「ねぇ、みんな。コレなんて良いんじゃないかしら?ほらほら、冬虫夏草の討伐だって」
アクアがボードに貼られている、1枚の依頼を指していた。
依頼内容としては、牧場の家畜が冬虫夏草に寄生された家畜の討伐依頼だった。
寄生された種類は、山羊と馬と牛の3種類、なお討伐した家畜は自由に持って帰ってもいいとも書いてある。報酬金額も1頭3万エリスか。
なかなか良いクエストだな。
久しぶりに、カエル以外の肉も食いたいところだが、報酬の金額など考えたらかなりの難易度を誇るんじゃないのか?
それに、もし簡単なクエストであれば取り合いになるはずだ。
俺が悩んでいると、カズマがアクアにクエストの冬虫夏草について質問をした。
「アクア、冬虫夏草ってアレだよな。虫とかに寄生するキノコの事だよな?」
「そうよ。冬虫夏草っていうのは、生き物に寄生して脳を侵食し、他の生物にわざと襲わせて卵を植える嫌なモンスターよ。寄生するのは、牧場で動けなくなった動物に多いから冬虫夏草って言われてるの。強さとしては、寄生した動物によって変わるけど家畜なんかだと、それほど強くないわよ。」
アクアの説明で、やはりこのクエストのレベル的にはそんなに高くないのが分かる。
なぜ人気がないのかは、とりあえず行って確認してみるか。
そう、俺はなんで単純な事を忘れていたのか、また止めなかったのか、後悔した。
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冬虫夏草。
名前的にはキノコを連想するが、れっきとしたモンスター。
名前の由来から分かるように、虫を寝床するキノコである事から冬虫夏草と呼ばれている。
だが、この世界の冬虫夏草は''モンスター''である。
つまり、どういう事かと言うと………
寄生した動物の身体から触手を生やしては、至る所から冬虫夏草の粘液が出ていた。
このクエストの人気がない理由は、このグロテスクな見た目からだった。
皆に簡単に言うと、もの○○姫に出てくる乙事主みたいな感じだな。実に気持ち悪い!
「いやああああああああああ!神様助けてぇぇえええええ!いや、いや、怖い!怖い!ひゃああああ!」
アクアは泣きながら、こちらに走ってきた。
おい、こっちに来んじゃありません。
てか、神って…お前が神だろうが!
本来なら、こういう時にツッコミを入れてるカズマだが、そんな余裕も無かった。
何故なら……
「ああああああああぁぁぁ!助けてぇぇえええええ!ダクネス!いや、クルセイダー様ぁぁぁぁ!」
」
「ギチギチギチギチ、ケダゲゲケダケダゲケダ」
アイツも頭から変な触手を生やしたエイリアンみたいな山羊に追いかけられていたからだ。
「ああわあわあわあわ、わ、わ、、わ、我がば、爆裂魔法にいいいい、け、消し、消し、飛ばして、や、やる!!ひい!今、アレと目が合いました!は、はち、ハチマン、お願いします!」
めぐみんに押される感じ形で、グロテスクなモンスターの前に出された。
イヤだなぁ、絶対に殴ったら気持ち悪いじゃん。
てか、俺も吐きそうだが年下の面倒を見るのも年上の役目か。
俺は、溝に逆三角を作った。その瞬間にクウガのベルトが現れた。
今回は、クウガで試したい事もあるしな。
いっちょ頑張ってみますか。
「変身!」
軽快な音と共に、クウガのマイティフォームに変身した。
山羊に寄生した冬虫夏草が触手を伸ばしてきた。
伸ばしてきた触手を掴んで、そのままアクアを追いかけている山羊にぶつけた。
山羊から異様な声を発しては、スグに立ち上がってきた。
近場にあった木の棒を手にした。そして、「超変身!」と叫ぶとマイティフォームからドラゴンフォームにチェンジをした。手に持っていた木の棒はドラゴンフォームと共にドラゴンロッドへと形を変えた。
「おぉ!今度はハチマンが青くなりましたよ!」
「青!あれは、アクシズ教団に身を染めた者がなれるフォームよ!」
「本当ですか!アクア!」
アクアの奴、適当なこと言いやがって。純粋にヒーローに憧れてるめぐみんに変な知識入れやがって。てか、2人共いつの間に岩陰に隠れてたんだよ。だが、とりあえずは目の前の敵に集中だ。
2匹が声を発しながら、こちらに向かって走ってきた。ドラゴンロッドを振り回して、前にいた1匹の頭部を目掛けてドラゴンロッドをぶつけて吹き飛んだ。
すぐさま、2匹目が1匹目の影から飛びだしてきたが、体を回転をさせて、その勢いを利用して飛び出てきた2匹目の頭部にもドラゴンロッドをぶつけては1匹目が吹き飛んだ方に飛ばした。
2匹の頭部に封印文字が浮き上がって、2匹は爆発した。
「意外と使いやすいな。」
「ハチマン!カッコイイです!」「そのまま、どんどんやっちゃってー!」
おいおい…そう言えば、ダクネスはどうしたんだ。ダクネスの方を見ると、カズマを庇ってダクネスは触手に捕まっていた。
おい、やべーんじゃねぇか、あれ!
「ハチマン!見てくれ!こんな、こんなグロテスクなモンスターによる触手プレイだ!私は!私は、どうすればいい!私は、このままきっと、このモンスターに脳を侵食されて、抵抗虚しく純潔を散らされて、あちらこちらを弄ばれてしまうんではないか!やがて、私の身も心もこのモンスターに支配されて、このモンスターの事を主と崇める奴隷に!ハチマン達は、私に構わず先に行けー!」
あー、結構、平気そうだわ。
カズマも呆れた顔していた。
俺は、誰かが落としたであろうショートソードを持ち「超変身!」と叫ぶと、ドラゴンフォームからタイタンフォームへと変身した。
ショートソードは、もちろんタイタンソードに変形した。
「アクア!また、ハチマンの姿が変わりましたよ!」
「あれは、アクシズ教団の太師になった時になれる姿よ!」
「アクシズ教団って、すごいんですね!」
「えぇ!アクシズ教団は、すごいのよ!」
だから、アクア適当なこと言ってんじゃねぇよ。
このクエスト終わったら、説教だからな。
ったく……。
タイタンフォームになるとドラゴンフォームと違って、機動力は落ちるが攻撃力と防御力はかなり上がる。
ハチマンは、ダクネスを絡んでいる触手をタイタンソードで切った。
触手が切れたことにより、冬虫夏草は後ろに転がっていった。
「あ…ああああー!ジェスター様ー!」
ダクネスは、触手が切られた冬虫夏草を見て悲鳴を上げた。
おい、せっかく助けたのに、そっちの心配するか普通?
「おい、ダクネス!アイツは、お前の主人様じゃない!それと、モンスターに名前を付けるやつがいるか!なんで、まだ寄生されて無いのに主従関係が成り立ってんだよ!」
「カズマには、私の気持ちが分からないのか!」
「わかるか!」
もがき苦しんでいた、冬虫夏草は何とか立ち上がっては触手を飛ばしてくると思ったが、二本足で俺らに背を向けて走り出した。
「……は?」
前傾姿勢で、それは見事なフォームで走っていった。
あまりにも変な出来事に唖然としてしまった。
カズマも、口をポカーンとあけて二本足で走っていった冬虫夏草を指指しながら「……ナニコレ?」と呟いていた。
とりあえず、変身解くか。