結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

『仮面ライダーギーツ』も終盤に近づきつつありますが、流石に『酷い』を通り越して、『やり過ぎ』の一言に尽きますね……。SNS等でも、今回の脚本に対して「人間の考える事じゃない」などと、辛辣な言葉が飛び交っているようですが、こればかりはそうなっても無理はないかと。
景和(タイクーン)が可哀想すぎるし、何より道長(バッファ)が不遇すぎる……。袮音(ナーゴ)にとっても辛い事だらけだし、まだまだ色々な意味で未熟な子供に向けて、この内容を発信するのはいかがなものかと……。
こうなってくると、藤岡弘、さんを初めとする、歴代の仮面ライダーを牽引して来た人たちの意見も聞いてみたい所ですね。
賛否両論でしょうけど、何かしらの『喝』は入れていただきたいな、と……。

そんなこんなで、気分ダダ下がりな感じでの最新話投稿となります。気乗りしないまま書いたので誤字脱字があるかもですが、ご了承ください。





22:千里の道も一漕ぎから

新たに解放された土地の畑を、造反神勢力の猛攻から無事に死守してからというものの、諏訪組の日常は、少々慌ただしくなった。

 

「……ふぅ。さて、と」

「水都さん、お昼一緒に……」

「お、これから畑か?」

「はい。2人ともお弁当持ってってないから。きっとお腹空かせてると思うんだ。だから、誘ってもらったのは嬉しいんだけど……」

 

短縮授業を終え、球子、調、杏、司の4人が、別教室にいた水都に声をかけたが、どうやらすぐに出かけなければならないようだ。

 

「だったら、一緒に行けば良いんじゃないか?」

「土居さん?」

「畑で、みんなで食べればいいんだ!歌野達の畑、見たかったし丁度いい!」

「それ、ナイスアイデアだよ、タマっち先輩!」

「偶には外で食う飯も良いな!邪魔じゃなければ、一緒にどうだ?」

「……外、暑い。でも、タマが良いなら、僕も」

 

直射日光の下での昼食に、若干難色を示す調だったが、最終的には動向の意を示した。

 

「嫌だなんて……。うん、みんなで行こう」

 

そうして水都を含めた5人は、早速学校から少し離れた畑に出向く。

畑につくと、やはりと言うべきか、せっせと鍬を振り下ろしたり、一輪車を使って土を運んだりと忙しそうな歌野と童山の姿……だけではなく。

 

「あれ?流星もいるじゃん」

「おぉ!司達か!」

 

何故か、童山とは旧知の仲である流星も、畑作業に勤しんでいた。畑が増えた事で、親友の手伝いをしに、何度も足を運んでいるらしく、手慣れた様子で畑を耕している。

 

「おーい!」

「あら、みーちゃん!今日は球子さん達も一緒なのね」

「一緒に昼食摂るついでに、お前らの畑の様子も見とこうと思ってな」

「もう、腹ペコった〜」

「……ちょっと、遠い」

 

球子がお腹を撫で回し、調がやや息切れしているように、学校ないし寮からこの畑までは、それなりに距離がある。運動には自信がある球子や、苦手な調も、流石に堪えるものがあるようだ。

 

「おぉう、飯と聞いたら急に……」

「大変、ハングリーだわ、みーちゃん!お腹が空腹を訴えてる……」

 

手を止めて寄ってきた童山も、畑作から意識が逸れた事で、腹の虫が鳴り始めたようだ。そんな2人に水都が手渡したのは、見るからに大きい、2つの弁当箱。

 

「うん、そうだろうと思って、今日も大盛りにしてあるよ」

「ありがとう!アイラブユー!」

「うん。私もだよ」

「うへへ。体動かした後じゃから、飯が進むわい」

 

などと和やかな空間が広がる中、8人は腰を下ろして、昼飯をがっつく。

 

「それにしても……、結構広いな……。ここ耕すの、大変じゃないか?」

 

ようやく球子が口を開いたのは、おかずを平らげて、お茶で一気に流し終えた後だった。

 

「えぇ、とっても大変よ。だけど、その大変さが楽しいの」

「楽しい……?意味、分からない」

「畑はね、最初は何もない荒野なのよ。そこに、無心で鍬を入れていく……。そうして気づくと、私の後ろには畝があって、それが畑になっていくわ」

「うーん、タマも分からないぞ……」

 

いまいちイメージが付かず、農作業のやりがいに首を傾げる、球子と調。そこへ、童山がこんな提案を。

 

「なら、経験してみるのも一つの手じゃ。ワシらがちゃんと教えるからの」

「うむ!何事も経験だ!俺も童山にご教授してもらい、畑作業の素晴らしさに気づけたのだからな!」

「その提案、乗ったぜ!」

 

何かと流星にライバル意識を持つ司も手を挙げ、球子と調、そして司の3人は、歌野達に基本的な動作を教えてもらいながら、種を植える準備を始める。

 

「さぁ一緒に、農業王を目指しましょう!」

 

歌野に続き、意気揚々と体を動かす球子と司、そして2人に必死について行こうとする調。杏と水都に見守られながら、のどかな午後の時間が流れていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……」

「どうした2人とも!まだ農業王への道のりは始まったばかり!さぁ立ち上がれ!作物は待ってはくれないぞ!」

「そ、その前にこの体の痛みをどうにかしてくれぇ……」

「……」

 

苦悶の表情を浮かべる司は、現在、調と並んで床に伏していた。どうやら慣れない重労働に、普段使っていない筋肉に負荷がかかったらしく、俗に言う筋肉痛が全身に影響を与えて、起き上がれずにいる。司は口を動かせるぐらいには余裕があるようだが、調に関しては、最早『死屍累々』と言う言葉が似合いそうなほど、ダメージが酷かった。

仕方なしにと、水都から預かっておいた湿布を、2人の背中に貼り付ける流星。

 

「うぅっ⁉︎冷てぇし、湿布臭ぇ……」

「……湿布、だか、ら」

 

どうにかして震える声でツッコミを入れる調。そこへ、杏と水都、そして司達と同じく湿布を貼り終えた球子が腰をさすりながら、部屋へと入ってきた。

 

「でも、ちょっとは楽になった気がするぞ」

「調君だけじゃなくて、2人とも筋肉痛に見舞われるなんて……」

 

普段から人並み外れた運動をこなしている司や球子が、ここまでダメージを負うとは予想外だったらしく、杏も驚いた様子だ。

 

「慣れてないとしょうがないよ」

「イテテ……。んで、水都は今日も行くのか?」

「うん。今から行こうかなって。お弁当と飲み物も持ったし」

 

まだお昼には少し早い気もするが、気温が上がる前に届けてしまおう、という事だろう。

 

「うーん、畑までちょっと距離があるし、その荷物で往復するの、大変じゃないか?」

 

球子がそう指摘するように、勇者である流星ならまだしも、巫女である水都には酷な運動ではないだろうか。調も同じ事を思っていたのか、無言で首を縦に振る。

 

「まぁ、ちょっとは……。でも、歩くのは健康に良いし、おかげで腕にもちょっと筋肉ついたよ。ほら、ん〜っ!」

「力コブ出来てないし」

 

司がそう指摘するように、水都が自慢するように腕を曲げても、服の上からはその変化は見受けられない。

 

「水都さんは勇者じゃなくて巫女だし、あの距離を徒歩で行くのは、確かに大変かも……」

 

杏もそう呟くように、神世紀300年より以前の勇者、武神達は何かしら鍛錬を重ね、実戦を経験してきた事で、個人差こそあれど、前述の通り、長距離移動も難なくこなせるが、巫女はその限りではない。元陸上部の美羽ならまだしも、水都やひなたには、どうしても厳しい所がある。

 

「でも、好きでやってる事だから……」

 

水都も、勇者である歌野や童山が頑張っている手前、引き下がれずにいるようだ。このままではいつまで経っても平行線だ、と思われていたその時、球子が何かを思い出したように顔を上げた。

 

「そうだ!良い事思いついたぞ!」

 

そう言って球子に案内され、一同がたどり着いたのは、寮の裏手にある物置き倉庫。その中から球子が取り出したのは、一台のマウンテンバイクだった。

 

「これなら、あんな距離すぐだ!」

「あれ?タマっち先輩、自前のマウンテンバイク持ってたんじゃ……?」

「あぁ、アレとは別物だ。だからこれを水都にあげようと思ってな!」

 

杏の言う通り、球子にはこの世界に召還されてから、早速購入したマウンテンバイクを今も乗っている。ではこの2台目はどこから手に入れたのか。その疑問に、球子はこう答えた。

以前、勇者部で学外からの依頼を受け、粗大ゴミの運搬を手伝った際、古びたマウンテンバイクを見かけた球子が、廃棄するにはまだ早そうだ。予備の自転車が必要になった時のために、自分が引き取りたいと申し出て、許可をもらってマウンテンバイクを持ち帰った後、巧(中)に依頼して、再び使えるように修理してもらったのだ。とはいうものの、2台目のマウンテンバイクは使われる機会がないまま、物置き倉庫の片隅に追いやられていたのだが、ここに来て水都の件を知り、それならば彼女に新しい自転車を買ってもらうより、使わずにしまったままの代物を譲ろうではないか、という考えに至ったようだ。

確かに自転車で通勤すれば、足腰は疲れるかもしれないが、徒歩で時間をかけて炎天下を進むよりは、幾分マシにはなるだろう。

……が、そうなると気になる点が一つ。

 

「水都さん、自転車の経験は?」

「……ない、かな?」

「マジで⁉︎」

 

中学生だろうから、自転車にはてっきり慣れているものだとばかり思い込んでいた司が、驚いた表情を見せる。この分だと、歌野も自転車とは無縁の生活を送ってきたのかもしれない。

 

「大丈夫、すぐ乗れるようになる!タマがちゃんと教えてやる!タマに任せタマえ!」

 

そうして始まった、水都の自転車(マウンテンバイク)トレーニング。学校や部活動、そして畑作の合間を縫って、球子や流星の指導の下、緩い坂道を使って、慣れない手つきでハンドルを握る水都の姿は、何処となく危なっかしいものがある。

 

「よーし、良いぞ水都、その調子だ!」

「恐れるな!前をしっかり見るんだ!」

 

などと励ましながら、何度も坂を下っていくが、すぐにグラついてしまい……。

 

「っ!いたた……」

「水都さん大丈夫⁉︎」

「……膝、怪我してる。すぐに、消毒」

 

何度も転げ落ち、膝から血が垂れ始めてしまった為、一旦練習を止めて、調が消毒を行う。

 

「あ、ありがとう。沁みるね……」

「大事ないようだな」

「でもやっぱり、マウンテンバイクは無茶だったんじゃ……」

 

杏がそう呟くように、通学用の自転車と違って、軽量化を目的に装備が充実しているわけでもないマウンテンバイクの方が、制御が難しく、慣れるまでに時間がかかるのだ。

さしもの球子も、この様子に唸る他ない。

 

「うーん、流石に難しかったか?どうする、水都」

「私は……まだやりたい。うたのんも、童山君も、頑張ってるから……私も!」

 

それでもなお、水都は投げ出そうとはしなかった。この世界で、一生懸命頑張る2人の影響を受けて、彼女も彼女なりに進もうとしているようだ。

 

「うむ!よく言ったぞ!初めから上手く出来る者はそういない!ならば、鍛錬あるのみ!」

 

そうして特訓を再開する水都だったが、杏と調は、未だに不安な表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

「うたのーん!童山くーん!お弁当、持ってきたよー!」

「サンクス、みーちゃん!……あら?」

 

畑作業をしている歌野達の所へ、いつものように弁当を届けに来た水都の姿が。そのまま受け取ろうとした歌野が、怪訝な表情を見せる。

 

「うたのん?」

「……ううん、何でもない。兎角君、お昼にしましょう」

「あぁ、分かった」

 

歌野に呼ばれて、自主的に手伝いに来ていた兎角が、童山と共に汗を拭いながら近寄ってくる。

 

「?水都、お前さん自分の弁当はどうしたんじゃ?」

「あ、私はちょっとやる事あるから、今日はもう行くね」

「え、えぇ……」

 

そうして手を振りながら去っていく水都を見届け、姿が見えなくなった所で、歌野が気になっていた事を口にする。

 

「……2人とも、みーちゃんの膝、見た?」

「膝?膝がどうかしたのか?」

「そういえば擦りむいたような痕があったような……。待てよ、ひょっとして……」

「心当たりがあるの?」

 

どうやら兎角は、水都の怪我の原因を知っているようだ。詳しく問い詰めようとする歌野に対し、兎角はあっさりと答えた。

 

「この間、杏から補助輪が残ってないか聞かれてな。何でも、水都の自転車……もといマウンテンバイクの練習の為に使いたいらしくてな」

「ほぉ、水都が自転車を……?」

「小さい頃に使ってたやつが倉庫にあったからそれを貸したんだけど、多分マウンテンバイクのサイズには合わないだろうって事で、巧に改良してもらってたはずだぜ」

「みーちゃんが……」

「学校や寮からここは、結構遠いからな。自転車で行き来すれば、ずっと楽になるだろうし」

「あら、それなら私がみーちゃんを抱っこするわ。この程度の往復、何往復だって出来るもの」

「いや、それは……」

 

本末転倒だろ、と言いかけた所で、歌野は次の言葉を口にする。

 

「でも、みーちゃんが頑張ってる事だもの。みーちゃんが自転車に乗って来てくれたら、それはきっと、とっても嬉しいと思うから」

「あぁ。それが水都の為になるんじゃろうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(私の夢は、宅配屋さんになる事。自転車に乗れるようになれば、色んな所に、うたのん達の野菜を届けられる。これはきっと、その夢の第一歩なんだ。だから私、頑張るよ……!)」

「うむ!その調子だ!」

「ゆっくり!ゆっくりで良いんだぞ!」

「はい、コーチ!」

 

秘めたる情熱を胸に、特注の補助輪をつけたマウンテンバイクを漕ぎ続け、少しずつ前に進もうとする水都であった。

 

 

 




何事も少しずつの努力が積み重なって、将来の夢へと繋がっていく。
私も、今の仕事に就くまでそうして来たので、現在就活中、また、これから就活を頑張る方々に、そんなメッセージを送り、受け取ってくれたら幸いです。

〜次回予告〜


「隠し事を?」

「イネス〜……」

「危ない!」

「腫れ物に触る、と言いますか……」

「……どう、して」

「全部、話すよ」


〜白菊(前編) 〜未来を知る、それ即ち……〜 〜


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