「うぅ…ハ〜チ~マ~ン~!」
カズマに、ゴッドブローこと鳩尾をぶちかましてからアクアは泣きついてきた。
はぁ…、手が掛かる。
「はいはい、何でしょうか。」
「カジュマに、汚されちゃった~!ひぐ…カズマから出た汚い水で!うわぁーん!」
「はいはい、よしよし。」
「ぐぅ…ハチマン、オレの心配は…。」
「自業自得だ。」
「くそ…あふっ……。」
カズマは、そのまま気絶をした。はぁ…。
せっかく、RPGっぽくモンスターを弱点を付いて倒すみたいな事ができると思ったんだがな。
とりあえず、カズマが起きてから敵感知スキル使ってもらうとするか。
それに、このダメ神も起きる前に慰めねぇと。
あとは…。
「おい、そこのクルセイダー。いつまでふて寝してんだよ。」
「ふ、ふて寝ではない!」
「はいはい、なんでも良いからカズマを運ぶから、こっちに来い。」
「ふん!」
この野郎…。ふて寝と言われたのが相当気に食わないのか顔をそっぽ向けやがった。
そっちがその気なら…
「おい、ポンコツ。10秒以内に来ないとお前の事を褒め殺すぞ。」
「ごめんなさい!今すぐ行きます!」
ダクネスは、いそいそとカズマを木の下に運んでいった。そう、コイツが前に罵倒しても反省の色がないというか、意味が無いことから1度だけ褒めて褒めまくったら泣きながら辞めてくれと懇願して来たのである。
何はともあれ、手間が掛かるパーティだな。
誰か変わってくれないかな。なぁ、頼むよ。
はぁ…。
――――――――――――――――――――――――――――――
「う…うん…」
おっ、カズマがやっと気がついたようだな。俺たちは、カズマが気がつくまで木の下で休憩していた。
「あれ、オレは?おい、ハチマンどういう状況だ?」
「えっ?あぁ。カズマが気絶してる間に休憩をしていたところだ。」
「いや、そうじゃなくて!なんで、みんなハチマンに寄りかかって寝てるんだよ!」
そう、アクア、めぐみん、ダクネスは俺に寄りかかって寝ている。アクアとめぐみんに肩を貸し、ダクネスには背中を貸していた。
「安心しろ、カズマ!お前には、俺の膝を貸してやっていた。」
「何が安心だよ!くそ!こういう時は、普通は女の子とかが膝枕をしてくれるイベントだろ!」
「ったく、人の膝で寝かしてやったのに文句ばかり言いやがって。」
「おい!ハチマン!もし、オレがお前に膝枕したとしたらどうする?」
「その膝引きちぎる。」
「おい!こえーよ!」
いや、だって何が悲しくて男の膝枕だよ。あっ、だが、戸塚の膝枕だったら有りだな。テニスやってる割に柔らかそうだったしな。それに、天使!
「うるさいですね…。」「本当よ。」「ふわぁ…。」
カズマの声で続々と起きはじめた。俺としては、重かったからどいて欲しかった。
特にダクネスは、甲冑もあるから特に重かった。
みんなが退いたことを確認をして、体をバキバキと鳴らしながら背伸びをした。
「みんなが起きたことだ。とりあえ、残り1匹倒して帰るとしようべ。カズマ、敵感知。」
「おっけー。おっ、早速敵さんが来たみたいだぞ!」
カズマは茂みの1部を指差しながら言った。
茂みからガサガサと大きな音を出しながら蠢いるのが、敵感知を持っていない俺でも分かった。
「えっ、やだ!また、あのキモいのがいるの!?」
アクアは、俺の両肩を掴んできた。
痛い、痛い!頼むから、離してくれ!
「よし!そこにいるな!今回は、オレに任せろ!めぐみんとアクア、それにハチマン!後ろに下がってろ!今度は血迷うなよ、ダクネス!あそこにいるのは、ご主人様ではなくモンスターだからな!」
「私はモンスターをご主人様と呼ばない!安心しろ!」
「おい、嘘つくな。つくなら、もっとマシな嘘をつけ」
「嘘ではない、ハチマン!」
「…………」
「はう!やめてくれ!その目で、その目で…うっ…」
このクルセイダーは、なに興奮してんだよ。
俺とカズマは呆れた顔をしたが、敵が茂みの中で激しく動き始めたことを察知して顔を引き締めた。
「カズマ!」
「おう!先手必勝!''クリエイト・ウォーター''ッッッ!」
「ヒギイイイイイイぃぃぃぃ!ギギキギィィィィ!」
カズマは、茂みにクリエイト・ウォーターを大量にぶっ掛けた。降り注いだ、大量の水が冬虫夏草に当たったんであろう、気色が悪い甲高い声を上げた。
どうやら、水が弱点というのは本当だったみたいだな。
「おぉ!だけど、最弱クラスのクセに生意気よ!カズマのクセに活躍するなんて!」
「うっせぇ!お前こそ、アークプリーストの癖に支援魔法の1つくらいかけてくれよ!」
「キィーーー!」
戦闘中だ、馬鹿共が。アクアもアクアで、カズマが舐めた口調を言っていると、俺の背後にいためぐみんの手が震えている事が分かった。
なんだ?冬虫夏草は、まだ茂みの奥にいるし姿は見せてないから怖いもんなんてないだろうに?
とりあえず、話しかけってみっか。
「あん?どうした、めぐみん?」
「あ、あ、ハチマン!べ、別にカズマが初級魔法が使えるようになったからといって、わたしの魔法使いとしての存在意義が1段と薄れた訳ではありませんからね!わた、わたし………我が爆裂魔法は最強ですからねっ!」
いやいや、震え声+涙目で言われてもなぁ。てか、めぐみんも爆裂魔法以外覚えればいいんじゃないのかと思うんだが…。
下手に言うとめんどくさい事になるのは目に見えて分かる。
「はいはい、爆裂魔法は最強だよな」
そう、俺は適当に流すこと決めた。
めぐみんは、その言葉にパーっと笑顔になった。
「フフフッ!ハチマンは、分かってらっしゃる!」
「はいはい」
「おい!ハチマン!あのモンスター茂みから出るぞ!」
カズマのセリフを吐いた途端に、茂みから先ほどとは違う牛に寄生した冬虫夏草が出てきた。
それが、コチラをジッと睨みつけているだけで、攻撃をしてこない。なんだ?なんか嫌な予感がする。
「ギギギギ!キリキリキリキリキリキリキリ……!」
「何故、アイツは攻撃してこない。身動き出来ない、今なら私でも当てられるぞ!ハチマン、カズマ、トドメを指してしまおう!」
ダクネスは、妙にいき込んでいる。
何故、前に出てきて攻撃をしてこないで叫んでいるだけなんだ。うん?叫ぶ?動物や虫が叫ぶ時は、助けを求めて……。
「カズマ、ダクネス!あの叫んでいる奴を倒せ!早く!」
「「えっ?」」
2人は、素っ頓狂な顔をした瞬間に遠くから同じ叫び声が上がった。
その叫び声は、徐々にコチラに向かってきた。
そう、その叫び声の正体は、冬虫夏草は携えた家畜が向かって来たのである。
「「「ギギギギギギギギギィィィィィィィィィィ!」」」
「「いやあああああ!いっぱい来たぁぁぁ!」」
アクアとめぐみんが、あの百鬼夜行みたいな光景を見て叫びあげていた。
しかも、その百鬼夜行は俺達を標的にしている事が分かる。
俺がクウガになろうとした時に、ゆらりゆらりと百鬼夜行の前にダクネスが現れた。
「おい、バカ!何してんだよ!」
「ふふふっ…」
ダクネスは、不敵な笑みを浮かべては、装備している剣を地面に突き刺した。そして、剣の柄に両手を置いて仁王立ちをし始めた。
あのバカ何をする気だ、とんでもないアホな事をやるのは分かるが。
「ふふふっ……かかってこぉぉぉぉおい!''デコイ''ッッッ!」
それは、クルセイダーのスキルの敵視を上げる能力だ。
百鬼夜行は、ダクネスに向かって一直線に走っていった。
「めぐみん!あのバカごとでいい!爆裂魔法をぶちかます準備!アクアは、あのバカに防御支援魔法!カズマも遠くからでいいから、爆裂魔法が詠唱が終わるまで、クリエイト・ウォーターで敵を足止め!」
「了解だ!ハチマン!」
「わ、分かりました!どうしよう。こんな非常事態にわたしが頼られるなんて生まれて初めてです!フフフッ……群れるだけしか能が無い家畜共よ!我が絶大魔法である爆裂魔法!目に焼き付けるがいい!」
「えっと、分かったわ!防御支援魔法ね、支援…防御…ハチマン!一時期的でも、芸達者になる支援魔法必要かしら?」
「んなもん、いらねえから早く準備しろ。」
慌てて2人は、魔法の詠唱を始めた。カズマもクリエイト・ウォーターを百鬼夜行にぶつけては速度を緩めた。
そして、俺は…。
「変身!」
クウガになり、近くあった棒を掴みドラゴンフォームにチェンジをした。
俺はクラウチングスタートの準備をした。
タイミングだ、タイミングを図るんだ。
ふぅ…。
「ハチマン!ダクネスに、防御支援魔法終わったわよ!」
「ハチマン!こちらも爆裂魔法いつでも行けます!でも、ダクネスが範囲内に入っております!」
めぐみんが準備が終わったようだな。
「構わん!今なら、高位防御支援魔法が掛かってるからこぉぉぉぉい!」
アホが叫んでいた。
「めぐみん、大丈夫だ。あのアホはハチマンが回収してくれる。」
めぐみんに、サムズアップをして見せた途端に安心した顔をした。
「エクスプロージョン!」
めぐみんの呪文と共に、魔方陣が発生したと瞬間に、俺はスタートを切った。
ギリギリ間に合うか、今は間に合うか間に合わないかじゃない、間に合わせるんだ!
俺は、走ってダクネスを抱えた瞬間に「離せぇぇえ」と聞こえたが無視だ無視。
ダクネスを抱えて、足に力を入れその場から直ぐにジャンプして逃げた。
ジャンプして、離れた瞬間に背後から爆裂音と冬虫夏草の断末魔が聞こえた。