結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

『魔法少女育成計画』、『リコリス・リコイル』の第二期制作決定に、大興奮中の作者であります。

また、まほいくに関してですが、完結済みの『まほいく×仮面ライダー龍騎』のエピローグの後書きでも公約した通り、アニメが始まる辺りで、新作として投稿する次第でございます。題材となる仮面ライダーは未定ですが、予定としては現在放送中の『仮面ライダーギーツ』とクロスしようかと考えています。正式に決まりましたらまた報告します。


EV10:イタズラは仕返しが怖いからやめた方が良い

「わ〜、お菓子の山だ〜」

「まだこんなにあったのか」

 

そう呟く小学生の園子と巧の目の前には、晴人が大きめの袋から机に広げた、大量の菓子が文字通り山のように積まれていた。

 

「いやー大漁たいりょう!ハッピーハロウィン作戦、大成功!」

「だな!イェイ!」

 

大収穫を前にして、ハイタッチする晴人と銀(小)。

 

「年長組の皆さんから頂いたお菓子がまだこんなにあるなんて……」

「お姉ちゃんも皆さんも、かなり張り切って用意してくれてたみたいだから」

「折角まだまだお菓子があるんだし、みんなで作戦の祝勝会と洒落込もうぜ!」

「どうせ最初から、そのつもりで俺達を呼んだんだろ?この量を銀だけで消化しきれるとは思えない」

「うはは、まぁね」

「でも確かに、巧君の言う通り、この量を僕達だけで食べきれるでしょうか……?」

「……」

 

お菓子の山を前にして、昴(小)と調は若干の不安を感じる。その殆どが手作りらしく、日持ちしないものばかりだ。

 

「それは大丈夫ッスよ!甘いものは別腹ッスからね」

「あ〜、そうですね〜」

「とはいえ、実際に胃袋が2つあるわけではないですから……」

「真面目か」

「まぁまぁ須美さんの場合、栄養は全部お胸の方に行くんだから、気にしなさ」

「銀、後で2人きりでお話ししましょうか」

「あいすみませんでした」

 

返す刀で平謝りする銀(小)。須美の頭からツノが生えたように見えたのは、気のせいという事にしよう。巧(小)はそう自分に言い聞かせる。

 

「それにしても、お菓子のクオリティーが凄いよ。お姉ちゃんと東郷先輩と昴先輩のは手作りだし」

「すばるん先輩のカボチャタルトも美味しかったけど、わっしー先輩のカボチャ牡丹餅も美味しかったよ〜。まだ無いかな〜?」

「そのっち、あれは南瓜の茶巾絞りよ」

「風さんのパンプキンも絶品だったな!さすが樹さんのお姉さんだ!」

「えへへ〜、それほどでも……あるかな」

 

いつになく上機嫌な樹。自慢の姉を褒めてもらえた事がよほど自分の事のように嬉しかったのだろう。

 

「洋菓子はあまり食べた事が無いんですけど、本当に美味しかったです」

「そ、そうかな?アハハ、照れるなぁ」

「?何故照れる?姉の功績なのに」

「たっくん、シ〜」

「でもまぁ、樹さんなら自分の事だったらケンソンしそうだもんな」

「それだけ、大好きだし尊敬してるって事ね」

「うん、恥ずかしながらその通りです」

 

包み隠す気はないらしく、頬を染めながらそう語る樹。その姿に、他の面々の反応はというと……。

 

「わぁ〜、樹先輩、大胆〜」

「ある意味ごっつぁんです!」

「風さんがこの場にいたら、嬉しさのあまり卒倒しそうね……」

「そうッスね」

「あ、お姉ちゃんの前じゃこんな事言えないよ?恥ずかしいから!」

「……別の意味で、お腹、いっぱい」

「じゃあここだけの秘密って事で!まだまだ祝勝会は続くぞぉ!」

 

晴人の号令にあわせて、しばらくの間、歳下組はお菓子やジュースを片手に、呑み食いしながら、ハッピーハロウィン作戦の思い出話を語りつつ、時間の許す限り、宴を和気藹々と楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しかしなぁ」

「?」

「大収穫だったのは確かなんだけど、何か物足りないような気がする」

 

銀(小)が唐突にそう呟いたのは、山のように置かれていた菓子が数えるほどにまで減ってきた頃だった。

 

「まだ足りない?ジャック・オー・ランタンも作って、仮装して、お菓子も大量に貰ってるのに?」

「仮装……?そう、仮装で何か、もっとこう、トリック・オア・トリート的な……あ」

 

銀(小)がふと何かを思いついたようだが、それを遮るような事態が起こった。

 

「もぐもぐ……かほーたのひはっはへぇ〜(仮装楽しかったね〜)。もぐも……んがくっく⁉︎」

「園子ちゃん⁉︎喉に詰まったんですか⁉︎」

「そのっち大丈夫⁉︎」

「そんな一気に茶巾絞り食べるからだぞ。ほら、お茶飲め、お茶」

 

慌てて他の面々が、背中を叩いたりお茶を与える事で、何とか事なきを得たようだ。

 

「……は〜!美味しすぎて胸がいっぱいになったよ〜」

「胸の辺りに詰まらせたの間違いだろ」

 

尤もなツッコミを入れる巧(小)。

 

「び、ビックリしたッス」

「そういえば、銀ちゃんってこういう時は冷静ですよね」

「ま、ウチの弟で慣れてるからな。園子見てるとさ、何だか懐かしい気分になるよ」

「ちゃーん」

「いや、それはもういい」

「ばっぶー!」

「……なんか、ごめんなさい。園子ちゃんが、その……」

「……昴。気にしたら、負け」

「……それで、だ。物足りないっていうのは結局どうなった?」

 

話を本筋に戻した巧(小)は、改めて彼女に問いかける。

 

「おぉ、そうであった!仮装で思い出したんだよ!トリック・オア・トリートの『トリック』!」

「あ〜。そういえばお風呂場のトリートメントがもうすぐ無くなりそうなの〜」

「トリックって言ってんのに、何でトリートの方でボケたのか、後で詳しく教えるんだぞ園子」

「いや本当にごめんなさいうちの園子ちゃんが……」

「どうどう」

 

また昴(小)を慰めに入った調は、銀(小)が何をしたいのかを察して呟く。

 

「イタズラ……したいの?」

「その通りっすよ!トリック=イタズラ!あたしはイタズラがしたかった!」

「声高に堂々という事じゃないけどな」

「全くだわ……」

 

呆れ口調の巧(小)と須美。

 

「でも言われてみれば、お姉ちゃん達、一切の迷いなくお菓子を全力でくれたもんね」

「作戦バレバレだったからな」

「それはそれで非常にありがたかったんすけど、やっぱりハロウィンはイタズラしてナンボっすよ!」

「そうか……、お菓子をあげる事が出来なければ、悪戯されるという、恐ろしいしきたりだったわね」

「おそろしや〜」

 

これを見た晴人は、躊躇う事なく宣言をする事に。

 

「というわけで、こっからはハッピーハロウィン作戦、フェイズ3へ移行だぁ!」

「は、晴人君、まさか……」

「ヘヘッ。お菓子くれなきゃイタズラするぞってな!」

「唐突ッスよ⁉︎」

 

驚く冬弥を他所に、真っ先に動いたのは銀(小)だった。

 

「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」

「お菓子なら、まだたくさんあるよ〜?」

「そんな事は分かってる!あたしは君らからお菓子を頂きたいのである!」

「う〜ん、私は持ってないな〜」

「僕も……、須美ちゃんはどうなんですか?」

「まさか2人が裏切るなんて……!私も流石に、東郷さんみたいに牡丹餅は常備してないわ」

「まぁ普通は持ってないけどな。あの人がかなり変わり種だから」

 

当然用意しているはずもなく、ポケットに手を入れるなどして、何も所持していない事を証明する小学生達。

 

「……てなわけで、昴!トリック・オア・トリート!」

「ひぃ⁉︎ぼ、僕持ってません!」

「ならトリック決定ぃ!」

「ひ、ひゃあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ⁉︎あ、ヤメッ、くすぐっ、ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ⁉︎」

「うわぁ……」

「な、何て恐ろしい事を……!」

 

普段聞き慣れない、昴(小)の奇声に、早くも畏怖する須美。安定のくすぐり攻撃に、なす術もなく、昴(小)は床に崩れ落ちる。銀(小)も続けとばかりに、園子(小)に突撃する。

 

「さぁ、園子!トリック・オア・トリート!」

「トリックの方でお願いしま〜す」

「えっ」

「トリックの方でお願いしま〜す」

「何故2回言った」

「何て潔いんだろう……」

「ある意味尊敬するッスよ……」

 

予想斜め上の対応に、唖然とする面々。しかし、銀(小)は気を取り直して、返答に応える事に。

 

「う、うむ、よかろう。お菓子がないのであれば、致し方あるまい」

「カモ〜ン、トリック〜」

「その意気や良し!では園子、行くぞ!ハァァァァァァァァァァァァ……!」

「わ……ヒャアァァァァァァァァァァァァ!み、ミノさん、くすぐったい〜!」

「予想通りの展開だったな」

「ほれどうじゃ⁉︎ここか!ここがいいんのか⁉︎」

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!お助け〜!」

「仲間だと思ってたのに、数年後は立派に育ちおって!ここか!ここがあぁなるのかぁ!」

「ヒャア!み、ミノさんそこはぁ……!」

「ちょ、銀ちゃんそのくらいで!何か私怨が混ざってますよ⁉︎」

 

ある程度回復した昴(小)に止められて、銀(小)も思いとどまったのか、園子(小)を解放する。

 

「ハァッ、ハァッ……。よし、今日はこのくらいにしといてやろう」

「ハァッ、ハァッ……ぐったり〜……」

「な、何という事……!お菓子を持ってないだけで、こんな目に遭うなんて……!」

「いや、ただくすぐられただけなんだが」

「隙ありだぜぇ巧ぃ!」

「っ⁉︎き、きさ」

「コワモテの巧の、普段は見られない表情、拝ませてもらうぜぇ!」

「……ん!ッア!や、ヤメ……グハァ……!た、助け……」

 

全力で抵抗してはいるようだが、同じ武神として、何より友達として、下手に反撃ができないのか、されるがままに身悶える巧(小)。手を伸ばして助けを求めようとするが、そのような余裕は、部屋にいる面々にはなかったと言えよう。

 

「さぁ、次は須美の番だ!トリック・オア・トリート!」

「うぅ……!」

「して、須美!如何するのか!お菓子をくれるのか、くれないのか!」

 

須美に合わせてか、何処となく時代劇じみた口調で問い詰める銀(小)。しかしながら、選択肢はそもそも1つしかないのだ。こうなってしまっては、抗うだけ無駄だ。そう考えた須美は、腰に手を当てて、堂々たる姿勢を見せつけた。

 

「持ってないものはどうしようもないわ。さぁ銀!やるならやりなさい!」

「おぉ、覚悟を決めたんだな須美!」

「生きて虜囚の辱めを受けず……。くすぐられるくらいなら、私は玉砕の道を選ぶわ!」

「えっと……、それだとどっちにしろ、くすぐったい事には変わらないと思うんですけど」

「……あ」

「潔いのか、単なるバカなのか、もう分からないな……」

 

流石の銀(小)も、ツッコミを入れざるを得ない。

 

「ま、まぁいい、須美の意志は受け取った!そして喰らうがいい!必殺!スーパーくすぐり拳!」

「あ、ちょ、銀、待って、やめ……!あ、ヒャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

「ほわちゃちゃちゃちゃちゃちゃあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

「……ネーミングセンス、0点」

 

ボソリと呟く調の一言は、須美の笑い声に完全に遮られ、聞く耳を持たない。そうこうしているうちに、ようやく解放されて息絶え絶えの須美。因みに、園子の時と違って上半身の2つの塊に手を出さなかったのは、彼女なりの賢明な判断だったようだ。

 

「ハァッ、ハァッ……!な、なんて事……!生きて虜囚の辱めを受けるなんて……、しかも、男の前で、晴人君の前で、このような……。別の意味で疲れたわ……」

「ハァッ、ハァッ……!ふぅ、スッキリした!さぁ、次は樹さんの番ですよ!」

「えぇ、私も⁉︎」

 

まさか上級生にも襲いかかってくるとは思ってもみなかったのか、驚く樹。そうなれば他の2人も攻撃対象になるわけで、みれば冬弥も晴人の標的にされており、ジリジリと後ずさっているのが確認できた。

 

「モチのロンっす!さぁ行きますよぉ!トリック・オア・トリ」

「はい、どうぞ」

 

……が、事はそう思い通りに運ばない。樹は懐からミニサイズの箱を取り出したのだ。それも2つ。

 

「樹先輩、お菓子持ってたんですね〜!」

「「なん、だと……⁉︎」」

「一応、私も年上だから。こんな事もあろうかと、お姉ちゃんと一緒に作っていたのです、えっへん」

「おぉ、さすが指揮官ですね」

「た、助かったッス!」

「まさに然り……!てっきり樹さんもくすぐり倒せると思っておったのに……!」

「それで、何をお作りになったんですか?」

 

昴(小)がそれとなく尋ねると、樹は当時の事を思い返しながら箱を開ける。

 

「えへへ、お姉ちゃんには何故か必死で止められたんだけど、結構な自信作なんだよ?」

「「「えっ?」」」

「止められ、た……?」

「私もカボチャのお菓子を作ってみたの!パンプキンケーキだよ!」

 

何やら不穏なワードが入っていた事に、一抹の不安を覚える一同。そんな視線を気にする事なく、箱を開けて皆に完成品を見せる樹。

箱の中に入っていたのは、確かにケーキの形をしてはいたが、各々の反応はというと……。

 

「……あの、樹さん。紫芋とかの間違いでは?」

「それに、何ですか、その……。ケーキから漂う、紫色の湯気みたいなモヤは……」

「?カボチャだよ?ハロウィンなんだから」

 

首を傾げながらそう答える樹。

これを見ていち早く先手を打ったのは須美だった。

 

「銀!あなたが樹さんにねだったものなんだから、これはあなたが食べる権利があるわ!」

「それなら晴人も、だな。今回の作戦は2人の発案なしでは、ここまで盛り上がらなかったわけだ。労ってもらっても文句は言えない」

「そ、そうッスよ!ここは2人に譲るッスよ!」

「何でぇ⁉︎」

「わ、私もお腹いっぱい胸いっぱいだよ〜」

「そ、そうですね。僕もそろそろ夕食も控えてますし、献立も考えないといけませんので、これ以上は……」

「(ま、マズい!このままじゃ……!そうだ!)ちょ、ちょっと待った!まだ調さんにトリック・オア・トリートを聞いてなかったからな!樹さんはその後で、って事で調さ……、調、さん?」

 

身の危険を感じた晴人が、矛先を調に向けたが、いつの間にか、部屋から姿を消しているではないか。周りの面々も気づかなかったようだ。

最早八方塞がり、と言わざるを得ないようだ。

 

「ぬ、ぬかったわ……!真にトリックを受けたのは……!」

「さぁ銀ちゃん、晴人君。たぁんと召し上がれ♪」

「あ、アァ……!アァァァァァァァァァァァァァ……」

 

笑顔で迫ってくる、鳴子百合の勇者の手に握られて、紫色のパンプキンケーキ。

嗚呼。晴人は悟った。神樹様は言った。ここで死ぬ定めなのだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我ながらよく静かに、誰にも悟られる事なく部屋を出れたものだ、と自画自賛する調。樹が箱の中身を見せた時には、本能的にその場から遠ざかるしかないと思った。

部屋を出た調の手には、袋詰めされたお菓子があった。数にしておそらく4人分。食べきれなかった分を後で食べるようだ。後の3人分を誰とシェアするかは、言うまでもないだろう。

ややあって、背後から2人分の悲鳴が聞こえてきたが、調は振り返る事もしなかった。長い廊下を渡り、夕陽が差し込む窓の前で一度止まった彼は、誰にも聞こえないくらいの声で、ボソリと呟く。

 

「人を呪わば穴二つ」

 

 

 




今月のニチアサは巡るましい展開で、ある意味お腹いっぱいでしたね。

『ひろがるスカイ!プリキュア』も、掴みとしては上出来でしたし、何より『仮面ライダーギーツ』では、芸能界屈指の大ファンと公言している鈴木福君が、悲願となる仮面ライダーへの変身をやってのけたので、心から祝福したいです。彼がインタビューで語った『本当に夢は叶う』というのは、私自身も将来の夢を実現できた1人として、凄く気持ちが分かるので、皆さんの後押しになってくれたら嬉しいですね。

長くなりましたが、次回は本編に戻ります。


〜次回予告〜


「長丁場になる、か」

「精神年齢低っ⁉︎」

「郷に入りては郷に従え、か……」

「勘弁してくれぇ……」

「ハムッ」

「攻略法が分かったぞ」


〜連戦〜


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