結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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大変長らくお待たせしました。

職場探しで忙しくなっておりますので、投稿頻度は落ちつつありますが、何卒ご了承ください。


24:国防は続く

「ん〜! ご馳走もそれが続くと」

『うどんが恋しくなるね』

「そうそう!」

 

讃州市の海岸沿いに建つアパートの一室にて、うどんをさも美味しそうにすする犬吠埼姉妹の様子が。

大赦が手配してくれた旅館を後にし、帰りの車内で秋の文化祭にて披露する発表会に関する打ち合わせも大いに盛り上がり、各々が家に帰宅。これにて勇者部の合宿は終了と思われていたが、この姉妹にとって真の締めとは、実家でうどんを食べる事にあるようだ。

 

「家に帰るまでが旅じゃないね。うどん食べて初めて旅の締めに……」

 

旅館から戻って一夜明けた犬吠埼家では、今日もテーブルを挟んで仲睦まじくうどんを堪能し続けている。

と、その時。風の端末から着信音が鳴り響き、首を傾げながら、彼女は懐から取り出す。NARUKOの着信音ではない事から、部員以外の誰か、もしくは極秘の内容が記されているものと考えられる。

早速メールを開いた風は、画面に記載されていた文言に目を通して、僅かながら表情を険しくする。それから、表情を元に戻して席を立つ。

 

「あららごめん。ちょいと行ってこなくちゃ。樹、食べちゃっててねー」

『いってらっしゃい』

 

幸いにも、妹に気づかれている様子はなさそうだ。その事に安堵しつつ、待ち合わせ場所に気を引き締めながら歩き始める風であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れ時に彼女が出向いたのは、普段から通い慣れている讃州中学。その校門付近で先んじて待っていたのは……。

 

「来たか」

「藤四郎。さっきのメールって……」

 

挨拶もそこそこに、早速本題に切り出そうとする風。返事をする代わりに、藤四郎は自身の端末の画面を風に見せる。途端に表情を変えて、眉間にシワが寄った。表情を強張らせる風を見て、藤四郎も頷く。

 

「例の物は部室に届けられているらしい。一応確認の為にお前を呼んだんだ」

「どうしてアレが……」

「ともかく行ってみるぞ」

 

そうして促された風は、藤四郎と共に校舎に入り、真っ直ぐに勇者部の部室へと向かう。

普段から鍵のかかっていない扉を開けて、真っ先に目に飛び込んできたのは、最後に部室を使った時には置いていなかったはずの、アタッシュケース。中央には、大赦からの贈り物を指し示す紋章が。

鍵はかけられていないらしく、早速風がロックを外して開けた途端、けむくじゃらの生き物が飛び出て来て、風に抱きついた。

 

「うわぁ何々⁉︎ ……って、犬神⁉︎」

 

風に掴まれていたのは、彼女のパートナーであった精霊『犬神』。お役目も終わり、変身用のアプリが手元になくなった今、何故犬神が目の前に現れたのだろうか……?

その答えは、アタッシュケースの中に収められているものが物語っていた。

 

「これって……」

「やはりそうか」

 

そう呟いた藤四郎の肩に、彼の精霊『夜叉』が座っている。アタッシュケースの中には、計14個の端末が入っていた。何れも見覚えのあるものだ。

 

「藤四郎の言った通り、戻ってきてる……」

 

呆然と呟く風は、藤四郎が持っている端末に目を向ける。そして、藤四郎宛に送られてきた、大赦からのメッセージを思い出す。

 

『敵の生き残りを確認。次の新月より40日の間で襲来。部室に端末を戻す』

 

この内容から察するに、神託によってバーテックスの残党が判明し、今一度殲滅する為に、勇者や武神となって戦ってもらいたい、という事なのだろう。戦いがまだ終わっていなかった事に頭を悩ませる風だったが、唐突に吹き荒れた風がそれを遮る。

 

「今度は何⁉︎」

 

見れば、アタッシュケース……正確には端末から小型の竜巻が発生しており、黄色と青の花びらが部室を舞う。その中心に何かが佇んでいるのが確認できた。

やがて突風が止み、その物体が把握できた瞬間、2人は同時に目を見開く事に。

 

「これは……!」

「もしかして……。私達の、新たな精霊……?」

 

2人の呟きに対し、尾が鋭い鼬型の精霊『鎌鼬(かまいたち)』と、雷を纏った狼型の精霊『須佐男(すさのお)』はこくこくと頷く。

 

「……どうやら、やるべき事はまだ残っているようだな」

「なんか、本当にこの目が疼いてきたりして……。やれやれ」

 

藤四郎がチュッパチャプス(パパイヤ味)を口に咥えながら、風が左目の眼帯に手を当てながら、これから起こるであろう事態に、緊張感を高めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戦いは、終わっていない」

 

兎角の呟きは、この場に集められた下級生の率直な感想を代弁するものだった。

事は急を要すると判断した藤四郎は、その日のうちに全部員を部室に緊急招集し、事の次第を全て明かした。

 

「大赦からの神託により、バーテックスに生き残りがいる事が判明。戦いは延長戦に突入。ざっくりまとめると、そういう事だ」

「だから、僕達の手元にこれが……」

「あれで終わりかと思っていたが、そう上手く事は運ばない、か」

 

どれほどの規模になるかは分からないが、戦いがまだ続くという事は、友奈達にも理解できたようだ。

 

「いつもいきなりでゴメン……」

「……」

 

風が申し訳なさそうに謝り、隣にいた藤四郎も、皆に見えないところで拳を握る。後輩達をまた戦場に連れ戻してしまう事に責任を感じているのだろうか。

が、それを払拭するように、東郷達は口を開く。

 

「先輩方も先ほど知った事じゃないですか」

「そ、そうですよ! 仕方ないと思いますよ!」

 

東郷や真琴に続いて、他の部員達も口を開き始める。

 

「要するに、その生き残りをぶっ倒せばいいんスよね? なら問題ないッス!」

「そうだな! あたしらはあの一斉攻撃に耐えて勝ったんだからな! そうだろ、巧?」

「まぁ、な」

「銀の言う通りね。生き残りの1体や2体、どんと来い!」

「頑張っちゃうよ〜!」

『勇者部五箇条、なせば大抵なんとかなる!』

「やってやりましょう!」

「……あぁ!」

「みんなの言う通り、力を合わせれば大丈夫だしな」

「それに、風先輩のゴメンはもう聞かないですし、もちろん藤四郎先輩も!」

「……ありがとう」

「心強い後輩だ」

 

後輩達の言葉を聞き、2人もようやく肩の力が抜け始める。そして窓を開け、外に向かって声高らかに宣戦布告する風。

 

「よーしバーテックス! いつでも来なさい! 勇者部14人が、お相手だー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無垢なる少年少女達のお役目は、続く。

敵の数も、その力も、そしてその先に見えてくる真実にも、気づく事なく……。

 

 




ちょっと短いですが、諸事情も含めて、今回はこの辺で。

ゆゆゆいもオリジナルストーリー(花結いの章)が完結し、胸一杯でしたね。今後はどんな風に展開していくのか、期待したいところです。


〜次回予告〜


「百鬼夜行だな」

「あるんかい」

「新たな戦力……」

「たっくんも付ける〜?」

「割としつけられてるな」

「いつ来るんスかね……?」


〜新たな仲間 変わらぬ欠損〜


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