翌日の冒険者ギルドにて。
「なんでぇ!なんで来ないのよ!」
アクアが頭を抱えていた。
俺達が求人募集の紙を出してから、冒険者ギルドの片隅にあるテーブルで、半日が経過していた。
誰も見ていない訳ではないんだが、俺ら以外にも募集を掛けているパーティもある訳で、所々で面接やら談笑やらしている。
つまり……どういう事が言いたいのか言うと、内容がかなり悪いんだ。
それに加え、アクアの今までの所業の悪さが広まっているせいで見向きもされない状態だ。
何となく、予想は付いていたが…まさかここまでとはなぁ。
「なぁ、やっぱり募集要項のハードルをさげないか?」
「いやよ!なんで、私が妥協しなきゃいけないのよ!」
「もとあと言えば、おまえがな!」
「あ、あのー!募集要項を見て来ました!」
アクアとカズマが言い争いをしているとこに、トンガリ帽子を被って、目には眼帯を付けていて、歳が小町と同じくらいの少女がきた。
「ほらきた!えっと、自己紹介頼めるかしら?」
「ふふふ…我が名はめぐみん!最強のアークウィザードにして、魔術攻撃で一番最強の爆裂魔法を操る最強の魔術師!
この出逢いは世界の理!そう我はこの運命とも呼べる、出逢いを待ち望んでいた!」
1回1回ポーズを変えながら、自己紹介していく少女ことめぐみん。
俺は、この自己紹介の感じ…材木座と同じ匂いがする。
「ふふふ…あまりにも強大な存在故に、世界に拒まれ続けた我の力を求めるか!」
マントをなびかせながらセリフを続けた。
おかしいなぁ。俺に的確なダメージが蓄積されている。めぐみんを見る周りの目が、俺が小町に黒歴史を見せた時みたいな目をしている。
「ならば、我と共に究極の深淵を覗く覚悟は出来ているか!人が深淵を覗く時、深淵も、また人を覗いている!」
最後の決め台詞が決まったのか、顔が綻んでいた。頼むこれ以上は辞めてくれ。その言動とポーズとかは俺に一番ダメージが通るんだ。しかも、小町と変わらないくらいっぽいから、俺の黒歴史を小町が親父達に披露した時の事も思い出すから。
見せた後に、親父達が病院を本気で進めてきた時には……もう、やめよう…思い出すだけでエリス様の所に行きそうだ。
最初に口を開いたのカズマだった。
「冷やかしなら他所でやっくれ。」
「ち、ちがうわい!!」
めぐみんは慌てて否定した。まぁ、めぐみんの自己紹介見たら冷やかしかと思うわな。
「その赤い瞳!もしかして、あなた紅魔族?」
アクアの言葉に、少女は嬉しそうな顔をしながらコクリと頭を頷ける。
「如何にも!わたしは、紅魔族で随一の魔法の使い手で、最強なんです!最強!あと、図々しいお願いがあるですが…出来れば何か食べるものを頂けませんか?3日ほど何も食べてないんです。」
めぐみんは、目をうるうるさせながカズマを見ていた。それと同時にめぐみんの腹がなった。
はぁ…
「カズマ。ここは、俺が出すわ。」
「あいよ。」
奢るはいいんだが…俺としては、どうしても気になっている物がある。
「めぐみん?でいいのか?」
「はい!なんでしょ!」
「その眼帯は、怪我でもしているのか?怪我しているんであれば、アクアに頼んで回復してやるが。」
「そうだぞ、回復だけしか取り柄がないアクアが治してくれるぞ!」
「誰が回復しか取り柄しかないって!」
「おいおい、今は面接中だから後にしてくれ。んで、どうする?」
「回復など入りません!この眼帯には意味があるのです!」
眼帯に意味がある?まさか…
「眼帯の下に何かあるのか?」
「ふっふっふっ…そこに気づくとは!貴方もなかなかいい目…してないですね!何ですか、アンデッドと合体としたような目は!」
「よし、カズマ。こいつ面接落とすぞ。」
「あっ、待ってください!ごめんなさい !だから、落とさないで!」
人の目を、アンデッドと合体したような目とは失礼な!てか、カズマとアクア、何笑ってんだ?あとで、2人ともしばく。
「んで、その眼帯付けてる意味は?」
「えっとですね!これは、我が強大な魔力を封印を施す為に付けている!もし、この眼帯が外れたとあれば、世界に多大な影響を及ぼします!」
おいおい、もしそれがマジならウチのパーティかなりの戦力になるな。それにこの世界では、封印とかあっても不思議ではないしな。
カズマが興奮気味にめぐみんに尋ねた。
「おぉ!それは本当なのか!」
「まぁ、嘘ですけどね。この眼帯は、ただのオシャレです!」
…………。
カズマと俺は目を合わせてからの行動は早かった。
俺がめぐみんを羽交い締めし、カズマがめぐみんの眼帯を引っ張り始めた。
「あ、あのー…眼帯を引っ張らないでくれませんか。お願いです!あの2人ともお願いです!」
めぐみんは、涙になりながら訴えてきたがシカトだ。
カズマに関しては、ロマンを返せと言わんばかりの顔をしていた。俺もかなり期待していたからな。封印とかカッコイイしな。みんなもそう思うだろ?封印されている武器とか、ロボットとか。
「2人共に冷静に!冷静になって下さい!その眼帯をゆっくり戻すのです!いえ、戻してください!」
俺ら2人の行動見かねたのかアクアが、紅魔族の説明し始めた。
「2人…紅魔族は、生まれつき高い知識と高い魔力を持っていて、大抵の魔法なら使いこなせる。まぁ、簡単に言うなら魔法使いのエキスパートね。あとは……変わっている名前を持っていることかしら。それと、紅魔族のこうは紅って書くのよ。」
珍しく、アクアが使えると思ってしまったが言葉に出すのは辞めておく。だって、コイツ泣くと慰めるのに酒を要求してくるからだ。
「「へーそうなのか……あっ」」
アクアに関心したせいか、カズマが眼帯を掴んでいた手を緩めてしまい、眼帯はめぐみんの目に吸い込まれていった。
「いっ……たい!目がぁぁぁ!くぅぅぅ……。」
「悪い悪い、もう少し伸びると思ったんだがカズマが離しちまったから中途半端な痛みになっちまったな。ほら、アクア目を治してやってくれもう一回やるから」
「ハチマン、お前鬼かよ!!」
「冗談だ」
「ハチマンが言うと、冗談に聞こえない時がある…。悪い、変な言動だし、からかってるのかと思ってさ、あと名前も変だしな」
「ぐぅぅ…変な名前とは失礼な!私から言わせれば、人族の方がおかしい名前です!」
「ほぅ…ちなみ、父親と母親な名前は?」
「母はゆいゆい!父はひょいざぶろー」
………………。
「ハチマン、どうする?この子、一応質のいい魔法使いだが。」
「おい!わたしの両親について何か言いたいことが聞こうじゃないか!」
「ハチマン、いいんじゃない。冒険者カードは偽装とか出来ないわけだし。それに、高い魔力が記されてる。魔力容量に関しては、普通ですけど。実際に、彼女が爆裂魔法が使えるんであれば戦力として問題無いはずよ!」
おかしいなぁ。アクアがまともな意見を言うとは…明日は雨か?
まぁ、でも言っていることが本当なら、かなりの
戦力増強ができる。
「んまぁ……様子見だな。明日、実力を見して貰ってから決めるか。」
俺はめぐみんに、メニューを渡した。