悪食女と美食竜   作:あかいかあ

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一幕 第六話

ミツネが背中に乗りたいと言うので、乗せながら散策している。

しかし、昨日の様に走ろうと思ったのだが、うまく走る事が出来ずに、今はゆっくりと歩いている。

なんでだろうか、あの韋駄天の如く走る感覚は残っているのだが。昨日の速度まで上げると足がもたつきそうになる。

 

まぁ、ミツネは俺の背中でご機嫌なので良い。

 

実やキノコなどを鞄に入れながら散策をする。

そうそう、散策していたら龍殺しの実を見つけた。

ミツネは拾って食べていたが、あんなものよく食べられるな、と思う。

 

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細い岩のすき間を抜けると、周りを高い岩に囲まれた小さな広場へ出た。

ほえー、なんか凄い景色だな、井戸の中から空を見ている様だ。

 

「アル、ここ、森丘の6番だよ!」

 

あっ!、俺は岩登りがめんどくさくてあんまり使わなかったけど、確かにそうだ。6番だ!

 

「登ってみようよ!上まで!」

 

「でも、この上って5番だろ?モンスターの巣じゃん。リオレウスとかいたらどうしようもないぞ?」

 

「危なかったら逃げる!こっそりと行こう!」

 

言い切るなぁ、ミツネは…

「わかったよ。じゃあ登ろうか、この岩場。」

 

 

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クッソ疲れた。

画面の中のハンターはよくこんな崖をするする登るよな、信じられん。

 

ミツネも相当疲れた様だ。

 

少し休憩をとって、5番…巣穴への入り口へ近づく。

中から音はしない。が、少し臭い。

 

俺とミツネは少しずつ、音を立てないように入って行く。

 

そして、視界が開けて、画面越しによく見た、森丘の5番が視界に広がる。

 

しかし。

 

 

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死体があった。3つ。

 

 

ランポスだと思う。

 

どれも血を流し、絶命していた。

 

首があらぬ方向を向いている。内臓が出ている。

 

悲惨な光景だった。

 

 

「ううえっ…!」

 

ミツネが嘔吐した。

ピシャッっと音をたてて、吐瀉物が落ちる。

 

ミツネに近寄り、前腕で背中をさする。

しかし、何も言えない。

 

「大丈夫…ごめんね」

 

「キツいな、これは…」

 

「うん…」

 

ふと、頭に昨日のハンターがよぎった。

ミツネが訳してくれた、ハンター達の会話。

討伐対象はランポスだっのかもしれない。

 

 

ミツネは壁の方へ行ってうずくまってしまったので、そっとしておく。

俺は死体へ近づく。

 

武器は何を使ったのか?

剥ぎ取りは?

 

知識があるわけでは無いが、傷口から何となく想像出来ると思った。

 

 

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三頭、それぞれの調査を終えた。

 

内二頭は多分切断系の武器。腹や尻尾に切った跡がある。が、武器の種類はわからない。

残り一頭は弓。単純に矢が刺さっている。胴体に二本、頭部に一本。

 

そして、弓で仕留められているランポスは皮が剥がれていた。他二頭は戦闘による傷で皮が使い物にならないのだろうか、皮が剥がれているのはこの一頭だけだ。ただ、肉や骨が大きく見えている。相当グロテスクだ。

 

 

一つわかった。

この悲惨な光景は、ハンターが作ったものだ。

 

 

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ランポスの皮。

 

序盤の武器防具でちょくちょく要求される素材。

 

当然、それが欲しければそれを求めて討伐し、剥ぎ取りや報酬にてアイテムを得る。

 

 

言い換えてしまえば、

相手にダメージを与え、相手の命を奪って、欲しいもの奪い取る。

 

ハンターからしたら当然の事だ。俺もモンハンプレイヤーだったし、同じ事をしていた。

手に入れた素材で、装備を強化して、さらなる敵に挑む。

 

しかし、ハンターが派遣されたということは、依頼主がいて、ハンターと依頼主お互いの利害が一致して、受注して討伐をしているはずだ。その事から、このランポスが全くの無害な存在という訳ではないと言える。

 

 

残酷だがこの世界とは、そういう世界なのだ。

 

 

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「アル、何をしているの?」

ミツネがこちらへ来た。気分は優れなさそうだが。

 

「このモンスターに何があったのかと思って。観察していた。」

 

ミツネに今の観察を踏まえた俺なりの考えを教えた。

ハンターによる討伐であること。

このランポス達に害を受けた依頼主がいるであろうこと。

 

ミツネは黙って聞いていた。

 

「私も、同じだったのかな」と言い残して。

 

 

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「ミツネ、そろそろ行こう。長居してしまったけど、ここはモンスターの巣だ」

死体を見るミツネの背中に話しかける。

しかし、

 

「ねえ、アル、いいかな?」

 

「どうした?ここにいても危険だぞ」

 

「わかってる。でも、どうしても。」

 

「一体どうしたんだ?」

 

 

「この子達、私が食べる。」

優しさなのか、強さなのか。

無計画な提案だったが、ミツネはそう言った。

 

「………。食べるったって、ここには居られないし、持って帰るのも一苦労だぞ。ミツネの気持ちもわかるけど。」

 

観察している時に、ちらちらと美食センサーは反応していた。"まぁまぁ食える"そして、"腐食している。食べられない"など。観察の邪魔だったし、グロテスクなものを見過ぎて食欲が湧かなかったので気にしていなかったが。

 

「このままじゃかわいそう。せめて、私が食べて、糧にしてあげたい。」

 

「わかった。でもここで食べるのも持って帰るのもダメだ。俺が肉を取るから、ある程度取ったらここから離れるぞ」

ミツネは「ありがとう」と言った。

 

"まぁまぁ食える"と反応を示した部位だけ、噛みちぎる。ミツネはその肉をモスの皮で作った袋に入れる。

 

 

~~~~~~~~

 

 

肉を集めた後、森のなへ戻って来た。

大体土地勘も掴めて来て、水辺などの位置も覚えた。

太陽は真上。大体正午あたり。いつもなら昼食を取る時間帯だ。

 

腹は減っている。そして、食材もある。しかし、食欲は無い。

ミツネは鞄を開け、肉出した。血が滴っているので、水で洗う。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

最初は何も言わずに食べていたが、途中からミツネは泣いていた。

 

美食センサーは"まあまあ食える"と示したが、味はわからなかった。ただ、生き物を食べる実感があった。

 

 

~~~~~~~~

 

ゆっくりと食事を進めていたら、嫌な予感がした。

嫌な事ってのは続くもんだなぁ…

 

まぁ、考えてみればそうだ。隠れているとは言え、森の中で獣臭い肉を食べてるんだから。

俺たちが悪い。

 

ギャァギャァと鳴き声が聞こえる。

その声の方向を見ると、やはりいた。捕食者が。

ゲームの中ではただの雑魚だったけど、今は脅威に見える。弱者にとっては恐怖だ。

 

ランポスの群れ。

 

逃げようにも、背中側は壁。

 

…やばくねぇか?これ。

 


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