「……さん……。ハ………さ…ん 。ハチ……ンさ……。ハチマンさん!」
うっ……。俺の名前の呼ぶ声が聞こえてきた。
目を開けてみると、眼の前に2つの山脈があった。しかも、後頭部がほのかに暖かく柔らかい感触があった。
「ハチマンさんが目を覚ましたよ、クリスさん!」
「本当かい!」
俺が倒れている間、ウィズさんが膝枕をしていてくれたらしいが……今はそれどころではない!
山脈が揺れている!2つの山脈が揺れている!
凄い、何これ!めっちゃ揺れてるんですけど!
……ッ!
「い、痛いです、クリスさん。頬を、ひ、引っ張らないで。」
「ったく、君は!こっちが心配しているのに何を考えていたんだい!」
言えない、2つの山脈が揺れているのに感動してたとは…。
やめて、そんな目で見ないで。
「ウィズさん、ありがとうございます。結構回復したので、起きます。」
「はい、分かりました。」
2つの山脈を避けるように、起き上がった。
ペガサスフォームで気力を、全部使いきったみたいだな。このフォームは、想像以上に神経を使うから街中では使えないな。
「そういえば、ゆんゆんは大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!」
ちょっと離れた位置に、背筋をピンとして正座していたゆんゆんの姿があった。
そして、そのまま頭を下げた。ジャパニーズ・土下座だ。
「ごめんなさい!私、何も役に立てずに!」
「お、おい!あれは、しょうがないからな。それに、全員無事だったから気にすることはない。だから、頭を上げてくれ!」
「うっ…ありがとうございます!」
ふぅ…。女の子に土下座させたなんて言ったら、アイツらに''ヒッキー最低''だの''クズ谷君、女の子に土下座させるとは何様なのかしらクズ谷くん?''とか夢の中で言われかねん。
「それにしても、あのモンスターは何だったんでしょうか。」
「モンスター記載されている書物にも載っていませんでした。」
「あたしも、初めてあんなのと遭遇したし…。ねぇ、さっきハチマンさん知ってそうな感じだったけど、知ってたら教えてくれないか?」
各々とズ・ゴオマ・グの事を話し始め、クリスさんが俺に質問をしてきた。
どうする?この世界に、他世界のモンスター、いや、空想上のモノだと説明していいのか?下手に言うと、ゆんゆんとウィズさんに俺が''別世界の住人''だとバレてしまう。とりあえず、適当に誤魔化しておくか。
「えっとだな…さっきの奴は、昔読んだ本の敵の1人なんだ。だから、実在していた事に驚いたんだ。」
「「へ~、そうなんですか。」」
ゆんゆんとウィズさんは、納得してくれたようだ。それに、俺が質問に答えに対して、やっちゃったみたいな顔をしていた。
とりあえず、後でクリスさんもといエリスさまに聞いてみるか。
だが、何故ズ・ゴオマ・グが出てきたんだ。もし、今後的にクウガの未確認生命体が現れるとしたら、かなりの人数の人が死ぬ。
それに……もし、''アイツ''と闘う事になったら、俺は勝てるんだろうか。もし、その時が来たら''死''を覚悟しておいた方がいいな。
それと別に気がかりなのは、先程の戦闘だ。ズ・ゴオマ・グが劇中とは違い''喋らなかった''という事だ。
クウガの姿をみたら、何かしら反応はするはずだが、''何も無かった''。むしろ、ちょっと強いモンスターという印象の方が強い。ただ本能で動いている感じだ。
「ハチマンさん~、お~い。」
「おっ、悪いな。ちょっと考え事してたわ。」
「ううん、大丈夫だよ。とりあえず、この後どうする?」
「街に引き返すとするか、さっきの戦闘で大分疲労したみたいだ。もし、戦闘になったら動けないかもしれないしな。」
「分かった。」
「分かりました。」
「わ、分かりました!」
簡易キャンプセットを片付け、洞窟を出た。
とりあえず、明日もう1度調査しておくか。何かわかるかもしれないしな。
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ギルドに戻ると、カズマとカズマと組んだパーティの奴らが、酒を飲んでいた。
あっちは、あっちで上手くいったみたいだな。
カズマも、気づいたのか組んだパーティの連中に離れると合図をしながら、こちらに歩いてきた。
「ハチマン!おかえりー!」
「ただいまだ。そっちは、かなり上手くいったみたいだな。」
「そうなんだよ!アクシデントはあったけど、全体的に上手くいったんだよ!」
「それは、よかったな。」
「そっ…ちの………おい、ハチマンさん。今日はソロで行ったんだよな?」
俺の後ろにいたメンバーに気がついた。
「最初は1人だったんだが、いつの間にか増えた。」
「久しぶり~。」「お久しぶりです、カズマさん。」「は、初めまして!」
各々、カズマに挨拶をした。カズマは口をポカンと開けていた。
そして…
「こんのぉ!ハーレム野郎ぉぉぉぉぉがぁぁぁ!」
カズマの声がギルドに響き渡った。
おいおい、急に叫ぶと皆に迷惑かかるだろ。しかも、俺に対しての風評被害が起こるだろうが。
「なんだよ!こっちは、初心者殺しにあって本気で死ぬかけてる間、お前は!」
「言っておくが、俺も死にかけはしなかったが激戦だったぞ。」
「はぁ?洞窟の調査だけだろ?なんだ?激戦って、あれか、誰がハチマンの隣り行くかで、女性陣が争ったとかだろ?あぁん?しかも、巨乳ぞろ………ごめんなさい。」
おい、バカ、やめろ。クリスさんを見て、謝るんじゃない。俺に被害が出るだろうが。
やめて、クリスさん。そんな目で、俺を見ないで!俺は何も言ってないです。
「と、とりあえず、飯食った後で説明すっから、また後でな!ほらほら、行くぞ。」
俺が、クリスさんの背中を押して奥の席へと向かった。
ったく……カズマの野郎、俺がなんかあったら変身して殴る。
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「シュワシュワおかわりー!」
「はいはい……。すいません、シュワシュワ1つお願いします。」
「くぅ……胸が何よ。大きれば勝ちなの?ハチマンさん貸して!んぐ……んぐ……。」
愚痴愚痴言いながら、次々とシュワシュワを飲んでいく、クリスさん。
そんな様子を見ていたウィズさんとゆんゆんは苦笑いをしていた。2人共、食事は終えていたがクリスさんが、この様子だ……帰るに帰れないというか、気を使って帰らないのである。
えっ?俺は何してるかって?黙って、シュワシュワを献上するのが、今の役目だ。だって、下手な事言ったらパンツどころか全裸で帰ることになるかもしれんしな。
「え、えっと、クリスさん。胸が大きくても良い事ないですよ。荷物を運んだりする時に、胸で下が見えなかったりしますし。」
「そ、そうですよ!肩は凝るし、走ると痛いですし。小さい方が羨ましいですよ!」
2人は、クリスさんをフォローするが……残念。それは、フォローという名の無慈悲な攻撃だ。
「うわぁぁぁぁん……!」
あーあ……。
クリスさんが泣き始めてしまった事に、オロオロする2人だった。
「はぁ……。2人共、今日はありがとうな。また後日に、今日のお礼はさせてもらう。後は、俺に任せても大丈夫だから2人は帰って大丈夫だ。また、なんかあったら宿に来てくれ。」
「分かりました。」「はい!」
2人は、ちょっと申し訳なさそうにしながら帰った。
さてと……。
「クリスさん。」
「ぐすっ……ふぅ……。」
大分落ち着いた様子だな。
「ねぇ、ハチマンさん。正直に答えて。」
……とんでもなく、嫌な予感しかしないんだが。
絶対に、ヤバい。
「ハチマンさんは、胸が大きいのと小さいのどっちが好き?」
ほら、来たよ。究極にヤバい奴が来ちゃったよ。
どうすんだよ、これ。
もし、大きい方がと言ったら泣くだろうし、小さい方と言ったら、嘘だと言われる。
感度か……感度言えばいけるのか……だめだ!ただの変態じゃねぇか!
どうする?………………ココは。
「……クリスさん。俺は!胸の大きさなんて関係ない!というか、選べるような人間でもないですし!だって、俺モテたことないんで!だから、胸なんかどうでもいいんです!」
俺は、何を言ってんだよ!訳が分からね!
「……っぷ。アハハ…まさか返ってくる言葉が、それとはね。」
「あは、アハハ……。」
「まったく……よし、なんか元気出てきたからクズマさんの所行って、今日の話しをしようか。」
「そうですね。」
「あと……今日は良いけど、次会う時には、敬語禁止だからね。もし、敬語使ったら公衆の面前で全裸にするからね。」
めちゃくちゃいい笑顔で、何言ってんのこの人?!拒否権すらない!
「は、はい……。」
その後、俺とクリスさんはカズマの所で洞窟で会ったことを話した。
話し終わった辺りに、めぐみんを背負ったダストと白目を向いたダクネスを背負ったアクアが来ては、ダストがカズマに頭を下げて謝っていた。
ギルド内は、延々とダストの泣きながら謝る声が響き渡った。