結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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平成ライダー20作目にして、平成最後のライダーとなる『仮面ライダージオウ』のビジュアルが公開されましたね。予想通り、ディケイドに似て、歴代のライダーの力を使えるとの事で、どんなストーリーになるのか楽しみです。

……その一方で、カシラが、グリスが……! 一体何人の命を奪えば気が済むんだ、『仮面ライダービルド』という作品は……!


樹海の記憶編 EP.2 〜星屑〜

違和感あるお役目から一夜明けた、平日の放課後。

依頼こそなかったが、部室には兎角達の姿があった。昼休みに藤四郎からの伝達で、放課後に部室に召集をかけたのだ。

 

「全員集まったわね」

「どうしたんですか先輩? 怖い顔して……」

「何かあったんですか? ひょっとして昨日の事で……」

 

険しい顔つきの風と藤四郎を見て、怪訝な様子の一同。

 

「えぇ、その通りよ。……藤四郎、ここからは頼める?」

「あぁ。……単刀直入に説明する。今朝、大赦からの報告があった」

「報告って……?」

 

浜田家の次期当主としても名高い藤四郎は、今回のお役目では担当地区の武神代表として、大赦とはメールを通じて連絡を取り合う関係にある。風も勇者代表ではあるが、あくまで藤四郎のサポートに位置する。故に非常事態があれば彼に連絡が真っ先に届く事になるのだ。

そんな彼の口から告げられた事実は、皆を驚かせた。

 

「この世界を防護している『壁』が、枯れ始めたとの事だ」

「「えぇっ⁉︎」」

「う、うそっ⁉︎」

「マジかよ……!」

「なん、だと……」

「「「……!」」」

「それめちゃくちゃヤバいやつッスよ!」

「お、お姉ちゃん、本当なの……?」

「……えぇ。そうらしいの」

「壁が枯れ始めているなんて……。そんな事例、初めてですよ!」

「私もだよ〜」

 

皆が口々にそう呟くように、今現在、四国を囲むように木の根で創られた壁があるからこそ、均衡が保たれており、それが枯れているとなれば、それだけ神樹による防衛機能が低下している事を意味している。そうなれば、特に勇者や武神、広い目で見れば大赦にとっても、バーテックスの侵攻が激しくなる事を指すため、楽観視は出来ない。

が、次に藤四郎から発せられた言葉に、一同は更に困惑を深める。

 

「お前達にも理解できたように、これは想定外の事態だ。だが、不思議な事にこの事実を周知しているのが、大赦とここにいる俺達だけしかいないんだ」

「ハァッ⁉︎」

「何で……? 壁が枯れるなんて一大事なのに!」

「そ、そうですよね……」

「少し変だな……」

 

夏凜の発言に同意するように、真琴と巧が頷く。

 

「壁に関しては、大赦が調査中との事だ。向こうからの連絡を待つしかない」

 

原因が分かっていない以上、手出しが出来ないと判断し、この一件は、勇者部では保留となった。

次に手を挙げたのは、東郷だった。

 

「先輩、確認なのですが……。大赦はあの時バーテックスと共に現れた未確認物体について、何か言ってましたか?」

「あ! そういや昨日の敵の事、結局わからずじまいだったな」

「どうなんですか、藤四郎先輩?」

 

彼らが気にかけていた、バーテックスと共に出現した数多くの生命体。藤四郎も気になってお役目の後、すぐに大赦に連絡を入れたそうだ。

東郷の問いに対する返答は早かった。

 

「あれは『星屑』と呼ばれるものらしい。倒した後で言うのもアレだが、敵である事には違いない。バーテックスの亜種みたいなものらしいからな」

「バーテックスが親玉なら、星屑は子分みたいなところか」

「星屑……。名前は綺麗なのにね」

「ね〜」

 

敵の名前のイントネーションに首を傾げる友奈と園子。とはいえ人類を滅ぼすために攻めてくるのは間違いないので、戦うのは必然となる。

 

「星屑が現れたのも、壁が枯れ始めた事と関係あるのでしょうか?」

「恐らく、は……。今後もバーテックスと共に現れるだろうな」

「どうでもいいわ、あんな雑魚。バーテックスもろとも、ぶっ飛ばすまでよ」

「だな! 今のあたしらなら、負ける気がしないし!」

 

勝ち気な性格が似ているからか、夏凜と銀は強気な姿勢を崩さない。それはこの場にいる面々も似た心情なのだろう。

一方で、遊月は昨日見かけた謎の少年の事が頭から離れられずにいた。顔をしっかり見たわけでもないのに、彼の全身像が嫌という程脳内にこびりついている。

 

「(あの時樹海の中でも動いていた少年……。あいつもこの事態に関係しているのか……? でも聞き出そうにしても俺1人しか見ていないんじゃ、どうしようも……)」

 

と、今度は樹が口を開いた。

 

「お姉ちゃん、私も聞きたい事があるんだけど……」

「ん? どうしたの樹?」

「あの時、バーテックスを倒した後に気づいたんだけど……。あそこに、男の子がいたよね?」

「樹も見かけてたのね。私もちょっと気になってたの」

「なっ……」

 

皆に気づかれない位置で驚く遊月。

 

「あ! 私も見ました!」

「俺もだ。樹海の中からこっそり見てたな」

「あたしも見たぞ! 巧も見たよな⁉︎」

「あぁ。顔は確認出来なかったがな」

「園子も見たんだぜ〜」

「僕も同じくです」

「む、そういえば……」

「ぼ、僕も見たような……」

「私も、目視で確認しました」

「! 東郷も見えていたのか……」

「えぇ。遊月君が見てた方向に、男の子が見えたの。じゃああの時もやっぱり……」

「あ、あぁ。その男の子で間違いない」

 

どうやら遊月以外の全員が、謎の少年を目撃していた事になる。

 

「兄貴、おいらも見てるッスけど、誰なんスか?」

「樹海の中で動ける男の子……。だとしたら兎角と同じ武神って事ですよね! もしかして、夏凜ちゃんや真琴君と同じで、援軍なのかも!」

「……そこが、向こうも曖昧な返答でな。大赦に確認したところ、俺達以外には、勇者はおろか、武神も存在しないそうだ」

「え? 武神でもないの?」

「じゃあ何であんなところにいたんでしょうか……?」

「ふ〜む。ミステリアスな展開になってきたね〜。創作意欲が掻き立てられるよ〜」

 

園子が顎に手を当てながらそう呟いた直後、各々のスマホから樹海化警報が発令された。

 

「わわっ⁉︎」

「警報ッス!」

「連日か……!」

「ったく、せっかちな奴らね……」

「……先輩!」

「分かってるわ。男の子の事については後で考えましょう。先ずはバーテックスを倒してからよ!」

『了解!』

 

風の指揮を受けて、一同は世界が結界に覆われる前にアプリを起動し、その身を花びらが包み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色とりどりの世界の一角に、勇者部の面々が準備を整え、臨戦態勢に入ろうとしていた。

 

「行くわよ、みんな!」

「おっしゃあ! どっからでもかかってこぉい!」

「……! バーテックスの姿を確認しました! 星屑もいます!」

 

早速、高台から昴が敵の侵攻具合を確認する。

 

「やはり今回も現れたか」

「この前の男の子、まだいるのかな?」

「今のところ確認できないが……。バーテックスは人を優先的に襲うって話だ。速攻で倒した方がいいに越した事はないはずだ」

「そうだな。やろう、みんな!」

「気合入ってるわね遊月! その勢いでバーテックスと星屑を倒す! 1匹も逃すんじゃないわよ! 突撃!」

『了解!』

 

そう言って前進する勇者部一同。

先んじて星屑は彼らに襲いかかる。が、昨日同様、慌てふためいている様子は見受けられない。その理由は、昴の先導にあった。

 

「藤四郎先輩と冬弥君は2時の方向の星屑を! 小クラスの敵を集中的にお願いします! 遊月君は弓矢で後方支援を!」

「分かった! 冬弥、俺に続け!」

「了解ッス!」

「友奈ちゃん、銀ちゃん、夏凜ちゃんは中クラスの星屑を! 無理して前に出過ぎないように注意を払ってください! 周りの星屑は、東郷さんに任せます!」

「うん、任せて!」

「援護は任せてください!」

「兎角君と巧君、風先輩は正面の敵を! そっちは真琴君がフォローをしてあげてください!」

「はい!」

「分かったわ!」

「樹ちゃんは上からワイヤーで広範囲に攻撃してください! 狙ってきた敵は僕と園子ちゃんがガードします!」

「わ、分かりました!」

「いっつんには指一本触れさせないよ〜!」

 

勇者部のブレーンとも言える昴のテキパキとした指示で、星屑を難なく対処していく。ようやく『蟹座』をモチーフとした、尾についた巨大な鋏を携える『キャンサー・バーテックス』が見え始めた頃には、星屑もあらかた片付け終えていた。

 

「このまま一気に殲滅まで持ち込むわよ!」

「了解!」

「残りの星屑は、あたしと樹でやっつけるわ!」

「み、皆さんは、バーテックスの方をお願いします!」

「任せろ!」

 

犬吠埼姉妹は星屑の殲滅を優先し、残った面々で蟹型へと突撃する。ハサミを突き出して攻撃を仕掛けてくるが、華麗にかわして反撃とばかりに武器を振るう。が、敵も一筋縄ではいかず、ハサミでの攻撃がダメと分かると、今度は周囲に浮いていた、6つの盾のようなもので押し潰そうと仕掛けてきた。

 

「うぉっと!」

 

銀が斧を突き出して受け留める。歯を食いしばりながらも、踏ん張って対抗している。

 

「ダァッ!」

 

すかさず巧がフォローに入り、バチで銀を押し潰そうとした盾を破壊する。銀は目線でお礼を言ってから、次なる盾の破壊に挑んでいく。友奈と兎角も、攻撃を避けながら、カウンターとばかりに強力な一撃を与え、盾の破壊に成功する。

 

「硬いだけじゃ、私を止められないわよ!」

 

夏凜が双剣を振り回し、盾を切り刻んでいく。真琴も援護射撃として、ハンドガンを撃ちまくる手を休めない。冬弥のハンマーと藤四郎の大鎌の連携で、盾を木っ端微塵に粉砕する。

そうして遂に、蟹型を覆っていた盾は全て破壊され、無防備な姿に。ヤケになった蟹型が再びハサミを振り下ろそうとするが、

 

「させません!」

 

昴が刃のついた盾を投げて、尾に絡めると、軌道をズラして一気に優位に立った。ダメ押しとばかりに園子が槍を突き出して地面に伏せた。

 

「封印の儀に取り掛かるぞ!」

 

頃合いとみた藤四郎が叫び、一同は蟹型を囲んで封印の儀を始める。蟹型の体内から出てきた御霊を見て、早速破壊に取り掛かろうとする。が、御霊はヒョイヒョイと回避を繰り返すばかりで、一向にダメージが入らない。

 

「こんのぉ……! ちょごさいなぁ〜」

「闇雲に攻撃しても拉致があかないぞ」

「ならば、逃げ場をなくせばいいだけです! 敵を囲むように攻撃を展開してください!」

「それなら、先ずは俺だ!」

 

先んじて藤四郎が大鎌を振り回して攻撃を仕掛ける。当然全てかわされるわけだが、今度は昴がバリアを展開して逃げ道を塞いでいく。避けようとしたところで、友奈と園子が挟み込む形で攻め上がってきた。さらに回避する御霊だが、逃げた先には兎角がレイピアを構える姿が。

 

「ハァッ!」

 

素早い突きを受けて、御霊が弾かれた。その隙を逃すことなく、銀と夏凜、そして弓矢から鎌に変形させた遊月が取り囲み、上から押さえつける形で御霊の身動きを封じる。来た道を引き返そうとするが、星屑の相手を終えた風が大剣で押さえつける。

 

「今だ、冬弥!」

「ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

トドメとばかりに、冬弥がハンマーを上空から落下して思い切り振り下ろす。押さえつけていた4人はギリギリまで粘り、寸前のところで飛び上がった。その結果、御霊は冬弥の一撃を回避できず、そのまま粉々に砕け散った。同時に蟹型の胴体も砂となり、消滅していった。

 

「やったぁ!」

「勝ったッス!」

「敵バーテックス、及び星屑を撃滅しました!」

「よっし! みんな、お疲れ様!」

「さすがに連日は身に堪えるわね。帰ったらサプリでも飲んで……っと、その前に」

「夏凜ちゃん?」

 

不意に夏凜が、刀を樹海の一角に向けて叫んだ。

 

「さっきからそこで私達を監視してたでしょ? 完成型勇者である私が、気づいていないとでも思ったの? 何が目的?」

『……』

 

夏凜の目線の先に顔を向ける一同。木の根の裏に人影らしきものが立っているのが確認できる。容姿は、少年に近い。

 

「あ、お姉ちゃん! この前の男の子だよ!」

「わっ! あんな近くにいたの⁉︎ 大丈夫だったのかな……?」

「あの、君は一体……」

『……』

 

昴が話しかけると、少年は何も言わずに踵を返すように背を向けて奥へと立ち去っていった。

 

「あ! おい待てって!」

「……行ってしまったわ」

「早く追いかけないと!」

「そうしたいのは山々だが、周りを見てみろ」

「! 樹海化が解ける……!」

 

地鳴りと共に周囲が光に包まれ始める。お役目が終わり、現実世界へ戻っていくのだ。

 

「チィッ、捕まえて色々問いただしたかったのに、すばしっこい奴ね!」

「し、仕方ありませんよ……」

「あの子が助かって良かったけど、何でバーテックスは、あの子を攻撃しなかったのかな……?」

「確かに変だな。ずっとあの場所にいたのなら、危険に晒されてもおかしくなかったし」

「まぁ探したい気持ちはあるが、東郷の言う通り、じきに樹海化も収まるからな」

「悔しいけど、一旦戻るわよ」

「うん……」

「致し方ないですね」

「戻ってから探すのは、針山から針を探すようなもんだしね」

「砂漠で一粒の砂を見つけ出すようなもの、とも言えるね〜」

「……はい。でも、心配だよ……」

「……」

 

皆が少年の行方を気にする中、遊月は1人、少年が消えていった方角を見つめていた。

相変わらず顔は見えなかったが、少なくとも全体像ははっきりと見えていた。間違いなく、自分達よりも歳下の少年だ。冬弥と同じくらいの背丈で、身軽そうな体格だった。もしかしたら、小学生なのかもしれない。

だがそれ以上に、遊月は違和感を感じていた。

 

「(あの子を見てると、なんだか懐かしさを感じてしまう……。少なくとも、見覚えはないはずなのに、どうしてもアレが俺と無関係とは言い切れない。……あの子は、俺にとって一体どんな存在なんだ……?)」

 

湧き上がってきても、何も出てこない答えにもどかしさを感じる遊月。そんな彼の心情を知る由もなく、樹海はその役目を終えて、遊月を含む勇者部一同の目に見える景色を一変させていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……結構かかっちまったな。あいつらの顔を久々に見るまでに」

 

 

 

 




短いようですが、今回はこの辺で。

勘の良い方は、謎の少年の正体がもう分かっておられるのでは?

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