「卑怯よ!卑怯者卑怯者卑怯者!!」
「あんた最低よ!正々堂々戦いなさいよ!卑怯者っ!」
ミツルギのパーティの二人少女が喚いている。
「うるせい!卑怯もらっきょうもあるか!」
正直言うと、高レベルの奴が低レベルに勝負を挑む方が卑怯だろ!
「…………。」
ミツルギはというと、脳天にヒットしたダメージが大きいのか気絶をしていた。
レベル的に考えて、あと5分もしないうちに目を覚ますだろう。
目が覚めたら、めんどくさいだろうな。
もう1回勝負しろとか言いそうだし。
そこで、オレは閃いた。
ウィズから教えて貰った、スキルを試すか。
オレは、倒れているミツルギの肩に触れてスキルを発動した。
「ねぇ、ちょっと!何をするつもりなの!」
「聞いてんの卑怯者!」
「''不死王の手''」
「あがががが……っ。」
スキルを発動した際に、ミツルギは電気ショックを受けているかの如く身体をビクビクさせていた。
『不死王の手』
このスキルは、ウィズからポイントをはたいて手に入れたスキル。
主に触れた相手を毒・麻痺・昏睡・魔法封じなどといった状態異常にすることができる。
ミツルギの反応を見る限り、麻痺っぽいな。
しかし、スキルレベルが低い分発動が難しいと、ウィズは言っていたが、幸運が高いせいか1発で上手くいった。
「うっし、コレでこいつは当分起きることはないだろ。」
「卑怯者!動けないミツルギに追加で、何かするなんて最低よ!」
「そうよ!この卑怯者!私達の大事なミツルギに、よくも!どうせ、ミツルギよりもモテないからって、腹いせでやったに違いないわ!」
''モテないから''?
……あー、そうだよ!どうせ、オレはモテねぇよ!
ミツルギみたいに魔剣を手にして、強大な力を奮ってかっこよく敵を倒したりすれば、さぞモテるだろうな!
本来、オレもそれが出来たはずなんだよ!
チートアイテムを手にしてれば、今頃オレはモテモテで金も家も持って冒険者らしい冒険者をやってたよ!
あ~、なんだか……いろいろ考えてたらイライラしてきた。
再度、ミツルギの肩に触れて『不死王の手』を発動させた。
タダでさえ、状態異常の相手にさらに状態異常かけた。
今回は、オレの恨みなどが織り交ざったせいか、手から禍々しいオーラが発生した。どうやら、弱体化が発動した。
効果は……レベル減少だ。
フフフッ……レベル1まで下げてやるか。
ミツルギが首から掛けている冒険者カードを確認すると、ソードマスターレベル1と記載されていた。
ざまぁみやがれ!
さてと……。
ゆっくりと立ち上がって、ミツルギの連れの美少女の方を向いた。
「さて、さっきからピーチクパーチクうるさい女共が。」
「何よ!」
「私達2人、あんたみたいな男に負けないだから!」
オレがゆっくりとミツルギの連れに視線を合わせると、身体をビクッと震わせた。
オレは、栄光の右手(なんもないんですけどね。)をミツルギの連れに向かって伸ばした。
「真の男女平等の主義者のオレは、例え美少女でもドロップキックをかます男だ。手加減して貰えると思うなよ。」
「「ひっ!」」
「公衆の面前で、このスキルを使って動けなくてしてから、スティールを使って1枚……いぃぃちまぁい!ずつ身ぐるみを剥がしていく。」
オレは伸ばした右手の指を1本1本畳んでは、開いて、まるで魔女が誘惑する際に行う手招きのごとく。
「ほれ…ほれ…。」
「「いっ……。」」
「ほら、早く……、クククッ……。」
「「いやああああ!!!!」」
ミツルギの連れは、走って逃げていった。
くっ、本当にやっとけばよかったと後悔している自分が悔しい。
「さて、奪った剣は勝負で勝った報酬として貰って行くか。なぁ、アク…。どうした、お前ら?」
アクア達の方をみると、とても引いている様子だった。
「……そこで倒れている人は、生理的に無理ですが……ここまでされるとどちらが悪なのか……。流石に気の毒です。」
「…しかも、連れの女の子達にまで手を出そうとするとは……。」
「うわぁ……カズマさん、うわぁ……。あと、その剣についてだけど、あくまでも特典だからそこの残念の人だけ使える仕様になってるから。」
めぐみんとダクネスは、憐れだよう様に眠るミツルギに同情していた。
てか、ミツルギをみたいな後にオレをみるな!
視線が痛い。
―――――――――――――――
――――――
―――
――
オレ達は、借りた檻を引きずりながらも、その場を後にしてギルドへと向かった。
報酬に関しては、アクアが全額貰う事になっていたから、クエスト完了報告はアクアに任せ、オレとめぐみんとダクネスは夕飯を食べていたのだが……。
「なんでよぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
動物かのごとく叫ぶアクアの声がギルドに響いた。
まーた、何か騒ぎを起こしているのか?
あいつは、何かと騒ぎを起こさないと気が済まないのか?
定食を頬張りながら、受付カウンターを見た。
そこでは、涙目なったアクアが受付職員のルナさんに掴みかかってた。
…………もう少しでこぼれ落ちそう、頑張れアクア。
「だから借りた檻を壊したのは私じゃないんだってって言ってるでしょ!ミツルギ キョウヤとかいう冒険者が檻の柵を折り曲げたのよ!なんで、私が弁償しないと行けないのよー!」
なるほど、ミツルギが柵を折り曲げてアクアを助けようとしてったっけ。
しばらくして、駄々をこねていたアクアは諦めたのか、報酬を貰ってとぼとぼと歩いて、オレ達の席に来た。
「今回の報酬に関して、壊した檻の請求金額を差し引いて、10万エリスしか貰えなかった。なんでも、あの檻は特別製らしいわ…………。」
しょんぼりしていたアクアに、流石に同情した。
あんだけ身体を張ったにも関わらず、第三者が檻を壊して報酬が減ったのだから。
「何だったんでしょうね、あのパチモン。なんな勝手にアクアを助けがってたし、ハチマンの事を悪く言うし……。しかし、それにしても、カズマのあのスキルはなんなんですか?特に最後の奴は?オーラ出てましたよ?」
「あー、あれはだな。スキルの中に含まれる1つの状態異常魔法だ。特に最後の奴は、受けた奴のレベルを下げて弱体化させる能力があるんだ。」
めぐみんは、オレの言葉を聞いて絶句していた。
アクアも、先程まで悲壮感溢れていたがめぐみんと同じ様に絶句していた。
「……ねぇ、カズマ。その魔法使ってる時は、私に近づかないでね。」
「わ、わたしにも!」
「……レベルが減少して……嬲られるのも……また……。それに、レベルを上げたにも関わらず、また最初から……これは、コレで。」
各々がスキルを聞いてから、感想述べていた。
「んで、アクア。多分あいつ、また来るじゃないか?来たらどうする?」
「すかさずゴッドブローをかますわ!そして、檻代を弁償させる!」
オレの質問に、アクアは悔しげに答えたいた。
まぁ、確実にここには来るだろう。
理由?んなもん……。
「見つけたぞ!サトウカズマ!!」
おいおい、フルネームで叫ぶなよ。
ったく、誰だよ。
ギルドの入口を見ると、話題となっていたミツルギが立っていた。
「君の事は、ある盗賊の少女に教えて貰ったよ。パンツ脱がせ魔だってな!他にも、女の子を粘液塗れにするのが趣味だとか噂になっているそうじゃないか。鬼畜のカズマだってね!!」
「ちょっと、おぉい!待ってぇい!誰がそれを広めたのか詳しく!」
入口から歩いてくるミツルギに、焦りながら反論というより突っ込んだ。
いや、マジで、なんなの!?
普通に歩いて来ればいいのにも、関わらず噂話を大声で叫びながら来る必要ありましたか!
「それに加え、僕のレベルを1にしてくれたそうじゃないか。それに、どのクラスでも、そんなスキル教えられる職業なんて、僕は知らない。鬼畜カズマ、君は何者なんだ!」
真剣な顔で、オレに詰め寄ってきたミツルギに、アクアはゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらと身体を動かしながらミツルギの前に立った。
「……アクア様、僕はまたレベルを上げて、そして、その男から魔剣を取り返し、魔王を倒します!ですから、この僕のパーティに「ゴッドブロォォォォォ!!!!」ぐふァ!」
「「あぁ!キョウヤ!!!」」
アクアの渾身のゴッドブローが、ミツルギの顔面に炸裂した。
なぜ殴られたか分からない顔しているミツルギに、ツカツカと詰め寄り胸ぐらを掴んだアクア。
「ちょっと!あんた檻のお金返しなさい!あれは特別製の檻なの!わかる?30万よ、30万!分かったら、早く払いなさい!ほら!30万!」
「えっ、あっ、はい。」
アクアの気迫に負けたミツルギはされるがまま、懐から金をだした。
さっき、20万とか言ってなかったっけ。
気を取り直したミツルギは、上機嫌なアクアの方を気にしながらも、悔しそうな声でオレに話しかけてきた。
「……あんなやり方だが、負けは負けだ。そして、なんでも言うことを聞くといった手前、こんな事を頼むなんて虫のいい話だと思う。だけど、お願いだ、魔剣を返してくれないか。代わりに1番いい剣を買ってあげるから!」
と頭を下げてきたミツルギの肩を、ちょんちょんつつくめぐみん。
「あの、この男が魔剣を持っていない件について。」
えっ、言わんばかりにすぐに顔を上げて、オレの姿を見た。
顔がだんだん真っ青になっていくミツルギ。
「……あ、あの、魔剣はどこにあるのですか。」
「売った。」
「ちくしょうぅぅぅぅぅぅ!」
ミツルギは、すぐさまギルドを出ていった。
ふぅ、ようやく一段落だな。
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
―――
―
「なぁ、さっきからあいつが言っていた事なんだが、アクアが女神とはどういう事なんだ?」
一段落が付いたものの、ギルド内であんだけの騒ぎを起こしたせいか冒険者達の好奇心の視線を遠巻きに浴びながら、ダクネスが質問してきた。
まぁ、あんだけ女神、女神って言ってれば誰しもが気になるわな。
この際に、この2人には話してもいいじゃないか。
オレがアクアに視線を送るとアクアは真剣な顔して頷いた。
アクアは、めぐみんとダクネスの方を向き直る。
珍しく真剣な表情していたアクアに、2人も真剣な表情を浮かべた。
「今まで黙ってたけど、あなた達だけには言うわ。……私はアクア。…………アクシズ教団が崇拝する者にして、水を司る女神、そう、私がその女神アクアよ!」
「「という、夢を見ている(だな。)(ですね。)」
「違うわよー!なんで2人してハモってるのよぉぉぉぉ!」
ギルド内に、アクアの悲痛が響いた。
ハチマン、今日もオレ達は元気にしています。
ハチマンというお守役がいないとオレがダメになりそうです。
……早く、帰ってきてくれぇぇぇぇぇぇ!!!!
随分、遅くなりました!ごめんなさい!
今後の予定としては、八幡が帰ってくるのに2話くらいかかりそうですが応援よろしくお願いします!