俺達が拠点を置く街が、ようやく見えて来た。
「うぐっ…なぜだ!なぜ、あの時に…ひぐっ…。」
「ハチマン、そろそろ変わるか?」
「いや、大丈夫だ。」
カズマは、俺に気遣いをしてくれた。
何故カズマから気遣いされてるのかというと、俺の背中で泣いているダクネスを、おんぶして街まで歩いてきたからだ。
それと、どうしてダクネスが泣いているのかというと、冬虫夏草を爆裂魔法で消し飛ばす際に、ダクネスを避難もとい救出をした事で泣いているのである。
おかしいだろ、普通は''ありがとう''って言葉が来るはずが帰ってきた言葉は、''なぜ!助けた!私はあの中で、最高にHighになるはずだったのに!''だ。
挙句の果てに、''もう一度、あの状況にならない限り帰らない''とまで言って、頬膨らまして涙目で、その場に座り込んじまってからこの状況になるまでに大分時間が掛かった。
だが、その時間のおかげで、めぐみんの魔力が回復して歩けるようになったのが幸いだったが。
それにしても、この世界はすげーよな。前の世界だったら、ダクネスをおんぶして牧場から街までとか重くて無理だったしな。
ステータスのおかげで、俺でも鎧を装備している状態のダクネスでも軽く感じるしな。
「うぅ…うー!」
「ポカポカ叩くなよ。」
ダクネスは、俺の背中を両手でポカポカ叩き始めた。あれか?重いとか考えたのがバレたか?
「でも、今回の作戦は上手くいきましたね!」
「あぁ、そうだな。」
めぐみんは、爆裂魔法が思いのほか上手く決まった為か、魔力が回復次第に直ぐにテンションが高くして歩き出したほどだ。
そんな、めぐみんに続いて、もう1人テンションが高いやつが口を開いた。
「ねぇ!もう1回だけ、めぐみんの冒険者カード見して!……冬虫夏草25匹。1匹につき、3万エリスだから…75万エリス!!あわわ…どうしようハチマン、カズマ!土木工事のアルバイトの4ヶ月ちょいあるわよ!ちょろい、ちょろすぎるわ!冒険者家業!」
「いや、お前なぁ。今回は上手くいったから良いけど、ハチマンが居なかったらダクネスは、あの中心で爆裂魔法に巻き込まれて破損した装備の修理代になってたんだからな。それに、ちゃんと山分けの取り分の計算とかはハチマン次第なんだからな。」
アクアは、ぶーっと頬膨らましながらぶつくさ言っていた。
確かに、今回は上手く行ったが、もしダクネスがあれに巻き込まれてたら取り分は、きっとカエルの討伐と変わらないんじゃないか。
でも、まぁ……。
「よし、今日は飯は豪勢にいくとするか。」
俺の言葉で、3名が目を輝かせていた。
「「「いい(ですか!)(の!)のか!ハチマン!」」」
「あ、あぁ。」
「よっしゃー!!ハチマン、カズマ!焼肉よ!焼肉!」
「おい、アクア。アレを見た後で、良く焼肉行きたいっていうな。しかも、提供される肉が寄生されたやつだぞ。」
「うぷっ…やっぱりいらない。」
そんなアホな事を談笑していたら、いつの間にか街の門についた。
だが、門の前には見慣れた人影が顔を真っ赤にして、今にも食ってかかって来る形相して立っていた。
そう、クリスさんだ。
「パンツハンターァァァァァ!あたしがクエストに出てる間に、ダクネスに何をしたァァァァ!」
目を腫らして泣いているダクネスの姿を見ては、クリスさんが叫んだ。
まさか、ダクネスを背負ってる俺ではなくカズマにキレるとは。
まぁ、妥当か。
「お、オレはなんにもしてねぇよぉぉぉぉ!」
「問答無用!」
あーあ…本当にカズマは人間関係に関しては、運が悪いな。
てか、ダクネスも弁護してやれよ。あっ、コイツ、狸寝入りしてやがる。
はぁ…。
俺は何度目か分からないが、ダガーを持ったクリスさんに追いかけられているカズマに合掌した。
「おい、ハチマン!てめぇ、合掌なんかしてなっ!おわっ!危なっ!」
「めぐみん、アクア。風呂入ってから合流な。あと、俺の背中で狸寝入りこいてるダクネスは、クリスさんにちゃんと説明したから来いよ。」
「「は~い」」
俺は、ダクネスをその場に下ろそうと、しゃがんだ途端に俺の肩に乗っていた手に力が入れてきた。
「いっ!痛い、痛いダクネス痛い!分かった、分かったよ。」
何が分かったかは、分からんがしゃがまずに立つと、肩に乗った手の力が緩んだ。
まったく、もうなんなんだよ…。
とりあえず、あの2人止めるか。なんだが、この世界に来てから、本当に幼稚園の先生みたいな気分だよ。
「おーい、クリスさん!ちょっと話を聞いてれ。」
――――――――――――――――――――――――――――――――
場所は移して、ギルドと併設している酒場の中。
クエスト報酬を山分けして、各自冒険者カードの更新を行ってからダクネスが泣いてる理由をクリスさんに説明した。
「なんだ~、そういう事だったんだね。でも、キミたち結構無茶し過ぎだよ。冬虫夏草のクエストの平均パーティレベルは10レベルだよ。それに平均と言っても、15レベルの冒険者でも苦戦する場合もあるんだからね。んで、キミ達レベルは?」
「俺は、今のでレベル22になった。」
「私もさっきので、レベル13になりました!」
「オレもレベル11だ。」
「私もレベル11になった。」
「えっ?なんで、みんなそんなにレベル高いの?私様がレベル5よ?もしかして、1番低い!?」
アクアは、自分のレベルの低さに絶望していた。
それは、そうだ。アクアに関しては、俺らが討伐クエストとかやってる時に、借金返済の為にバイトしてたからな。
「はぁ…ハチマンさんが、パーティレベルの平均値を底上げしてるけど、ハチマンさんが抜けたら、アウトだったよ。冒険者はね、慎重に慎重を重ねるぐらいで丁度いいの!それに、ハチマンさんがレベルが高いからって、いけるだろって事は無いんだからね!まったく、勇気と無謀は違うんだからね!」
クリスさんは、声を荒らげていた。確かに、今回は上手くいったが次が確実に上手くいくなんて事は無い。
それに、今回のクエストレベルの確認やモンスターの詳細などを知らず行ったのは、不味かった。
異世界だからって、何処かで浮かれてちまったのかな。この世界でも、死ぬことだってあるんだ。失った命は、もう…。
「クリスさん、俺が悪いんだ。」
「えっ!?あっ。」
俺は、クリスさんに頭を下げた。
「クリスさんの相方でもあるダクネスを危険な目に合わせてしまって。」
「ちょっと待ってくれ!ハチマン!あれは、私がやってくれと言ったのだ!それに、謝るなら私だ!いつまでも、変な事に強情になっていたから!だから、顔を上げてくれ!」
「えっと、あっ、うぅ。ハチマンさんだけが悪いんでは無いんですから、顔を上げて下さい。お願いします!」
顔を上げると、俺の態度が予想外だったのかあたふたしたクリスさんの姿があった。
やはり、この姿といい態度といい…やはり、この人は。
「ですが、ハチマンさん。私の相方でもあるダクネスをちゃんと守ってね。」
「分かったよ。」
「ダクネスも、そこの変態パンツハンターに酷い事されたら、すぐにあたしの元に帰っくるんだよ。」
クリスさんは、カズマの事を指で指した。
「ちょっ!さっきよりも、ランクが上がってるんですけど!」
「うっさい!」
「ハハハ…。酷いなど…望むとこ………っんでは、なく。心配しすぎだ、クリス。大丈夫、またその内一緒に冒険をしよう。」
ダクネスとクリスさんは、一緒に笑いあっていた。
――――――――――――――――――――――――――――
「さてと…それじゃ、あたしも行くね。さっきも言ったどおり、変態パンツハンターX君、もしもダクネスに変な事したら…。」
「わ、分かってるよ!くそ…。」
まぁ…前科持ちだからな。疑われてとしょうがない。
「ねぇ、あんた盗賊職なんでしょ?どうせなら仲間にならない?」
「そうです。盗賊職は、ダンジョンでは重宝される存在ですし。歓迎しますよ。」
クリスさんは、首を横に振った。
「あたしのスキルは、そこいるカズマに1部教えてるし、あたしの有り難みが半減してしまうしね。それに、あたしは自由気ままにやっていく方が、しょうに合ってるしね。おっと、そろそろ新しい冒険者君たちと、一緒にダンジョンに行く時間だ。」
ダクネスは、少し心配そうな顔はしていたがクリスさんの笑顔を見て、ほっとした様子に変わった。
ダクネスは、ドMを除けば普通なんだよな。
「じゃあね!ダクネス!討伐クエストとかあったら、一緒に行こうね!」
クリスさんは、これからダンジョンを一緒に行くであろうパーティいるテーブルに向かっていったが、こっちに戻ってきた。
「ハチマンさん。」
「あん?」
クリスさんは、俺の耳元で他のメンバーで聞こえない声で''ハチマンさん、貴方様の今後冒険にご武運を。それと、頑張ってくださいね。''と言っては、さっさと行ってしまった。
ったく…あの人は。
そう言われたら、頑張るしかないよな。
「よし、飯食って明日からも頑張ってみますか。」
ここまでで、3章は終了です!
大分時間がかかってしまったし、長くなってしまいました。
4章の予定としては、あの巨乳のお姉さんが出てくる予定です!
それにしても、誤字が多くてすみません!
それと投稿が遅くなってすみません!
体調が悪かったんです、許してください!
話が変わります、作者は今SICの555のアクセルフォームを買うか悩んでいます。
開閉がある限定版を買うか……。
財布との相談ですね(笑)
読者の皆さんも風邪には気をつけて下さいね!
では、4章で会いましょ!