4-1 お金×カズマの計画×穀潰し
「……という訳で、金が欲しい。それも、大量にだ!」
開幕早々に、いきなりカズマが金が欲しいとか言い始めた。聞く価値があるかないかでいうとない方だな。
「ハチマンさん、本なんか読んでないで聞いてください!」
そう…俺は、この世界での知識を増やす為に冒険者ギルドの近くにある図書館に通っては、本を借りて読んでいた。
んで、現在ギルドの俺達専用と言って良いほど、隅っこのテーブル席でダクネスとめぐみんが来るのを待っている最中だ。
アクアに関しては、シュワシュワが入ったジョッキを片手に上機嫌だ。
「あーん?何言ってるの?カズマ、バカなの?みんな、お金欲しいに決まってんじゃん!てか、私も欲しいわよ!私よりも知力がちょっと高いとか思ってたけど、やっぱりバカね!まぁ、所詮ニートだし~」
昼間から酒を呑んでる自称なにか様は、カズマを煽った。
っが、カズマは、このダメ神に何を言っても無駄な事を知っているから、俺の名指しで話しを聞いてくれと懇願してきたのである。
「んで、金が欲しい理由は?」
「お前が欲しいの散財する金だろうが!…ごほん…えっとですね、ハチマンさん。僕達も安定した生活が欲しいんですよ。ハチマンさんと違い、未だに馬小屋生活ですし、本来ならチート能力を手に入れて、ここでの生活も苦労せず過ごせたはずなんですよ。」
「……。」
「そりゃあ、俺だってロクに何もしてないですよ。転生の時に、特典とか無償で貰える身としては、不満なんてありませんでした。でも、勢いとはいえ、チート能力や武器よりもコイツを選んだんだ。多少なりともチート能力とか武器に匹敵するぐらいの使えるかというと使えない元自称なんとかさん!」
「うぐ……元じゃないもん…今だって、女神だもん…」
あーぁ……、アクアが泣きそう。カズマも、さっきの煽りの仕返しの分も交ざってるタチが悪くなってやがる。
しかも、段々熱くなってきてる。
「ほう…女神ねぇ?女神様って、あれだろ?勇者を導いて優秀な武器の在り処や勇者が一丁前になるまで、魔王軍とかを足止めしたり封印したりするんじゃないんですか~?それが、カエル食われて、朝から酒呑んで…この演芸しか脳がない穀潰しが!」
「わぁぁぁん……。」
アクアは、机に突っ伏して泣き始めてしまった。
カズマが、その姿を見ては満足そうに鼻で笑っていた。
傍から見ても、この光景はマズいだろ。女泣かして、ドヤ顔の男とか…また、俺達パーティの評価が下がる。
「うぐっ…でも!私だって、回復魔法とか支援魔法に回復魔法とかで、役に立ってるわよ!このクソニート!じゃあ、早く!お金が欲しい理由を話してみなさいよ!」
涙を流しながらアクアは、カズマに訴えては、また机に突っ伏して泣き始めた。
カズマをチラッと見ると、完全にとどめを刺すつもりだな。嫌だなぁ~、この後の処理誰がするでしょうかね?えぇ、もちろん、俺ですよ。
はぁ…、めんどくさいが仲介に入るとするか。
手に持っていたパタンと閉じた。
閉じた音で2人は、こっちに注目した。
「んで、カズマ。アクアが言った通り、なぜそこまで金が欲しいんだ?それに、金なら前の冬虫夏草だの討伐の山分けした報酬とかあるだろ?」
「えっとですね。まずお金が欲しい理由としては、日本から来たというのに全く活かせてない。そこで、俺達でも出来そうな簡単な日本製品を作成して売り出してみたらどうかなって思ってさ。ほら、オレのステータスの運の項目がめちゃくちゃ高いから受付のルナさんに商売人とかどうかって勧められたんだ。」
なるほど、冒険者では命を落とすリスクがあるが、商売人には冒険者ほどリスクは少ない。それに、カズマの持っている潜伏スキルと運を使えば高ランク材料を揃えることも出来る。
なかなか理にかなったことだ。
だが……。
「カズマ、お前が金が欲しい理由は分かった。」
「なら!」
「だが、俺はさっきも言ったよな?冬虫夏草やら討伐で山分けした金があるはずだと。その金があれば、小さな店くらいなら借りられるくらいだろ?ましてや、俺と違って''無料''の馬小屋に住んでんだから。」
カズマはバツが悪そうな顔をした。
「……た」
「あん?」
「酒と夜遊びで使い切りました!」
「お前もアクアと対して変わらんわ、穀潰し。」
俺の言葉にアクアと同じように、カズマも机に突っ伏して泣き始めた。
ダメだ、コイツ…アクアもタチが悪いが、コイツも同じくらいタチが悪い。
と、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「ハチマン、昼間からどうしたんですか?…正論というのは、時にはとんでもない武器になりえますからね。」
「ハチマン、私にも!私にも、女にセクハラをしては、飽きたら女を泣かせるだけ泣かせ、何もしないで夜遊びしかしなくて、簡単に金が手に入れられると思っている穀潰しを見る目で言ってくれ!」
そこに居たのは、めぐみんとおかしな言動して、カズマに追い討ちをしたダクネスの姿があった。
だがこの文書だけでも、なかなか清々しい程のゴミっぷりだな。
カズマとアクアは、2人からの視線を感じて時折チラチラッと見ていたが反省の色なしだな。
「あの2人は、ほっといて。ハチマン、今日もクエスト行きましょ。」
「そうだな。バカ2人は、ほっといてクエスト受けて金でも稼ぐか。」
「「待って(よ)ください!俺(私)達も行く!」」
コイツら、金という単語が出た途端に顔をすぐにあげやがって。
「では、アクアのレベルに合わせたクエストにしましょう。前にクリスさんが平均パーティレベルの話しをされていたので。アクアの様なプリースト系はレベルを上げるのは難しいですが。」
「そうだな。でも、確か…プリースト系には、攻撃魔法とかないんだよな?」
「はい、そうなんですよ。ですが、安心して下さい!プリーストにはプリーストしか使えない浄化魔法があるんです!つまり、アンデッド系を狩るクエストを受ければ、アクアのレベルも上げられると言うことです!ふふふ……」
めぐみんは、まな板の様な胸を張りながらドヤ顔をしていた。
まぁ、かわいいから許す。
「良い提案だ、めぐみん。ありがとうな。」
めぐみんの頭を軽く撫でて、ポンコツ2人の肩を叩いた。
「ということだ。カズマ、アクア、良い依頼がないか探してきてくれ。俺は、そういったクエストが、まだボードに貼られていないかもしれないから確認してくるわ。」
「「はい!」」
「あと…カズマはクエスト終わったら説教な。」
「なんでさぁぁぁぁぁぁ!」
カズマの大声はギルド内を駆け巡った。