この腐り目に祝福を!   作:クロスケZ

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4-11 魔法店×仁義なき戦い×緊急クエスト

「……ふん。ねぇ、このお店はお茶も出ないのかしら?」

 

「あっ、す、すみません!今すぐお持ちしますので!」

 

「持ってこなくていいですよ。」

「そうですよ!それに、客にお茶を出す魔法店ってどこにあるんだよ。」

 

アクアの陰湿なイビリに対して、素直に言う事を聞いてしまうウィズさんを止める。

それにしても、魔法店というのは初めて来たな。

店を見渡すと、様々な色をした瓶や占いとかで使いそうなガラス玉が綺麗に並べられていた。

 

俺と同様に店内を見渡すカズマ。

ふと、カズマは棚に並んでいた1つの小さな瓶を手にした。

 

「あっ、それ強い衝撃を与えると爆発しますので気をつけて下さいね。」

 

「うぉい!マジか!」

 

カズマは、ゆっくりと瓶を棚に戻した。

すげーな、カズマ。こんなに並んでるマジックアイテムから爆弾を選び出すとはな。

俺もカズマ同様に、カズマの隣にあった小瓶を手に取った。

 

「あっ、ハチマンさん。それはフタを開けると爆発しますので……」

 

…………。いや、まぁ……なんだ。冒険するのに必要なもんだしな。

おっ、こっちの綺麗な瓶はポーションかな。

 

「それは、水に触れると爆発……。」

 

「えっと…、ウィズこれは?」

 

カズマが、先程の俺が選んだ瓶の隣りあった瓶を手に持った。

 

「温めると爆発を…。」

 

………………。

 

「おい、爆薬しかねーのか!」

「カズマ落ち着け、たまたま爆発の物を選び続けただけだ。ウィズさん、これは?」

 

「そ、そちらも、魔力を注ぐと爆発を……。」

 

「…………。」

えっ?なに?この店は、爆発物しか取り扱わないの?マジックアイテムって、名前だけの爆発物専門店なの?

 

思わず、俺とカズマはウィズさんをじーっと見ていた。

 

「ち、違いますからね!言っておきますが、そこの棚に置いてあるのが爆発シリーズだけなんです!」

 

そ、そうですよね。

爆発物専門店で、魔法店を名乗ってるはずも無いよな。

おっと、本題を忘れるところだった。

アクアは……大丈夫そうだな。どこからか出したか分からないが、お茶を啜っているし暴れる事は無さそうだな。

 

「おい、カズマ。」

 

「あ、あー、そうだった。ウィズ、何か使えるスキルを教えてくれないか?リッチーならではのスキルとかさ。」

 

「ぶっー!」

 

「……おい。」

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい!い、今、は、ハンカチを!」

 

カズマの言葉に、アクアがお茶を吹き出し、もろに掛かったんだが。

ウィズさんは、それを見るなり慌ててポケットからハンカチを取り出し渡してくれた。

 

「ちょ、ちょっと! 何を考えているのよ、カズマっ!! リッチーのスキル? リッチーのスキルですって!? 何しに、この店に来たのか、やっと分かったわ! リッチーのスキルなんて、ロクな物でもないものばかりよ! そんなもの、覚える必要はないの! いい? リッチーっていうのは、薄暗くてジメジメした場所を好む奴よ! 言うなれば、ナメクジよ、ナメクジ!」

 

「ひ、酷い!」

 

アクアのあんまりの決めつけに、ウィズさんは涙ぐんでいた。

てか、お前、俺に先に言う事あるだろうが。

 

「いや、ナメクジの親戚でも従兄弟でも何でもいいんだけど、リッチーのスキルって、普通得られないだろ?そんなスキルを覚えれば、戦力の強化にもいいだろ?お前も、ハチマンが居ない時の戦力が酷い事は、知っているだろ?それにハチマンにも、相談をして決めたんだ。」

 

「む、むう。」

 

アクアは、カズマの言葉に一応納得している様子だったが、渋々引き下がった。

 

それと…カズマ。お前もなかなか酷いこと言っているぞ。後ろでウィズさんがシクシク泣いているぞ。とりあえず……。

 

「アクア……。まずは、俺に言う事があるだろ?」

 

「ひぎ!?あ、あ、あ、あのハチ、ハチマンさん?あ、頭が痛いんですが……。」

 

アクアの頭をがっしり掴み、ギギギと擬音がなりそうなくらいアクアはこちらをゆっくりと向いた。

 

「あー、痛くしてるからな。んで、言う事があるんでは?」

 

「えっ、えっと……、お茶を掛けてしまってすみません!で、でも!私が口に含んだお茶は浄化されてき、綺麗、だから大丈夫よ!むしろご褒美よ!」

 

「……。」

 

「痛い!痛い!めっちゃ痛い!ご、ごめん!ごめんなさい!変な事言ってごめんなさい!だ、だから、頭から手を退かして下さい!ぁぁああぁぁあ……!」

 

 

────────────────────────

 

ナメクジ呼ばわりにされたウィズさんを励まし、気を取り直した。

アクアは、頭を抑えながら床で悶えていた。

 

「ぐす……ありがとうございます、ハチマンさん。で、では、一通りスキルをお見せしますので、見逃しなどがあれば言ってくださいね。」

 

言ってから、ウィズさんは、ハッと何かに気づいた様に、俺とカズマを交互見て困った様にオドオドしていた。

 

「えっと、どうした?」

 

カズマは問いかけると、ウィズさんは怯えながら床で転がっているアクアを見た。

 

「あ、あのですね、私のスキルは相手がいないと使えない物ばかりなんですよ……つまり、その……誰かにスキルを使わないといけないんですよ。」

 

なるほど、対人に使ったりするスキルって事か。

俺とカズマは、リッチーのスキルを受けて害が応じるかもしれないから、ここは……。

 

「アクア、頼めるか。」

 

床で悶えていたアクアは、頭を抑えながら立ち上がった。

 

「ふん!いいわよ!クソアンデットの力を試してあげるわ。それで、私様にどんなスキルを使うのかしら!」

 

ウィズさんを威嚇するアクア、そのアクアに怯え身を引いたウィズさん。

 

「そ、そのドレインタッチなんてどうでしょうか?あぁっ、も、もちろん、ほんのちょっとしか吸いませんので!スキルを覚えてもらうので、ほんのちょっと効果があれば覚えられると思いますので。」

 

慌てたように口調が早くなっていたウィズさんに対して、アクアはにんまりと凶悪な笑みを浮かべた。

 

おい、どっち女神でリッチーなんだとツッコミたくなる風景である。

はぁ……、バカな事をしなければいいんだけどな。まぁ、無理だろな。

 

一応カズマにアイコンタクトを送ってみると、頷いてくれたから分かってくれたようだ。

 

「いいわよ?構わないわよ、いくらでも吸っていいわよ。さぁ、どうぞ。」

 

「で、では、失礼します……………………。………?……あれ?…あれ、あれ?」

 

俺には、何が起きているかは分からないがアクアが悪さをしている事は分かった。

 

「ほらほら、どうしたの?私の魔力と体力を吸い取るんじゃないの?あらあら、まさかアンデットの元締めでもあるリッチー様が、ドレイン出来ないの?ぷぷぷ……。」

 

余裕たっぷりで、涙目のウィズさんを煽るアクア。

 

「あ、あれーーーー?!」

 

どうやら、アクアはドレイン出来ないように抵抗しているようだ。

 

「カズマ。」

 

「あいよ。」

 

カズマは、アクアの後頭部を引っぱたいた。

 

「痛いっー!ちょっと、カズマ!邪魔しないでよ!これは、リッチーと女神の仁義なき戦いなんだから!私だって、女神の端くれよ!簡単にに吸わせてたまるもんですか!」

 

「いや、話しが進まねぇから吸わしてやれよ、ポンコツ。」

 

「そうだぞ、ポンコツ。変なプライドなんか捨てちまえよ。」

 

「むぅ……。てか、ポンコツ呼ばわりするあんた達はなんなのよ!」

 

「悪いな、ウィズさん、迷惑掛けた。どうも、このポンコツの職業柄、アンデットが受け付けない見たいだから。」

 

「きぃー!またポンコツって、言った!」

 

ポンコツの代りに謝ると、ウィズさんはとんでもないと言うほど首を横に振った。

 

「い、いいえ!そ、その私がリッチーなのが悪いんで……あ、あの、女神?以前にターンアンデットで、私が簡単に逝きかけたり、私の力が効かなかったのは……もしかして、本当に女神様なんですか?」

 

ヤバい……。

流石に気が付くよな、レベルが低いアークプリーストが、こんなに強い訳では無いしな。

てか、カズマよ、顔に出てるぞ。アクアが女神っていうのに、納得してないって顔が。

 

「そうよ!あなたは、他所で言いふらさいと思うから言っておくけど。私はアクア。そう!あのアクシズ教で崇められている女神アクアよ!控えなさい、リッチー。」

 

「ヒィ!」

 

「うぉ!?」

 

予想以上に怯えた顔をしたウィズさんは、俺の後ろに隠れた。

それほど、リッチーにとって女神というのは、怯える存在なのか。まぁ、リッチーにとっては天敵がいる訳だしな。

 

「ウィズ、そこまで怯える必要ないだろ?アンデットと女神は、水と油みたいな関係だろうけど。それと、ハチマン…そこ代われ。羨ましいんだよ!!!オレも、それ味わいたいんだよ!」

 

「ヒィ!」

 

ウィズさんは、カズマの声に驚いて、より強く服の裾を掴んだ。

なんか…歳上なのに小動物みたいな感じでいいな。

 

「カズマ、アホな事言ってんじゃねぇよ。」

 

「じゃあ、ハチマン、オレとハチマンが逆の立場だったらどうする?」

 

「そんなもん決まってんだろ。」

 

「ほーう、どうする?」

 

「店の裏呼んで、変身して全力でぶん殴る!」

 

「おいっ!?」

 

そりゃ、やるでしょ。こんな小動物にも近い歳上のお姉さんに涙目で服の裾を引っ張る姿なんて、こんなにも愛らしいものはないからな。

ましてや、前の世界の歳上の女性に関しては、魔王と先生くらいだったしな。

 

「とりあえず、ウィズさん大丈夫ですか?」

 

「は、はい。た、ただ……その言い難いのですが……。アクシズ教団は、頭がおかしい人達が多く、関わり合いにならない方がいいと言うのが、街の常識だったので……。それで、そのアクシズ教団の元締め女神と聞いて……。」

 

「何ですってぇっっ!?」

 

「ご、ごめんなさい!!!!」

 

「おい、コラ!アクアやめろ!」

 

「……話しが進まない。」

 

アクアに首を絞められそうになった、ウィズさんをなんとか庇いつつ、アクアと攻防していた。

 

そんな事をしていたら……。

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

そのアナウンスは、街中に響く大きなものだった。そう、この大きなアナウンスは、緊急事態知らせるものだ。

 

「何だ?キャベツか?」

 

「いや、違うだろ。キャベツの季節ではないはずだから違う何かだ。」

 

ウィズさんもアクアも緊急事態という事だけあって、その場に大人しくなった。

しかし……緊急事態か。もしかして、未確認生命体が出現したとかか……。だとしたら……。

 

「何かしら。でも、今回はパスね。ギルドから結構離れた場所に来てるし。他の冒険者に任せましょ。」

 

アクアの言葉に、息を切らしながら同意をした。

 

「はぁはぁ…そうですね。本来なら、冒険者は余程の事がないと集まらないといけない義務はあるですが……。このお店からだと距離もありますからね。」

 

「そんなもんなのか?デカいモンスターとか出て街がヤバいとか、そんか事は無いのか?」

 

カズマの疑問に、アクアが肩を竦めながら言った。

 

「そんな緊急クエストなら、尚更行きたくないでしょ。」

 

まぁ……普通ならそうだが……。

とりあえず、俺だけでも出れる準備だけしておくか。

 

 

 

 

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! ……………………冒険者の皆さんっ!!』

 

アナウンスの人が息を吸った。

 

 

『宝島ですっ!!』

 

 

 

 

アナウンスのその声に、アクアとウィズが店から飛び出し、脇目もふらずに駆け出した。

 

 

 




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作者です!
これから、頑張って2日1話ペースで書いていこうと思います!

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