アレから1時間後くらいに、カズマが肩を落としながら、ギルド内の医者から帰ってきた。尻にナイフが刺さって医者に行くなんて、恥ずかしいもんな。俺だったら泣くわ。
「カズマ、気を落とすなよ」
「……看護婦さんに笑われた…。だが、ケツを女の看護師に見られてると思ったら…ぐふふ…これは、これで…。」
コイツ、気を落としてるかと思ったら新たなプレイを覚えて帰ってきやがったよ。
ちょっとでも、同情した俺が馬鹿だったよ。このケツ野郎。
「カズマ、コレからの予定なんだが…。」
「……まだ痛いフリをして…あの看護婦さんに…ぐふふ…」
「おい、ケツマ。トリップしてないで話聞けよ。」
「誰がケツマだ!」
「この後の予定についてだ。」
「あぁ、わかった。」
カズマに、この後の予定を伝えた。
予定としては、まずケツマとアクアはケツマの新防具を買いに行く。アクアは駄々こねたが、先ほど借金を返したことを話したら、歯切れは悪かったが納得したようだ。
ケツマが新防具を買ってる間に、俺とダクネスとめぐみんはクエスト選びとナイフを投げてきた犯人探し。まぁ、俺はコミュ障だからダクネスを中心に犯人探しだ。
「よし。犯人探しは、カズマの新防具を買うまでがリミットだ。」
「はい!フッフッフッ……我が頭脳を持って、犯人を探し出します!」
「どんな、強敵と戦えるか…はぁはぁ…私が満足出来るように慎重に選ばないと!」
2人は変な方向に意気込んでやがるが無視だ、無視。とりあえず、始めますか。
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俺たち3人は、先程のテーブルで肩を落としていた。
結果から言おう。犯人探しは、まったく情報はなかった。というか、相手にされなかった。それに加えて、女性冒険者や女性職員からのカズマからのセクハラ行為、めぐみんの爆裂魔法の騒音問題に、アクアの借金の事を愚痴愚痴と言われた。
パーティリーダーは、俺じゃないのに…。
クエストに関しては、ダクネスが''キングベヒーモス''を倒しに行くと駄々こねるわ。
限界…ハチマン、もうお家帰る!
「おーい、ハチマン。戻ったぞ」
「聞いて聞いて、ハチマン!ぷふふ……」
帰ってきたな、うちの問題児共が。
今は、説教する気すらしないから後でするか。
「カズマ、随分とマシな格好になったな。」
「おお、ようやく冒険者らしくなりましたね。」
「……見違えたじゃないか。」
俺ら3人は各自カズマの新しい装備を見て感想を述べた。
カズマの新しい装備としては、冒険者の基本装備の上下に加えて、緑のマントに皮の靴と皮のベルト、腰にいつも使っている短剣を付けていた。
ジャージに比べ、かなり冒険者らしい格好に仕上がっていた。
「んで、アクアどうした?」
「カズマが、調子乗って鎧を注文したんだけど、ぷふふ……。鎧が重くてその場から動けなくなってたの!あははは……。!」
「おい、やめろ!オレは、鎧なんかよりもシーフ系の装備の方が似合うから良いんだよ!」
カズマは、顔を真っ赤にして反論していた。
頼む、これ以上、アホな事をしないでくれよ。
「んで、ハチマン達はどうだったんだ。」
「犯人に関しては、情報なし。クエストは、あそこにいるドM騎士様が駄々こねているところだ。」
「はぁ?駄々こねてるだぁ?」
「聞いてくれ、カズマ!私は、ハチマンに''キングベヒーモス討伐戦''を押しているのだが「却下だ!」なぜ!?」
「俺たちに倒せる訳ねぇだろうが!」
「あはっ!……また、怒られた!だが、先程のハチマンの方が優れているな。カズマじゃあダメだな。」
「なんで!?俺がダメ出しされんだよ!?」
もうめんどくさい。俺も潜伏スキルが欲しい。てか、なんで、この世界ではステルスヒッキーは通用しないんだよ。前の世界じゃ、発動もしてないのに''えっ?いたの?''から始まり、クラスメイトの奴らには''別のクラスと間違えてない?''、はたまた教師からは''比企谷、比企谷!おっ、今日は1限からいるのか!''と言われるまであったのに。てか、最後の教師に関しては、俺は毎日1限から来てたのにも関わらず、これだもんな。
「んで、ハチマン。討伐はどうする?やっぱり、レベルに見合うものか、それなら街の近場で繁殖期に入ってるジャイアントトー…「「カエルはやめましょ!!」」」
カズマが、俺らでも出来そうなジャイアントトードの討伐を言いかけたら、アクアとめぐみんが強く否定をした。
「うん?どうしてだ?攻撃行動といっても、舌を出して捕食攻撃しかしてこないから、深手を負う危険性もない。倒したカエルは食用としても使えるから高く売れて稼ぎもいいのに。」
普通の冒険者なら至極当然の疑問だ。
もう少しカエルを倒して資金を稼ぎつつ経験値も稼いでいくのが普通だ。
だが、否定した2人はあるトラウマを持っている。
「ダクネス、その2人は食われた事があるんだ。」
「しかも、頭からパックりいかれて身体中を粘液塗れにされたしな。」
俺の説明の後に、カズマの食われた時の様子を説明した途端にダクネスの頬が赤らめ始めた。
「…粘液塗れに。」
「ダクネス、興奮してんだろ?」
「し、してない!」
ダクネスは、俺から目を逸らしては顔を赤くしてもじもじし始めた。
あー、ダメだ。コイツ完全に興奮してやがるわ。
目を離したスキに、勝手にカエルの討伐行ってそうだな。
俺とカズマは、先の事を考えたら不安でしかなかった。