結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
しばらく投稿しない間に、WBC3度目の優勝、『ポケットモンスター』より、サトシの事実上の引退、等々、数々の出来事がありました。
その一方で、『仮面ライダーギーツ』にて明かされた、ナーゴ衝撃の出生事実。あれは流石に笑えなかったですね。あの回の脚本家、性癖が狂ってるんじゃないかと思ってしまうほど、逆に今後の東映の心配をしてしまいました。まるで『乃木若葉は勇者である』の特撮版を観ているような感じで、もう子供向けには作る気ゼロだな、と感じた次第です。
こういう脚本を描く人達がいる以上、いつまで経っても世界から戦争や人種差別がなくならないんじゃないかと思います。辛辣な意見かもしれませんが、これが私の率直な意見であります。(その分キューンはカッコよかった!)
話が大幅に脱線しましたが、本編をどうぞ。
「東郷〜。この前のバーテックス戦なんだけど〜」
「あら雪花。何か気になる事でもあったの?」
激しい連戦を乗り越え、次の戦いに向けて英気を養っている頃。部室でパソコンと向かい合っていた東郷に、雪花が話しかけてきた。
「ん、まぁね。次はもっと効率的に倒したいし」
「いい心がけだわ。私も丁度、先輩達に提出する為の戦闘詳報をまとめていたの」
「じゃあせっかくだし、ご一緒させてもらおうかね」
などと会話を弾ませている様子を、少し離れた位置から観察する人影が。
「……なぁーんかあの2人、頭脳派って感じっすよね」
「血気盛んな勇者が多い中で、冷静沈着キャラって、貴重な存在だよな」
「東郷さん……っていうか須美は、割と血の気多いような気がするけど……」
「でも2人とも、気が合ってる感じがするッス!」
「そうじゃのぉ」
「ふぅむ。あの頭脳派っぷり、あやかりたいもんっすね」
銀(小)、球子、晴人、冬弥、童山の5人が、東郷と雪花の2人が何故普段から冷静沈着でいられるのか、その訳を考察しているようだ。
「やっぱアレか?メガネが決め手なのか?」
「東郷先輩、メガネなんてかけてる所見た事ないッスよ?」
「じゃあやっぱ、胸か?」
「雪花さんはそれ程でもないみたいっすよ」
「ますます分からん。何が秘訣なんじゃ?」
「これこれ、あの2人に聞こえたら怒られるわよ」
と、その時。どこからともなく顔を出した風が、童山達に警告を促す。
「うわ、びっくりした⁉︎」
「風姐さんじゃないッスか」
「驚かすなよ、風!」
「めんごメンゴ。いやいや、何やら面白そうな事話してるな〜って思ってさ」
などと風が話していると、晴人達の背後から何の前触れもなく声が聞こえてきた。
「今の話、私も聞いていた。非常に興味深い」
「棗さん⁉︎どっから湧いてきた⁉︎」
「やっぱり皆さん、あの2人の組み合わせが気になるんすね?」
「今のあたし達の組み合わせも、相当なもんだと思うわよ」
「そうか?自分で言うのもアレだが、割と脳筋組で揃ってるような」
「オイコラタマ。誰が脳筋だ誰が」
「そういう所がそうなのではないか?」
「クハッ……⁉︎な、何てこと……女子力溢れるこのあたしが……!」
棗に指摘されて、膝から崩れ落ちかける風。すると、童山の視界から、部室を後にしようとする2人を捉えた。
「む?あの2人、どこかに出かけるみたいじゃな」
これを聞いた風がハッとなって指示を出す。
「!追うわよみんな!あの冷静沈着、頭脳明晰っ子達の弱点を探るチャンスよ!」
「え?仲間なのに、わざわざ弱点見つけるの?」
「だが気にはなる。私も同行しよう」
「賛成ッス!」
こうして新たに2名がパーティーに加わり、7人の勇者は、同胞の後を追跡する事となった。
「や、あのさ……」
「?」
「自分で言っておいてアレだけど、あたし達って、割としょっちゅう尾行とかしてると思わない?」
「それだけ仲間が心配って事っすよ。……尾行といえば、アタシも巧達につけられてた事あったなぁ」
銀(小)が、彼女の過度な遅刻の理由を探る為にと、須美を筆頭に5人に尾行されていた時の事を思い返しながら、現在2人との距離を保ったまま、建物の裏に隠れながら追いかけている一同。
「尾行は勇者の伝統という事か」
「スパイならともかく、尾行が伝統って、全然勇者っぽくないな」
勇者という存在に対し、微妙に間違った認識がある中、風が腕を広げてストップをかける。
「しーっ、静かに!何だかトラブルの匂いがする!」
「えっ⁉︎銀、動いたらダメッスよ⁉︎」
「いやアタシまだ何もしてませんって⁉︎」
普段からトラブル体質に見舞われている銀を想ってか、冬弥が警戒心を強める。
そんなやり取りの最中、水が大きく跳ねたような音が。ハッとなって前方を見ると、一台のトラックが晴人達の横を通過した後だった。前方には水が大きく跳ねた跡が。どうやら前日降った雨の溜まりに、トラックが突っ込んで飛散したようだ。こうなると前方にいた2人にも被害が……と思っていたが、2人の体は一切濡れていない。どうやらすぐ近くにあった細い電柱に素早く身を隠して難を逃れた、という事だろう。
驚く風達を他所に、棗はいたって冷静に口を開く。
「ふむ、見事な回避行動だ」
「いやー、アタシだったら確実にずぶ濡れでしたね」
などと言っている間に、2人がまた歩き始めたので、晴人達も後を追う。
そんな中、童山は2人が突然外に出かけた事に疑問を抱いていた。
「それにしても、さっきまで話し合っていたのに何故急に出かけたんじゃ?」
「まぁまぁ、それも追ってるうちに分かるでしょ」
風がそう言っている間にも、新たな出来事が。東郷が屈んで地面に落ちていたものを拾い上げた。財布だった。誰かが落としてしまったのだろう。いち早く交番を見つけた雪花が、その財布を持って、テキパキと手続きを済ませると、何事もなかったかのように2人並んで歩き出す。
続いて出会ったのは、道に迷っているであろうお婆さん。どうやら目的地が一緒だったのか、道案内がてら、3人で歩き始める。
「アタシ並みのトラブル巻き込まれ体質なのに、全く慌てず事も無げに……凄い!」
普段の自分と比較して、2人の冷静な対応に舌を巻く銀(小)。
「うむ。勇者としての矜持を見た思いだ」
「やっぱ、ノリと勢いだけじゃダメって事ね」
「これは……、風さんの女子力を持ってしても勝てないんじゃ……」
「……フフ、ソウネ、完敗ヤ……。完敗ヤデホンマ……」
晴人にそう指摘され、返す言葉もない風であった。皆が感嘆していたその時、背後から声が。
「皆さんお揃いで何してるのかな?」
「「「「「「「!」」」」」」」
ハッとなって振り返ると、前方を歩いていたはずの雪花が、そしてその隣には東郷がいるではないか。いつの間に後方に回り込んでいたのだろうか。
「な、何で……⁉︎」
「えっと……。尾行自体は最初から気づいていたんだけど……」
「あんまりにもバレバレだったから、流石に声かけてみようかって事になったわけ」
「不覚……!」
「やっぱりタマ達脳筋組には、無理があったのか……」
「それで?コソコソとみんなで何やってたの?」
早速雪花が疑問の核心を突く。
「え、えぇっと……、ですね。晴人!」
「えぇ⁉︎た、球子さんパス!」
「ちょ、タマかよ⁉︎言い出したのは風だろ⁉︎」
「待ちなさいよ!あたしは強要なんてしてないわよ!みんなが自分の意志でついてきたんでしょ⁉︎」
などと責任転嫁が繰り広げられる中、童山と棗はそんな彼らを戒める。
「これこれ、見苦しいぞい。ここは素直に理由を話すべきじゃろ」
「あぁ」
「「「「「どうぞどうぞ」」」」」
「「……」」
某お笑い芸人のテンプレートに乗っかって、説明を促す風達。一気に機嫌が悪くなる2人を察して、冬弥が謝る。
「わわ、冗談ッスよ⁉︎怖い顔しなくてもいいッスから⁉︎」
「本気かと思ったぞ」
「あの……。私達、別に怒ってるわけじゃなくて。ただ、理由が知りたいだけで」
若干蚊帳の外になりかけていた東郷が、再度説明を請う。
「そうそう。嫌がらせとかじゃないのか、この面子なら何となく分かるし」
「なら仕方ない。タマから話そう。実は、東郷と雪花がどうしてそんなに優秀なのか、探ろうとしてたんだ」
「「……へっ?」」
理由を聞かされた2人は、困惑の色を隠せない。
「2人とも、俺達よりか頭脳明晰だし、冷静だし。まぁ、いわゆる憧れってやつだよ。だから気になっちゃって」
「晴人君……」
「すまない2人とも。直接秘訣を聞けばいいものを、ついつい勇者の伝統にならって……」
「「勇者の伝統?」」
棗が口にした、聞き慣れないワードに首を傾げる2人。
「はいはい棗、話がややこしくなるから、そこまでにしといてね」
「ふーん。勇者の伝統っていうのがよく分からなかったけど、大体分かったかな」
「……晴人君、みんな。私達、みんなよりも何かが優れてるなんて、少しも思ってないわ」
「へ?でも、さ……」
球子が先程まで見た光景を思い出し、意見を述べようとするが、雪花がそれを遮る。
「私達は私達で、みんなの役に立てる事がないか、必死で考えてるだけって事」
「え、そんな事は……」
「寧ろ、晴人君達の足手纏いにならないように、頑張ってるくらいよ?」
「東郷、さん……」
「私達に足りてない部分を、晴人君達が補ってくれてる。逆に、晴人君達に足りてない部分を、私達が補っているだけ」
何であれ、一つとしてひとつで完璧なものなどないのかもしれない。故に、補うものが引き寄せられるように生まれ、側で対を成し、初めて良い方向へと近づく事ができる。その名称が「仲間」というもの。
東郷と雪花が言いたいのは、つまりはそういう事なのだろう。
「……そうね。その通りね」
風は、自分の疑り深い思考を恥じつつも、東郷と雪花が勇者として共に戦ってくれる事に感謝していた。
そんな中、童山は依然として疑問に思っている事を口にする。
「……それにしても、2人はどこへ行くつもりだったんじゃ?」
「えっ?それは、その……ねぇ?」
「えぇ、やっぱり、そろそろ出るかと思って……。備えは万全に越した事はないでしょう?」
「色々と、駆除用品を買い溜めようかって話になって……」
「駆除……?何の事ッスか?」
「それにどうしたの?急に歯切れが悪くなって……」
2人の様子がおかしい事に晴人達が気づいたその時、前方からカサカサと音が。一同が視線を向けると、黒く光る物体が、音を鳴らしながらこちらに向かってくるのが確認できた。
「あ、ゴ●だ」
「イニシャルGだ」
「てか珍し、道端で見るの」
「……?どうした、東郷、雪花。そう珍しいものでも……」
棗が声をかけるが、2人はその場で硬直したまま視線を逸らしている。心なしか、思考が停止しているようにも見える。その雰囲気を見て、球子はポンと手を鳴らした。
「あ、駆除って●キの事か?」
「うわきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎伏せる文字変えないでぇ!」
図星だったらしく、キャラに似合わず発狂する雪花。それは東郷も同じく。
「その名を聞いただけで身震いするわ……!ど、どうしてみんな平気なの⁉︎」
そう尋ねられた銀達は、あっけからんと答える。
「いやぁ、古い家に住んでるとしょっちゅう出くわすし」
「あたしも、樹が怖がっちゃうから退治するのは姉の役目だったからね」
「調も杏も、こういうの苦手だっていうから、タマが何とかしてやってるんだ」
「それに、こんな広いとこで見かけても、別に怖くないッスよ?」
「ワシも歌野も、諏訪でよう見かけたわい」
「それにここのは小振りだな。沖縄へ帰ればさっきより大きいのが沢さ」
「うわぁぁぁぁぁぁ聞きたくないききたくないぃぃぃぃ!」
「更に大きい個体がいるなんて、悪夢だわ……!」
「そういえば須美も、何でバーテックスはGを絶滅させなかったんだ、ってボヤいてた時あったな」
いつの日か、勉強会での会話を思い返していた晴人だが、今の東郷にはそれを懐かしむ余裕が無かった。
「いつかは沖縄でバカンスでも、って思ってたけど、絶対行けないじゃないそんなの!」
「意外ですな、冷静な雪花がこんなに取り乱すとは。ゴ●ブ●、見た事ないの?」
「そこぉ!文字増やさないで!北海道じゃ滅多に出ないのよ!ねぇ逃げた?さっきの、もう逃げた⁉︎」
更に精神的に追い詰める風を前に、雪花は後ずさる。因みに先程出くわした個体の行方はと言うと……。
「今、塀にへばり付いてるやつの事?」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
慌てて塀から遠ざかる雪花と東郷。そんな彼女達を見て、風からアドバイスが。
「ふ……、気をつけなさい、雪花。地面や床から壁に移動した●キ●リはね……」
「ど、どどど、どうなるの⁉︎」
「……飛ぶわ」
最後にそう呟いた時には、羽音を立てて黒光りした物体が2人の前に迫っていた。
閑静な住宅街に、2人の勇者の絶叫が轟き、尋常ではない速さで駆け出す少女達と、その後を続くG。そんなシュールな光景を面白おかしく見守る晴人達。
そんなこんなで我を忘れて逃走した2人を連れ帰るのは、非常にくたびれたと、後に風は語る。
私もGは苦手な方ですが、流石に雪花や東郷程にはなりません。
さて、前書きがちょっと暗めな内容だったので、ここからは明るめの話題を。
『ひろがるスカイ!プリキュア』にて、遂に男子プリキュア『キュアウイング』が登場しましたが、予想以上に株価が上がっているようです。
彼の覚悟と強さは、まさに『勇者』という言葉が似合ってると思いました。これからの活躍に期待したいですね!
〜次回予告〜
「合体技だぁ!」
「禁断症状だね」
「そういう考え方か」
「この感覚は……!」
「初耳……」
「勇者は……挫けない!」
〜実りある日々を〜