ゲストキャラが出てきます。
ある意味ではクロスです、はい。
スイマセン。
「んっ…ここって…?」
鳴海ツバメは目が覚めたとき見たのは見知らぬ天井だった。
合成樹脂の天井ではなく、木目の天井。
触覚を研ぎ澄ますと、柔らかい感触がある。
どうやら布団に寝かされていたようだ。
自分の服装は昨日のままで隣には愛すべき
はっきりしない思考のまま起き上がると、見たことない部屋だった。
和式っぽいのだが、壁にチベット装飾の布が貼ってあった。
起き上がると紅葉の隣に郷里が寝ていた。
「えっと、ここってじゃぁ…
この子とヒビキの…家?」
若干、困惑するようにツバメはあたりを見回す。
自分たち三人がいる部屋の隅には中身の入ったギターケースが立てかけられている。
壁にはベースが展示されており、画鋲で楽譜が止められていた。
「あー…思い出してきた…」
苦笑気味に頭を抱えてツバメは笑う。
昨日は金曜日でヒビキの歓迎会に参加していた。
そこで二十歳になった自分は酒を飲んで倒れたのだろう。
紅葉はまだ未成年だが流れで飲んだようだ。
おそらくこの姉妹は倒れた自分たちを自宅に連れ込んでくれたのだ、
そう推察できた。
「あっちゃ~、ちょっと悪いことしたかなぁ~」
「別に気にするモンでもないですヨ…
久々の来客なのデ」
ツバメの自己反省の言動に苦笑交じりにヒビキは扉を開けて現れた。
手にはお盆と二つのマグカップがある。
そのマグカップから湯気が出ている。
「あー、おはよっ、ヒビキん。
ありがとねっ」
「いえいエ、ぐっすり眠れましたカ?」
「うんっ♪」
ヒビキは彼女にマグカップを差し出して微笑む。
ツバメは笑顔で受け取り布団の上にしゃがみ込む。
どうやらホットココアのようだった。
「ありがとっ」
そしてツバメはココアを啜る。
アルコールで淀んだ体にミルクとカカオが染み込んでいく。
「あー…まだ、私にアルコールは早かったかもねぇ~」
「自覚がある分イイですヨ。姉さんと遠山さんなんか凄かったんですかラ」
昨日の宴会めいた歓迎会を思い出し、ヒビキは苦笑した。
「ははっ、あんまり覚えてないけど八神さんに結構説教されたんじゃない?」
「えぇ、とはいっても酔っぱらってたのデ、
後半なにゆってるか全然っ、わかりませんでしタ」
「あれま。
まぁ、八神さんをあそこまで弄れるのはヒビキんだけだよねぇ…うん…」
「まぁ、私は別に憧れの人物っていうわけではありませんからネ。
姉妹の特権というか、そんな感じでス」
「八神さんのファンからは羨ましがられそうだ、
こりゃ」
「私からすれバ、姉が結果的に有名になっただけなんですけどネ」
ツバメはヒビキの言葉に最もだ、と納得していた。
少なくとも昔から知る人間にとっては、コウもヒビキも互いに気の置けない関係だろう。
「まっ、それは置いといて…ツバメさんっ、
たぶん貴女が目覚めると思ったんデ一人分だけ朝食作っときましタ。
在り合わせですけド、食べといてくださイ」
「えっ、あー…そこまで気を使わせちゃったかー。
でも、アリガト、頂くね。お礼はいつかするからね?」
「別にいりませんヨ、そんな重いモンでもありませんシ」
そういうとお盆を小脇に抱え、
ヒビキは出ていこうとする。
「ん?どっかいくの?」
「ちょっと日課の長距離ジョギングに…
押し付けるようで悪いんですけド、郷里の事頼めますカ」
「いいよ♪まとめて紅葉の面倒も見るつもりだったし」
「さいですカ」
咲くような笑みを浮かべて答えるツバメ。
その笑みに苦笑交じりにヒビキは答える。
「あっ、ヒビキんっ!」
「何ですカ?」
振り返るとツバメはどこか悪戯めいた笑みを浮かべている。
「敬語、使わなくていいからねっ」
「…ん…でもォ…」
「い・い・か・ら・ね・?」
「はイ」
その言葉にツバメは満足げに頷くとよっと立ち上がる。
そして笑みを浮かべて手を差し出す。
「改めてよろしくねっ、ヒビキん」
「うん、分かったヨ。ツバメ」
そういいヒビキはツバメの手を握り握手を交わした。
―――――――――――――――
ヒビキがジャージに着替えてジョギングに行ったあと…
ツバメはテーブルに乗った料理に手を付けるため椅子に座った。
「んっ、美味しいっ」
木のテーブルに置かれた焼かれたトーストにバターとジャムを塗ったツバメ。
それを口に運ぶと笑みをこぼして感想を述べる。
特別美味しいというわけではないが、
こういう飽きない美味しさは大事だと感じている。
皿に盛られたポテトサラダとベーコンエッグも、恐らくヒビキの手作りだろう。
「ヒビキん、料理はできるタイプなんだね…。
あぁ、さとっちがあの状態じゃそうなる、か」
家事が好きかどうかは置いておいて、
妹の郷里があの状態では必然的に家事をするのはヒビキになるのは明白だった。
「他人の作った料理なんて久々ってのもあるけど、
普通に美味しい」
半熟卵の卵焼きがベーコンに絡んで、ツバメの舌を絡め楽しませている。
そんな中、不意に視線を感じた。
じーーーー。
紅葉がジト目で朝食を食べているツバメも見ていた。
「っ!びっくりしたっ、ももっ、いるなら行ってよっ…
目玉焼き落としそうになったじゃんっ!」
「…だってっ、なるが一人だけごはん食べてるから…ずるい。
私のは作ってないの?」
「あのねぇ、これ私が作ったんじゃないし…
寝てたももにあるわけないじゃん」
紅葉はツバメが作ったものだと思っていたのでわずかに驚いた。
とはいっても作った人は予想がついていた。
そもそも隣に郷里が寝ていて、自分たちの家ではないのだ。
「ヒビキちゃんが?」
「うんっ、多分、私が最初に起きるだろうからって、
今、頂いてんの」
「…ずるい」
「いや、無茶言わないでよっ。
じゃ、ほら…」
まだ手を付けてない方の目玉焼きを箸で割って切り取ると、
紅葉の前に突き出した。
「ほらっ、ももっ、あーんっ」
「んっ、ありがとっ、なるっ、あーん」
突き出された目玉焼きを紅葉はぱくっと受け止めて貪った。
半熟の君が彼女の舌に絡みついて味覚を刺激した。
「あっ、美味しい…。
なる以外の人の初めて食べたかも」
「だよねぇ~…
もももたまには私に作ってくれても良いんだよ?」
ツバメはにやっと口元をゆがめてそういう。
紅葉はさっと視線をそらした。
余りにも鮮やかな視線回避でツバメは小さく噴き出す。
「さて、じゃ…これからどうしようかなっと」
ツバメは居間を見回してふむと腰に手を当て立ち上がる。
「とりあえず、ヒビキんが帰ってくるまでに買い物を済ませてあげよっか」
「?どうして?」
紅葉の問いにツバメはにやりと笑った。
「今度は私が持て成す番かなってねっ」
「がんばれーなるー…今日は何を作ってくれるの?」
ツバメの言葉に期待に目を輝かせて見上げる。
「いや、ももも手伝ってよっ、
一宿一飯の恩みたいなもんなんだからっ」
呆れたようにツバメは溜息を吐いた。
「そういえばさとっちはまだ寝てるの?」
「うんっ…私ねてる間に何かされてないよね?」
若干の警戒を含んだ音色で紅葉は神妙に尋ねた。
ツバメは半笑いであいまいに返すだけだ。
「いや、わかんないって…私酔ってたし…」
「だよねぇ…それよりなる。
ヒビキちゃんに言ったこと覚えてな…いか、やっぱり」
紅葉の言葉にぴたっとツバメは固まり、
冷や汗をだらだら垂らして相方を見やる。
腹が立つほどニヤついた笑みだった。
「酔ったなるがあんなにヒビキちゃんに甘えるなんてぇ~♪」
「ちょっ、私ヒビキに何したの!?」
「何って…さっきゆったじゃん。
めちゃくちゃ甘えてたよ?」
「えぇえっ!?」
「とはいっても、私とヒビキちゃん、郷里さん、
ひふみリーダーだけが二次会にいってさ、
あの面白いなるの姿はみんな見てなかったけどね。
大体が一次でダウンしたし、うみこさんも酔ってたからね」
「そっ、そうなんだ…よかった」
だんだん思い出してきたツバメは顔を真っ赤にした。
そうだ、二次会から自分は酒を飲んだんだ。
「思い出してきた?
なるったら自分の身の上話をしてさ、
泣きながらヒビキちゃんに抱き着くんだもん」
「わー!!わー!!」
そうだ思い出した。
旅館を継ぐ、継がないでもめた母親の話。
手伝ってくれたねねと紅葉の協力による感謝など…。
「うわぁ…私っ、関係ない事を関係ない奴に話してんじゃん」
意外と迷惑の幅が出かかったことにツバメは頭を抱えた。
「でさ、なる…起きたら聞こうって思ったんだけど…。
ナナセ?って誰なの?」
「あっちゃぁ~私、そこまで口走ってたのかぁ~」
紅葉の疑問にがっくしと肩を落としてツバメはうなだれる。
「流石にどんな人までかは言ってなかったけど、
なんか気になって」
この親友は見栄っ張りで意地っ張りだ。
紅葉はそれを知ってるので無理をさせないためにあえて踏み込む。
直感だが合格しても自分と違い彼女は「はい、めでたし」
で終わるとは考えにくかった。
自分を真剣に見る紅葉に自嘲気味にツバメは笑う。
(全く、ねねっちやももにはいつも心配かけるなぁ~…
今回はヒビキんにまで、か)
「じゃ、ちょっと真面目に話そっか、
といっても単純なことだけど」
「というと…」
「私が中学の時に旅館に泊まりに来たお客さん、かな」
で、私にやりたいようにやればいいって言ってくれた人、だよ。
「そうなんだ…
だからプログラマーに?」
「正確にはちょっと違うけど、
あの人の関係者たちがゲームを作ってるって言ってたから…
興味持っちゃってさ」
「そう、なんだ。
その人もゲーム関係なの?」
「ううん、音楽関係の人だった。
よくよく考えたらさ…ヒビキんに状況が似てる気がするんだよね」
「あー、音楽関係でゲーム業界ってところだね」
ツバメは思い返すように微笑んだ。
「私が生まれる前には一時期、有名になった人らしいよ。
ホームページを見ると今はインディーズやったり「あるガールズバンド」
の講師をやってるみたいだよ」
確か、名前は…
―――――――
音楽とトレーニングは無関係に見えて案外そうではない。
準備をするのに重い機材を運んだり、状況によってはステージを走り回ったりもする。
楽器自体の重さがあるのだ。
キーボード、ドラムのような据え置き、
ボーカルや笛ならともかくメジャーな楽器は大抵、力や体幹がものをいう。
そして肺活量や呼吸法も関係する。
ヒビキの休みの日課は20キロのランニングと公園での懸垂などだ。
彼女は早いペースで走り、今、雲梯で汗だくになりながら懸垂をしていた。
「49っ…!50っ…!」
雲梯から手を放し肩を切らして、呼吸を整える。
「今日のノルマっ、完了っ!」
伸びをして首にかけたタオルで汗を拭く。
後は歩いて帰ろうとしたが…
ひっびっ、きぃっ、ちゃ~~~んっ♪
「っ、この声ハッ!?」
気づいたものの、ヒビキは背中に突貫してきた衝撃に倒れそうになる。
しかし、鍛えてるのか踏ん張って背中にいる人物に苦笑を浮かべる。
「久しぶりですネ?
というか、相変わらずですネ…唯さン」
「へっへっへ~…久々~♪
またちょっと身長のびたぁ~…?」
髪は茶色のセミロングで、右の前髪を黄色のヘアピンで留めた女性…
いや少女を思わせる人物がヒビキに抱き着いている。
「唯さン、もう26なんだから…それに顔隠してくださいよ?
もう、そこそこ有名人なんですかラ」
「へっへっへ~っ、
ヒビキちゃんをみたら急に抱き着きたくなっちゃってさ~」
「放課後ティータイムの平沢唯に抱き着かれて、
すっごい視線が刺さってるんですけド…」
心なしか人が集まってきており、
唯に向けてスマホを翳していた。
やがてざわざわと声が聞こえる。
しかし、彼女の出す天性の空気がざわつきを納めていく。
こういうモノをこの人たちは持っている、
そう思い知らされ、久々の気分にヒビキは浸りそうになる。
「あっはっは~、
…じゃ、とりあえずちょっと皆と話さない?」
先ほどの笑みのまま、唯はヒビキを見上げて尋ねる。
「…あの話ですカ?」
「うんっ!あずにゃんが久々に会いたがってるんだ…
今、丁度、私たちのアパートに来てるんだけどね♪
憂も一緒にね?」
「そうなんですカ?梓さんか…もうデビューして二年で…
唯さんたちは4年くらいでしたっけケ?」
「そーだよっ!ぶいっ!」
唯はピースサインをしてニヤッと笑う。
「でもっ、先生が厳しいんだよねっ、
笑顔でマラソンさせられたし」
「ははっ、あの人も変わってないですネ」
「いや、ヒビキちゃんのお母さんじゃんっ!?
他人事みたいに言ってるけどっ、「若いうちは何やっても死なない理論」の人の娘さんじゃん」
「私はそれが当たり前でしたシ…」
その言葉に唯はがっくしと項垂れた。
「まぁ、そうなんだけどネ…。
それは置いといてさ、付き合ってくれる?
ヒビキちゃん?」
瞳を潤ませてうるうると見上げてくるOG。
ヒビキが入学するころにはいなかったが、
彼女の母校は唯と同じ桜が丘女子高等学校だった。
なぜ、彼女が唯たちと会うことになったのか…
それほど重要ではないが、それなりに明らかになるかも…しれない。
一応、オリキャラを作るにあたってヒビキの過去にもそれなりの経歴があります。
只、それをすると更にオリキャラを量産しなくてはならなくなるので、
今回同じきらら作品の彼女に登場願いました。
身もふたもない話をすると、
二次創作者がオリキャラを作って過去を作っても
原作のキャラほど興味を持たれないうえに、
自分が一から作ったものでもないので薄いと感じたんです。
私がヒビキの技量や才能を肯定するように描写しても、
それはそれで痛々しいので…
それなりに凄さが伝わる感じを模索して…
きららファンタジアを見て思いつきました。
一応、私の頭の中ではけいおん!とnewgame!はつながっていて…
唯たちは八神さんたちと同世代。
そして大学在学中にデビューしてるという感じです。
若干、姑息ではあるのですが…
このクロスオーバーは公式でもやってくれそうなので、
信憑性や原作感が出るんじゃないかなぁ
と思い唯さんに登場してもらいました。
次回は多分、梓さんと憂さんが出ると思います。
ちなみにひふみ先輩と同じくらいの年になってる設定です。24~25位ですね。
この二人もデビューしてます。
そしてそのための講師がヒビキの母でという、
この凄さを表してみました。
何か、スイマセン…。
何より、ヒビキ自身が行動的なので他のきらら作品を繋げる、
そういった役もできそうです。
郷里も何かしら経歴はありますがヒビキほど予想外ではないです。
これでよければ次回を楽しみにしてください。
感想待ってます。