結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
新年最初の投稿となります。今年度もよろしくお願いいたします。
予告通り、大人気アプリゲーム『結城友奈は勇者である〜花結いのきらめき〜』のストーリーをベースとした新章『花結いの章』に入ります。
最初に申し上げますと、当作品では、『ノーマルモード』と『ハードモード』でのストーリーを軸としていく方針です。場合によっては『エキスパートモード』や『スコア報酬』のストーリー内容も取り入れる事もあります。また、気が向いたら『イベントストーリー』も番外編として投稿する事もあります。
当然かなり長くなるのに加え、登場人物も前章から倍近く増えますので、場合によっては読みづらくなるかもしれませんが、その辺りはご了承ください。
では、始まります。
プロローグ:非日常、再び
「今日も勇者部14人、勢揃いだね!新しい物語の始まりはじまりだよ!」
「友奈、誰に向かって話してるんだ?」
開口一番、友奈の元気ハツラツな一言と、兎角からの鋭いツッコミが、部室内の雰囲気を和ませる。
人類の滅亡をかけた、壮絶な戦いから、早くも2ヶ月近く経とうとしていた。既に季節は秋真っ只中。冬も近い事もあってか、そろそろストーブを設置するか否か、そんな話題が学校中で広まる中、讃州中学勇者部では、何ら変哲もない『日常』を謳歌していた。
「毎日が新しい物語……。良いねゆーゆ〜。作家の素質があるかもだね〜」
「感性豊かですものね、友奈ちゃんは」
友奈の一言を受けて、感心した様子の園子と昴。
「そのっちにそんな風に褒められるなんて、流石は友奈ちゃんね。はい、牡丹餅」
「わーい!モグモグモグ……」
そう言ってどこからともなく牡丹餅を取り出した東郷。いつもの如く、美味しそうに頬張る友奈にうっとりしていた東郷は、その勢いで、持参していた牡丹餅を、現在パソコンと向き合っている少年……遊月に差し出した。
「はい、晴人君。あまり煮詰めすぎると体に毒よ?」
「お、ありがとな須美。後で記事の内容、確認してくれるか?」
「えぇ勿論。貴方の書いた記事なら、きっと大丈夫よ」
その様子は、さながら夫婦のやり取りにも見える。その様子を微笑ましく見つめている真琴は、すぐに気持ちを切り替えて、作業を進める。
「巧君、これでどうですか?」
「……悪くはないな。もし余裕があれば、配色にもこだわった方が良い。鮮やかな色と濃いめの色をバランスよく繋げれば、尚の事引き立つからな」
「な、なるほど……。精進します!」
「そこまでかしこまらなくても良いんだがな……」
現在、真琴は巧からの指導のもと、次の依頼……子供会での企画後に園児達にプレゼントする、簡易的なアクセサリーの作成に勤しんでいた。元々、手先が器用だった事もあって、勇者部における物作りのエキスパートだった巧に次いで、小道具の作成や修正において、その実力を遺憾無く発揮できるようになってきたのだ。ここ最近は、巧も真琴に張り付いて細かな部分まで作業を教えており、近い将来、巧だけが扱っていた、精密機械の修理の依頼も任されるかもしれない、との事。
「ほれ樹、冬弥。今度のは取れるかな?」
「えぇっと、これを、こうして……」
「む、難しいッスね……。夏凜先輩はどうッスか?これ解けそうッスか?」
「え……。と、当然よ!完成型勇者をナメないで!」
明らかに動揺している夏凜を見て、苦笑している銀は、園児達に披露しようとしているあや取りを実演し、現在、眉間に皺を寄せている樹と冬弥に解かせようとしている。
「平和だな」
「そうねぇ。逆に不安一杯で、うどんの栄養分が欲しくなるくらい、平和すぎるわねぇ」
「……うん。お前の口から『うどん』というワードが出てる時点で、平和なのが分かるぞ」
そんな後輩達の様子を、少し遠目で見ていた風と藤四郎。ようやく取り戻した日常を誰よりも喜んでいるのは他でもない、彼らなのだろう。
「……さてと。そうは言ってもうかうかしてばかりもいられないんだよな。そろそろ決めた方が良いだろ、次期部長と副部長の事」
「そうよねぇ……。今の2年生って、結構濃い面子が揃ってるから、逆に決めきれないというか……」
「あまり勇者部活動にかまけてばかりじゃマズいからな。受験勉強もそうだが、この間の進路調査票、再提出喰らったばかりだろ?」
「ちょ、そこほじくり返す⁉︎今の今まで何も考えてこなかったんだから、しょうがないでしょ⁉︎」
「だからって、『女子力伝道者』はどうかと思うぞ……。安芸先生も影で心配してたし」
「安芸先生にまでバレてるなんて……!ってか、あんたは何書いたの?」
「俺か……?俺はだな……」
藤四郎が答えようとしたその時、部室の扉が空いて、室内に屈強な男性が入り込み、その後ろから、眼鏡をかけた凛々しい顔つきの女性が静かに入室した。
かつて、神樹館小学校にて勇者や武神のサポート役を担い、現在は讃州中学勇者部の顧問としてつい最近赴任した、体育教諭の源道と、同じく神樹館小学校の元教員で、現在は副顧問兼、友奈達のクラスの副担任となっている安芸だ。
「あ、師匠」
「やぁ諸君!そろそろミーティングの時間だと聞いてな」
「今後の勇者部活動内容を確認するから、みんな集まって」
「おっと、それじゃあこの話の続きはまた今度だな」
「ほらほらあんた達、ミーティング始めるわよ」
「「はーい!」」
そうして夏凜が、和気藹々と話していた友奈達に呼びかけ、集結したメンバー全員が黒板の前に陣取る。
「さて、それでは先ず、今日の活動についてだが……」
そうして源道主導のもと、普段通りの勇者部活動が始まろうとしていた。
……部屋中が光に包まれるという、摩訶不思議な現象を体験するまでは。
「うわっ⁉︎」
「な、何だこの光⁉︎」
「みんな、気をつけなさい!」
「これは⁉︎」
「落ち着いて……!パニックになってはダメよ!」
光は、ほんの数秒で収まり、辺りは静けさを取り戻したが、その場にいた全員の表情は優れない。そして異変は、謎の発光だけにとどまる事はなかった。
「「「「「「……!」」」」」」
次に反応を示したのは、遊月、東郷、巧、銀、昴、園子といった、先代勇者の面々。何かを感じ取ったのか、思わず腰を浮かせる。
「!この、感覚は……!」
「晴人君、これって……!」
「な、なぁ巧!これってさ……!」
「にわかに信じ難いが、間違いない……!」
「まさかこれって……!」
「樹海化する時と同じだ〜……!」
樹海化、というワードを聞いて、ゾッとする他の面々。その言葉は、もう自分達には関係のないものだとばかり思っていたからだ。何かの勘違いでは、と発言しようとする兎角。しかし彼らの感じたものが決して間違いではない事が、すぐに判明する。
「!この音……!」
「あ、アラームが、アラームが鳴ってます!」
「樹海化、警報……!」
突然全員の端末から鳴り響いたアラーム。聞き覚えのある音を聞いて咄嗟に取り出した真琴は、予想通り、『樹海化警報』と記された表示をそのまま口にする。
「な、何でよ。勇者に変身するアプリ、もうあたし達、持ってないのよ⁉︎」
「うわぁ⁉︎あ、兄貴!あれ……!」
「!まさか、本当に……!」
冬弥が指さした先に目を向けた藤四郎は、そこで四国を取り囲むように聳え立っているとされる壁のある方角から光が迫ってきているのを、窓越しに確認する。かつてお役目を担っていた時と寸分変わらぬ状況だ。
「師匠!これは……!」
遊月が振り返って源道に問いかけるよりも早く、世界は光に包まれた。
「……!」
目を開けた先に広がるのは、発表会で使う小道具や、工具、勇者部の活動が取り上げられた新聞などが置かれている教室ではなく、色鮮やかで、周囲に人の気配を感じさせない、巨大な木々や根が辺り一面に広がる、異質な世界。
「樹海……」
誰ともなしに、そう呟く兎角。
『非日常』が、再び彼らに襲いかかった。
これは、平和を取り戻したはずの少年少女達が織り成す、もう一つの物語の記録。
数百年の時を超えて、歴代の勇者達が一堂に介し、新たな物語が、創り上げられる。
『結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜』
〜花結いの章〜
プロローグなので今回はこの辺で。
『ゆゆゆい』が続く限りは、この章が続く形になりますが、既に決定している第3期が始まる頃には、本編軸に戻って別の章を進めていく事になると思いますので、そちらの方は設定等が決定次第、更新していきますので、今後もよろしくお願いします。
〜次回予告〜
「こうも早く、戦いが始まるとは……!」
「一気に行くぜ!」
「魚……かな?」
「やるしかないようね」
「なら、このまま……!」
「私はここでは、巫女であり、特別な存在ですからね」
〜変身と新たな個体と謎の声〜