街から外れた丘の上。
そこには、身寄りがない人やお金がない人などの為の共同墓地がある。
この世界では、火葬はせずに土葬という形で埋葬をしているらしい。
その為か、埋葬している死体の体内にある魔力が枯渇せず残ったりしてるとアンデッドモンスターに変化するらしい。
そう、今回の依頼はアンデッドの討伐クエストだ。
あの後、 受付嬢のルナさんに依頼があるか聞いてみたら、喜んで紹介してくれた。
今の時刻は、夕方に差し掛かろうとしていた。
俺達5人は、墓場の近くで夜を待つべくキャンプをしていた。
「ちょっと!カズマ、その肉は私のよ!カズマは、野菜食べなさいよね!」
「うるせい!こういうのは早い者勝ちなんだよ!」
「私にもお肉下さい!」
「皆で、外で焼肉もいいものだな。」
墓場のちょっと離れた位置で、鉄板を敷いて焼肉を食べていた。
これから討伐クエストなのに、こんなにものんびりしているのは、今回の討伐クエストのメインとなるのは、ゾンビメーカーの討伐だ。
ゾンビメーカーとは、死体からアンデッドモンスターを作成しては、手下として兵として操るモンスターだ。
まぁ、ネクロマンサーと言った感じだな。
ゾンビメーカー自身は、かなり弱いらしいから駆け出し冒険者でも倒せるレベルらしい。
まぁ、ルナさんの紹介だし大丈夫だろう。
よし、俺も肉を……。
「ふぅ…食った食った。」
鉄板を見てみると、肉はなく野菜しか無かった。
「おい、誰だ。肉ばっか食ってるアホは?」
「カズマ(よ)(です!)(だな)」
「おい!嘘つくんじゃねぇよ!特にアクア、てめぇ!」
「私は、野菜も食べてました~!べー!」
「はぁ…もういいわ。野菜食いますよ。」
「ハチマン、私の肉をやろう。」
「ありがとうな、ダクネス。」
ダクネスから肉を貰っていたら、後ろから服の裾を引っ張られた。
「うん?」
「ハチマン、私のお肉あげます。」
「めぐみんありがとうな。でも、ダクネスからもらった分だけで大丈夫だ。それに、その分けてくれるって、気持ちだけで充分だしな。」
こんな育ち盛りの子から、お肉は取れないよ。
こんな状況にもなったのは、クズマとバカ女神のせいだしな。
そんなこんなで、俺達は腹ごしらえを終えた。
カズマから、各人コーヒー貰って寛いでいた。
「カズマ、お前器用だな。」
「あぁ?あー、これくらい簡単だぞ。」
カズマは、マグカップにコーヒーの粉を入れては、クリエイト・ウォーターでマグカップに水を入れ、ティンダーという火の魔法で、マグカップを暖めていた。
「初級属性魔法なんて、ほとんど使われていないので、カズマを見ていると便利そうに見えます。」
「いや、多分そういった使い方をするんじゃないのか、初級魔法って?あっ、でも''クリエイト・アース''って、どう使うんだ?」
カズマは、呪文を唱えると手の中にサラサラした土が出てきた。
確かに、土を生み出せると言っても使い道とかって、スグに思いつくもんでもないからな。
「…………えっとですね。クリエイト・アースはですね、畑などに使用すると良い作物が取れたりするんですよ。まぁ、それだけしかないんですけどね。」
その説明を聞いたアクアは、吹き出していた。
「えっ、何々、カズマさん畑作るんですか?プースクス、やったわね!土も作れるし、クリエイト・ウォーターで水も撒けるし、農家とか天職じゃないの?ぷっ、アハハ…!」
カズマは、おもむろに土がある手をアクアに差し出しては、''ウィンドブレスト''と唱えた途端に、土はアクアに飛んでいった。
「ぎゃーーー!目に砂がー!」
目に砂が入ったアクアは、その場で転げまわっていた。
おい、ただでさえ短いスカートなんだから、そんなに動いたら見えちゃうでしょ!
見えても、不可抗力だからな。あっ、シマシマ…。
「なるほど、こう使うのか。」
「違います!絶対に!って、なんで初級魔法以上に上手く使いこなしているんですか!」
とりあえず、コイツらは食後の珈琲も、ゆっくり飲めないのかよ。
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「…ふぅ…大分冷えてきたわね。ハチマン、今回受けたクエストって、ゾンビメーカーの討伐よね?そんな小物じゃなくて大物のアンデッドが出そうな予感がするだけど。」
月が登り、深夜を回った頃。
アクアは、そんな事をポツリと言い始めた。
「おい、変なフラグ立てんなよ。ただでさえ、このパーティ全員で挑む時ほど、イレギュラーな事しか起きねぇんだから。」
「そうだぞ、アクア。俺達は、ゾンビメーカーを倒して、取り巻きのゾンビ共も土に返して、ギルドに戻って美味しいご飯を食べて、馬小屋で寝る!それ以外のイレギュラーが起きた場合は、すぐに帰る。」
カズマの言葉に、俺達は縦に頷いた。
だが、俺は気づいていた。カズマのセリフが絶対に変なフラグになって、帰れなくなることを。
そして、敵感知が行えるカズマを先頭にして墓場を歩いた。歩き始めてから数十分が経った時に、カズマが止まれの合図した。
「…………敵感知に引っかかったぞ。敵の数は、1匹、2匹、3匹、4匹、5匹?あれ、ちょっと多くないか?ハチマン?」
「あぁ。確かに…。」
ゾンビメーカーの手下の出来る数は、2匹から3匹と言われている。
ここは、慎重になっておいた方がいいな。
そんなことを考えていると、墓場の中央から青白い光が走った。
その光は、妖しくも幻想的なものだった。
青白い光の発生源を見てみると、かなり大きめな魔法陣と黒いローブを着ている人影があった。
「あれは、ゾンビメーカーではない気がします。」
めぐみんは、自信なさそう言った。
黒いローブの人影の周りには、次々と蠢く人影が増えていった。
「どうする?突っ込むか?ゾンビメーカーにしろないにしろ、この時間に墓場にいるのはおかしい。それに、こっちには、アンデッドに対抗できるアクアもいるし。」
ダクネスは大剣を持って、ソワソワしていた。
「ダクネス、ちょっと落ち着け。確かに、この時間にいるのは怪しいが、めぐみんの発言も気になる。カズマ、ここで待機して、ゾンビメーカーではない場合は戻るぞ。その場合、ギルドにスグに報告だ。」
「オッケーだ。」
俺達は、その場で待機していたらアクアがとんでもない行動を起こした。
「あーーーーーーーーーーー!」
アクアは、叫び始めたと思ったら、黒いローブに向かって走り出しのだ。
「おい!バカ!お前らは待機してろ。」
俺も、すぐにアクアの後を追いかけた。
アクアは、黒いローブの前に立つと指をビジッと指した。
「ノコノコ、こんな所に現れるとはね!この''リッチー''が!私が成敗してやる!」
はい、やはり完全にイレギュラーが発生しました。