俺は全てを思い出した、その瞬間刺された箇所が痛み出した。すぐさま、腹部を確認したが刺された傷はなかった。どうやら、錯覚だったみたいだ。
「比企谷八幡さん、思い出したんですね。」
「はい。……あの1つ良いですか?」
エリス様の表情は曇っていたが、俺はそんなことよりも……
「俺が死んだ後、あの後どうなりましたか?アイツらはどうなりましたか?」
「あの後、雪ノ下陽乃さんが警察に連絡して、相模南さんは捕まりました。比企谷八幡さんが言うアイツらというのは、比企谷八幡さんに関わっていた人達の事ですよね?」
「はい。」
「まず、比企谷小町さん・雪ノ下雪乃さん・由比ヶ浜結衣さん・一色いろはさん・川崎沙希さんは、あなたが亡くなった事で精神が安定していない状態です。」
「戸塚彩加さん・材木座義輝さん・戸部翔さん・海老名姫菜さん・三浦優美子さんも先ほど出た女性の方々と比べるとマシですがかなりショックを受けている状態です。」
「平塚静さんと雪ノ下陽乃さんに関しては、日々の日常が上の空の状態です。」
意外だった。俺の死に対してこんなにも影響を与えていた事に。それに、小町や雪ノ下や由比ヶ浜よりも関わりが少なかった奴らまで…。
「あのエリス様、アイツらが今後どうなるか未来は見えないんですか?」
「ごめんなさい、見えません。見えたとしても天界規定により教えることも出来ません。」
エリス様は、今にも泣きそう顔をしていた。
「そうですか…。エリス様、大丈夫ですよ。俺が居なくなっても、アイツらは半年、いや一ヶ月もすれば元に戻りますよ!」
エリス様を励まそうと笑顔でサムズアップしたが、それを見てエリス様は泣き出してしまった。
おい、俺の笑顔のせいで女神が泣いちまったじゃねぇか!どうすんだよ、これ。てか、俺の笑顔って、そんなにヤバいのか。
「比企谷八幡さん、あなたは少し自分のことを卑下しすぎです。あなたの行動によって、救われた人達がいることを考えて下さい!」
「……っ。すみません、あと一つ良いですか。俺は、アイツらを救う事ができたんですかね。結果的には……」
「はい!」
「そうか……良かった……」
俺は、その言葉で今まで我慢していたものが一気に崩壊した。本当ならいつものように、アイツらと過ごし、小町も総武校に来て、俺らと一緒に奉仕部に来た依頼を解決したり、生徒会の仕事を手伝ったり、時折いがみ合ったりして……今にして分かった。アイツらと過ごした日々は、俺が求めていた本物だったことに。
その瞬間、俺の目から頬を伝って一筋の涙が伝っていった。
「なんで…今更…クソっ……っ!」
「今は、私と比企谷さんしかいません。我慢しなくてもいいんですよ。」
エリス様は、そういうと優しく抱きしめてくれた。俺は、年甲斐にもなく大声を出して泣いた。