「うぅぅぅ…ぐすっ…生ぐざいよ~。ひぐっ…なまぐざいよ…」
粘液塗れのアクアはめそめそ泣きながら歩いていた。
2回目だが、この光景には見慣れた風景ものだった。
「おーい!ハチマン、憲兵さん達にカエル運んでもらえるように話しておいたぜ!」
「サンキュー」
カエルを倒した数も数だから、カズマに憲兵に運んでもらえるように頼んで貰った。
だって、俺が行くとアンデッドと間違われるわ、緊張しすぎて噛んで何を言ってるのか分からなくなるからな。
「カエルの体内って、匂いはキツいけどいい感じに温いんですね……。知りたくもない、知識が増えました……」
アクアと同じように粘液塗れで、そのような事を言っているめぐみんは、俺が背中におんぶしている。
めぐみんの身体が小さい為、小町をおんぶしている感覚に似ているのか、全く緊張しない。
「ハチマン、これ。俺が遠くから見た時に、なかなかヤバい構図だったぞ。」
確かに…。粘液塗れの女が2人とそれを運ぶアンデッドの目を持つ俺。
まず、こんな奴らと俺が遭遇したら間違いなく通報するレベルだ。てか、関わりたくもない。
「なぁ、めぐみん。今後は、爆裂魔法は緊急時以外は禁止な。使用する魔力が大きいと魔力の代わりに命を削るらしいから。コレからは他の魔法で頑張ってくれ。」
「使えませんよ」
「……何が使えないって?」
思わず、オウム返しのように言葉を返した。
めぐみんが、きゅっと俺に掴まっていた手を強くした。
「…私は爆裂魔法しか使えません。他の魔法は一切使えません。」
「マジか」
「おいおい、ハチマンマジな分けないだろ~。なぁ、めぐみん?」
「マジです。」
俺とカズマは、めぐみんの言葉で静まり返った。
その中で、泣きながら歩いていたアクアも泣き止んで、鼻をグズクズにしながら会話に参加した。
「爆裂魔法しか使えないってどういうこと?爆裂魔法を習得できるほどのスキルポイントあれば、他の魔法もスキルを習得出来るはずよ?」
「えっ?ちょっと待って、アクア。スキルポイントって、何だ?ハチマン知ってるか?」
「俺は知っているぞ。ギルドのルナさんから聞いたし。」
そんなカズマを見て、アクアが説明をし始めた。
「スキルポイントは、ジョブに就いた時に貰えるのよ。クラススキルを習得するポイントね。もちろん、最初が私みたいに優秀な人ほど、貰えるポイントが多いのよ!だから、私は宴会芸スキルを全て習得してからアークプリーストのスキルを習得したわよ」
「なぁ、アクア。宴会芸スキルっていつ使うんだ?」
アクアはカズマの質問を無視して話を続けた。
「クラススキルを習得するのにも、注意点があってね。水が苦手な人は、水魔法・氷結魔法を習得するのに普通の人よりもスキルポイントを使ったり、習得出来ない場合があるの。それでね、今回の爆裂魔法は複合魔法だから、様々な属性が絡みあってできる魔法なのよ。」
「なるほど。だから、爆裂魔法が使えるぐらいなら、他の魔法を使えないわけではないのか。」
カズマがアクアの説明で分かったみたいだ。
だが、アクア…お前自分の職のスキルよりも先に宴会芸スキルを取るとは…。あとで、説教しておく必要があるな。
「……ボソッ」
背中におぶっためぐみんが、ボソボソいい始めた。そのボソボソ声は段々大きくなるに連れて、俺を掴んでいる手にも力が入っていった。
「私は、爆裂魔法をこよなく愛しているアークウィザード!爆発系統の魔法が好きなんじゃなく!爆裂魔法が好きなんです!」
痛い痛い!掴まれている肩が痛い!
「確かに、基本魔法とか習得していれば旅は楽になるでしょう!ですが、ダメなんです!私は、爆裂魔法しか愛せないんです!例え、1日1発しか撃てなくても、撃った後に倒れようともいいんです!私は爆裂魔法を愛しているんですから!だから、私は爆裂魔法を使うためにアークウィザードの道を選んだんです」
あー、この感じはダメなやつだな。
変なとこに一直線なのはいいが、その一直線を間違えてる。
それに…。
「素晴らしい! 素晴らしいわ! その、非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に、私は感動したわ!」
ウチの問題児が同調しているのが証拠だ。
このアークウィザードは、駄目な奴だ。
カズマと目を合わせると言いたいことを分かってくれたみたいだな。てか、思っていることは同じだ。
「そうか、そうだよな!一直線なのはいい事だ!例え、この先が茨の道だろうが強く頑張って行けよ!今回の報酬は門出の祝いとして少し多めにやる。」
めぐみんを下ろそうとした瞬間、必死になってしがみついてきた。
「我が望みは、爆裂魔法を撃つことのみ!なので、無報酬でも構いません!ただ、ご飯とお風呂と雑費さえ頂ければ大丈夫です!それだけで、絶大的な力を得られるんです!お得ですよ!これは、もう長期契約をするべきです!」
カズマ頼む!
カズマにアイコンタクトを送った。
「アハハ…!ハチマン、今の何気持ち悪いですけど!」
このクソ女神…説教時間増やしやるからなぁ。覚えておけよ。
「いやいや、俺達みたいな弱小パーティには宝の持ち腐れだって。特に俺とアクアなんて、レベル低いしさ!」
「いやいやいや、私だってレベル低いですよ!だ、だからレベルが上がれば魔法で倒れなくなります!だから、引き剥がそうとしないで!」
ちょっ…と待って…この子本当にアークウィザード?握力めちゃくちゃ強いんですけど!
ふぉぉぉぉ…
「いやいやいやいや、1発しか魔法使えないとか使い勝手悪いだろ。てか、ハチマン大丈夫か!顔真っ赤だけど」
「コイツ、アークウィザードの癖にめちゃくちゃ握力あるんだが!ふぉぉぉぉ!」
「こ、こらハチマンを離せ。 お前多分他のパーティにも捨てられた口だろ。というかダンジョンにでも潜った暁には、爆裂魔法なんて狭いダンジョンじゃ使えないし、いよいよ役立たずだろ、お、おいこら離せ。てか、本当に握力つえぇなぁ!」
「み、見捨てない下さい!もうどこのパーティーにも拾ってもらえません!ダンジョンの際には、荷物持ちでも何でもしますので、捨てないで下さい!」
俺の背中にいるめぐみんを、男2人で引き剥がそうとしている姿とめぐみんの捨てるだのと大声で叫ぶから周囲に奇怪な目とあらぬ誤解を招いてしまった。
「やだ……。あの2人の男の人、あの女の子を見捨てるつもりよ。」
「ほら、見て。隣の女の人も粘液塗れにされてるわよ。いったいどんなプレイしたのかしら変態共は。」
「特におんぶしている男の方は、完全にキメてる目してるわよ。相当ヤバい事やらされたんじゃないかしら。」
間違いなく、あらぬ誤解をされている。
めぐみんにも、聞こえたのか、わざと俺に聞こえるようにニヤッと言ってきやがった。ヤバい…。
「どんなプレイでも要望に答えます!先程のカエルプレイを超えるプレイでも構いません!」
「「わ、分かった!コレからはよろしくなめぐみん」」
新たな仲間ができました。