鉄と血のランペイジ   作:芽茂カキコ

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今後の展開に少し悩む所があり、お待たせしてすいませんm(_)m


2-1.オルクス強襲

▽△▽―――――▽△▽

 

 オルクス商会。

 

 現代表のオルクスによって開拓された独自の地球―火星間航路を有し、表向きは惑星間物流によって信頼と実績を積み重ねてきた火星の一企業。

 だがその実態はギャラルホルンによって流通が制限されているはずの武器や、違法物資、ヒューマンデブリの流通にも手を出す………だがそれでも腐敗したギャラルホルン火星支部によって治安維持が疎かになった火星においては、その面も含めて、ごくありふれた会社の一つだった。

 

〝鉄華団〟なる、あろうことか子供によって作られた珍妙な組織から地球行きの案内役の依頼を打診された時………代表のオルクスは当然、いいカモだと考えていた。

相手は何の経験も、後ろ盾も無い頭の悪そうなガキ共。それに鉄華団が送り届けるというのは、ギャラルホルンから疎んじられているクーデリア・藍那・バーンスタインだというではないか。 

依頼を引き受けるフリをしてギャラルホルンに情報をリークすることで、ギャラルホルンからは報酬と、火星支部長とのコネ、それに今後の火星での商売における便宜を得る。もしガキ共が生き残っていれば鹵獲して適当にヒューマンデブリとして売り払う。

 

 

 オルクスにとってはいつもの商売の延長線上、いつもの小金稼ぎ………そのはずだった。

 その、〝ガキ共〟に出し抜かれ、逃げおおせられ、あろうことかその戦いによってせっかく太いパイプが作れそうだった火星支部長コーラル・コンラッドが戦死するまでは………。

 

 

 

 

 

 

 

『………そして彼ら鉄華団は木星圏を取り仕切るテイワズの後ろ盾を得、地球へと到達し、クーデリア・藍那・バーンスタインを地球へ送り届けるという大仕事を成し遂げた。そんな彼らが、間もなく火星へと凱旋しようとしている。強大な戦闘力と、テイワズの後ろ盾を背景に。………私が何を申し上げたいのか、きっと貴方ならご理解いただけると思いますが』

 

「ぐぐ………っ!」

 

 

 鉄華団………オルクスがガキ共の寄せ集めと見下していた彼らが潰された、という報はついぞ聞いていない。

 むしろ、テイワズと提携し、地球にクーデリア・藍那・バーンスタインを送り届け、今まさに火星への凱旋の途上であると、そんな忌々しいニュースばかりがオルクスの耳に飛び込んでくる。

 

 鉄華団をギャラルホルンに売り渡そうとしたオルクス、そしてオルクス商会を、鉄華団………その首魁であるオルガ・イツカは決して許さないだろう。

 テイワズが圏外圏で有する絶大な影響力を背景に、必ず復讐してくるに違いない。商会の取り潰しか、はたまたオルクスの命を狙ってくるか――――――。

 

 火星共同宇宙港〝箱舟〟。

 オルクス商会が借りる桟橋に係留された強襲装甲艦。

 そのブリッジで艦長席に座すオルクスは、ただただ滲み出る汗を抑えることができなかった。メインスクリーンに映し出されるこの男の言う事が真実なら、数日中に鉄華団は火星へ戻ってくる。そうすれば否応なくオルクス商会と、代表である自分の姿が目に映るに違いない。

 

 

 オルクスは焦っていた。鉄華団が戻ってくれば、間違いなく復讐されてしまう………!

 

 

「も、もし鉄華団が火星に戻ってきたら………っ!」

『オルガ・イツカは「筋を通す」男として知られているそうです。地球への案内役の契約を反故にし、ギャラルホルンへ自分たちを売り飛ばそうとした貴方にも、きっと筋を通していただきたいと、そうお考えでしょうねぇ。賠償金か、はたまた貴方の身柄………テイワズの風習では仕事にしくじった者、道理に反する行いをした者は小指から指を切断されてしまうそうで。一本ずつね』

 

 黒いフードで顏の上半分を隠すローブ姿のその男が、不気味に口角を吊り上げた。

 肝がすっかり縮み上がっているオルクスは、オルガ・イツカの前に引っ立てられて小指から一本ずつ自分の指が切り落とされていく………そんな自分の姿を想像してしまい「ひぃ………っ!」と震えあがった。

 

「に、逃げなければ………!」

『どこに? 木星圏はテイワズのお膝元。かと言って地球圏に商売のアテがある訳でもないでしょう? 海賊に身を落とすには少々実力不足とお見受けしますが』

「な……ならどうすれば良いと言うのだッ!! 大体貴様っ! いきなりアポもなく俺に通信してきたと思ったらこんな………」

 

『落ち着きなさい。私が貴方にコンタクトをお取りしたのは勿論―――私と貴方の利益が一致すると、そう考えたからに他なりません』

 

「そ、それは………?」

 

 ずい、と思わず身を乗り出すオルクスに、黒フードの男は歌うような調子で続ける。

 

『私も、鉄華団がこのまま火星に戻るのは良くないこと、そう考えています。そして貴方は、鉄華団が火星に戻れば命はない。願わくば私自身が鉄華団に手を下したいが、残念ながら私には火星にはおらず、火星での力を持たない。だがオルクス商会ならば一定の戦闘力と、戦力調達のためのコネクションを持っている。私は、貴方に送金できるギャラーを持っている。………お分かりですね?』

 

 

「それは我がオルクス商会に援助ぉ………し、してくださると言うのですね?」

 

 

 ギャラーという通貨単位。それに、データで送られてきた金額を目の当たりに、オルクスは途端に慇懃な調子で手もみしてスクリーン上の男を仰いだ。男も鷹揚に頷き。

 

『その通り。手始めに一通りの傭兵や装備を整えられるだけの資金を、オルクス商会の口座にお送り致します。見事鉄華団を討ち滅ぼすことができたならば………貴方とオルクス商会には地球圏で商売できるよう、お取り計らいいたしましょう』

 

「そ、さ、左様でございますか! それは有難いことでございますっ!」

 

『この仕事、是非ともオルクス商会にお願いしたいのですが………お受けいただけますか?』

 

「勿論でございます! この度は弊社をお頼りいただき、誠にありがとうございます!」

 

 

 すっかりいつも上客にするように平身低頭し始めたオルクス。数秒後、通信席のオペレーターから「LCS通信での入金、確認しました!」と報告が入れば、もう最絶頂だ。

 

 

「ご期待に応えるため、弊社として総力を挙げる所存でございます! 今後とも弊社をご贔屓に」

『ええもちろん。………来期はお任せするつもりです』

 

 

 通信は向こうから断ち切られ、メインスクリーンは一瞬暗転し、また眼前の宇宙港の構造物を映し出した。

 オルクス商会、そしてオルクスに最早選択肢は残されてなどいなかった。

 

 生き残るためには………この男に縋るしかない。

 送られてきた金で、モビルスーツや艦船、傭兵、それにヒューマンデブリも片っ端からかき集めて………全力で鉄華団を迎え撃つのだ。

 幸いにして、鉄華団は地球での戦いで疲弊しているはず。それに数で当たれば勝算は十分にある。

 

 

 

 武器商人、傭兵の斡旋所、ヒューマンデブリの売買市場。決戦の日に備えるべく、その日からオルクスは精力的に駆けずり回り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽―――――▽△▽

 

「………そう、このまま彼ら鉄華団が火星に戻ることは良くないこと。せっかく、これだけの大仕事を成し遂げたというのに、――――手ぶらで帰らせるなど許されるはずがない」

 

 

 すでに暗転したモニターを前に………男、サングイス・プロペータはほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

「これは、我ら厄祭教団から鉄華団への………報酬だと思っていただきたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽―――――▽△▽

 

〝ばれんたいんでー〟とかいう行事から、さらに1週間が過ぎた。

 鉄華団の航海は順調そのもので、じきに火星の姿が肉眼視できる距離まで近づけるはずだ。

 昭弘は応急修理が完了した〝グシオンリベイク〟を駆り、弟、昌弘の〝マン・ロディ〟を連れてしばしの哨戒に出た。

 

 

「………どうだ、昌弘。鉄華団には慣れたか?」

『うん………』

「チョコは貰ったか?」

『うん』

「うまかったか?」

『うん、うまかった………』

 

 

 血の繋がった兄弟の割にはぎこちない会話を何度も繰り返しつつ、宇宙空間でモビルスーツが2機、何事も無く時間だけが過ぎていく。それだけでも、夢にも思わなかった、弟がすぐそばにいるという事実に、自然と昭弘の表情も綻ぶ。

 

 

「火星に着いたらもっと鍛えてやるからな。覚悟しとけよ」

『げ………』

「火星はいいぞ。重力のある場所でトレーニングすれば、すぐに身体が鍛えられる。………鉄華団は俺たちの家族だ。身体張って守るぞ」

『分かってる。………兄貴には負けねーからな』

 

 

 その言葉に、つい昔のことを思い出した。確か、まだ親が生きていて、今よりも幼い昌弘と商船団で暮らしていた時。まだ身体がしっかりしていなかった昌弘だったが、その時にはもう重い荷物を運んで親の手伝いをしていた兄貴に追いつこうと、昭弘が日頃運んでいるトウモロコシ袋よりも一回り小さいそれを持ち上げようとして………

 

 

「ふ………」

『あ、今笑っただろ?』

「いや………昔のことを思い出してな。俺もうかうかしてられないな」

 

 

 再会し、所有者である宇宙海賊ブルワーズから昌弘を救い出した時、昌弘は骨と皮同然の痛々しいまでにやせ細った姿で、心も閉ざしていた。

 鉄華団に迎え入れ、時間をかけて心を開き、しっかりと食べ、それに昔のように昭弘に追いつこうと兄に並んで鍛える中で、その身体つきは見る間に変わりつつある。他の元デブリ組の団員も同様だ。

 

 鉄華団がいて、

 デブリの俺たちでも家族と呼んでくれる、奴らがいて、

 新しい家族もいて、

 それに、弟も側にいる。

 

 何もかもがいい方向に変わりつつある。昔だったら想像もできなかったことだ。

 

 

「………っと、艦から離れすぎたな。戻るぞ」

『了解………ん?』

 

 何かに気付いた様子の昌弘。「どうした?」と声をかけつつ、昭弘は素早くセンサー表示に目を走らせた。昌弘は乗機の〝マン・ロディ〟を減速させて、

 

『あのデブリ帯から、何か………』

 

 その時だった。

 

 

 

 

【CAUTION!】

 

 

 

 

「! 敵か………!?」

『ミサイルだっ!』

 

 星雲のように遠くでたなびいていたデブリ帯………そこからミサイルが8発、閃光と尾を引きながらこちらへと襲いかかってきた。

 

「………ッ!」

 

 すかさず昭弘は〝グシオンリベイク〟手持ちのライフルを撃ちまくり、1基、また1基と撃ち落としながら距離を取る。昌弘の〝マン・ロディ〟も同様だった。

 デブリ帯から撃ち出された計8基のミサイル群は、目標を捉えることも無く全弾叩き落される。それでも〝グシオンリベイク〟と〝マン・ロディ〟は油断なく、デブリ帯目がけて武器を構えた。

 

 

「来るぞ………!」

 

 

【AHAB WAVE SIGNAL】………センサー表示画面に映し出されるかなり大きい反応。艦船クラスだ。

 

 

 果たして………次の瞬間、デブリ帯の雲を突き破って強襲装甲艦が1隻、昭弘らの眼前に飛び出してきた。

それは、どこか見覚えのあるカラーリングで、

 

『強襲装甲艦………海賊か!?』

「いや、オルクスの船じゃねえか………!」

 

 旗揚げして間もなく、地球へ向かうのに何のコネもなかった鉄華団が地球への案内役を依頼した輸送業者だ。あのトドの仲介であり、初めから信用などしていなかったオルガによって出し抜かれ、ギャラルホルン火星支部の部隊もろとも振り切ったはずなのだが………

 

 

 さらには――――

 

 

【CAUTION!】

【AHAB WAVE SIGNALS】

 

 

「っ! モビルスーツだと!?」

『デブリ帯から出てくる!』

 

 

 昌弘の〝マン・ロディ〟がマシンガンを撃ちまくる先――――見れば、10機以上のモビルスーツが続々と現れる所だった。昌弘の何倍もの火力で撃ち返され、〝マン・ロディ〟に次々と着弾。

 

『ぐ………っ!』

「昌弘っ! このォッ!!」

 

 

 敵機は………いつかドルトコロニーで見た〝スピナ・ロディ〟や、それに似たフォルムのがっしりした機体。

 昭弘は〝グシオンリベイク〟を駆り、昌弘に砲火を集中するモビルスーツ隊に襲いかかるが、2対10ではあまりにも分が悪すぎる。

 昭弘はバトルアックスを振り回し、数機の〝スピナ・ロディ〟を追い払った。今度は〝グシオンリベイク〟に銃撃が集まり始める。

 

 

「一旦退くぞ!」

『りょ、了解っ!』

 

 

 昭弘は昌弘の〝マン・ロディ〟を引き連れ、飛び出してきた敵艦から激しい砲撃を浴びつつも、余程の不運でもない限り艦砲がモビルスーツを直撃することなどあり得ず、敵モビルスーツ隊からの追撃も鈍い。

 

2機のモビルスーツは宇宙空間に鋭い軌跡を描きながらその場を離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽―――――▽△▽

 

「――――状況は!?」

「哨戒中の昭弘さんより緊急通信。強襲装甲艦とモビルスーツの攻撃を受けたとのことです。………オルクス商会、と言っていましたが」

「何? オルクスだと!?」

 

〝イサリビ〟ブリッジに飛び込んだオルガへのメリビットからの報告。

 オルクス……その言葉に首を傾げつつもオルガは艦長席に座した。

 

「オルクス………何で奴が?」

 

「お嬢さん目当てなんじゃねえの?」

「まさか! オルクスにはもうクーデリアさんを狙う理由は無いはずだ」

 

 操縦桿を握るユージンに、火器管制席のビスケットが反論。何にせよ、情報が少ない中ではオルガも推測すらできない。

 

「とにかく昭弘たちは一旦戻せ! 哨戒中でガスがやばいはずだ。………おやっさん!今から出せるモビルスーツは!?」

 

『カケルの〝ラーム〟と〝マン・ロディ〟が3機だ。〝バルバトス〟は片腕だけじゃ………』

 

 格納デッキに通信を飛ばし、雪之丞が応える。

 だが、その通信に別の声が割り込んできた。

 

『片腕でもやれるよ。俺も出る』

『無茶言うな三日月。片腕だけじゃあ………』

「とにかくミカもスタンバってってくれ。まずはカケルから出す!」

 

 

 ブリッジは戦闘態勢に移行。

 ブリッジ部分が内部へと収容され〝イサリビ〟下部ではカタパルトデッキが展開。モビルスーツの発進に備える。

 メインスクリーン端に表示されるセンサー表示画面でも、こちらへと帰艦する〝グシオンリベイク〟と〝マン・ロディ〟。それにその後ろから複数のエイハブ・ウェーブの反応が迫りつつある様が見て取れた。

 

 詳細な情報を求め、オルガはメリビットに目を向けた。

 

 

「モビルスーツの機種と数は!?」

「エイハブ・ウェーブの反応から、全てロディ・フレームの機体と思われます。数は10機。5機はドルトでも見た作業用モビルスーツ〝スピナ・ロディ〟と、残り5機は〝ガルム・ロディ〟と呼ばれる戦闘仕様のモビルスーツのようです」

 

 メリビットがテイワズからダウンロードしたデータをメインスクリーンの右側に表示。〝スピナ・ロディ〟が単なる作業用モビルスーツであることに比べ、〝ガルム・ロディ〟は傭兵や海賊でも使用される本格的な戦闘用モビルスーツのようだ。

 

「それだけじゃない!」とメインスクリーンを見やっていたビスケットが声を張り上げた。

 

「後ろからまた来る。一隻はオルクスの船みたいだけど………」

 

 10機のモビルスーツに続いてセンサーに飛び込んできたのは、2隻の強襲装甲艦のエイハブ・ウェーブ反応。

 うち1隻は〝イサリビ〟にも固有周波数データが残っていたオルクスの船。もう1隻は所属不明だが、同じ強襲装甲艦だ。

 

 

「敵艦2、敵機が10か」

「〝ハンマーヘッド〟の戦力を合わせてもこっちが不利だ………」

 

 ビスケットの言う通り、現状、こちらには向こうの半分少々の戦力しかない。

 それに長期に渡る惑星間航行で、皆疲れが溜まっているはずだ。ベストコンディションで戦えるとは到底言えない。

 

 と、通信オペレーター席でアラーム音が短く鳴り、メリビットがハッと顔を上げた。

 

「オルクス船からLCS通信です!」

「繋げ」

 

 オルガが頷き、その瞬間、オルクスのでっぷりと太った身体と丸い顔立ちが大きく映し出された。

 

 

『久しぶりだなァ………鉄華団。ノコノコ火星に戻ってくるとは』

「よく俺らの前に顔を出せたもんだな、オルクスさんよ。地球への案内役の契約を反故にし、俺たちをギャラルホルンに差し出そうとした上に、今度は喧嘩まで売ってくるときた。正気とは思えねえな」

『あの時貴様らが大人しくクーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を差し出していれば済む話だった! だというのに貴様らは………』

 

 

「あんたの身勝手な理屈に興味はねェよ。てか、俺たちに喧嘩を売るって意味が………あんた、ちゃんと分かってんのか?」

 

 あくまで歯に衣着せぬ物言いのオルガに、スクリーン上のオルクスは顔を真っ赤にした。

 

『ケツ持ちがテイワズだからって調子乗ってんじゃねえぞ! お前らみたいなガキの寄せ集めなんぞ、あっという間に叩き潰してくれるわ!』

「言ったな………。後で吠え面かくんじゃねえぞ」

 

『んだと!? そりゃあこっちのセリ………』

 

 

 なおも吠えたてようとした肥満男を、オルガは通信を断ち切るようメリビットに促しスクリーン上から消し去った。眼前には、すでに敵モビルスーツや艦船のスラスター噴射光が見え始めている。

 

 と、今度は〝ハンマーヘッド〟から通信が入ってきた。今度は鉄華団にとって兄貴分である名瀬の姿が。

 

 

『何にせよ相手はやる気満々みてーだな』

「すんません兄貴。どうにも面倒な相手に絡まれたみたいで………」

『気にすんな。今、ウチからはラフタとアミダが出せる。そっちは?』

「カケルの隊を出します。モビルスーツが4機。昭弘と昌弘も、ガスの補充が終わり次第すぐに」

 

『8対10………ま、何とかならん数ではないな』

「カケルを先行させます。攪乱するんで姐さん方はその後で」

 

 

〝ラーム〟のガトリングキャノンで敵を足止めしつつ、こちらもモビルスーツ隊を展開。真正面から一気に食い破る。

 こちらの被害を最小限に抑えるには、一気に攻めて最短で敵の頭を落とすしかない。

 

 

『分かった。ま、軽く露払いしといてくれや』

 

 オルガはこくりと頷き、〝ハンマーヘッド〟との通信を終えた。

 そして力強く前を見据えて、

 

 

「お前ら! 火星まで、俺たちの家まであと少しなんだ。こんなケチなちょっかいで立ち止まるわけにはいかねぇ。一気に食い破るぞッ!!」

 

「おうよ!」

「やってやろうじゃねえか!」

 

 操舵席のチャドとユージンが快哉を上げて応え、ビスケットも「あと少しなんだ………!」とコンソール上の表示を睨み、素早く火器システムを立ち上げていく。

 

 士気は十分。数で劣っていても十分モビルスーツの性能と練度でカバーできる。

 なにせテイワズが誇る武闘派組織タービンズ最強の二人と、ミカ、昭弘、カケルを始めとする優れたモビルスーツ乗りがここにはいるのだから。

 

 火星はもう、すぐそこにまで見えていた。

 

 

 

 

 

 


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