冒険者レベルが20になった。
キャベツ狩りとカエル狩りで、まさかここまで上がるとは……てか、むしろキャベツを倒すだけで経験値が貰えて、カエルよりもキャベツから貰う経験値の方が多い。キャベツの方がカエルよりも魂の質とか良いのか?むしろキャベツに魂ってあるのか?ダメだ、この世界の物を深く考えていけない。何故かって、それはアホになりそうだからな。
「おい、ハチマン。今回のキャベツ狩りでレベルどのくらい上がった?」
ギルド嬢のルナさんから最近苦情が多いキャベツ大使こと、カズマが話しかけてきた。
「うん?あぁ、4レベル上がった」
「マジかよ!んじゃ、もうハチマンのレベル20かよ!」
「そういうカズマはどうなんだ?」
「オレは、9レベルになった。あと1つで、やっと2桁になる。」
カズマは、嬉しそうにカードを見ていた。まぁ、レベルが上がると嬉しくなる気持ちはわかる。
俺もポ〇モンやFFとかでレベルが上がると、めちゃくちゃ嬉しかったが、途中からレベル上げるのが苦になっていくんだよな。しかも、自分のデータだけならまだしも、小町が可愛い顔して上げておいてというんだもん。ええ、まぁ上げますけどね。可愛い妹の頼みですから。
「これと、あとこれも…」
隣に座っているカズマは、どうやらレベルが上がった分のスキルポイントを使って、新たなスキルを習得していた。
俺もスキルを習得するとするか。今回のレベルアップで、60ポイント貯まっていた。1レベルで15ポイント貰えたが、どうやらこのポイントも人によって違うらしい。カズマは10ポイント、めぐみんは、俺と同じく15ポイントらしい。
俺のスキルは自分にあったものだから習得するのにポイントが少ないけど、どうやら新しいスキルを習得するには自身のレベルが上がっていないとスキルは出ない仕様だ。
今回のレベルアップで、新しいスキルでクウガは''タイタンフォーム''、ファイズは''フォンブラスターとファイズエッジ''の威力の向上だ。
俺としては、早くファイズのアクセルフォームになりたいものだ。
俺もカズマもスキルを取り終わると同時にギルド内からアクアの叫び声が轟いた。
「なんで!何でなのよ!」
アクアの方見ると、報酬で揉めている姿が見えた。
「なんで!報酬がこれだけなのよ!」
「えっとですね、アクアさんから納品された物は全て原価が安いレタスでして…。こちらの方で渡せるのはこちらの額だけになります。」
「なんで!レタスが混じってるのよ!むぅ……」
」
こっち来やがった。やだな~、めんどくさいな。絶対に金のことだよ。
「おい、カズ…」
隣にいたはずのカズマは居なかった。
潜伏スキル使って逃げやがった。あの野郎…。
「ハ・チ・マ・ン」
うわぁ、来ちゃったよ。
「今回の報酬は、お幾ら万円ですか?」
言いたくねぇ…めっちゃ言いたくねぇ。どうする、どうする。誤魔化すか…いや、誤魔化したら誤魔化したで、後のちめんどくさいことになるのは確実。どうする。
そんな葛藤をしていると、アクアの足元へと1枚の紙が落ちた。
「うん?何かしら?えっと…ねぇ、ハチマンさん~!」
「あん?」
コイツ急に声色を変え始めた。
「今回の報酬で、150万エリス入ったらしいですね!」
バカな。なぜバレた!?
今回の報酬の事を話したのは、カズマだけのはずだ、それなのに…。あん?
「アクア、その紙を貸してくれ。」
「えっ!?だ、ダメよ!」
「あー、貸してくれたら、借金に関して考えてやってもいいぞ。」
「えっ!本当!はい、これ!」
ちょろい。この女神がちょろすぎる。
俺は紙に書いてある内容を確認したところ、やはり俺の報酬額がカズマの字で書いてあった。
「おい、カズマ聞こえてんだろ。灰になるのと爆発四散するのどっちがいい?出てこなかった場合は、フルコースになるが。」
「ちょっと、待ってくれぇぇぇぇ!」
「あん?やっと出てきやがったか。んで、どっちがいい?」
「ハチマン様!ごめんなさい!」
カズマは、俺の目の前で土下座をしてきた。
「許してやってもいいが、アクアの借金はお前持ちだからな。コレに懲りたら、あまりアホな事をするなよ。」
「はい!」
「アクアも、あんまり借金するなよ」
「はい!分かりました!」
ったく…手のかかる子供を相手にしているみたいだ。切実に癒しが欲しい。戸塚とけーちゃんに会いたい。
「ハ~チ~マ~ン~!」
今度はなんだと、声のした方を見ると杖を嬉しそうに持ってめぐみんがやってきた。
「見てください!この杖を!」
「はいはい」
「今回のクエストの報酬で、杖を強化してきました!」
「そうなのか」
「はい!マナタイトをふんだんに使いまして!見てください!この色艶を!それに、魔力溢れたマナタイトを使ったお陰で、魔爆裂魔法の威力が更に高まりました!はぁはぁ…早く爆裂魔法を使いたいです!」
「そうか、そうか」
何故か、めぐみんがどっかの犬みたい懐いているんだが。
まぁ、手がかからないから良しとしよう。
「お~い、ハチマン。」
この流れからして、ポンコツ剣士のダクネスか。
「はいはい、なんだなんだ。」
「私も今回の報酬で、防具を新調してきた。どうだ?似合っているか?」
「はいはい、世界1似合ってますよ。」
「まったく、雑な褒め方だな。私だって偶には普通に褒めて貰いたい時だってあるんだぞ。」
「へいへい、悪うございました。」
「カズマとアクアはどうした?」
「アイツらなら、あそこで借金返してるよ。」
「まったく…なにをしているのか。」
珍しくダクネスと意見が会い「だが、借金をして金の代わりに、ブ男達に身体を求められ、私は嫌がりながらも…」ダメだ、このドMは本当に。
「カズマ、仲間っていいわよね!最高のパーティだわ!」
「この野郎…。」
おっ、どうやら支払いが終わったらしいな。
「全員揃ったところで、今日どうすっか。宿帰って寝るか。」
「なんで寝るんだよ!まだ集まったばっかりじゃねえか!」
いいアイディアだと思うんだがな。何故、却下されたのか俺には理解できない。
「では、討伐に行きませんか!それも数が多いやつ!ふっふっふ…爆裂魔法で一気に吹き飛ばすのは、さぞや快感なんでしょう!」
「いや、一撃が重くて気持ちいいやつだ!はぁはぁ、だから強い敵にしよう!」
「いえ、お金が沢山貰える奴にしましょ!さっきの借金を返して、もうお金が無いの!」
まとまりが無さすぎる……。とりあえず、上2つは却下だ。
「カズマはどうしたい?」
「オレは、装備を整えたいかな」
装備か。確かに、カズマはジャージだからな。俺に関しては、戦う時には変身するから普段着があればなんとかなるしな。
「カズマの装備を整えるまで、自由行動でいいな。んじゃ、解散という事で。」
「「「ちょっと待って(下さい。)(よ!)」」」
女性陣が反発してきたが、俺は動じずに宿に戻ろうとしたが背後から小さな衝撃がきた。
「待ってくださいよ!」
「わかった、わかった離してくれ、めぐみん。」
「やです。ハチマンは、すぐに逃げそうですから。」
おやおや、俺の性格をよくご存知で。
ついでにアクアとダクネスも俺の腕を掴んできた。
両腕からたわわな感触が…はっ!
そんな、アホな事を考えていたら背後からナイフが飛んできた。
ナイフは、俺の頬を掠めては、ダクネスの胸の甲冑に当たり弾かれた。弾かれたナイフは、回転をしながらアクア、めぐみんの順に柄が当たり、ナイフはカズマの尻に刺さった。
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!オレのケツがっああああ!」
カズマの尻から血が…笑っちゃいけないんだが、このピタゴラは…。
「ぷっ!あははは!」「くっ…くくく…」「ふっふふ…」
「何笑ってんだよ!オレの!オレのケツが!」
本人は一大事なのは分かるが、ダメだ。もう限界だ。
「あははは…!おいおい、カズマ。お前運はある癖に、こういうのには運が悪いんだな」
「うるせえやい!アクア、オレのケツにヒール頼む!」
「嫌よ!」
「アクア様!お願いしますよ!今晩奢るから!」
「うーん…嫌」
「カズマ、とりあえずギルド内にある医者にいってヒールしてもらって来い。」
「うぅ…なんでこんな目に…。」
カズマは尻のナイフを取って、尻を抑えながらギルド内の医者に向かっていった。
はぁ…アイツには、笑わせてもらったがナイフは何処の誰が投げてきたんだ。投げてきたであろう、方角を向いても誰もいなかった。手掛かりとなるのは、カズマに刺さったナイフだが…ナイフが落ちてた場所にはもう既にナイフはなかった。