結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

1 / 127
ど〜も〜。スターダストライダーです! 初めましての方は初めまして!

これまで『魔法少女育成計画×仮面ライダー龍騎』をやってきたわけですが、間も無く2期が放送されるという事で、聖地巡礼するぐらいまでハマったこの作品を、オリジナル展開込みで執筆していきたいと思います!

オリジナル設定もありますので、多少本編より拙い所もあるかもしれませんし、駄作になるかもしれませんが、何卒やんわりとお願いします。ご意見・ご感想もお待ちしてます!


鷲尾 須美・市川 晴人の章
プロローグ:終わる日常 始まる戦い


その日は、市川(いちかわ) 晴人(はると)にとって、何ら変哲もない日常……だと思っていた。

春休み真っ只中の日曜日という事もあり、自由な時間が彼にはあった。友達と遊ぼうとも考えていたが、クラスの友達は皆、都合が合わなかったので、外に出て遊ぶ事もなかった。こうなる事はそう珍しくもなく、そんな時はいつも祖母がそばにいてくれて、とりとめのない会話を初めとして、有意義な時間を過ごしていた。

この日の午後も、大好きな祖母と一緒に昔ながらの遊びを交えて堪能していた。

……インターホンが鳴り、いち早く玄関のドアを開き、白い仮面を着けた人物達をその目で確認するまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇっと……、誰?」

「市川 晴人様、ですね」

「う、うん。そうですけど……?」

 

見るからに神聖そうな服装の人物達の中の1人が、晴人にそう質問する。両親か、祖母の知り合いだろうか。晴人が首を傾げていると、ちょうどそのタイミングで、祖母が晴人の後方からすり足で駆け寄ってきた。

 

「! あんた達は……!」

 

仮面の人物達を見た途端、祖母の表情が、普段は孫に見せることのないほどに険しいものと化した。そして反射的に晴人の両肩に手を乗せる。その力強さに、晴人は思わず顔をしかめる。

祖母は、彼らの正体を知っているようだ。

 

「我々は神樹様の御神託を受けて、こちらに出向いて参りました。つきましては、晴人様並びに、そのご家族にお伝えしたい事が」

「晴人に用が……? まさか……!」

 

祖母はいつになく真剣な表情で、何かを察したらしく、考え込むかのように唸り始める。晴人はますます首を傾げる。

やがて顔を上げた祖母が、仮面の人物達にこう言った。

 

「なら先ずは、晴人以外のあたしらに説明してもらおうかしら。事の次第では、あんたらの要求は断らせてもらうわよ」

「お望みのように」

 

向こうもそれで納得してくれたようだ。それから祖母は、未だにキョトンとしている孫に向かって、元の柔らかい表情を見せながら呟いた。

 

「ゴメンね晴人。お婆ちゃん、これからこの人達と大事な話があるの。その間は悪いけど、席を外してもらいたいの。ついでに、甘いお菓子を切らしたから買ってきてくれると助かるわ。ほら、お駄賃。これで買ってきておくれ」

「うん、分かった!」

 

祖母の頼みを聞き入れた晴人は大きく頷き、祖母からお金を受け取ると、仮面の人物達の脇を通り過ぎて、外に出た。

いかにも高級そうな黒光りの車を通り過ぎた辺りで今一度振り返ると、仮面の人物達が祖母に案内されて家の中に入っていくのが見えた。これから、祖母に加えてリビングにいる晴人の両親と、何らかの話をするのだろう。どんな話をするのか気になりつつも、晴人は行きつけの駄菓子屋へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが分かったのは、夕食後の事だった。いつものようにご馳走様と告げてから風呂に入ろうとして立ち上がった晴人を、父親が呼び止めた。

大事な話がある、との事だった。

 

「話って?」

 

長方形のテーブルを囲み、正面に両親、隣に祖母が居座っている状態で、両親が口にした内容は、平凡な暮らしを満喫していた少年にとって、理解に苦しむものだった。

 

 

 

 

 

 

曰く、今日訪れた仮面の人物達は皆、『大赦』と呼ばれる組織の面々なのだという。勉強が得意ではない晴人でも、名前等は耳にした事がある。

晴人が生まれるずっとずっと前に、世界が未知のウイルスによって壊滅状態に陥った際、日本の神々が寄り集まって生まれた巨大な樹木の神体『神樹』が誕生し、世界をウイルスから今尚守ってくれている、というのが晴人の認識である。そしてその神樹の声をいち早く聴き、以降は人々に神樹の偉大さを説いて信仰を広めてきた組織。それが大赦である事も、晴人は歴史の授業で耳にタコが出来るぐらい聞かされてきた。

そして今回、大赦の面々が晴人の元へ訪れたのも、神樹からのお告げ、つまりは『神託』があり、その事で晴人が関係してくるからやってきたのだそうだ。では、どんな内容なのか。晴人が尋ねると、祖母の表情がより一層険しくなった。

大赦からの要望。それは晴人が神樹に選ばれ、神の力を持って、敵と戦ってもらいたい、というものだった。これは晴人も知らなかった事だが、神樹が張っている結界の外には、通常兵器では倒せない敵がいるらしく、時折自分達が暮らす世界に侵攻してくるのだとか。敵は神樹を破壊する為にやってくるらしく、たどり着かれたら、世界は壊滅するのだという。そんな人類の天敵に対抗するべく、神樹は特定の人物に力を分け与えて、敵を退けさせるのだ。

とどのつまり、大事な『お役目』を果たす為に、晴人はあらゆる神様によって選ばれたのだ。

 

「大赦曰く、そういう人達の事を、『勇者』と呼ぶらしい」

 

勇者。その言葉を聞いて、晴人は全身に鳥肌が立つ。知らぬ間に興奮していたようだ。

おまけに、今回晴人が選ばれたお役目はかなり特別なものらしく、勇者の中でも特別な地位に属しているのだとか。より最大限に神の力を引き出し、前戦での戦いに特化した勇者になれるらしく、そういった者達を総称して、『上位勇者』改め『武神』と呼ばれるのだそうだ。他の勇者と違って強力な力を発揮できる反面、体への負荷も大きい為、基本的に肉体的にも精神的にも強い傾向にある男が選出されるらしい。そのうちの1人が、晴人という事になる。

代々、勇者も武神も大赦の関係者一族から輩出されており、大抵は発言権の高い名家が選ばれるのだそうだが、市川家は、大赦に関係こそしているが、その地位ははっきり言って、下から数えた方が早いぐらいに低い。神世紀の初め頃はそれなりに高い地位だったらしいが、約300年の間に衰退し、今となっては発言権すら無いに等しい。そんな一族が、武神の役目に選ばれた事自体、大赦も首を傾げていたようだが、神託があった以上、伝えに行かないわけにもいかなかったので、こうして選ばれた晴人に頼み込んできたのが、一連の流れの全てだった。

最初にこの話を聞いた祖母と両親の間で、様々な意見が飛び交ったそうだ。

 

「お父さんもお母さんも、最終的な判断は、晴人に任せようって話し合って決めたの。でもお婆ちゃんは……」

「あたしだってね。名誉ある事だってのは分かってるわよ。けど、何でよりによって晴人なんだろうかね……。まだ子供なのにこんな危険なお役目に就かせるのは、いくら何でも危険すぎるわよ。死んじまう事だってある話だし、これでもし晴人に何かあったら、あたしは、生きた心地がしないよ……」

 

頭を抱えている祖母の姿からは、心底心配している様子が伺える。孫を戦場に出向かせる事自体、両親も含めて不安を拭いきれないものである。加えて祖母は、大赦に対して好印象を持っていないので、晴人をこの危険なお役目に就かせる事に反対の意を示している。

 

「お婆ちゃん」

 

大人達が頭を悩ませている中、晴人は祖母の方を向いて、いつものような満面の笑みを浮かべて語り始めた。

 

「俺、勇者になる。勇者になって、戦うよ」

「晴人……!」

「お婆ちゃんが本気で俺を心配してくれるのは嬉しいよ。大変なのは分かってる。でも、俺がやらないと、みんなが危険な目にあうんだろ? そんなの俺だって嫌だし。だから、俺は戦いたい」

 

その口調からして晴人の決意は、両親から初めて聞かされた時点で固められていたようだ。

 

「それに、勇者に選ばれたのは俺だけじゃないんだろ? だったらみんなで協力すれば、何とかなるって! 1人で戦うわけじゃないんだし、大丈夫だからさ! 大赦にも伝えてよ。俺が勇者になる事を許可したってさ!」

 

その笑みには、これから先の不安を一切感じさせない、自信に満ち溢れたものがある。根拠があるわけでもないが、その表情を目の当たりにして、祖母は返す言葉が思いつかなかった。

自分がやると決めた事は最後まで曲げない正義感の持ち主である事を知る祖母は、孫の覚悟を決めたような姿を見て、やるせないながらも同じように覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦へ返答した翌日から、市川家の日常は慌ただしかった。

武神になる事を決めた以上、訓練はもちろんの事、様々なバックアップを行う為にと、大赦が管理下に置いている『神樹館小学校』への編入を命じられた。その小学校に他の勇者や武神も在籍しているのだ。今現在住んでいる家からはるか遠くに位置する為、引っ越しもする事になった。当然、大赦が全面的に支援してくれている。

元いた学校の級友との別れは少々寂しいが、これから先、お役目を果たす為に、人々の生活を守る為ならば仕方なし、と腹を括り、住み慣れた土地を離れる準備を進めた。4月に入ってすぐの急なお告げだった為、始業式には間に合いそうになく、転校生として神樹館小学校へ入る事になる。

主に祖母と両親が引っ越しの準備を進めている中、晴人は1人、自分の身長よりも長い武器を携えて、大赦から贈られてきた説明文に目を通しながら、自主訓練に励んでいた。引っ越しの手伝いも行いつつ、手の空いた時間はこうして個人で、家族以外の人目につかないように、いつでも戦えるように体を動かしていた。運動は得意である為、汗水流しながらの訓練はさほど苦にならないようだ。

 

「フッ! ヤァッ!」

 

晴人はまだ、自分が戦うべき敵がどんな存在なのかは詳しく知らない。それでも、彼の中に恐怖心は微塵もなかった。何故なら、1人で戦うわけではないと知っているから。その事実があれば、晴人にとって恐れるものは何もない。

 

「俺の他にも、勇者か……。こいつは楽しみ以外の何もんでもないな!」

 

汗を拭きながら、晴人は山の向こうに目を向けて、無邪気な笑顔を見せている。明後日には、新たな仲間と出会えるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神世紀298年。

 

神託を受けた、蕾の勇者達による、人類の存亡を賭けた攻防が、幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜』

 

 

〜鷲尾須美・市川 晴人の章〜

 

 

 




プロローグなので、この辺で。

次回から、勇者や武神達が登場しますのでお楽しみに! 皆さんからのご意見やご感想を楽しみに待ってますので、これからもよろしくお願いいたします!

なおこの作品ではゆゆゆ風に次回予告もつけていきます。(タイトルは花言葉とかは関係ありませんのでご了承ください)




〜次回予告〜

「ここが、神樹館……」

「市川君、おはよ〜」

「鷲尾さんは男女問わず人気ですからね」

「ねぇこれ、敵が来たんじゃない⁉︎」

「……お前もか」

「来たんだ。私達がお役目をする時が……!」


〜転校生、市川 晴人〜


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。