君を十分に目で堪能したい」

 

 しずくの言葉にもうこの少女はどう返していいか分からなかった。

ふんふんとしずくは少女の容姿を見た。

カジュアルなビジュアルスーツに身を包んだ、緑の黒髪の少女だ。

 

 長い髪も背中の真ん中で布でまとめている。

だがしずくは彼女の指に注目していた。

 

「あ、あのっ…」

「ふむ、君は音楽をやるのかな?」

 

「っ!?」

「あぁ、いやすまない。

 音響にも何人か君と似た感じの指をしていてね。

 ギターでもやるのかな?爪の伸び方か特徴的なんだよね」

 

 困ったように頬をかきながらしずくは言う。

その言葉に観念しため息をこぼした。

 

(しかし、この子の雰囲気…誰かに似てる気がする)

 

 むむっとしずくは目を細めて少女を見る。

 

「あっ、あのっ…」

「おっとっ、何度も失礼をカマしてしまったようだね。

 君の本題はなんなのかな?」

 

 その言葉に少女は気を取り直してしずくを見つめた。

涼風青葉とも望月紅葉とも違う、真っ直ぐな目をしていた。

 

 

 

「私の名前は九能(くのう)ヒビキ、

 イーグルジャンプのHPをみて面接を申込みに来ましタ」

 

 

 

 

 

********************************

 

 

 

 翌日。イーグルジャンプ会議室。

 

 そこにはキャラデザ班、プログラム班の面々が椅子に座って、

複雑な表情でしずくの言葉を待っていた。

 

 スーツを着た隣の少女は心もとなげに視線を彷徨わせていた。

身長がスラリと高く、黒いスーツとパンツとタイを着こなしている。

細身に見えるが胸部装甲は滝本ひふみ、望月紅葉に次ぐサイズを要している。

 

 視線にさらされる居心地の悪さにヒビキは内心辟易としていた。

心情的に転校生が注目される感じのものに近い。

 

 

「というわけで、今日から採用することになった九能ヒビキくんだ」

 

「あ…、あの、ど、どモ」

 

 しずくのいきなりの発言に社員は困惑した。

 

 ヒビキも困惑した。

彼女的には面接の約束を取り付けたつもりだったが、

流れ的に既に採用されてるような空気だったからだ。

 

 阿波根うみこは頬をひくつかせた。

 

「何してくれてんですか。

 この忙しい時期に何やらかしてるんですか」

 

 怒気というよりも覇気を放つうみこ、

そんな彼女に威圧され、しずくはヒビキの後ろに隠れながら怯える。

 

「あの、すいません。

 私のせいデ」

 

「いえ、大方うちのディレクターに引っ掻き回されたのでしょう?

 あなたは被害者です、すいません」

 

 そういい頭を下げるうみこに恐縮して頭を下げるヒビキ。

 

「いえ、原因を焚きつけたのは私なのデ」

「いえいえ、私の所のディレクターがすいません」

「いえいえ…そんナ」

「こちらこそ…」

 

 その様子に八神コウは呆れた笑みを浮かべて溜息を吐く。

 

「いや、もうそこでやめて。

 エンドレスな謝罪はきりがないから」

 

 りんも頬杖を当てて困ったように溜息を吐く。

 

「でも、ほんとに困ったわね…。

 この忙しい時期に」

 

「あはごんもヒビキもそれくらいにしてさ、

 これからどうするんですか?葉月さん?」

 

 コウは苦い顔で彼女を見た。

 

 PECOの制作も佳境の段階というところに独断の新人採用。

紅葉とその友人の鳴海つばめの教育のこともある。

 

 これから飛び立つ自分にとって不安要素は残しておきたくない、

というのが本音だ。

 

「あー、その点なら心配しなくていい。

 私自ら彼女の指導を行う。私の独断だしね」

 

 その言葉を聞いた初期メンバーは驚いた。

彼女はぶらついてさぼりがちな印象があるが、シビアな面を持っている。

その彼女がヒビキを買うという事実に困惑を隠せない。

 

 いや、コウは予感してたのかもしれない。

七年前のあの日から。

 

 しずくはコウの暗い雰囲気を目敏く察知した。

彼女が一瞬だけかつてに戻ったような…

 

 しずくは直感だが、コウとヒビキの間にある「何か」

因縁な様なものを感じた。

ヒビキを連れてきたのは直感だったが、これが吉と出るか凶と出るか…。

 

(まぁ、今は置いておこう。

 気になるところではあるが…今はそれじゃない)

 

 しずくは気持ちを切り替え、ヒビキに対する提案、考えを提示する。

 

「それに彼女は一年前からモーションやキャラデザイナーの勉強をしてたらしい。

 まあ、現場と机上は違うから私が追々流れを教えていく。

 それに…」

 

「彼女は音楽関係のスキルが凄いようで、

 その伝手でスタジオや機材を借りれるのは大きい」

 

 その言葉に全員が目を輝かせて、きらきらとヒビキを見た。

 

「今の話、ほんとなん?」

「えぇ…ちなみに舞台衣装もありますけど…

 それこそゴスっぽいのや、魔法使いっぽいものとカ…」

 

 オシャレに興味がありフリル系統を好んできてる彼女、

飯島ゆんは目を輝かせてヒビキに近づき手を取った。

 

「でも、ヒビキちゃん?はなんでその伝手があるの?」

「あっ、えーっと…私、週末インディーズバンドとして活動してるんでス」

 

 その言葉におぉ…関心めいた声が漏れた。

 

「ちょっとオーナーさんと仲良くなっテ、何点か空いてるスタジオや機材、

 衣装とかを貸してもらえるって感じですネ」

 

「そうなんやー…」

 

「ファンタジー的な仮装の衣装もありますかラ、

 資料に困らないと思いますヨ?

 私のソフトウェアの技巧は置いといテ…

 そういう伝手だけなら割と使えると思うのデ」

 

困ったように笑い、ヒビキはそう言った。

オシャレに目覚めてるゆんにはその情報は価千金だった。

思わず近づきヒビキを見上げる。

 

「ふむ、彼女を雇えばOP曲、

 ED曲のコスパも時間も安上がりにはなるでしょうね」

 

 うみこは顎に手を当ててしずくの意図を読み取っている。

 

「メジャーデビューしてない奴で悪いですけド」

「いえ、構いません。

 その分、出費や契約も面倒なのでうち専属のミュージシャンというのも面白い試みです」

 

 申し訳なさそうなヒビキの言葉にうみこは笑顔で返した。

その様子に安堵したのか、しずくはヒビキの背中からのそっと出てきた。

 

「ふっふっふ、なかなか好評のようだね。

 ちなみに彼女は楽器関係なら偏りはあるものの、大抵は弾けるそうだ」

 

「はい、ギター、キーボード、ドラム、サックス、ハーモニカとかがメインですけど、

 三味線や琴、尺八とかもそこそこ」

 

「そんなにできるんですか!?」

 

 涼風青葉もこれには驚いたのか、感心めいた声を上げる。

しかし、ヒビキは穏やかな笑みを向けてこういった。

 

「別に大したことはないですヨ、

 好きなら何だって上手くなりたいじゃないですか、誰だっテ…

 皆さんもそうでしョ?

 私は楽器も音楽も好きだったからこうなっちゃったってだけですヨ」

 

 その言葉に青葉は納得してそんなことをさらりと言えた彼女に好感を持った。

 

「それは…そうですよねっ!」

「確かにその通りです。

 だからこそイーグルジャンプ(ここ)を選んだんですから」

 

 彼女の言葉に納得するものがあったのか、

紅葉も肯定の意を示した。

 

「ふむ、なら決まりだね。

 彼女の受けは悪くないようだ。私の審美眼も中々のものだろう?」

 

 これまでの説明から割と即戦力とまではいかないまでも、

音楽業界の人脈、それに関係する技術は大きいものと皆がそう認識した。

しかし、ヒビキは焦ったように待ったをかけた。

 

「待ってくださイ、葉月さン。

 志望動機をまだ言ってないんですガ…」

 

「おや、そういえばそうだったね。

 うちの会社を志望した理由は何かな」

 

 一同も流れ的に合格しそうになって、

慌ててヒビキの話に注目した。

 

「ってかさー。

 ヒビキちゃんも黙ってとけば採用って流れだったのにさー」

 

 篠田はじめは勿体無いといった音色でヒビキにそう言う。

 

「いや、流石にそれハ…ダメでしょウ」

 

 はじめの言葉にヒビキは冷や汗を垂らしながら、

突っ込む。

 

 一同は真面目だ、と内心思いつつ苦労してそうだなと

彼女に関して総評価した。

悪い評価ではないのだが、ヒビキ的には嬉しくないだろう。

 

「とは言っても…話しづらい内容なんですよネ。

 今の状態でハ…」

 

「…どういうこと、なの?」

 

 ひふみは難しそうな表情で頭を抱える彼女をみやり、

伺うように尋ねる。

 

「これだけは信じて欲しいんですガ、

 私も結構ガチな理由でここで面接を受けてまス、

 その理由の一つに私の妹があるんですヨ」

 

 彼女の言葉にゆんはある種の共感を感じた。

自分も弟や妹が面白いと思うゲームを作るのが理由だからだ。

 

「で、その妹…九能郷里(くのうさとり)と言うんですガ…

 その子は明後日、ここにデバッグテスターのアルバイトに申込みに来まス」

 

 その報告に若干、困惑したものの一同はそれがどうつながるか、

当然わからない。

 

「すいませン、ややこしくて面倒な言い回しなのハ分かってまス、

 私の志望は妹に大きく関わることなのデ、彼女を含めた方が説明しやすいんでス」

 

 何より…余りいい話ではないですシ

 

「ふむ…嘘は付きたくないが、本当の事を言うのは難しい…

 という感じかな?」

 

「えぇ、まぁそんなところでス、

 只、妹の鄕里は私と違い活躍はしてくれるのは保証しまス」

 

 強い目ではっきりと断言する。

余りにそう言うので妹びいきのシスコンかと感じたが…

 

「あの子がいれば多分、プログラムやデバッグ班の作業はかなり効率化されまス。

 そうですネ…私の採用の取り消しを賭けてもいいくらいでス」

 

「えぇっ!?そんなに凄いの!?妹さん!?」

「いや、でも私たちの作業ってそんなに簡単なものじゃないけど」

 

 余りの妹の持ち上げっぷりに桜ねねは純粋に驚いたが、

鳴海ツバメは不機嫌そうに顔を歪めた。

 

 まるでヒビキが自分たちの作業を蔑ろにしてまで妹を溺愛してるように見えたからだ。

その視線を感じたのか彼女は頭を下げた。

 

「不愉快にさせたのは謝りまス、

 ですが…あの子を見てやってくださイ…

 私のいう意味が分ると思いまス」

 

 それを踏まえた上で、私の志望動機を改めて話しまス。

 

 ツバメは彼女のその態度に困惑した。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、何かマジみたいじゃん…

 その妹さん、そんなに凄いの?」

 

 どこか深刻めいたものをヒビキに感じたツバメ。

彼女は引きつった表情で聞き返してしまう。

 

 ヒビキはどこか疲れた表情で彼女に笑みを返すだけだった。

 

「まっ、まぁ…即戦力が増えるのはいいことじゃないか。

 二日後が楽しみだな」

 

 しずくは空気を変えるように手を叩いた。

 

「そうですね、いずれにせよ。

 使える人材があるのなら越したことはありません。

 彼女は真面目そうなので、その言葉を信じるとしましょう」

 

 うみこはふむと考え込みそう結論付け、一同は解散した。

そして今日は各々の作業に戻り、一日を終えたのだが…

 

 

 ヒビキの言葉通り、二日後、郷里の能力に驚愕することになる。

 

 

 




明晰夢をマスターしかかってる私です。
あー…夢の中にずっといたい…かつ痛い妄想を浸ってイタイ…

以上、無意味な報告でした(をい

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