「新たにパーティを組んだから、もう1度自己紹介が必要だよね?」
「ウィズさんと初対面のクリスさんだけで、充分だろ。」
「分かったよ、ウィズさん!」
クリスさんは、ウィズさんの方に寄って、自己紹介を始めた。
今回の依頼としては、この洞窟の調査及び必要とあればモンスターの討伐だ。
まぁ、いつもみたいなアクシデントは起きないと思うが油断せず行くに越したことはない。
俺達は、ランプを片手に洞窟の奥へ奥へと進んで行った。洞窟内部は、奥に進んでいくほど道が広く、緩やかに地下へと続いていた。
音も水滴が落ちる音と俺達の足音のみだ 。
アクア達と違って、全員が警戒しているので声を出したとしても聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で話して、基本的には静寂が続いた。
こういう静寂は、俺にとっては心地が良いものだ。そして、この緊張感も良いな。ちゃんと冒険をしている感があって。
あれ、もしかして…この世界に来てから、ちゃんとした冒険は初めてか!
やべ、なんか今更緊張してきた。
「ふぅ…ハチマンさん。ねぇ、そろそろ休憩しよっか。さすがに、ちょっと疲れてきたし。」
「そうだな。」
辺りを見渡し、腰掛けに丁度良さそうな岩が幾つか並んでいる場所に腰掛けた。
俺の右隣にクリスさん、正面にゆんゆん、左隣にウィズさんという配置だ。
このパーティで、洞窟行ったって言ったらカズマ怒るだろうな。
リュックから、小さいヤカンとコップを取り出して、ヤカンの中に水筒に入った水を注ぎ、ランプの火を使って水を沸かし始めた。
こういう時の為に、簡易キャンプセット(初心者編)の装備を持っておくと便利だよな。
「んー!はぁ…。疲れた。」
「大分歩きましたからね。」
「そ、そうですね。」
「それにしても、ハチマンさん準備がいいね~。コップも4つ丁度あるし。まさかこうなるって、予想してたのかい?それとも、入れっぱとか?」
「いや、たまたまセットで買った時に付いてきたやつだ。それに入れっぱなしだったら、ウチのパーティ5人いるから5個入ってなきゃおかしいだろ。」
「えっ?ハチマンさんって、クリスさんと常にパーティ組んでるんじゃないんですか?」
「今回だけ、クリスさんとパーティを組んでるんだ。いつもの組んでいるパーティは、別にいるんだ。」
ゆんゆんからの質問に答えたら、ゆんゆんは驚愕した顔をしていた。
えっ?何んですか、そんなに驚くこと何だろうか。
「じゃ、じゃあ!えっ、えっと…!」
「とりあえず、落ち着いてから話そうな。」
「は、はい!えっと、ハチマンさんのパーティの人達について、教えて貰っていいですか!それと、どうやってパーティを組んだのかも!」
「べ、別にいいが。それに今回、何でこうなったのかも話してやるよ。」
「やったー!」
ゆんゆんは、急に立ち上がって喜んでいた。
その時に気づいた。ゆんゆんの胸が、すんごい揺れていたことに…。すげー、これが万乳引力の法則か!さすがだな、乳ートン先生!
その時、足から衝撃が走った。
「いってぇー!えっ!?なに!?」
「ふん!」
どうやら、犯人はクリスさんのようだった。
あー、大丈夫だよ。まだ、クリスさんも成長する未来があるさ。あっ、でも女神って、どうなんだ?成長するのか、それとも成長しきっているのか。
また、足に衝撃が走った。
「もう変な事も考えないんで、クリスさん踏むのやめてください!お願いします!ものすごく、痛いので。」
「ふん!君は、まったく反省しないな。」
「仲が良いんですね、お二人は。」
ウィズさんは、俺達のやり取りを見て呟いたと同時にヤカンから音が鳴った。
「おっと、沸いたみたいだな。」
4つのコップに、粉末コーヒーとお湯を注いで各人に渡して、一息ついた。
「んじゃ、あいつらと出会った経緯とパーティなった経緯から話してやるよ。」
「お願いします!」
そこから、カズマとアクア、めぐみん、ダクネスとの出会いを話して、どうやってパーティを組んだかを話した。
そこまで、大層な話しではないが、俺にとっては1つ1つが大きい事である。
それに、何だかんだ居心地の良いパーティだ。
話しの中で、めぐみんの話しをした時に、ゆんゆんが反応していたが、俺の話しに夢中に聞いていた。やっぱり、ゆんゆんとめぐみんは知り合いっぽいな。
それからというもの、時説洞窟内に小さな笑い声が響いたりしていた。
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「ってな感じで、今はパーティが離れているんだ。」
「ハチマンさん、結構苦労しているんですね。」
「今度、店に来てください。その時に、疲れが取れるマジックアイテムとか安くお売りしますので。」
「ねぇ、なんであたしがパンツを盗られた話しをしたの?」
各々と感想という述べた。というか、2人から同情された。クリスさんは、思い出したくない事を話されたので、ジト目で見てきた。えっ?パンツの話し大事でしょ。カズマの危険性を教えるのに。
「そう言えば、ゆんゆん。さっきめぐみんの話しをした時に、反応していたが知り合いか?」
「あっ、はい!私のライバルです!」
「えっ?もう一度頼む。」
俺は耳を疑って、思わずもう一度聞き直した。だって、あのポンコツのライバル?何を言っているんだ。
「めぐみんと私は、ライバルです!」
俺の耳は正常だったみたいだ。じゃあ、なんだ?この子も爆裂魔法しか使えないポンコツなのか?
俺は、おそるおそるとゆんゆんに聞いた。
「…ゆ…ゆんゆんも、めぐみんと一緒で爆裂魔法しか使えないのか?」
「い、いえ!私は中級魔法と上級魔法使えます!」
なんだと!?この子、めっちゃ優秀ではないか!えっ、じゃあなんでライバルなの?むしろ、めぐみんに勝てそうな所が思いつかないだが。
「そ、そのめぐみんは学生時代軒並みに成績が良かったんですよ。」
「嘘だろ!?あのポンコツがか!?」
「は、はい!ですから、私がめぐみんに勝負を挑ん……「キィィィィィィン!!!!」えっ!?」
洞窟奥から甲高い声というよりも耳鳴りに近い音が鳴り響いた。
団欒をしていた雰囲気から戦闘態勢に切り替え、洞窟の奥に目を向けた。
「おい…嘘だろ……なんで、コイツが…。」
俺は驚愕した。洞窟の奥から現れたのは、仮面ライダークウガに出てきた''未確認生命体第3号 ズ・ゴオマ・グ''だった。