一幕 第一話
見慣れない場所に居る。
ゴツゴツとした石畳の廃墟の様な場所。
少し混乱しているが、なぜか気分は落ち着いている。
目の前には法衣を着た白髪白髭の老人が立っていた。
「目が覚めたかの、少年」
どこだここは?車の中じゃないのか?ていうか死んだんじゃないのか?
「死んだんじゃぞ」
おぉ?俺の考えてる事が聞こえてる?
「うむ」
あ、えっと、すみません、ここはどこですか?
「リアクションが薄いのう。少年よ。」
「まぁ良い。とりあえず、少年、君は死んだのじゃ。」
あ、はい。
「での、ワシが此処へ呼んだのじゃ。」
じゃあ天国…?自殺だから地獄か。
「どっちでもないんじゃよ。此処は。とりあえずワシの話を聞いてくれるかの?説明するからの」
…はい。
「まず、此処は天国でも地獄でも、君たちの言う現実でもない。君たちからするところの別世界じゃ。での、普通はどこの世界で生を終えても、各々の世界でまた巡り巡って生を受ける。輪廻転生ってやつじゃ。それはイメージ出来るかの?」
よくあるやつね、はい。
「じゃが、様々な世界の中でも時折極大な力を持つ者が現れる。普通はその力を制御するのじゃが、今回はちと話が違う。」
と、言いますと?
「ワシの納める世界で、極大な力を暴走させおったやつがおる。それも、他の世界へ干渉するほどにの。そして、干渉してしまった結果、変わってしまったモノがあるのじゃ」
それが何なんです?
「運命じゃよ。お主らの世界のな」
運命…ですか?
「君たちの運命に、我々の世界が干渉してしまったのじゃ。君たちが死を選んだ事に、こちら側の責任があるのじゃ。」
あなた方の所為で僕らは死んだと?
「端的にはそうじゃ。一つ、君たちの世界で起こり得ない出来事があったのを覚えているかの?」
色々あったので、さっぱりわからないです。で、あなた方の所為であるのならもしかして生き返ったり出来るんですか?元気なミツネに会えるのですか?
「待っておくれ、そこも説明するからの。今話に出た、ミツネ殿の話じゃ。君たちが初めて会った時に干渉は起きてしまったんじゃが…」
初めて会った時…起こり得ない出来事…
あ…
風……風が吹いた。扉も窓も閉めた部屋で。
「そう。その時じゃ。その時にワシの世界では暴走が起きた。その余波はお主らの世界へ及び、それによって弱っていたミツネ殿の病にまで降りかかったのじゃ。」
…てことは、それがなければミツネは…
「うむ。助かっておった。完治し、お主と生涯を共に過ごす運命じゃった。」
てことは、彼女の両親も元気で、幸せだったってこと?
「その通りじゃ」
はぁ?
「本当に申し訳ない。」
彼女の両親はこれからどうなる?
こんな事言いたくないが、二人共おかしくなってしまったんだ。
「わからん。お主らとの話を済ませる事で、お主らの世界とワシの世界は収束を初めて、やがて未来が見える。今は不安定なのじゃ。じゃから何とも言えん。」
くそっ……なんだよそれ…
はぁ、それはあんたが悪いのかよ?
「ワシは管理者じゃからの。ワシに原因があると言える。謝っても済まないことなのはわかっておる。」
ただ、実際悪いのはその極大な力とやらを暴走させてしまった奴じゃないのか?
「それはワシの世界の中での話じゃ。他の世界へ干渉となるとそうはいかん。」
わかった。
もう一つ聞きたい事がある。
「聞かせていただきたいの。」
ミツネはどうしてる?一緒に死んだんだ。
「うむ。ミツネ殿とは先ほど話を終えたのじゃ。先に逝ったのは彼女じゃからの。その次にお主じゃ。」
そうか。わかった。
どこかにいるんだな、安心したよ。
で、今どこにいる?
「転生の準備中じゃ」
は?転生?
「ワシの世界へ転生するのじゃ。生と死は真逆じゃからの。そちらの世界で干渉によって二つ命が減ると、こちらの世界で二つ命が増えるのじゃ。そうやって全ての世界は出来とる。」
わけわからん。なんで元居た世界に戻れないのか。減ったんだから戻したらいいじゃないですか。
「そちらの世界の命の数を、こちらの世界が奪ってしまった。その数で世界は決定してしまった。そう言えばわかりやすいかの。」
奪ったって…随分乱暴ですね。
「命への干渉じゃからの。乱暴なんてもんじゃないのじゃ。禁忌じゃよ。」
禁忌ですか…
「お主は物わかりが良いのう」
だって意味わからないですもん。冷静に聞かないともっと酷くなる。
「そうかの。」
で、本題は?転生がうんたらとか。
「そうじゃの、では本題はじゃ。」
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話を聞いてから質疑応答をした結果、爺さんの話を要約するとこうだ。
まず、転生をする。
そして、ある程度転生の内容を指定する事が出来る。三つ位の条件なら受ける事が出来るそうだ。
そう理解した上で、爺さんに質問をする。
転生体は人?それとも人外?
「それはお主の思い次第じゃ」
条件に極大な力を指定することは出来る?
「出来ぬ。極大な力とは、自然が生み出す力の集合じゃ。それこそ、運命じゃ」
どんな世界?
「少しばかり見せられるぞ、ほれ」
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目の前が突然森になった。
そして、すぐにわかった。
あそこにいるのはジャギィだ。間違いなく。隣にジャギィノスもいる。
ほんの数秒、世界を見て、すぐに元の景色へ戻った。
「モンハンじゃねえか!!!」
~~~~~~~~
色々と驚きがあった。まさかモンハンとは…
ただ、モンハンの世界なら条件の指定もしやすい。
戸惑いもあるが、冷静に考える。
質問を続ける。
ミツネはこの世界を見た?
「見せたぞ。お主のと同じように"もんはん!"と叫んでおった。なんなのじゃ?それは?」
なんでもないよ。で、次の質問。
ミツネは人になった?人外になった?
「まだ転生中じゃ。というよりも、お主の儀式の終了と共にミツネ殿の儀式も終了するんでの。」
はぁ、どうしようかな…
最後の質問。
ミツネの出した条件は?
「それはの、
一つ、強い体
二つ、自由な生活
三つ、アルと共に
じゃよ。」
ミツネらしいと言えばミツネらしい。あいつ、転生に夢見て良く考えずに指定したな…
それに強い体って…モンスターにでもなる気かよ…
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しばらく考えて、条件を決めた。
一つ、力を暴走させた奴をぶんなぐる。
二つ、ミツネを守る力。
三つ、ミツネと共に。
この三つだ。
色々考えたが、結果こうなった。
一つ目は単純に思念だ。こうなった元凶に喝を入れなければ。
二つ目と三つ目は、絶対に入れると決めていた。
そして、多分ミツネはモンスターに転生する。勘だけど。ここだけは賭けるしかない。
ちなみに、よくある成長速度増大とか、リミット解除も出来るのか聞いたが、自然の摂理とかなんとかで出来ないそうだ。
転生が出来てなぜそれが出来ないのか。疑問だ。
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「では、始めるぞい。」
どうやら本当に転生するらしい。
地面が白く光り始め、わけのわからないまま儀式が始まった。丸い光りに包まれて、光の外にいる爺さんはこちらへ手を向けているのがぼやけて見える。
ふと爺さんが言った。
「少しばかり条件を増やせそうじゃ。空きがある。何かないかの?小さなことしか叶えられぬが」
今それを聞きますか…
うーん、どうしよう…
ミツネに会えればとりあえずは良いんだよね。
「ミツネ殿と同じ場所に転生するから安心せい。そうじゃ、お主は病院食がどうのこうの言っておったな。その辺から何か出せぬか?」
ほほう…モンハン世界とは言え、何食わされるかわかったもんじゃないしな。
おーけい、わかった。
じゃあ条件を追加します。
四つ、美味しいものを見だだけで判断出来るように。
「うむ。丁度良い条件じゃ」
「では、さらばじゃ」
シュッと音を立て、視界が全ての白く染まった。
こうして、俺の転生ライフは始まった。
次回の投稿は火曜日になります。