さて、神獣こと宝島に合掌をしてみせたものの宝島自身は、巨大なヒレを地面に投げ出し、首を地に伸ばして寝そべっている。
すでに冒険者達がその背を登り、岩石みたいなその背中にツルハシを打ち付けていた。
背中が掘られているのに、宝島は気持ちよさそうにしていた。宝島自身は、背中のゴミというか垢を取って貰ってるような感じなんだろう。
多数のロープが張られている背中に、ロッククライミングの要領で、冒険者達は次々と背中に登っていっていた。
なるほどな……こんだけでかければ半日で掘りつくすなんて無理だな。
てか、登るのにも苦労しそうだな。
「行くわよ、ハチマン、カズマ!タイムリミットは、日が沈むまでなんだから!リュックがパンパンになるくらいまで、やるんだから!」
アクアは、すでに張られていたロープを使って登り始めていた。
「ハチマン、実際どのくらい儲けられると思う?」
「こういうのは、登ってみん限りわからんしな。」
「だよな……おし、せっかくだから行ってみるか!それにしても、めぐみんやダクネスどこだ?……おっ、テイラー達はいるじゃないか!あいつらも先に来てたのか。」
カズマは、ロープをよじ登りながら周りに知っている顔ぶれがいて安心していた。
……決して、羨ましいとか思ってないからな。俺だって、こっちに来てから大分コミュニケーション能力は上がってるんだぜ。まぁ……俺と話すのは、大抵おっさんかおばちゃんとかだけどな。
それから、俺達は難なく宝島の背をよじ登った。
俺とカズマは、よじ登るなりにヘルメットを被り、ツルハシを適当に振り下ろした。
アクアとウィズさんは、髪の形が崩れるのが嫌なのかヘルメットを着用せずに、掘り進めていた。
俺もアイデンティティのアホ毛が、ヘルメットに隠れてしまい、ただの目が腐った作業者になってしまった。あってもなくても、目が腐った作業員には変わりないか。
珍しく誰も喋らずに、黙々と鉄石にツルハシを打ち込んでいると、キラキラと輝く石が散乱する。
この石1個でどのくらいの値打ちなんだろうか。
「……なぁ、この石1つがどの位の価値があるか分からないんだが、こんな簡単に儲けられるもんなのか?ていうか、同業者しかいないんだが、こんなに簡単なら街の人達も堀に来ればいいんじゃないか?」
カズマが石を持ちながら、アクアに質問した。
まぁ、確かに…いくら何でも、簡単すぎる。
「そんなの決まってるじゃない……危ないからよ。」
その瞬間、誰かの声が轟いた。
「うぎゃああぁぁぁ!鉄石もどきを掘り起こしまった!」
悲鳴が聞こえた方向を向くと、1人の冒険者がタコみたいにぐにゃぐにゃした生き物と対峙していた。
「うぇ、なんだありゃ?気持ち悪っ!」
「本当に気持ち悪いな!?と、とりあえず、助けに行かなくていいのか?」
カズマと俺が、タコの姿をしたモンスターを見て引いていた。
ぐにゃぐにゃと動きながら、周囲の鉄石に溶け込むように擬態化した。
だが、カズマの問いかけに応じる事なく、アクアとウィズさんは一心不乱に鉄石を掘り進めていた。
「ほっときなさい!ここにいるのは、仮にも冒険者しかいないんだから!冒険者っていうのは、いつなんどきも、死ぬ覚悟で来ているのよ!そんな覚悟していふ冒険者助けるなんて、覚悟を踏みにじるのと一緒よ!」
「全くです!たとえ、力及ばず果てるとしても、冒険の最中に果てられるというのは冒険者冥利につきます!そ、それに借金が!」
おいおい……あんたらそれでいいのか?
人としていいのか?
あー、そういえば2人とも人の形をした別の生き物だったか。
鉄石もどきに襲われている冒険者が叫ぶ。
「た、助けてくれぇぇぇぇ!」
「おい……助けてくれって言ってるぞ、自称女神様。」
「あははははははっ!やったわ、高純度マナタイトよ!こっちにはフレアタイトっ!ふふふ……ここ最近の失敗なんて、コレでチャラよ、チャラ!」
ダメだァ……俺の声にも全く聞く耳を持たないな。
女神がダメならリッチーの方はどうだ?一応、元人類だしな。
「ハァハァ……くっ……!お店なら、私が今月の食事を我慢すればなんとかなる……っ!大丈夫っ、私は死なないんだから……うふふ……。」
こっちもダメそうだな。
しかも涙ぐましい事まで言ってるし……。これ終わったら、飯でもご馳走してやるか。
「はぁ……カズマ、俺が助けに行ってくる。ウィズさんはとりあえず掘っててくれ。」
「お、おう!頼んだぞ。」
俺の呼びかけに、ウィズさんが儚げ微笑んだ。
「……ねぇ、ハチマンさん、ウィッチーの爪って高く売れるんですよ。爪には魔力が集まっているので。」
「ちょっ、おい、やめてくれ。ウィズさん、後で飯でも奢ってやるから、そこまで悲観しないでくれ!」
「いいんですか!よーし、頑張りますよ!」
ウィズさんは、眩しい笑顔で言ってきた。
はぁ……綺麗な人なんだが、どこか残念な人でもあるな。
とりあえず、助けに行くか。
「変身!」
ファイズに変身をして、襲われている冒険者を助けに行った。
──────────────────────
それからというものの、俺は所々で助けを求める声に応じて助けいた。
大分、カズマ達と離れちまったな。
そろそろ、戻るとするか。
最初にいた方向に向かおうと足を動かし始めた瞬間に、背後にドサッと音がした。
そう、何かが上から着地したかのような音が。
音がした背後を見ると、そこに居たのは……ホースオルフェノクだった。
おい、嘘だろ!?未確認生命体の次にオルフェノクだと?どうなってやがる。
オルフェノクの存在に、驚きを隠せずにたじろいでいると、ホースオルフェノクが間合いを詰めて殴り飛ばされた。
くっ……。やるしかない。
だが、ここで戦闘するのはダメだ。
他の冒険者達がいるし、宝島を変に刺激をしてしまう。
俺は、その場から走り宝島を飛び降りた。
ホースオルフェノクも同様に、俺を追いかける為に宝島から飛び降りた。
まだ、街との距離は近いか…もっと離れた場所に行かなくては、オートバジン来てくれ。
俺の呼びかけに応じるように、オートバジンは空から飛んで来ては、バイクへと姿を変えた。
変形したオートバジンに跨り、ホースオルフェノクに対して、来いと合図を送り走り出すとホースオルフェノクも疾走態へと姿を変え走り出した。
よしっ!
このまま、付いてこい!
俺とホースオルフェノクは、街と宝島から離れていった。
──────────────────────
街で1番高い建物から望遠鏡覗き込み、八幡とホースオルフェノクの姿を見る1つの影。
「……君は、どこまでやってくれるのかい?俺の’’特典スキル’’で出した奴と……。」
その影は、ニヤリと笑みを浮かべた 。
今回は短めです、ごめんなさい!
そして、なんと!!!
UAが、8万を突破しました!ありがとうございます!
そして、お気に入り数も500件を突破!
めっちゃニヤニヤしてます(笑)
読んで頂き、本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします!