悪食女と美食竜   作:あかいかあ

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一幕 第四話

モスを食べてその後。

 

残った苔の付いた皮を使って、トゲ状の実で穴を開け、ツタを通して袋を作った。モンスターの俺は手が使えないので、ほとんどミツネが作ったのだが。

今は俺の体にくくり付けてある。このツタは結構頑丈で便利だ。

そして今、ずっと探索である。

 

一つわかった事がある。モンスターの俺は魚を捕るのが上手い。

 

ミツネは武器を手に入れた。昨日、初めて狩ったモンスター、モスの骨を二本折り、双剣に見立てただけの代物だが。

 

モスを昼食と考えて、日の沈み始めた頃。

夕食を探していたらアプトノスがいた。食べようと襲い掛かったが、骨双剣では叩く事しか出来ず、俺も噛み付いたが振り払われてしまった。

アプトノスには"美味しい"と俺の本能が示したので何とかして食べたかったのだが。

 

「俺達、弱いな」

「うん。弱いね」

 

そんな話をした。

仕方ないので、草や木の実を採り、魚を捕まえて夕食を済ませ、適当な穴ぐらを探して寝た。

どれも"まあまあ食える"や、"美味しくない"だったので、満腹にはならなかったが。

対して、ミツネはなんでも食べる。それもとびきり美味しそうに。いいなぁ。

 

ここまでが、昨日のあの後と出来事。

 

 

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「今日はどこへ行くー?」

 

「行ったことの無い所を目指そう」

 

「りょーかいです隊長!」

 

こんなんでいいのか?と思うほどののほほん具合だが、一応周りを気にしながら生活している。

 

そして、ミツネの悪食だが、予想外のことがわかった。

毒キノコでも食べられるのだ。

探索をしている時に、

 

「アルはこのキノコ食べれそう?」

とミツネが聞いてきた。よく見ると、"食べたら毒"と美食センサーが示した。

 

美食センサーとは、例の本能のことだ。ミツネがそう呼ぶので、そう名付けた。

 

「ミツネ、このキノコ食べたの?」

 

「うん。ジューシーで美味しいよ!」

 

「毒あるっぽいぞ?」

 

「嘘!ヤバいじゃん!まさかこれ、毒テングダケ⁈」

 

「おいおい…なんか変な所無いか?」

 

「うーん…無い!」

 

悪食とはいえ毒まで食うとは…

そのあとしばらく様子を見たが、特に変化は無かった。

ミツネと話したのだが、ミツネが白ジィへ出した4つ目の条件は"なんでも美味しく食べる"こと。それはもしかして、毒でもなんでも美味しく栄養にできるってことなんじゃ無いかって事になった。

 

悪食ってヤバくね?

 

 

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ケルビを見つけた。川のほとりを歩いていたら見つけた。しかも三頭いた。

 

ただ、今は腹が膨れている。川の魚を片っ端から食べたのだ。しかし、ケルビに対して俺の美食センサーは"凄く美味しい"と示した。

 

「ケルビって美味いの?美食センサーはどう?」

 

「凄く美味しいってさ。今度の夕食はケルビにしよう」

 

「凄く美味しい⁈やったね!しっかりお腹空かせて準備しなきゃ!」

 

無駄な殺生はしない。俺とミツネはそう決めた。自分の強さを測るために戦うことも必要だが、怪我をしてしまっては意味が無いし、軽い気持ちで殺生をしてはいけない。

 

にしても、見覚えのある景色だな…

そう思っていると、ミツネが口に出した。

「ここ、見覚えあるよ」

 

「俺も思った。多分森丘の1番だ」

 

間違いない。向こうに8番へ続く岩場がある。あっちは2番へ続く道。て事は…

 

「「ベースキャンプが近くにある!」」

 

同時に言った。そして、ベースキャンプの方向へ走り出したミツネに着いて行く。

 

「待ってミツネ!ベースキャンプだ、もしかしたら人がいるかもしれない」

 

ピタッと走るの止め、そろりそろりと歩くミツネを見て、少し笑ってしまった。

 

 

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何と無くだが、人には見つかりたくない。自由に生きることがミツネの条件だし、第一、人間であるミツネとモンスターの俺が一緒に居る事を他の人がどう見るかわからない。

 

 

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幸い、道は一本道だった。

見覚えのあるテント、焚き火のための組み木、ここは間違い無く森丘のベースキャンプだ。

 

「すごーい!本物だ!」

 

「あんまりいじると何があるかわからんぞ」

 

とは言ったものの、これはワクワクする。

今までは自然の中にいたが、この世界へ来て初めての人工物だ。いろいろ気になる。

 

支給品ボックスの中を見るミツネだが、「何にも無いや」と言った。

 

俺はテントの中を見渡す。ベッドがある。これは暖炉かな?そして、小さなチェスト。

そしたらミツネが近くへ来た

 

「何かある〜?」

 

「うーん、このチェストが気になる。」

 

「こんなのあったんだ。知らなかった」

 

そう言ってミツネはチェストの中を見た。そして、何やら書かれた紙の束を取り出した。

 

「何それ?なんか書いてあるぞ」

 

「うーん、さすがに日本語じゃ無いね、読めな……あれ?」

 

「いろんな植物の絵が書いてあるな、ん?どうしたんだ、ミツネ」

 

「私、これ読める。」

 

「えぇ?なんでよ、俺は読めないぞ」

 

「どうしてだろ?ただ、なんとなく内容がわかる」

 

「白ジィのおまけか?」

 

「そうかも。とりあえず読んでみるね。」

 

「わかった。頼む。」

 

ミツネは紙の束をペラペラとめくりながら、読み始めた。俺は何も出来ないので見張り。

 

「大体わかった。これ、森丘の植物についての図鑑だ。」

ミツネそう言ったので、一緒に見る。

 

確かに、言われてみれば見覚えのある木の実や植物、キノコの絵がある。ミツネは今得た情報を元にいろいろと教えてくれた。

 

「多分、アルがよく食べてる草はこれ。薬草と、げどく草。それと、アオキノコもかな。まだ私達は食べて無いけど、やっぱり怪力の種や忍耐の種もどこかにあるみたい。あと、アルの言った通り毒キノコは毒テングダケだったよ。絵がそっくり。」

 

「すごいな、ミツネ。ありがとう」

 

「へっへーん!感謝しなさーい!私は賢者ミツネであるぞ!」

 

「ははーっ!」

なんてふざけていたら、ミツネが話を戻した。

 

「でね、この実の事も書いてあったの。最初に一度だけ食べた、柿の種の味がするあの実。また食べたいなぁ」

 

「ああ、あの死ぬほど辛いやつか。で、あれは何だったんだ?」

 

「龍殺しの実。だってさ」

 

「なるほどな、龍が嫌う実、龍殺しの実か。なんとなくモンスターにはキツそうだし、俺はもう食べないが。」

 

龍殺しの実のページをじっくりと見る。

何書いてあるのかさっぱりだけど。

 

「やっぱり、この世界には古龍とかいるのかな?」

 

「いるだろうな、モンハンの世界だし。」

 

「強くならなきゃね。生きるために」

 

「そうだな、頑張ろう。」

 

 

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龍。古龍。竜とは違う、自然を操るって設定の強い奴ら。やっぱりこの世界にもいるんだろう。

でも、アプトノスも倒せない俺たちじゃすぐにやられてしまう。強くならねば。

 

 

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いろいろ見ていたら、日が暮れ始めた。

ミツネに声を掛けようとしたその時。

 

 

ガチャリガチャリ

 

硬さのある音がした。歩くときに出てしまう、防具の音。

すぐにわかった。ハンターが近くにいる!

 

ミツネも気が付いたようである。急いでテントの裏へ回り、一緒に息を潜める。

 

 

 

テントの隙間から微かに姿が見えた。二人いる。一人の顔は覆われていて見えない。もう一人は若い青年に見えた。

 

二人とも納品ボックスへ近づき、何かしまっている。会話をしているようだが、俺には理解出来ない。外国語を聞いている感覚だ。

 

そして、納品を済ませたのか、二人のハンターはテントの中へ入り、睡眠と取り始めた。

 

 

~~~~~~~~

 

始めて見た、ハンター。モンスターを捕まえ、殺し、讃えられる。俺自身がモンスターとなった今、そう見える。

俺の焦りを感じ取ったのか、ミツネもじっとして、小さく呼吸をしている。

 

ミツネが小な声で言った。

「寝ている隙に、逃げよう」

 

それしかないと思った。俺が知っているのは、納品クエストなら、納品してクエストクリア。20秒したらいつもの村や集会所。そこまでしか知らない。

 

でも、この二人のハンターには、クエストクリア後の20秒など存在しない。自分の足で帰るのか、何か迎えが来るのか。

 

であるなら、この二人がいつまでここにいるのかがわからない。逃げるなら今。

 

 

そして、ミツネへ俺の背中に乗るように促し、毛をしっかりと捕まらせてから走り出した。

 

 

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観測船からギルドへ

 

新人ハンター、マランツとクロックの経過報告について。

クエスト内容はランポス15頭の討伐。

ランポスを8頭討伐に後、ベースキャンプにて清算アイテムを納品。

仮眠を取り、再度出発する模様。

 

 

追記

 

森丘にて未知のモンスターに乗る少女のようなものを視認。その後すぐに森へ入り、消息は不明。

この事への指示を求める。

 

 

以上

 

 

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