悪食女と美食竜   作:あかいかあ

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一幕 第七話

肉の匂いにつられたか、仲間を思って来たのか。

定かでは無いが、明らかに戦闘態勢の3頭のランポスの群れに囲まれている。

 

逃げられない。

 

逃げられないのを悟ったのか、ミツネも骨双剣に手をかける。俺も威嚇の為に喉を鳴らす。

 

しかしどうしようか。アプトノスを仕留め損なった輝かしい実績を持つ俺らにとって、ランポスはまだまだ遠い相手だぞ…

 

睨み合いながら、考える。

攻めることができるのは、相手の首。アプトノスよりはずっと細いし、噛みつくことが出来ればチャンスはある。

 

「ミツネ、どうする?」

 

「とりあえず周りを走って様子を見るよ。アルは何か考えがあるの?」

 

「首に噛みつければいけるかも。でも、確実ではない。」

 

「わかった。囮になるからアルはその隙を狙って。」

 

「了解。気を付けてな。まずは向かって右のランポスから行こう。」

 

「わかった。アルも気をつけてね」

そう言うと同時に、ミツネは飛び出した。

ミツネも自分の骨双剣が使い物にならない事を知っている。それもあって囮になると言ったのだろう。

初の戦闘らしい戦闘だが、お互い慌てずに行動出来ている。きっと四六時中ゲームで鍛えた連携みたいなものが今生きているんだろう。

 

ミツネは群れの右側から周り込み、端っこのランポス(ランポスAと考える。)に石を投げつける。ランポスAはミツネの方を向き、大きな鳴き声をあげて走り始めた。

 

他のランポス2頭(こちらも、ランポスB.Cと考える)もそちらへ向おうとするが、全力で咆哮してこちらへ気を向けさせる。その2頭がこちらへ来たのを確認して、直線的に、ミツネに向かって行くランポスA目掛けて駆ける。

不思議と足は進む。自分でも驚く程に。

 

…この感覚…いつかハンターから逃げた時に感じた、韋駄天の感覚だ…

不思議と体が前へ進む。景色が一瞬で後ろへ消えてゆく、あの時の感覚。

 

ランポスAは完全にミツネを見ている。俺はその真後ろ。絶対的な好機だ、見逃せない。

ランポスAから2メートルほど離れた位置から、首目掛けて飛ぶ。

 

ガッ!

 

上手くいった。ガッチリと首に噛みつくことが出来た。

ミツネもそれを見て、俺に「任せる!」と言ってランポスB.Cの元へ行く。

 

暴れるランポスAを前足で抑え込み、顎に力を入れる。しかし、思ったよりも硬い。一思いにここで息絶えてくれれば、辛くないのに。

 

命のやり取りをしている今、優しさで生かしてやろうなんて考えは、今の俺には無い。

前足を、支点にして力をグッと入れて、ランポスAの首を折る。

こちとら元々人間だ。テコの原理くらい知っている。

 

ランポスAは体をビクッビクッと震わせている。

 

やった。しかし、終わりでは無い。ミツネはどうしてる?

 

「アルゥ〜〜助けて〜〜!」

 

気の抜けるような声のする方を見ると、ミツネとランポスB.Cが追いかけっこをしていた。締まらないなぁ。

急いでミツネの元へ駆ける。

 

 

ミツネに追いつき、叫ぶ。

「ミツネ!乗れ!」

 

「アルゥ!!!」

 

バッと横っ飛びをしてミツネは俺に抱きついた。

ミツネさん、それは、[乗る]じゃなくて、[しがみつく]だよ。そのままランポスから離れるようにして、駆けた。

 

このまま逃げ切れれば良いんだけど。

 

 

~~~~~~~~

 

 

そうですよね〜〜。

うまく行きませんよね〜〜。

 

ランポスは追って来た。

走りながら聞く。

 

「ミツネ、どうする?」

 

「うーん、やるしか無いかんじ?」

 

「だなぁ。」

そうだよなぁ。嫌だなぁ。

 

「さっきと同じ作戦で行こう。アル」

 

「わかった。気をつけてな。」

 

「うん!」

 

 

立ち止まり、ランポスたちと対峙する。ミツネは俺から飛び降りて、先程と同じように周り込む形で走り出した。

 

ミツネを目で追うランポス達に、咆哮をあびせる。少しこちらに気が向いたのか、ランポスBはこちらへ来た。

すかさず、ミツネはランポスCへ石ころを投げつける。

ここまでは完璧。

 

そして、ランポスCはミツネの方へ。

ランポスBは俺の方へ走って来た。

 

クソッ、今ランポスBの相手をすると、ミツネが危ない。

そう思い、怪我を覚悟でランポスBに突進をして、弾き飛ばす。多分ランポスBにダメージは無い。その突進したエネルギーをそのままに、ランポスCへ向かう。

 

ランポスCは、ミツネへ飛びかかろうと宙に浮いていた。

させるかよ、チクショウめ。

 

足にグッと力を込めて、ランポスCに突進をする。ミツネの目の前で、宙に浮いているランポスCへ肩でぶつかる。

ギリギリセーフ。

突進で倒れ込んだランポスCの首へ噛みつき、ランポスAにしたのと同じように首を折る。これでランポスCはお終い。

 

「アル!危ない!!!!」

 

ミツネが叫んだ。

 

ザクッ

いっっっってぇ!背中を噛まれた!

 

振り落とそうと暴れるが、なかなか落ちない。

乗り状態かよ、クソダルいな、実際乗られるのは。

 

「やめろぉぉぉ!離れろぉぉぉ!!」

 

ミツネが叫び、走り寄ってくる。俺に気を取られているランポスB目掛けて骨双剣を突き刺す。ただ、それじゃあ切れ味悪すぎて弾かれ……

 

ズバンッ!!

 

いつか見た、赤黒い光。それと紫色の靄。

ランポスは俺から口を離し、怯んでいるが、ミツネはすかさずランポスの頭をもう一度骨双剣で殴る。

今回は光も靄も出ない。

 

俺はランポスBの首に噛みつき、同じように首を折る。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「終わったの?かな?」

 

「そうだといいけど…」

 

初の戦闘を終え、お互いに安堵する。が。

 

「アル!」

 

「ん?どうした?」

 

「血!血が出てるよ!!」

ミツネが慌てている。血?なんのこと…?

 

ズキン

 

「いってぇ!」

そうだった。ランポスに噛まれてたんだった。

背中から血が滴る。傷は深くなさそうだけど痛いものは痛い。

この世界にもアドレナリンってあるのね。

 

「どうしよう…包帯も絆創膏も無いよー!」

 

ミツネさん…あるかい、そんなもん。

「薬草でも食べてみるか」

 

薬草を探して辺りを歩く。ズキズキと傷が痛むが、仕方ない。一方、ミツネはドタバタとそこらじゅうの草を引っこ抜いて薬草を探している。いい子だ。

 

 

~~~~~~~~

 

 

戦闘が終わる。クエストじゃないし、この後の事を考えなきゃいけない。

 




次回は火曜日の投稿になります。

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