この腐り目に祝福を!   作:クロスケZ

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3-4 キャベツ×ポンコツ×仲間

「おい、緊急クエストとはなんぞ?モンスターが街に向かってるのか?」

 

カズマは今のアナウンスを聞いてほうけた顔をして質問した所、めぐみんとダクネスさんは可哀想な目をして見ていた。

危ねぇ、俺も聞くとこだったわ。危うく、カズマと同じポジションになる所だった。

 

「そろそろ、キャベツの収穫時期か。」

 

はっ?何を言ってるんですか?このマゾは?

思わず、ダクネスさんを見た。

 

「んはっ!その目!ゴミクズを見る目…たまらん!頼む!もっと…!」

 

ダクネスさんは身体をビクビクさせながら訳の分からない事を言ったので無視しよう。

てか、もうさん付けなくていいか。なんか付けてる方が馬鹿らしいわ。

んで、とりあえず俺の腹あたりで抱きついているめぐみんに聞いてみるか。つか、そろそろ離してくれない?

 

「めぐみん、済まないが一回離れてくれ。それと、キャベツの収穫時って?」

 

「んはっ!放置プレイ!コレもコレで…ハァハァ…」

 

「うるせえよ!ちょっと黙っててくれない?」

 

「ハチマン、ダメだ。アイツに強く言ったら喜ぶだけだ。」

 

ったく…Mってのも考えようだな。

おっと、めぐみんが離れてくれたか。若干名残惜しいのは秘密だ。

 

「えっとですね、キャベツっていうのは丸くて緑色で美味しい食べ物です。」

 

あれー?俺が求められてる答えとは違うなぁ。

緊急クエストとキャベツの関連性を知りたかったんだがな。

 

「んなもん!知ってるわ!じゃあ、なんだ?農家の手伝いをする為に、緊急クエストでもやるのか?」

 

おっ、カズマが俺の代わりに言ってくれたか。

だが、またもめぐみんはカズマの事を残念そうな顔で見ていた。

 

「あー…。カズマとハチマンは知らないでしょうけど、この世界のキャベツはね…」

 

アクアが俺達に説明をし始めてくれたが、それを遮るようにギルドの職員達が騒ぎ始めた。

 

「皆さん!お気づきだと思いますがキャベツです!今年の収穫時期が来ました!キャベツ1玉につき1万エリス!既に住民の方々は避難しております!できるだけ、多くのキャベツをこちらにお納め下さい!では、皆さんのご武運を祈っております。」

 

おい…今、職員何つった?

 

その時、ギルドの外から歓声が起きた。

何事かと、俺とカズマは外に出てみると……キャベツが空を飛んでいた。俺が訳分からない事を言っていると思うが、俺も訳が分からない。

 

呆然とその光景を見ていると、アクアがやって来て隣で呟き始めた。

「この世界のキャベツは飛ぶのよ。収穫時期になるとキャベツの味が濃縮していて、とても美味しいのよ。でも、キャベツも食べられないように海を渡ったり、大陸を横断したりして、最後に誰もいない安息の地で安らかに眠るのよ。それならば、私達が彼らを1玉でも多く収穫して美味しく食べてあげるのよ。」

 

俺達の頭上を飛ぶキャベツ達とそれを追いかける冒険者達…なんだこれ?

 

もういいや…、この世界について考えるだけ無駄だな。

布団を暖かくして寝よ…。

宿に帰ろうとしたら、ダクネスに呼び止められた。

 

「カズマ、ハチマン。丁度いい機会だ、私のクルセイダーの実力を、その目で確かめてくれ。」

 

ダクネスは、キャベツに向かって走っていった。

いや、もう、なんで勝手に行っちゃうかなぁ。

でも、実力を知るには良いチャンスか。

 

ダクネスは、自分の周りを飛んでいるキャベツに向かって鋭い一撃を数々といれてった。

 

「せい!」

 

うん?

 

「はぁー!」

 

あれ?

 

「うぉりゃー!」

 

嘘だろ!?あんだけ放ったのに、全然当たってないんですけど!?

そんなダクネスを見ていたら、周りからキャベツから攻撃を貰っていた冒険者達の声を上げていた。

1人の冒険者が、キャベツの攻撃によって、吹き飛ばされたであろう味方の冒険者に押しつぶされて身動き出来ない状態だった。すかさずキャベツがその冒険者に襲いかかろうとした時に、その冒険者の前にダクネスが盾となった。

 

「んくっ!ここは私が!」

 

「馬鹿野郎!俺達の事なんてほっといていいんだ!はやく姉ちゃん!俺達を見捨ててくれ!」

 

「バカを言うな!」

ダクネスは、後ろにいた冒険者を逃がそうと盾になっていた。キャベツの攻撃により防具が徐々に壊れていった。

 

「ダクネス!お前!」

 

思わず、カズマは叫んでいたが、俺は気づいていた。だって、ダクネスの奴…キャベツの攻撃を貰う度に頬を赤くして、何よりもはだける度に喜んでいることに…。

 

「騎士様!」「あんなになってまで守るとは!」「俺も騎士として、見習わないとな!」

などと、冒険者達は声を上げていた。

 

違う、違うんだ、あの変態は自ら望んでやっているんだ。

 

そんな時に、離れた場所から1つの笑い声が響いた。

 

「フッフッフッ……我が必殺の爆裂魔法には何者も抗うこと叶わず。」

 

ダメだ、ここにもバカがいたよ。ていうか、このポンコツの事を忘れていた。

 

「あんな大軍を目にして、爆裂魔法を撃たないなんて勿体無い!」

 

「おい、バカ、やめろ!!」

 

カズマの叫び声は、虚しくもめぐみんには届かなかった。

 

「光に覆われし漆黒よ 夜を纏いし爆煙よ 紅魔名の元に 原初の崩壊を顕現する 終焉の王国の地に力の根源を隠匿せし 我が前に術よ!エクスプロージョン!!! 」

 

めぐみんの杖から巨大な魔力が放たれ、ダクネスを中心に魔法陣が展開した。周りにいた冒険者達は、魔法陣から逃げるように走り出した。

だか、もちろん察していると思うが、ダクネスは逃げなかった。

そして、次の瞬間に1つの炎の柱がたった。

 

緊急クエスト「キャベツ大豊作」コンプリート

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

納得いかねぇ…なんで、こんなキャベツ炒めが、こんなにも美味いのか。

俺達は、ギルドに戻って報酬であるキャベツを食べていた。

 

「しっかし、やるわね!ダクネス!さすが、クルセイダーね!あの鉄壁の守りに攻めあぐねていたわ」

 

「おっ…私など、ただ硬いだけの女だ。誰かの壁になって守ることしかできん。それに、私は不器用過ぎて、剣がロクに当たらない。その点、めぐみんの爆裂魔法の一撃は凄まじかったぞ。」

 

「紅魔の一撃を思い知りましたか!」

 

「あぁ、とても!あんな火力の直撃を受けたのは初めてだ!」

 

「直撃させんなよ…。」

 

思わずカズマがツッコミを入れていた。

その後、思わず俺とカズマは溜息1つ付いた。

 

「あっ、でもカズマとハチマン、あなた達もなかなかのものだったわよ。」

 

「はい!それにハチマンの先ほどのアレはいったいなんですか?」

 

アクアは、俺の頬を指で突き、めぐみんはさっきの戦い?で使ったスキルについて質問してきた。

 

まず、カズマに関しては、潜伏スキルを使ってキャベツの背後からスティールをして、キャベツの羽を奪い、落ちたキャベツを籠に放り混んでいった。

俺に関しては、ファイズのスキルの''オートバジン''と共にキャベツを狩っていった。

本来なら、この前に取ったスキルの''ドラゴンフォーム''・''ペガサスフォーム''を試して見たかったが、今日はファイズになっていたからクウガにはなれなかった。

オートバジンも試して見たかったら良しとしよう。

 

「めぐみん、あれは俺の使い魔的なものだ。」

 

「えっ!いいなぁ!羨ましいです!」

 

「まぁ……ポンコツだけどな」

 

カズマは、俺の使い魔こと、オートバジンをポンコツ呼ばわりしやがった。

 

「うるせえよ、キャベツ泥棒」

 

「誰がキャベツ泥棒だ!……あぁ!もう、どうしてこうなった!」

 

キャベツ泥棒は、頭を抱えテーブルに突っ伏した。

まぁ、言いたい事は分かる。

 

「皆に、私のクルセイダーの実力が分かって貰えて何よりだ。では、改めて。名はダクネス。一応両手剣を使っているが戦力としては期待しないでくれ。だが、壁になるのは大得意だ!」

 

そう…新たにポンコツが仲間になったのだ。

俺とカズマは、断り続けたがめぐみんとアクアに押し負けてしまったのだ。

 

 

「ウチのパーティも、なかなかの豪華な顔ぶれになってきたわね!アークプリーストの私に、アークウィザードのめぐみん、そして、クルセイダーのダクネス!上級者が3人もいるパーティよ!なかなか無いわよ!」

 

アクアは、新たな仲間が上級ジョブの為、嬉しさを隠しきれない様子だった。

 

確かに新たな仲間というものはいいものだ、それに加え上級ジョブだ。''普通''なら、最強の布陣だが……上級ジョブというだけのポンコツが3人じゃなぁ…。

 

「それでは、ハチマン、カズマ。これからも遠慮なく、私を囮や壁に使ってくれ。はぁはぁ…」

 

はぁ…もう、未来が不安でしかない。

 

「パーティの足を引っ張るようなことがあれば強めに罵ってくれ。なんだったら、捨て駒に!何より、その目で雌豚を見るような目で罵ってくれ!はぁはぁ……考えただけで、武者震いが」

 

ダクネスは、頬を赤くして涎を垂らしていた。

このドMはダメだ。なんとかして、担当をカズマにしなければ…。

おい、カズマ。そのお前が担当な!みたいに顔をすんじゃねぇよ。オートバジン呼んで、タイマンはらせるぞ。

 

かくして、俺達のパーティに新たな''ポンコツ''が仲間になった。

 


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