結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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時間が有り余っている事もあり、連続で投稿します。

そういえば『シンフォギアXD』では、アニメ版『ウルトラマン』とコラボしてますね。
願わくば、世界観が似てる要素もある『ゆゆゆ』シリーズとコラボしてもらいたいものですね。




36:重なる心

辺りが巨大な木の根に覆われて、光が届かない地面を、友奈達は息を荒げながら駆け抜けていく。端末に表示された情報を頼りに、墜落した夏凜と真琴の元へと駆けつけようとしているのだ。

程なくして、彼らの目の前に、倒れ込む2つの人影が発見された。既に変身は解かれているが、目立った外傷はない。精霊バリアによって、高い場所から落ちても無傷で済んだようだ。……が、それで素直に喜べる友奈達では無かった。彼らはこの短時間で満開を繰り返し行使してきたのだ。特に真琴は最後の最後で精霊下ろしを行使したのだ。体への負荷は多大な筈だ。見た目には分からずとも、その代償は大きい。

 

「夏凜ちゃん!」

「真琴!」

「おい、しっかりしろ!」

 

男性陣が真琴を、女性陣が夏凜の介抱にあたる。

 

「……っあ。誰……?」

 

意識が朦朧としているのか、手探りで目の前にいる人物達の正体を探ろうとする夏凜。やがて意識がハッキリし始めた所で、涙目の友奈と、その両隣で体に触れる銀と園子の姿を確認した。唯一動く左手は友奈の頬に触れた。

 

「……友奈。銀に、園子も……。良か、った……。右の、目と耳は、持ってかれたけど、ちゃんと、見える、わ……」

「「「!」」」

 

半分しかない視界の中で、彼女達の姿を見て、少しばかり安堵する夏凜。真琴の援護もあってか、満開による力の解放をなるべく抑え、その結果散華の影響を最小限にとどめられたのかもしれない。しかし傷を負った事には変わりない。自分達以上にボロボロになった仲間の惨状を目の当たりにし、友奈の涙は止まらない。

 

「夏凜ちゃん……!」

「……ねぇ、見てた……? この私の、大活躍を……」

「見てた! 見てたよ! 凄かったよ! ……でも、こんなのって……!」

「無茶しやがって……!」

「にぼっしー達の覚悟、ちゃんと伝わったからね……!」

「東郷を、探そうと思ったんだけどね……。ここまで、か」

 

遂には声を張り上げて泣き出す友奈と、涙目で夏凜の服の裾を強く握りしめる銀と園子。

一方、兎角達もぐったりとしている真琴に必死になって呼びかけ、ようやく目が覚めたのが確認された。

 

「真琴、大丈夫か⁉︎」

「……。……?」

 

震える手で口元の血を拭い、そこで気づいた。真琴は何かを話そうとしているようだが、口がパクパク動いているだけで、何も聞こえてこない。周りにいた遊月達だけでなく、真琴自身も驚いている。が、首元に巻かれている白い帯のようなものを見つけた昴はすぐに理解した。

今の真琴は、樹と同様に、声帯を散華によって失ってしまっている事に。

 

「そん、な……!」

「真琴……!」

 

愕然とする遊月。同時に罪悪感を覚えてしまう。自分がしっかりしていれば、真琴にここまでの深手を負わせずに済んだのではないか、と。覚悟の足りなさが、結果として仲間に負担をかけさせてしまった。改めて無力さを痛感してしまう。

 

「……ねぇ、みんな」

 

不意に友奈の泣き声を遮るかのように、夏凜が頬を緩ませながら、こんな事を語り始める。

 

「みんなに、言いたかった事が、あるの……。『ありがとう』って……」

「「「「「「「!」」」」」」」

 

それは、普段の彼女からは想像もつかないような言葉だったに違いない。全員の目線が夏凜に向けられる。

 

「私……、長い事、ずっと勇者の訓練を受けてきた……。戦う事だけが、私の存在価値で……。でも結局、私は、東郷の言ってた通り、ただの道具だった……」

「夏凜……!」

「でも、銀が、そんな私を受け入れてくれて……、友奈に優しくしてもらえて……。子供の頃からずっと一緒だった真琴にも、助けてもらって……。みんなのお陰で、私は……」

 

夏凜の脳裏には、自身の誕生日パーティーと称して、部屋で和気藹々と楽しんだ時や、その後のメールのやり取り、樹の特訓の為にとカラオケで歌いあった時、そして居場所がないと思い込んでいた自分を探しに来てくれた友奈達の姿。それら全てが、夏凜にとって新鮮で、そして救われてきたのだ。

その思い出があったから、こうして東郷を救う為にと、一歩前に踏み出す事が出来たのだ。

 

「あんた達なら、東郷の心だって、変えられる。きっと……」

 

だからこそ、夏凜は確信しているのだ。東郷を救う最後の鍵。それを握っているのは、目の前にいる彼らなのだ、と。

 

「でも、私はもう……!」

「東郷を救えるのは……、あんた達、だけなのよ……。だって……、この街に来る前から、ずっと一緒に過ごしてきて、一番の友達で、一番、大切な人なんでしょ……?」

「……!」

 

友奈の目が見開かれ、そして閉じる。温もりある左手を握り、そして天井を見上げる。その目に、迷いなど微塵も感じさせなかった。覚悟を決めたようだ。そしてそれは、銀や園子、そして兎角や巧、昴も同じく。2人の頑張りを無駄にしない為にも、そして世界を、仲間を救う為に、決意を固める。

その一方で……。

 

「でも、俺は……!」

 

未だに両膝をついて、立ち上がれない者がいた。自分に自信がないのだろうか。両手は依然として震えている。

 

「……っ⁉︎」

 

不意に、激しい頭痛に襲われる遊月。足元……つまり神樹を通して何かが頭の中に入り込んでくるのが分かる。これまでとは比べ物にならないほどの激痛だ。思わずのたうちまわってしまう。周りから声が聞こえてくるが、呼びかけに応じる前に、その意識はプッツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっと、繋がれたな。ありがとな、神樹様』

 

〜その声……。……誰、だ〜

 

『そうか。今いる世界では初めましてになるのか』

 

〜何で、俺と同じ声が聞こえてきて……〜

 

『そりゃあそうさ。何てったって俺は……。っと、それに答える前に……』

 

〜……?〜

 

『なぁ。これからどうするよ? このままじゃ、世界は滅んじまう。そうならないようにする為にも、東郷……じゃなくて須美を止めなきゃいけない。だったら自分が為すべき事ぐらい、分かるだろ?』

 

〜何でお前が、東郷のその名前を……。いやそんな事はいい。俺だってあいつを止めたい! けど、あいつの気持ちも、分からなくは、ない……。俺だってもしかしたら、東郷と同じ道を選んでしまったかもしれないと思うと、めちゃくちゃ自分が怖くなっちまって……〜

 

『ふぅむ……』

 

〜それに、今の俺には変身する事が出来ない。今の俺に、東郷を止める術なんて……〜

 

『……なぁ。何で自分が変身できないか分かるか?』

 

〜えっ……〜

 

『……ココだよ。「気持ち」が足りてねぇんだよ。大切な人の力になりたい、守りたい。その強い信念が、今までのお前を支えてきた。他の勇者だって同じさ。でも今のお前には、それがスッポリ抜けちまっている。友奈もそうだった。けどまぁ、今の友奈なら、夏凜のお陰で元に戻りそうだから心配してねぇ。でもお前はまだ、迷ってるみたいだからな。そんな半端な覚悟じゃ、勇者や武神は務まらねぇぜ』

 

〜! まさか、お前が俺や友奈に変身させないようにして……!〜

 

『須美を助け、世界を救う。そんな事に、理由なんて必要あるか? こじつけとか理屈とか抜きにしてさ。お前は、これからどうしたい? お前にとって、須美はどんな奴だ?』

 

〜……俺にとって、あいつは……、あいつは……!〜

 

『うんうん』

 

〜支えたくて……、そして支えてもらいたいぐらいに頼れる、最高の女の子だ……! どんな時も優しく接してくれて、どんな時も心強く、檄を飛ばしてくれる……! だから……! あいつが泣いているなら、俺が……! その涙を拭く! 何があっても、守ってみせる! そう約束したんだ! それが俺の、今一番やりたい事なんだぁ!〜

 

『……やっと、その気になれたようだな』

 

〜……?〜

 

『その気持ちは俺も同じさ。須美が困ってるなら、俺も助けたい。最後まで守りたい。その一心で、2年前も戦ってきた』

 

〜……!〜

 

『それに、まだ約束を果たしてないからな。戦いが終わったら、イネスで祝勝会を開く。みんなと一緒にな』

 

〜その約束……。知ってる……〜

 

『おっ? その辺りは思い出せたみたいだな』

 

〜……そうか。だとしたらお前は……〜

 

『……最後にもう一度だけ聞くぜ? 今のお前は、仲間を……そして自分自身を、信じられるか?』

 

〜信じる! もう迷う必要もない! 理由なんて後付けで結構だ! 俺は東郷を……須美を助ける! みんなと一緒に!〜

 

『そうこなくっちゃな! なら、一緒に作ろうぜ! 愛と平和の為、そして明日へ向かう為の、未来を!』

 

〜一緒に……?〜

 

『今のお前なら、俺と一つになれる。こうして会話が出来るぐらいだしな。力を合わせて、須美を助けるんだ!』

 

〜……もし、俺とお前が一つになったら、どうなる?〜

 

『どうって言われてもなぁ……。さすがにそこまでは分からないな。どちらかの人格が消えるかもしれないし、そもそも今までの自分でいられるかどうかも分からない。……けど、何となくだけど、そうはならない気がするぜ』

 

〜俺もそう思う。だってこれは、ありのままの自分を受け入れるようなものだから。それに結果がどうなろうと、俺は恐れない〜

 

『そう!それでこそ勇者……もといヒーローってやつだ!』

 

〜ヒーロー……か。それも悪くない響きだな〜

 

『へへっ。んじゃあ、そろそろ行くか。みんなが待ってる』

 

〜あぁ。絶対に助け出すぞ!〜

 

『もちろん! 俺達なら、出来るぜ!』

 

〜俺達なら、きっと……!〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かざした2つの手のひらが重なり、そして肉体が、心が、1つになる感覚を、彼らは確かに感じ取る。

そして時は、ゆっくりと動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊月! 遊月!」

「遊月君!」

「一体何が……⁉︎」

 

突然倒れ込み、意識を失ったように横たわった遊月を見て、慌てて駆け寄る友奈達。体を揺らすが、返事はない。銀や昴に支えられている夏凜や真琴が、不安な表情を見せる中、時は再び動き出した。

意識が戻ったかのように震えてから、腕に、そして足に力を入れて、ゆっくりと何事も無かったかのように立ち上がる。そして端末を手に取り、アプリを起動し、画面をタップする。花びらが彼の全身を包み込む。

 

「ゆづ、ぽん……?」

 

その時、園子は感じ取った。

今、目の前にいるのは、『小川 遊月』であり、『小川 遊月ではない』少年である事に……。

そして。光が解けて武神姿が露わになった所で、少年は口を開く。

 

「やっと、主役らしい事が、出来そうだな」

 

 




短いですが、キリがいいのでこの辺で。

今季アニメが次々と延期になってますね。こうなると夏アニメとかにどこまで響くかが心配です。これ以上被害が大きくならないように、健康管理には徹底しないといけませんね。


〜次回予告〜


「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「止まってるッス⁉︎」

「あんたを止める!」

「これでみんなを助ける事が……」

「後は、任せてください!」

「正義のヒーローの、復活ってな!」


〜復活の先代勇者〜


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