悪食女と美食竜   作:あかいかあ

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一幕 第十一話

メラルー。

 

いたずらっ子だけどなんか憎めない憎いヤツ。

3匹でウロチョロ何かを物色してる。こっちには気付いていないようだ。

 

ミツネが俺の方へ身振り手振りしている。

(いたぁー!メラルーだよぉ!アル!)

そんなことを言っているんだろうなぁ。

 

(おう!静かに観察しよう!)

伝わっているかは分からないが、ミツネは草の影へ隠れ直した。どうやら伝わった様だ。

 

 

…しかし、かわいいなぁ、メラルーは。

戦闘中にアイテム盗まれたりすると、本気でイラッとするけど、遠目に見てれば単なる歩く猫だ。これは飽きないぞ。

 

 

~~~~~~~~

 

 

しばらく観察していたら、ミツネがコソコソと俺の所へ来て、耳打ちする。

 

「あの子達はお話出来るのかな?」

 

やっぱり気になるよなぁ。

「どうだろうなぁ?話しかけたとして、襲われたら面倒臭いしなぁ」

 

「アルさんや、わかってないねぇ。」

 

「ん?なんか案でもあるのか?」

 

「これだよ、これ。」

 

ミツネはランポスカバンから何やら草を出した。

それ、もしかして…

 

「うしししし、マタタビだよ」

 

その時だった。マタタビの匂いに気が着いたのか、メラルー達がニャーニャー鳴きながらこっちへ走って来る。なかなか迫力がある。どのメラルーも死にものぐるいの表情だ。

 

「あわわわわわわ!ごめんなさい!あげるから!あげるからぁ!」

 

ミツネが迫力に負けたのか、メラルー達へ向けてマタタビを放った。そして3匹は、一つのマタタビを取り争って喧嘩を始めてしまった。

 

「あうぁ…どうしよう…喧嘩してるよぉ〜私のせいだよね…怪我しちゃうよ、やめてよ〜〜」

 

「いやぁ、無理だろうなぁ。猫のマタタビ愛は異常だもんなぁ。」

 

「アルゥ!そんな優しい目で見ないでぇ!」

 

「いやぁ、猫の喧嘩を止めようとするミツネを見てるとねぇ、なんかサバイバル忘れちゃうなぁって。」

 

「そんな事言ってる場合じゃないぃ〜」

 

「あはははは。」

 

 

戦う猫と、焦るミツネを見ていたら、トンネルの奥からアイルーが現れた。

 

 

「ニャーニャニャニャ、ニャー!」

 

なんか言ってる。

 

 

~~~~~~~~

 

 

遠くからゆっくりと歩いて来るアイルー。どんぐり装備かな、なんか着てる。どんぐり君と呼ぼう。

 

ニャーニャー言いながらこちらへ来るけど、さっぱりわからん。さっきまで喧嘩してたメラルー達も喧嘩をやめて、こちらへ来るどんぐり君を見ている。

 

「ミツネ、なんて言ってるかわかる?」

 

「ううん、わからない。なんかニャーニャー言ってるだけ」

 

「さすがに猫の言葉は分からないかぁ」

 

どんぐり君がメラルー達からマタタビを取り上げた。

うわ、こいつそれが目当てかよ、ゲスだな。

 

だが、どんぐり君はマタタビに目もくれずマタタビを3つに割き、1/3のマタタビをそれぞれ1匹ずつへ渡す。

ごめん、ゲスって言って。

 

どんぐり君が「ニャ。」と言うと、3匹のメラルー達は地面へ潜ってどこかへ行ってしまった。どんぐり君カッケェ。

どこかへ行ったメラルーを確認すると、どんぐり君は俺たちの所へ来て、さっきまでのニャーニャー語とは違う、何らかの言語を話し始めた。

 

「%%<+€*$=$」

 

は?なんか言ってるけどわからん。

 

「なんか言ってるのかな、もしかしてミツネはわかる?」

 

「なんか盗まれたものはあるかって」

 

「いや、無いな。マタタビくらいだ」

 

「わかった。」

 

そう言うと、ミツネは

 

「*€<>$%•££**><.**€$€*」

 

「ちょっと待て、ミツネさんや」

 

「どうしたの?」

 

「なんでモンハン語喋れるの?」

 

「わからないけど、白ジィの力なら考えたら負けかなって思って考えるのを辞めたの」

 

「あーーー、わかった。ミツネが全面的に正しい。俺も考えるのやめるわ。ごめんな、話の腰を折って。続けてくれ。」

 

「はーい。ちょっと待っててね」

 

 

~~~~~~~~

 

 

ミツネとどんぐり君は話を始めた。

 

マタタビの件の事を話しているのか、どんぐり君は申し訳なさそうに頭をポリポリと掻いた。ずいぶんと人間っぽい仕草をするんだなぁ。

ミツネも、笑ったり驚いたりしながら話している。

 

 

 

ちなみに、もし俺たちの過去、出身とかを聞かれたら、

 

【暮らしていた集落がモンスターに襲われて、逃げてきた。その頃の事はよく覚えていないし、どの様な道のりでここまできたのかもわからない。だから村の場所もわからない。アルはミツネのペットで、ずっと一緒に暮らしていた。なんでか話せる。】

 

と言う都合の良い設定をミツネと作ってある。

ハンターを見たあの日、もしもこの先俺たちが捕まるとか保護されるとか、強制的に人間のいる場所へ連れていかれてしまった場合の為に作ったものだ。

幸い俺はモンスター(ペット)だし、ミツネは小さい女の子(見た目は)なので、無理な設定でもなんとか押し通せるだろうって事で、こんな設定が決まった。

もし、どんぐり君に聞かれてもミツネはその設定から話してくれるはずだ。

 

 

とか考えていたら、ミツネの声色が少し変わった。辛い事があった時になる様な声だ。何を話しているんだろう?

 

 

~~~~~~~~

《ミツネとメラルーの会話。モンハン語。》

 

なんで白ジィはアルにもモンハン語わかる様にしてあげなかったんだろう?

 

とりあえず、この世界では始めてのアル以外の相手とお話だよ。緊張するなぁ…

 

「さっきはマタタビを盗られたくらいだよ。でも使い道も無かったから大丈夫。」

 

「マタタビの事はごめんニャさい…ボク達はマタタビを見るとなんか止まらニャいんだニャ。ボクは鍛えたから耐えられるけど、野良のメラルーには耐えられないんだニャ。」

 

「大丈夫だよ!もう一個あるから、アイルー君にもあげようか?」

 

「本当かニャ⁉︎……い…いや、遠慮するニャ。本当に止まらないんだニャぁ…できればしまっておいて欲しいニャ」

 

「わかった。閉まっておくね」

「そうだ、私はミツネ。君はなんて言う名前なの?」

 

「ボクの名前かニャ?うーん、…まぁ、それは後で良いニャ。ミツネ殿達はクエストの途中じゃ無いのかニャ?こんな所でボクの話してると時間がもったい無いニャ」

 

なんで名前教えてくれないんだろ?もしかして名前がないのかな?

「ううん、私達はハンターじゃないんだ。今は放浪してるの。」

 

「ハンターじゃニャい?じゃあなんでここにいるニャ?もしかして密漁者かニャ?」

 

「違うよぉ!私のいた集落がモンスターに襲われて、なんとかここまで着いたの。集落の場所もわからないし、しょうがないからアルと一緒にサバイバルしてるの。」

 

嘘をついた…しょうがないけど、会話の出来る相手に対して、転生したなんて言っても信じて貰えないと思う。ごめんね、アイルー君…

 

「…それは気の毒だニャ…密漁者なんて言ってゴメンニャ」

 

「いいよ、しょうがないもん」

 

「立派だニャぁ…所であのモンスターは何だニャ?やけにミツネ殿に懐いてるみたいだニャ」

 

「彼はアルだよ。何のモンスターかは知らないけど、ずっと一緒にいるの。サバイバルでもいっぱい助けてくれて、すっごく頼りになるんだよ!」

 

「ほぇー、仲良しなんだニャ。でも始めてボクらや奇面族以外で話をするモンスターを見たにゃ。まぁ、さっき何か話していたけどさっぱりわかららニャかったけどニャ」

 

あ…この世界ではアルが喋ってる事も、もしかしたらおかしい事なのかも…とりあえず誤魔化そーっ!

 

「アルは優しいんだよー。私のわがまま聞いてくれるし、助けてくれるよ」

 

「仲良しは良いことニャ。と言うか、ミツネは随分と荷物が少ないニャ。カバンとボロピッケルだけたニャんて…よくそれでサバイバル出来るニャ」

 

「あはは、何とか生きてるよ。君はサバイバルに詳しいの?」

 

「まぁ、昔はハンターのオトモしてたからニャぁ。それなりに知識はあるのニャ。」

 

「すご〜い!オトモって大変なの?」

 

「オトモに着くハンターによるニャ。気に入られると沢山戦って強くなれるし、気に入られないとひたすら雑用ニャ。」

 

「へぇ〜。じゃあ、オトモに行ってたって事は、気に入られてたんだ?」

 

「それはそれでいろいろあるのニャ。ボクが自分の名前を嫌いなのも、今こうしてここにいるのも、全部ハンターのせいなのにゃ。」

 

 

 

 

 

…なんだろう…?ハンターのせい?

元ハンターとして、心を決めて尋ねる。

 

「…聞いてもいい?」

 

「もし、ミツネ殿がハンターになったとして、オトモを大事にするって約束してくれるなら、話すニャ。」

 

少し引っかかる。ゲームの中で私はオトモに優しかったのかな?

今、ハンターになるつもりは無いし、なったとしても雇うつもりも無い。ただ、覚悟は決める。

「…わかった。約束するよ。」

 

 

~~~~~~~~

 

どんぐり装備に身を包んだ、森丘で出会ったアイルー。

 

彼はまず、自分の名前を言った。

 

「ボクの名前は、"挑発&回復笛" だニャ。」


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